豚山田さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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万能鑑定士Qの事件簿 I
松岡圭祐 / 角川文庫
斬新だけどついて行けない
5
な、なんだこれ・・。自分の感性が古いのか、日本の出版界が新しいステージに突入したのか。ちょっと未経験の読書体験をしてしまい、戸惑いを隠せません。
まず、シリーズものを目指しているのは分かりますが、なら…ば最も力を入れるべき1巻目に、何故外伝が如く主人公の過去を紐解くところからスタートしているのか?主人公に興味が湧く前にこれをされても、退屈で仕方がないです。もっとも、作中に出版社からシリーズ化を約束されたかのような、実名団体の偏った宣伝文句が散りばめられているので、こういった手法も可能なのかもしれませんが。
そのうえ、ミステリでありながら、薀蓄は並べるが謎は解かないという新しい手法も、どうにもついていけなかったです。しかもラストは唐突に、伏線もなく次巻からファンタジーにも突入! てな雰囲気で終わってますし・・もう、何もかも新しすぎです!
しかし、自分は特に新し物好きでもないので・・次のステップには進まないでしょうけど。 続きを読む投稿日:2014.01.01
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不夜城
馳星周 / 角川文庫
これほどのアトラクションが遊園地にありますか?
5
再読。僕的には怖い位に「読ませてくれる」作品です。
言うなれば鯛焼きの薄皮一枚剥がしたら鯛の形をしたあんこが出てきたというような…とにかく最初から最後まで退屈な部分がない一冊です。
小説が実生活では得…られない体験をさせてくれると言うのなら、僕がまず踏み入れたいと望むのがこのワルの世界という奴でして。
道徳的な良し悪しなぞ脱ぎ捨てて肩まで浸かってしまうと、後はむしろ救いがなければないほど良いてな具合で、ほとほと感情をシェイクされての読了が約束される訳です。
こんなアトラクション、TDLにだってありませんよ!
お勧め。 続きを読む投稿日:2014.03.05
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パンドラの匣
太宰治 / 青空文庫
新聞連載時のことを想像すれば楽しさ倍増かと
5
結核患者の療養所に入所する青年から親友に宛てられた手紙という形式の物語です。
文庫本上から一見すると、よくある一人称の独白文といった趣ですが、元が新聞(河北新報)の連載小説だった事を想像すると、これは…非常に面白い試みだよなぁ、と感心しながら読んでいました。
つまりタイムリーな読者であれば主人公の親友という立場になり、毎朝新聞と共に届けられる主人公からの手紙を読むことが出来たという訳ですよね(実際、新聞掲載時期と作中の時間軸はほぼ重なるようです)。
こういったエンタメ性の追求が太宰作品の大きな魅力かと。
流石です。 続きを読む投稿日:2014.05.11
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銃口 上
三浦綾子 / 角川文庫
フラグが立ちまくりで嫌な予感しかしません
5
予備知識なしで読んでます。
これがどんな物語なのか、氏がどういう作風を持っているのか、全く手さぐりで恐る恐るページを捲っていました。
なので上巻の前半は何を期待して読むべきかも分からず、取り敢えず文字…を消化するだけという体になっていましたが、竜太が成人になってからは俄然面白くなってきましたね。
というか所謂フラグが立ちまくっていて、徐々に嫌な予感しかしないという感じに。
長年想いを寄せていた娘と婚約し、3年後に一人前になったら結婚しましょうなんて、とんでもないフラグを立ててくれたものです。
下巻は一気読みの予感が。 続きを読む投稿日:2014.12.11
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六枚のとんかつ
蘇部健一 / 講談社文庫
「謎を解かない」前半の方が俄然面白かったなぁ…
5
所謂バカミス。
ただトリックやギミックが突拍子もないものという類のでは無く、単にキャラクターがおまぬけというタイプのバカミスでした。
すると納得できないのが、後半の「普通に謎解きをする展開」です。
前…半はまだ、謎を解いた!と思ったら全然違った!とか作風にあった展開が面白かったのですが、謎解き自体は驚きのないものなので後半は一転して面白みに欠ける展開に。
中盤に読者への挑戦が出たときは、おおと思ったんですけどね。
これを出してきて、実はトリックを見破れませんでしたなんて最高の展開になると期待したのですが…
何とも残念。 続きを読む投稿日:2014.12.03
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夏への扉
ロバート・A・ハインライン, 福島正実 / ハヤカワ文庫SF
未来人には未来人の楽しみ方があります
5
1956年発表の本作は、1970年という近未来が舞台であり、そこから更に30年後の2000年とを行き来するという展開は、当時の読者をさぞわくわくさせたことと想像します。
更に13年後の未来人たる僕はと…言えば、風邪菌すら撲滅された過去のSFを鼻をすすりながら読むという、発表当時の意図とは異なるであろう奇妙な面白さを実感することができました。
僕の好きな時間遡及ものとしては、正直洗練された組立とは言い難いものはありましたが、今の素晴らしい作品群の礎となった事を考えると、愛おしく感じられる作品の一つとなれそうです。 続きを読む投稿日:2014.03.01