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豚山田さんのレビュー
いいね!された数471
  • 銀河英雄伝説3 雌伏篇

    銀河英雄伝説3 雌伏篇

    田中芳樹

    らいとすたっふ文庫

    完全にヤンのターンも、無双過ぎるところが玉に瑕

    自由惑星同盟の要塞・イゼルローンの司令官であるヤンは、その優れた人望、思想、武勲において国家の指導者達に疎まれ、恐れられている。 彼らはヤンに対して自らの優位を見せつける為に査問という形で本国に呼びつけるのだが、折しもその時帝国の要塞攻略の奥の手が実行されようとしていた…。 今巻は完全にヤンのターン。 シチュエーションとしてはこれ以上ない展開でした。 ただ弁舌でも戦争でもヤンの無双状態で敵の呆気なさが気になる所。 まぁそれはそれで面白く読まされてしまうのが作者の凄い所なのですが。 次巻が気になるので続けていこうかと。

    1
    投稿日: 2015.02.13
  • 巷説百物語

    巷説百物語

    京極夏彦

    角川文庫

    むしろ『妖怪なんていない!』な妖怪の物語

    江戸時代が背景のミステリ。 てっきり妖怪やら魑魅魍魎やらが跋扈する妖しげな世界観の物語と思い込んでいましたが、実は180度真逆。 物の怪の仕業と噂をされる難事件怪事件を、全て人の業が起こしたものであることを解き明かしていく様の物語でした。 京極作品は初めてでしたが、一見取っ付きにくそうな文章も実はテンポも良くするすると頭に入ってきて読み易い。 作者の博識も垣間見える。 成程愛好家が多いというのも頷けます。 ただキャラもストーリーも先が気になるという程ではなかったような。 世界観に浸るのが目的の物語という感じでしょうか。

    3
    投稿日: 2015.02.08
  • 魔女の生徒会長

    魔女の生徒会長

    日日日,鈴見敦

    MF文庫J

    加速のついた格闘描写は面白いのですが…物語としては如何なものか

    一見すると文章も整っているしテンポも良い。 期待できるかなと思ったのですが…。 鍛錬なしに高められた身体機能「酷い」、裏付けのない空虚な台詞「酷い」、意味のない時代設定「酷い」回収されない伏線「酷い」大人がいない「酷い」倫理がない「酷い」法もない「酷い」荒唐「酷い」無稽「酷い」論理「酷い」破綻「酷い」酷い酷いひどいひどいぉあたたたたァーーー! みたいな加速のついた描写は面白かったのですが、いかんせん他の作家先生たちが日々一生懸命頭を悩ませているであろう肝心な部分を綺麗さっぱり無視している感じが馴染めず。 降参。

    1
    投稿日: 2015.02.05
  • 地球図

    地球図

    太宰治

    青空文庫

    「その信を固くして死ぬるとも志を変えるでない」にハッとする

    西暦1700年頃の物語。 布教の為に日本に辿り着いたロオマン人のシロオテは、幕府に捕縛され獄中死をします。 彼は己の使命に忠実で、獄中にあっても恨みごとを言わず、僅かにでも布教の機会があれば前向きに教法を説こうとする姿はいじらしくもあり、法なき時代への無力感も感じさせます。 「その信を固くして死ぬるとも志を変えるでない」という彼の最期の言葉に、作者はどの様な気持ちを込めたのか。 僕自身、自らの信念を振り返りハッとさせられるものがありました。 平凡なる本読みの身とて、作者の伝えんとするものが響いたと信じたいものです。

    4
    投稿日: 2015.02.01
  • GOTH 僕の章

    GOTH 僕の章

    乙一

    角川文庫

    構えていても騙されますが、際どい偶然の上に成り立っているような気も

    トリックというか騙りの方法は全篇通し共通しており、下巻ともなればかなり身構えながら読み進めていった筈なのですが、それでも騙されます。 これは中々凄い。 何ともキャラクターの妙というか、着々と積み上げられた主人公の人格が読み手の中に作用していて、どうしてもそこに固執してしまうが故のトリックとなっていますよね。 注意を別に逸らす奇術の様なテクニック。 爽快です。 ただこの手のトリックの性質が故か偶然が続き過ぎる展開は正直目に余ります。 全てがたまたまの上に成り立っていると思うとどうも興醒め。 リアリティを求めなければ良作。

    1
    投稿日: 2015.01.28
  • GOTH 夜の章

    GOTH 夜の章

    乙一

    角川文庫

    ミステリとしては淡泊も、ちょっと変わった設定の味付けで飯が喰える

    ミステリとは知らずに開く。 むしろノワール的な青春ものという感じのイメージを勝手に抱いていました。 なので一話目のオチで「僕」が彼女を殺さなかった時点で完全に拍子抜け。 エンジンの掛かりの悪い立ち上がりとなってしまいました。 しかし2話目のオチで「おおっ」と覚醒。 ついそこだけもう一度読み返し、そのままの勢いで夜の章まで読み切っていました。 謎や仕掛けは決して複雑なものではありませんが、通常のミステリから半歩だけ脇道を歩いたような題材とキャラに真新しさがあり、楽しく読めました。 暗くて人の死ぬ古典部的? 後半も楽しみ。

    2
    投稿日: 2015.01.27
  • マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく

    マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく

    うれま庄司,CUTEG

    富士見ファンタジア文庫

    「人狼」が好きならお勧めです。そのまんまですから。

    展開としては非常に好み。 リーダビリティにも優れている。 ならば良作かというと確かにそうなのですが…何せかの有名な「人狼」のまんまノベライズなものですから、面白いのは作品じゃなくシステムなのでは、と思ってしまえる所が残念。 せめてアレンジで「似てるな」程度に留めておけばまだ評価できたような。 しかし良い所も悪い所も凄く目に付く作品ではあるのですが、前述の通りとにかく読ませてくれる本ですので、総合的には自分的に大きくプラスです。 上下巻できっちり終わらせてくれそうですし、解答編が非常に楽しみ。 魔女の目星も付けました。

    2
    投稿日: 2015.01.27
  • マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント

    マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント

    うれま庄司,CUTEG

    富士見ファンタジア文庫

    謎を解かせてくれそうで絞らせない展開は中々小憎らしい

    注:目次は読み飛ばすこと! それはともかく期待と不安の解答編。 限定された魔法少女の能力とゲームのルールが絡まって、謎を解かせてくれそうで絞らせない展開は中々小憎らしい。 僕も予想を外しました。 ただ人狼の売りは心理戦であり、嘘の言い合いに面白みがあると思うのですが残念ながらその方面の深みは足りず。 また極限状態の人間の反応としてはいささか軽い気も。 魔法少女という素材を使ったのであれば尚更リアルな反応がギャップとして生えたのではないでしょうか。 オチも若干ズルいかな。 ミステリとして読むと苦しい。 けど面白かったです。

    1
    投稿日: 2015.01.27
  • 心空管レトロアクタ

    心空管レトロアクタ

    羽根川牧人,片倉真二

    富士見ファンタジア文庫

    皆さんはこのタイトルからどんな物語を想像しますか?

    タイトルは重要です。 何故なら読者はそこから本の内容を想像し、期待を膨らませて、お財布から貴重なお金を出すわけですから。 僕がこの「心空管レトロアクタ」からどんな物語を想像したかと言えば… 何となくセピア色の風景の、トライガン的な現代とは違う方向に発展した蒸気漂う街が舞台で、機械いじりの得意な少年が繰り広げる冒険とか、出会いとか… そんな感じでした。 なので、少なくとも他のラノベと大差ない女子に囲まれてウハウハの少年が能力覚醒で剣を振り回して怪物を倒す話、等とは想像の埒外。 まぁ勝手に想像した側が悪いのですが。 無念。

    1
    投稿日: 2015.01.26
  • 殉狂者 下

    殉狂者 下

    馳星周

    角川文庫

    解っていてもやるせなさに追い詰められてしまう

    やるせない。 身悶えするほどやるせない。 主人公ワルテルの結末は上巻の冒頭で既に明らかになっていましたし、物語の真相も下巻に入る頃には嫌な予感を伴ってだいたい想像がつくようになるのですが、それが解っていながら……いや解っているが故に「まさか」「信じたくない」の思いでページを捲らされてしまう。 微かな希望、朧げな未来……最悪の中だからこそ眩しく映えるそれらに、読者までもがすがる気持ちになってしまう。 これだけの大作に長いこと付き合ってきたからこその感情。 それこそが作者の目論む結末への伏線と知りながら。 やはり馳星周。

    1
    投稿日: 2015.01.24