Unaken66さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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星々の悲しみ
宮本輝 / 文春文庫
素晴らしい短編集
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親友の死を通じて、自身の生きる意味を見つめる……という表題作をはじめ、全7編の短編が収められています。どれも素晴らしい作品ですが、個人的にもっとも惹かれたのは「小旗」という一編。おそらく何かの障害があ…るであろう青年の、愚直でひたむきな仕事ぶり。それを目にして主人公は感動します。生と死や、健康と病。表裏一体となっていて、誰でもどっちに転ぶか分からないのに、私たちが日頃、つい目を背けている部分。そんな闇の部分にも、人を感動させる何かが、生きる喜びを知らせる何かがあると、この短編集は感じさせてくれました。 続きを読む
投稿日:2015.09.28
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城のなかの人
星新一 / 角川文庫
これも面白い
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星新一先生は、SF・ショートショートはもちろんですが、歴史物も面白かったのね! 本書には短編5作が収録されていますが、なかでも実在の人物をモデルにした3作品が面白い。すなわち豊臣秀頼と大阪城を描く表題…作、由井正雪のペテン師ぶりが痛快な「正雪と弟子」、幕末の幕府側の英傑・小栗忠順と徳川埋蔵金の秘密に迫る「はんぱもの維新」、これらは出色の出来です。
SFファンのみならず、歴史物が好きな方にもおすすめの一冊です! 続きを読む投稿日:2015.10.22
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太陽の子
灰谷健次郎 / 角川文庫
読み継いでいきたい名作です
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主人公の少女が素晴らしく魅力的で、最初の数頁であっという間に物語の世界に引き込まれます。読み進めると、様々なことを考えさせられます。戦争の傷跡――。沖縄の人たちの悲しみ――。本書は昭和54年の作品です…が、登場人物が「戦後30年も経っているのに、まだ戦争の傷は癒えない」と嘆く場面があります。戦後70年の今はどうでしょうか。本書を読んだあとの自分は、戦争法案やら、沖縄の基地問題のことなど、他人事と思ってはいけないと強く感じています。 続きを読む
投稿日:2015.10.22
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老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ, 野崎孝 / グーテンベルク21
せっかくの名作が~~~
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本の内容は、すごくいいです。主人公の「あきらめない心」に共感します。たとえ老いても、自分のやれることをやるんだと、決意を新たにさせてくれる一冊です!
が、残念な点も。本書には、シイラ、エイ、という漢字…が度々出てくるのですが、「※しいら、魚へん+暑」などと表記され、漢字では出てきません! 無料の青空文庫では、このような表記はよく見ますが、お金を出して買った電子書籍では初体験です。読書の興をそがれること甚だしい!! そもそも翻訳なのだから、「シイラ、エイ」とカタカナ表記にしてくれたら済む話と思うんですがねぇ。版元さんが手抜きしてるように感じてしまいます。 続きを読む投稿日:2016.02.02
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P+D BOOKS 虫喰仙次
色川武大 / P+D BOOKS
未読なら、ぜひに
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本書は元々、1989年に福武文庫から出ていたようなのですが、同社が出版事業から撤退したこともあってか、書店で見かけることが少なかった一冊です。ですので、再版(電子書籍化)は大歓迎。色川武大氏の私小説が…好きな人、父親や生家との関係を描いた名作「百」や「生家へ」に感動を覚えた人であれば、本書もぜひ一読することをお勧めします。 続きを読む
投稿日:2021.08.13
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吉里吉里人(上)
井上ひさし / 新潮社
辞書片手にゆっくり読みたい
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文庫本は3巻で1500頁という大作ですが、その気になれば2日間で読破できるはず……です。なぜなら、筆者には「小説内の1日半の出来事と、読者の読み進む時間が一致するように書く」という実験的意図があったら…しいので。そうやって一気読みし、娯楽SF作品として理屈抜きで楽しむのもありです。が、発表から30年も経っていることもあるので、辞書を片手にゆっくり読み解く、という方が、より作品を理解できると思います。
例えば文中には「ア式蹴球」とか「白河夜船」とか、確かに昭和の時代には普通に聞いたけど、今はちょっと分からない、という言葉が数々出てくる。また、主人公の古橋(小説家)の失敗作の例として「目腐心中」なんて作品が出てくるが、これは筆者の直木賞受賞作「手鎖心中」のセルフパロディかと思われます。こういうのも元ネタを知らないと楽しめないので、疑問が出てきたら調べながら読む、というのがいいように思いました。 続きを読む投稿日:2016.05.30