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Unaken66さんのレビュー
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  • P+D BOOKS 虫喰仙次

    P+D BOOKS 虫喰仙次

    色川武大

    P+D BOOKS

    未読なら、ぜひに

    本書は元々、1989年に福武文庫から出ていたようなのですが、同社が出版事業から撤退したこともあってか、書店で見かけることが少なかった一冊です。ですので、再版(電子書籍化)は大歓迎。色川武大氏の私小説が好きな人、父親や生家との関係を描いた名作「百」や「生家へ」に感動を覚えた人であれば、本書もぜひ一読することをお勧めします。

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    投稿日: 2021.08.13
  • 宮本武蔵全八冊合本版

    宮本武蔵全八冊合本版

    吉川英治

    吉川英治歴史時代文庫

    人を描く、ということ

    単に強さを求める剣術から、剣を通じて自己の高みに挑戦するという剣「道」へ。若く不完全だった武蔵が、次第に成長していくさまは実に感動的です。 同じ作者の「三国志」に、劉備玄徳が宇宙を仰いで人間の小ささに嘆息する場面があります。「否、人間の行いがなければ、いかに宇宙が広くともそれは空虚に過ぎない!」と劉備は自己の未来に思いを馳せるのですが、よく似た描写が、この「宮本武蔵」の中にもあります。人がいかに生き、何を為すのか。大作家吉川英治が描きたかったものが、感じられた気がします。

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    投稿日: 2019.10.17
  • ヤマケイ文庫 新編 単独行

    ヤマケイ文庫 新編 単独行

    加藤文太郎

    山と溪谷社

    素顔に触れる

    本作は、無料の「青空文庫」でも読めますが、原文は、なにぶん昭和10年頃までに書かれた古いものですし、このヤマケイ版には編者・福島功夫氏の詳細な解説や編注も加えられているので、お金を払ってもこっちを読んだ方がいいと思います。 「不死身の加藤」という通り名、新田次郎の「孤高の人」のタイトル、伝説的な登攀記録を残し、わずか30才で山に死すという劇的な生涯……。それらのイメージは、本書を初めて読む人は、いったん捨て去った方がいいかもしれません。たぶん加藤文太郎は、山に出会うまでは、己の生き方も、生かす場所も分からなかった人物。そんな男が、山に生き場所を見つけ、次第に逞しく変わっていく様が、みずみずしい描写から感じられる一冊です。

    0
    投稿日: 2019.10.17
  • 原色の街・驟雨(新潮文庫)

    原色の街・驟雨(新潮文庫)

    吉行淳之介

    新潮文庫

    名作です

    「原色の街」:客の目を引くため原色の衣装に身を包んだ娼婦達。このタイトルだけで、女たちや、未知の赤線地帯・鳩の街への想像がふくらむ。「驟雨」:芥川賞受賞作。金のやり取りで完結するはずの娼婦との関係、しかしそこに別の感情が芽生えるとしたら……。 その他の短編も、男女の機微、性の奥深さなど、目に見えにくいものをなんとも繊細に描き出している。昔の芥川賞作家のレベルの高さを痛感する。読み手の想像をかき立てる、すごい短編集!

    0
    投稿日: 2019.10.17
  • 旨いものが食いたくなる本 合本版

    旨いものが食いたくなる本 合本版

    北大路魯山人,こひやまあきひこ

    オリオンブックス

    勧められない

    魯山人は昭和34年に亡くなっているそうな。とっくに死後50年以上、すなわち氏の著作はパブリックドメインになっていて、青空文庫でも読むことが出来る。それでも本書のように、有料の書籍として、しかも「合本版」として出るのなら、一冊手元に置いておこうかと思ったが、これはお勧めできない。収録作品がテーマ別に並んでいるわけでも、発表年代別に並んでいるわけでもない。有益な注釈も、解説もなし。編者がどう読ませようとしているのか、意図が見えない。エッセイも、講話の再録もごた混ぜなので、話がつながらないまま始まったり、切れてしまう事も多々ある。これだったら無料の青空文庫で、一篇ずつ読んだ方がマシだったなぁ。

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    投稿日: 2019.10.08
  • ほたる火の森(電子復刻版)

    ほたる火の森(電子復刻版)

    戸川幸夫

    徳間文庫

    深い

    筆者十八番の「動物もの」短編集。熊、ニホンオオカミ、虎などのメジャーな動物ものから、ハイエナ、アザラシ、ハーテビーストなどが主人公の珍しい(?)話もあり、楽しめる。巻末の表題作「ほたる火の森」は、オオカミにさらわれ、育てられたという、インドの少女の話。人間界のことをまったく知らない少女が、育ての親の愛情により少しずつ変わっていく様は感動的。一読の価値があると思います。

    0
    投稿日: 2018.06.07
  • 産霊山秘録

    産霊山秘録

    半村良

    集英社文庫

    面白すぎる~!

    現在では「どこぞで見たような」というネタもありますが、単行本が出たのが1973年、この本こそネタ元なんでしょうね。歴史の裏側に本当に本書のような事実があったのではないかと、わくわくさせられます。超能力を持ち、正しい未来を夢見ながらも、衰退していく謎の一族。個人的には目一杯肩入れして、ラストまで一気読みしてしまいました。今読んでも面白すぎる一冊です。

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    投稿日: 2018.01.10
  • シャトルシェフ生活のすすめ レシピ集

    シャトルシェフ生活のすすめ レシピ集

    壷林光代

    東洋経済新報社

    ☆追加

    以前、非力な4インチスマホ&READER・PRS-T3で読んでいたときは、動作が遅い、見づらい、拡大表示もまともにできない等々で、ストレスでした。最近になってブラウザでも読めるようになったのと、今時の5インチクラスのスマホなら、まあなんとか使える……ってことで☆追加しときます。 ちなみに本の内容自体は素晴らしいです。長年のシャトルシェフ愛用者ですが、震災以来エコ調理を見直してるので、レパートリー広がって助かります。本書は全6章仕立て、帰ってすぐ食べられるメニューから始まり、サラダ、煮物、肉料理、ごはんと麺、スープ、と続く構成です。初心者でも作れそうなものもけっこう多く載ってますから、シャトルシェフ持ってるなら買って損はない内容です。

    0
    投稿日: 2017.06.09
  • 人民は弱し 官吏は強し

    人民は弱し 官吏は強し

    星新一

    新潮社

    胸を張って生きる

    官吏……を辞書で引くと「明治憲法下、国家によって選任され、国家に忠順をつくすもの」などとある。忠順とは、忠実で従順なこと。本書に登場する「官吏」は、まさにその通りの人達だ。 官吏を敵に回すということは、国家と戦うのと同じで、勝ち目があるはずもない。しかし本書の主人公・星一は、堂々と戦い続けるのである。周囲を恨まず、運命を呪わず、己の全能力を挙げて理想の実現、すなわち日本の繁栄、医学界の発展に尽くそうとする。その私欲のない姿には、心を打たれる。勝敗の結末は問題ではない。官吏として忠順に生きるよりも、もっと尊い生き方があると痛感させられる。人生に悩むあらゆる人に、勇気を与えてくれる一冊だと思う。

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    投稿日: 2017.01.12
  • なつかしい芸人たち(新潮文庫)

    なつかしい芸人たち(新潮文庫)

    色川武大

    新潮文庫

    紙の「新潮文庫版」がお勧めです

    本書、電子書籍版「なつかしい芸人たち」は、平成元年刊行の単行本を底本にしていると思われます。同じ新潮社より、平成20年に復刊された文庫版が手元にあるのですが、昭和芸能史としての資料的な価値をお求めの方には、この「紙の文庫版」の方を強くお勧めします。 その理由:文庫版に収録されている以下のものが、電子書籍版では収録されていないからです。 1)南伸坊画伯によるイラスト/今となっては資料も少ない芸人達、その特徴をよく捉えたイラストです。 2)各芸人達が出演した、映画や、舞台のスチール写真など 3)矢野誠一氏、吉川潮氏による、ダブル解説/どちらも筆者の人となり、素顔をよく伝えており、筆者の芸人に対する想いをよく理解できる名文です。 もちろん、「本文さえ読めればよい」という方には、この電子書籍版で十分なのですが。

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    投稿日: 2017.01.12