Unaken66さんのレビュー
参考にされた数
51
このユーザーのレビュー
-
P+D BOOKS 虫喰仙次
色川武大 / P+D BOOKS
未読なら、ぜひに
1
本書は元々、1989年に福武文庫から出ていたようなのですが、同社が出版事業から撤退したこともあってか、書店で見かけることが少なかった一冊です。ですので、再版(電子書籍化)は大歓迎。色川武大氏の私小説が…好きな人、父親や生家との関係を描いた名作「百」や「生家へ」に感動を覚えた人であれば、本書もぜひ一読することをお勧めします。 続きを読む
投稿日:2021.08.13
-
宮本武蔵全八冊合本版
吉川英治 / 吉川英治歴史時代文庫
人を描く、ということ
2
単に強さを求める剣術から、剣を通じて自己の高みに挑戦するという剣「道」へ。若く不完全だった武蔵が、次第に成長していくさまは実に感動的です。
同じ作者の「三国志」に、劉備玄徳が宇宙を仰いで人間の小ささ…に嘆息する場面があります。「否、人間の行いがなければ、いかに宇宙が広くともそれは空虚に過ぎない!」と劉備は自己の未来に思いを馳せるのですが、よく似た描写が、この「宮本武蔵」の中にもあります。人がいかに生き、何を為すのか。大作家吉川英治が描きたかったものが、感じられた気がします。 続きを読む投稿日:2019.10.17
-
ヤマケイ文庫 新編 単独行
加藤文太郎 / 山と溪谷社
素顔に触れる
0
本作は、無料の「青空文庫」でも読めますが、原文は、なにぶん昭和10年頃までに書かれた古いものですし、このヤマケイ版には編者・福島功夫氏の詳細な解説や編注も加えられているので、お金を払ってもこっちを読ん…だ方がいいと思います。
「不死身の加藤」という通り名、新田次郎の「孤高の人」のタイトル、伝説的な登攀記録を残し、わずか30才で山に死すという劇的な生涯……。それらのイメージは、本書を初めて読む人は、いったん捨て去った方がいいかもしれません。たぶん加藤文太郎は、山に出会うまでは、己の生き方も、生かす場所も分からなかった人物。そんな男が、山に生き場所を見つけ、次第に逞しく変わっていく様が、みずみずしい描写から感じられる一冊です。 続きを読む投稿日:2019.10.17
-
原色の街・驟雨
吉行淳之介 / 新潮文庫
名作です
0
「原色の街」:客の目を引くため原色の衣装に身を包んだ娼婦達。このタイトルだけで、女たちや、未知の赤線地帯・鳩の街への想像がふくらむ。「驟雨」:芥川賞受賞作。金のやり取りで完結するはずの娼婦との関係、し…かしそこに別の感情が芽生えるとしたら……。
その他の短編も、男女の機微、性の奥深さなど、目に見えにくいものをなんとも繊細に描き出している。昔の芥川賞作家のレベルの高さを痛感する。読み手の想像をかき立てる、すごい短編集! 続きを読む投稿日:2019.10.17
-
旨いものが食いたくなる本 合本版
北大路魯山人, こひやまあきひこ / オリオンブックス
勧められない
0
魯山人は昭和34年に亡くなっているそうな。とっくに死後50年以上、すなわち氏の著作はパブリックドメインになっていて、青空文庫でも読むことが出来る。それでも本書のように、有料の書籍として、しかも「合本版…」として出るのなら、一冊手元に置いておこうかと思ったが、これはお勧めできない。収録作品がテーマ別に並んでいるわけでも、発表年代別に並んでいるわけでもない。有益な注釈も、解説もなし。編者がどう読ませようとしているのか、意図が見えない。エッセイも、講話の再録もごた混ぜなので、話がつながらないまま始まったり、切れてしまう事も多々ある。これだったら無料の青空文庫で、一篇ずつ読んだ方がマシだったなぁ。 続きを読む
投稿日:2019.10.08
-
ほたる火の森(電子復刻版)
戸川幸夫 / 徳間文庫
深い
0
筆者十八番の「動物もの」短編集。熊、ニホンオオカミ、虎などのメジャーな動物ものから、ハイエナ、アザラシ、ハーテビーストなどが主人公の珍しい(?)話もあり、楽しめる。巻末の表題作「ほたる火の森」は、オオ…カミにさらわれ、育てられたという、インドの少女の話。人間界のことをまったく知らない少女が、育ての親の愛情により少しずつ変わっていく様は感動的。一読の価値があると思います。 続きを読む
投稿日:2018.06.07