Unaken66さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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青春を山に賭けて
植村直己 / 文春文庫
超面白い、男の成長記!
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作者は歴史に名を残した偉大な冒険家であって、自分なんかとは違う人種……と思っていました。しかし違いました! 未成熟で、失敗だらけで、だからこそ共感できる、一人の男だったのです。本書には、まだなにもので…も無い少年が、山に出会ってなにものかに成長していく、そんな過程が描かれています。文無し同然で外国に渡り、厳しい労働に耐えながら山を目指す姿。単独行で命を落としかけたことや、アフリカでの初体験、誰も考えつかなかったアマゾンの川下りなど、エピソード満載でとにかく面白い! 自分にはできない、だから憧れるのかもしれないけど、植村直己のようにストイックに、自分を律して、ひたすら目標に向かって生きる姿は美しいなと感じました。 続きを読む
投稿日:2014.10.11
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宮本武蔵全八冊合本版
吉川英治 / 吉川英治歴史時代文庫
人を描く、ということ
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単に強さを求める剣術から、剣を通じて自己の高みに挑戦するという剣「道」へ。若く不完全だった武蔵が、次第に成長していくさまは実に感動的です。
同じ作者の「三国志」に、劉備玄徳が宇宙を仰いで人間の小ささ…に嘆息する場面があります。「否、人間の行いがなければ、いかに宇宙が広くともそれは空虚に過ぎない!」と劉備は自己の未来に思いを馳せるのですが、よく似た描写が、この「宮本武蔵」の中にもあります。人がいかに生き、何を為すのか。大作家吉川英治が描きたかったものが、感じられた気がします。 続きを読む投稿日:2019.10.17
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ボッコちゃん
星新一 / 新潮社
名作は古びない
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少し前に、本書に収録の「生活維持省」が、某コミックの元ネタなのではないかと騒動になりました。それで思い出して数十年ぶりに再読してみたのですが、やはり面白い! 単に未来や科学の行く末を予見するだけではな…く、世界はこうあってほしい……という作者の思いを感じられる作品群。当時のSF作家の見識の高さに脱帽です。 続きを読む
投稿日:2014.06.11
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星々の悲しみ
宮本輝 / 文春文庫
素晴らしい短編集
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親友の死を通じて、自身の生きる意味を見つめる……という表題作をはじめ、全7編の短編が収められています。どれも素晴らしい作品ですが、個人的にもっとも惹かれたのは「小旗」という一編。おそらく何かの障害があ…るであろう青年の、愚直でひたむきな仕事ぶり。それを目にして主人公は感動します。生と死や、健康と病。表裏一体となっていて、誰でもどっちに転ぶか分からないのに、私たちが日頃、つい目を背けている部分。そんな闇の部分にも、人を感動させる何かが、生きる喜びを知らせる何かがあると、この短編集は感じさせてくれました。 続きを読む
投稿日:2015.09.28
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P+D BOOKS 虫喰仙次
色川武大 / P+D BOOKS
未読なら、ぜひに
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本書は元々、1989年に福武文庫から出ていたようなのですが、同社が出版事業から撤退したこともあってか、書店で見かけることが少なかった一冊です。ですので、再版(電子書籍化)は大歓迎。色川武大氏の私小説が…好きな人、父親や生家との関係を描いた名作「百」や「生家へ」に感動を覚えた人であれば、本書もぜひ一読することをお勧めします。 続きを読む
投稿日:2021.08.13
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老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ, 野崎孝 / グーテンベルク21
せっかくの名作が~~~
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本の内容は、すごくいいです。主人公の「あきらめない心」に共感します。たとえ老いても、自分のやれることをやるんだと、決意を新たにさせてくれる一冊です!
が、残念な点も。本書には、シイラ、エイ、という漢字…が度々出てくるのですが、「※しいら、魚へん+暑」などと表記され、漢字では出てきません! 無料の青空文庫では、このような表記はよく見ますが、お金を出して買った電子書籍では初体験です。読書の興をそがれること甚だしい!! そもそも翻訳なのだから、「シイラ、エイ」とカタカナ表記にしてくれたら済む話と思うんですがねぇ。版元さんが手抜きしてるように感じてしまいます。 続きを読む投稿日:2016.02.02