ryunicoさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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アルスラーン戦記(1)
荒川弘, 田中芳樹 / 別冊少年マガジン
荒川版「アルスラーン戦記」開幕
17
第一話が荒川さんのオリジナル前日譚である等、コミカライズにあたって原作を更に磨き上げる工夫があって導入からすでに面白い。
映画版のキャラクターデザインが記憶にあるので、最初こそキャラの識別に戸惑ったも…のの、これは読み進めるうちに馴染めるはず。
1巻は主要人物がほとんど出そろってない序章なので、2巻以降も各キャラクターがどう描かれるか楽しみ。
これを切っ掛けに原作小説も電子書籍でリリースされるととても嬉しいのですが……。 続きを読む投稿日:2014.04.09
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吉原手引草
松井今朝子 / 幻冬舎文庫
「吉原」という特殊世界をのぞき込める時代ミステリー
14
小説のスタート時点から、もう花魁葛城は失踪していて登場しません。
そして小説は葛城の関係者一人ひとりにインタビューする形で進行します。
関係者たちの証言から、徐々に葛城という花魁の姿が浮かび上がってき…て、やがて失踪事件の真相にたどり着く……という展開です。
私自身は、「吉原」に対する思い込みを上手く利用したミスリードに見事に引っかかりました。
最後の最後でどんでん返しがあるんですけど、実はここには余り感動しなかったんです(何故だろう?)。
あと、個人的に葛城の選んだ手段にいまいち納得がいかず……目標を目指すには、時間がかかる以上に不確定要素が多いと思うんですよね、この方法……。
むしろ時代ミステリーというよりも、『吉原』という、当時ですら異界だった世界を手取り足取り解説してくれる、ガイドブック的な面白さの方が目立ちました。
基本的な知識はあるつもりでしたが、大店への上がり方とか、花魁との作法とか、本作品で初めて知ることが多く、そういう点も楽しめた一因かと。 続きを読む投稿日:2014.04.06
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ルピナス探偵団の当惑
津原泰水 / 創元推理文庫
少年少女探偵団だけどジュヴナイル感は皆無
9
やっと津原作品が電子書籍化しました。
これはかつて「津原やすみ」名義で発表した少女小説作品を、大幅リライトのうえ推理小説として再刊行したものです。
(「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優…の右手」の中篇3本が収められています。
「大女優の右手」が今回書き下ろされたタイトルで、他2本がリライト分です。)
スタートが少女小説だったため、主人公は当然女子高生ですし、片思いの少年も出てきます。
が、全体を通して学校生活などの青春らしい甘酸っぱさは1%もありません
少女小説らしい「きゃっきゃうふふ」成分も残っているかと読んでみたら、見事に徹頭徹尾推理小説でした。
津原作品らしいどこか浮世離れしたキャラクターたちが軽妙な会話を交わしながら、飄々とすすむミステリーです。
津原泰水さんの作品を初めて読む人には入りやすいタイトルかと思います。 続きを読む投稿日:2014.05.23
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探偵・日暮旅人の探し物
山口幸三郎 / メディアワークス文庫
(ミステリー+現代ファンタジー+ほの甘い恋愛もの)÷3=……
8
『日暮旅人』シリーズの第1弾です。
探偵事務所を営む日暮旅人とその娘の灯衣、そして灯衣が通う保育園の保育士・山川陽子がメインキャラクターになります。
一風どころか二風も三風も変わった旅人に、いくつか…の事件を通じて陽子が近づいていくわけですが、最初純粋にミステリー連作短編集だと思って手に取ったため、「どれもちょっと事件が弱いかな……」と若干消化不良感を抱きました。
ただ、最後まで読んでみたら思わぬ伏線が回収され、けっこう驚きました。
これを純粋な探偵ものとして読むと、肩すかしを食らうかもしれません。
なぜなら、日暮旅人というキャラクターがかなり現実離れした設定だからです。
しかしこのキャラクター設定を飲み込むことができれば、先に続く物語ががぜん気になりだします。
ほのぼの日常系かと思うと、たまに仄暗い短編も混じってきたりと、シリーズ構成もくるくるとカードが回るように色を変えます。
「なぜ旅人がこんなことになってしまったのか」が気になったら、もう作者の術中にはまったも同然。
そんなシリーズです。 続きを読む投稿日:2014.03.30
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九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子
九井諒子 / HARTA COMIX
七色七変化
8
購入したものの積んでたのを後悔した一冊。
タイトルに「竜」とありますが、モチーフとして竜が絡んでくる話は2話だけで、あとは日常に非日常テイストを加味した独自展開の短編集です。
まず目を見張ったのが、そ…の画力。上手いだけじゃなくて、描くストーリーによって絵柄を変えてくる器用さも併せ持つとは……。
ギャグもシリアスも描けるストーリーテリングにこの画力なんて、黄金比としか言いようがありません。 続きを読む投稿日:2013.12.31
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アルスラーン戦記(2)
荒川弘, 田中芳樹 / 別冊少年マガジン
過不足ない快調ペース
7
アルスラーンの16翼将のうち、4人までが登場した2巻。
今回はナルサスとギーヴに焦点が当たった流れになっています。
原作よりも展開ペースがやや速めにも感じますが、描くエピソードのつなぎ方が上手いので、…スピーディーな展開がむしろ心地いいです。
そして最終ページを見て驚きました。
導入のためだけに描かれたとばかり思ったオリジナル前日譚が、伏線として重要キャラクターに紐づけられていました。
奴隷に関する描写から見て、アルスラーンの成長を奴隷解放エピソードに重点を置いて描き出すのかも……など、あれこれ読者の想像を逞しくさせる2巻でした。
続刊も楽しみです。 続きを読む投稿日:2014.05.09