
凶撃の露軍 傭兵代理店・改
渡辺裕之
祥伝社文庫
当然舞台はウクライナ
改シリーズでは8作目。代理店シリーズ通算26作品目。これまで常に最新の地域紛争を描いてきた渡辺氏。ま、当然今回はウクライナになるわな。ロシア軍によるキーウ侵攻の折、そこにリベンジャーズがいた!という設定だけでワクワクする。短期決戦に失敗したのは彼らの活躍のおかげ!と思いたい。悪名高い民間軍事会社ワグネルとプーチン大統領との関係やマリ共和国暫定政権への関与。また、ウクライナは軍需物資の輸出国世界4位を誇り、その輸出先はなんと北朝鮮や中国、イランなどであるという。いつもながら勉強になる情報が満載。
0投稿日: 2024.05.21カッティング・エッジ 上
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
事件の真相がなかなか見えない
リンカーンライムシリーズ14作目。ダイヤモンドに異常なまでに執着する犯人。犯行現場に遭遇してしまったために、犯人の執拗な追跡を受けるダイヤモンド加工職人の青年。さっさと警察に逃げ込めばいいのに、自力で逃げまくるもんだから、次々と犠牲者が増えていく。この青年は決して悪い人じゃないんだけど、考えの甘さにイラッときてしまう。そんな中、地震とそれによるガス爆発がニューヨークを襲う。更には地中熱ヒートポンプ建設現場と工事に反対する環境保護団体が捜査対象に浮上。これらがどうつながる?疑問だらけのまま下巻へ。
0投稿日: 2024.05.21カッティング・エッジ 下
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
ええー犯人もうわかっちゃうの?
下巻の前半で早くも犯人の素性が明かされる。それもライムが追跡の上に見破ったという体ではなく、普通に犯人によって自ら手口が語られるという実にあっさりとした種明かし。そう、ディーヴァーにとって誰が犯人であるかは、さほど重要ではないのだ。様々な証拠がどう繋がるのか、どうやって犯人を追い詰め逮捕するのかという所が見せ場なのだ。今回も様々な伏線が見事に繋がっていき、遂には思わぬ真相に辿り着く。ただ今回は犯人側の狙いが複雑すぎて、そもそもこの計画にダイヤモンドって必要?という疑問が残った。
0投稿日: 2024.05.21神さまのいうとおり
谷瑞恵
幻冬舎文庫
非科学的でも信じちゃう人多いはず
2022年中学入試において大妻、香蘭、栄東、城北、ラ・サールなど多くの学校で出題された。田舎に昔から伝わるおまじない、言い伝え、風習など科学的には迷信だとわかっていても、結構受け入れてしまうのが現代人の不思議なところ。主人公友梨のひいおばあちゃんセイと人形屋敷のオババと呼ばれる発子の二人は、もはやおまじないを自在に操る巫女のような存在。二人の言うことは非科学的なのに、なんか妙に説得力がある。私達の多くの悩みを解決する糸口は、古き良き考えの中にあるのかもしれない。探し物が見つかるおまじないはぜひ会得したい。
0投稿日: 2024.05.21保健室経由、かねやま本館。5
松素めぐり,おとないちあき
講談社
時には頑張らないことも大事だね
人に頼ったり甘えたりするのは恥ずかしいことだと教育されてきた中学生の樹生。苦しくてもつらくても弱音を吐かずに強い人間になろうと人からの優しさも受け入れない。しまいには、他人が自分に優しくするのは、自分よりも上に立ちたいから、見下したいから、とまで勘繰るようになる。そういう心の隙を狙ってたかのように突如出現した謎の「かねやま新館」と住人と思しき華世子さん。彼女の悪魔の誘惑に樹生は勝てるのか?親友ボンとの終盤のやりとりは感涙必至。頑張るのは大切だけど、頑張りすぎは良くないね。たまには甘えることも必要だ。
0投稿日: 2024.05.21血の代償 オッドアイ
渡辺裕之
中公文庫
圧巻のシリーズ8作目。
オッドアイシリーズ⑧。前作はイマイチだったけど、今回はシナリオがよく練られている。日本で起きた一人の米兵殺人事件が連続殺人?復讐?テロ?ロシアの謀略?とまあ、どんどん膨らんでいき、舞台は日本からアメリカまで広がる。主人公の朝倉も元特殊部隊のスキルをいかんなく発揮。事件の発端はなんとイラク戦争にまで遡る。大国が他国へ軍事介入することによってもたらされる悲劇。戦時下での民間人虐殺は今もどこかで行われている悲しい現実なのだ。
0投稿日: 2024.05.21ぼくたちのリアル
戸森しるこ,佐藤真紀子
講談社
また再会できるといいね
講談社児童文学新人賞受賞作品。キラキラネームのリアル(璃在)は小5の男の子。主人公だけど一人称としては登場しない。幼馴染で家も隣のアスカの目線でリアルを描く。スポーツ万能、頭も良くて、会話も面白くイケメンで女の子の人気を独り占めにするほどのリアル。そんな何不自由なく過ごしているように見えるリアルにも、人には言えない苦しみや十字架を背負っているということがわかってくる。転校してきたサジとアスカと3人でお互いを思いやり友情を育んでいく姿が涙を誘う。エルトン・ジョンの選曲もいいね!
0投稿日: 2024.05.13記憶の奴隷
渡辺裕之
角川文庫
冷たい狂犬シリーズ5作目です
冷たい狂犬シリーズ⑤。あれ?タイトルから「冷たい狂犬」という言葉が消えてる。新しいシリーズでも始まったのかと一瞬期待してしまったではないか。主人公の影山夏樹は他のシリーズでちょくちょくゲスト出演していたが、主役となるこのシリーズは久々。イーサン・ハントのようにコロコロ変装しながら相変わらずの無敵っぷり。傭兵代理店シリーズのウクライナ入りと丁度リンクさせて影山はロシア人スパイとの攻防を繰り広げる。いつも無敵すぎて物足りないのだけど、今回ばかりは彼にしては珍しくピンチが訪れて面白さ倍増。ラストはサプライズ!
0投稿日: 2024.05.13ストロベリー・ブルー
香坂直
角川文庫
恋の一歩手前の中学生たち
5人の中学生男女が織りなす恋の話。5人それぞれの視点で描かれる5つの短編集。どれも胸がキュンキュンしてしまうような話で、自分の中学生時代と重ね合わせてしまう。恋と言っても、気になる人から好きな人に発展する途上の段階で、本人たちもホントに好きなのかどうかよくわかっていないあたりが、焦れったくもあり、微笑ましくもある。表題作のストロベリー・ブルーの横山くんと木崎さんの関係が良かったなぁ。木崎さんの「ーていい?」の台詞の「ー」の部分に入る言葉、予想はつくけど正解が知りたい!入試問題にしたらかなり良問。
0投稿日: 2024.05.13ロードス島攻防記(新潮文庫)
塩野七生
新潮文庫
誇り高き聖ヨハネ騎士団
1453年のコンスタンティノープル陥落から約70年後の1522年、再びトルコ帝国が地中海に大軍を送り込んでくる。立ち向かうのはロードス島を拠点とする聖ヨハネ騎士団。若干28歳にして20万という大軍を率いるスレタン・スレイマン。対する防衛側の総兵力はたったの5千。主力の騎士団員は600人にも満たない。兵力よりも城壁VS大砲の戦いのためか作戦の妙が全く感じられず、戦いそのものは面白くない。むしろ聖ヨハネ騎士団の歴史が興味深かった。今でも独立国家としてローマ市内に存在しているということに驚き!
0投稿日: 2024.05.13