
アナと雪の女王 エピソード0 Dangerous Secrets
講談社
講談社
美しくも悲しい物語がまだあった
アナとエルサの父アグナル王と母イドゥナ王妃の波瀾万丈のロマンス物語。アナ雪1では早々に舞台から消えてしまった2人だが、そこに至るまでになんとも壮大なストーリーがあったのだ。夫のアグナル王にも打ち明けられないイドゥナの秘密。そして決して埋めようのない圧倒的な身分の違い。それらの様々な困難や苦悩を乗り越えて二人の愛は深まりついには結ばれる。アグナルの器の大きさが素敵だ。嵐の中、死を覚悟した二人のやり取りが幸せそうで、悲しい場面にもかかわらずホッとした気持ちになる。ちょうどローグ・ワンのラストを観たときの心境。
0投稿日: 2024.05.06ネヴァー・ゲーム 上
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
ディーヴァーの新たなキャラクター登場
懸賞金ハンターというちょっと変わった職業のコルター・ショウを主人公とする新シリーズ。科学捜査のリンカーン・ライムとは対極的に五感で勝負する主人公。頭で考えるよりもどんどん動く。足と体で情報を集めるタイプ。射撃も格闘術もロック・クライミングも相当な腕の持ち主らしいが、今のところあまりご披露する機会がない。そのうち披露してくれるのかな。作家のジェフリー・ディーヴァーは70歳を越えているというのに、テーマは最新のゲーム業界の内情や最先端技術の話。歳を感じさせません。さて、下巻のコルターの活躍を期待しよう。
0投稿日: 2024.05.06ネヴァー・ゲーム 下
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
これはリアル脱出ゲームだ
懸賞金ハンターのコルター・ショウ、下巻に入って彼の持つサバイバル技術がふんだんに発揮される。とある脱出ゲームを模した誘拐事件だとするコルターの推理に全く耳を貸さずに的外れな捜査を進める警察。人質にリアル脱出ゲームをさせる犯人。一刻を争う救出。痕跡を残さない犯人の追跡、コルターの父親の死の謎、そして恋愛?色んなことが同時並行で進み忙しそう。サッポロビールを飲んでることがわかって、なんか親近感がわいてきた。日本の小説だと普通はビールとしか書かないから、なんか斬新。そして父親の死の謎は深まるばかり。
0投稿日: 2024.05.06一線の湖
砥上裕將
講談社
湖の絵を見たい!
『線は、僕を描く』の続編。主人公の青山君(もはや横浜流星で脳内再生)は相変わらずネガティブ思考で、過去の不幸な境遇から立ち直れないままでいる。その上、様々なアクシデントに見舞われ、まさに身も心もボロボロ。そんな彼を温かく支えてくれる周囲の人たち。水墨絵を描くときの筆遣い、墨汁、紙質、筆の毛先まで細部にわたり描きこまれているため、やや冗長すぎるきらいがあるが、そのおかげでどんな絵を描いているのか映像としてイメージできる。果たしてイメージ通りの絵なのか答え合わせをしたいので、これも映画化を期待したい。
0投稿日: 2024.05.06博士の長靴
瀧羽麻子
ポプラ社
中学入試頻出の作品
気象博士の子ども、孫、ひ孫までの数世代に渡る人間模様を描いた連作短編集。2023年の中高入試では多くの学校で出題された。各短編の最後で、えー、この後どうなるんだよーとやきもきさせられるのだが、次の短編では十数年が経過していて、あーそう落ち着いたのねとスッキリする。そしてまたラストにやきもきするという連続。「ニ〇ニニ年 立春」は秀逸。冒頭の短編「一九五八年 立春」と リンクして表題の「博士の長靴」がキーアイテムとなる。それにしても玲くんのお父さんが誰なのか気になる。え?まさか…?だよね?
0投稿日: 2024.05.06暗闇のサラ
カリン・スローター,鈴木美朋
ハーパーコリンズ・ジャパン
そういえば日本でも
トレント捜査官シリーズ11作目。今起きているレイプ事件をきっかけにサラの15年前のレイプ事件の真相が明らかになる。犯人も逮捕され、事件は解決していたかに思えたが、実は想像もつかないスケールで事件の闇は広がっていた。前半の進みが遅くてちょっとイラっとくるが、アマンダ登場でスカッとする展開に。そして最後のサラの選択。相手への思いやりなのか、自分の為なのか、なかなかに解釈が難しいシーンだ。前者の方がサラらしいと思うが。以前日本であった某大学のレイプサークル事件を想起させられる。いくら高学歴、高収入でもねぇ…。
0投稿日: 2024.05.06竜とわれらの時代
川端裕人
BOOK☆WALKER セレクト
展開が想定外すぎる!
凄い!想定外のスケール!ある高校生兄弟が恐竜の化石を見つけたことを秘密にして、大人になってから本格的な発掘をして世界的大発見につながるという、サクセスストーリーかと思いきや、生物進化論や恐竜についてのガチな学術論争。これはサイエンス小説?と思ったら今度は謎の組織登場で、命を狙われたり、はたまたイスラム教VSキリスト教の宗教対立、原発問題、しまいにはテロ!後半はまるで『24』ばりの緊迫感。一気にサスペンス小説へと変貌する。北陸の田舎町の伝承民話という非科学と最新科学が融合するなんとも不思議な小説。
0投稿日: 2024.05.05保健室経由、かねやま本館。6
松素めぐり,おとないちあき
講談社
家族再生の物語
シリーズ6作目。妹が持病を抱えているために、お母さんは妹につきっきり。すべてが妹最優先の生活。転校も頻繁に繰り返し、2年と同じところにはいないから友達もできない。更には両親の離婚。自分が愛されているという感覚がない芳乃。嫉妬のせいか妹や友達にもきつく当ってしまう。それでも妹は明るく接してくることに余計腹が立つ。そんな芳乃の所に現れた、かねやま新館の華世子さん。自分への愛情を独り占めできるという魅力的な誘いをかけてくる。最後にリマという友達の前で見せた芳乃の行動が胸を打つ。いつも最後に泣かされてしまう。
0投稿日: 2024.05.04あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。
汐見夏衛,あんよ
スターツ出版文庫
平和に感謝せずにはいられない
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編。胸がキュンキュンしてしまう話だった。目を合わせるだけでドキドキしてしまうようなピュアな恋愛。でも、ただの恋愛話でないのは、そこに生まれ変わりというテイストが加わっていること。そして、平和を願う作者の強い思いが、前作で戦時中にタイムスリップした百合のひと言ひと言に託されていることも単なる恋愛小説とはひと味違う。期待通りの結末でホッとした。ただ、前作を読んでいないと百合が時折見せる驚きの表情が、なんでなのかがわからないかもしれない。やはり前作から読むべき作品。
0投稿日: 2021.09.16スキン・コレクター 上
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
毒殺タトゥー魔に挑むライム
リンカーン・ライムシリーズ11作目。1作目『ボーン・コレクター』の模倣犯的な皮膚とタトゥーに執着する連続殺人犯。捜査陣が突き止める前に、読者には早々に犯人の名前も明かしてしまい、もはや謎解きの要素はないのか?あとはひたすら犯人とライムとの知恵比べの勝負が見所となるのか?まだ上巻だし、ディーヴァーだし、まだ何か新展開がありそうな予感。サックスとボーン・コレクターの被害者パムとの母娘的な対立も気になるところ。下巻に期待しよう。
0投稿日: 2019.12.01