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チョッピーさんのレビュー
いいね!された数220
  • 純平、考え直せ

    純平、考え直せ

    奥田英朗

    光文社文庫

    確かに「考え直せ」という物語かも。

    全く自分とは接点の無い世界を描いていながら、それでいて主人公を始めとした登場人物それぞれに余り嫌味なく感情移入出来てしまう奥田さんの語りのうまさが出ている作品だったと思います。確かに「考え直せ」という内容だったとは思いますが、ラスト直前の「幻想」シーンがラストに繋がっているようで、読者に結末を「選ばせる」効果が出ているような気もしました。ネットの書き込み描写は「今風」を狙ったものかもしれませんが、今作では余り効果は出ていないのでは?

    1
    投稿日: 2014.05.15
  • マリアビートル

    マリアビートル

    伊坂幸太郎

    角川文庫

    快心の作品

    文句なく楽しい!伊坂さん流の極上エンターテイメント作品。ほぼ東北新幹線車内だけで進む「殺し屋」達の手に汗握る闘いもさる事ながら、蜜柑と檸檬の掛け合いの面白さに見られる、ちょっと現実から浮いた所にあるような伊坂さん独特の世界が堪りません。王子という伊坂さんの作品に見られる「邪悪」そのものというキャラクタも今作では一際「魅力的」でした。細かい伏線の効かせ方も相変わらずの上手さでしたが、今作の更なる続編も期待したいと思います。快心の作品でした。

    1
    投稿日: 2014.05.15
  • 神様のカルテ

    神様のカルテ

    夏川草介

    小学館文庫

    厳しい世界・・・でも限りなく「温かい」

    現実はもっと厳しいであろう「地方」の「救急医療」を担う病院を舞台に、信州の美しい自然描写の中で、愛すべき登場人物達の間でかわされるユーモア溢れる会話の数々や、切なく、それでいて温かい物語に、「かくありたい」という世界を感じる事が出来た小説でした。

    1
    投稿日: 2014.05.15
  • 福家警部補の再訪

    福家警部補の再訪

    大倉崇裕

    創元推理文庫

    スーパーウーマン?

    福家警部補の2作目。今回は余り同情できる動機を持った犯人はいなかったかな?という所と、少々後出しジャンケン的な詰めが気になりました。福家警部補のスーパーウーマン振りも少しやり過ぎのような感もあり、そろそろコロンボでは無いですが、彼女が本気で「怒る」ような悪そのものという犯人との対決があっても良いような気もします。3作目はどうなのでしょう?

    0
    投稿日: 2014.05.08
  • 福家警部補の挨拶

    福家警部補の挨拶

    大倉崇裕

    創元推理文庫

    『刑事コロンボ』好き?

    2014年の年明けからドラマが放映されましたが、小説は主人公のキャラが少し立っていない感がありつつ、短編でうまくまとめられた倒叙ミステリーだったと思います。作者は多分、刑事コロンボで言うところの『別れのワイン』『祝砲の挽歌』『忘れられたスター』等の切な系が好きなタイプとみましたが、どうでしょうか。

    1
    投稿日: 2014.05.08
  • 桐島、部活やめるってよ

    桐島、部活やめるってよ

    朝井リョウ

    集英社文庫

    「桐島」はどこに?

    結構な「重さ」で人間関係であったり、登場人物の心情であったりが語られる作品で、これだけ濃密な関係を持てる彼ら彼女らが「うらやましい」と思う気持ちもある反面、「うざいな」という気持ちも抱きながら、登場する人物よりも遥かに鈍感だった(今も)自分の過去も振り返り読んだ作品でした。「桐島」はそれにしても何処?

    1
    投稿日: 2014.05.06
  • 廃墟建築士

    廃墟建築士

    三崎亜記

    集英社文庫

    相変わらずの「読み手」を選ぶ作品

    読み手を激しく選ぶタイプ、と勝手に思っている三崎亜記さんの作品。個人的には三崎さんの描く「喪失感」のようなものに惹かれています。今回の作品にも色々な「喪失」が描かれていましたが、「動物園」の姉妹編「図書館」が今作ではお気に入りでした。不思議な世界を体験したい方には是非読んで欲しい作家の一人です。

    0
    投稿日: 2014.05.06
  • 終末のフール

    終末のフール

    伊坂幸太郎

    集英社文庫

    SFの設定ながら

    ある種の「シュミレーション」を期待して読むと肩透かしをくらう事間違いなしの作品ですが、「ジタバタして生きていきましょう」というそこはかとないメッセージが、小説で書かれているような「最悪の状況下」であろうと、小説を離れた現在のリアルな私達の世界であろうと、大して違いは無いのだ、という事に気付かされた作品でした。伊坂さんらしい「SF」小説なのかも知れません。

    2
    投稿日: 2014.05.06
  • 家族ゲーム

    家族ゲーム

    本間洋平

    集英社文庫

    今読むのは少々・・・。

    小説の感想欄ですが、やはり森田芳光監督と松田優作コンビによる映画化された作品がベストに思えた作品です。設定だけが似通った別の作品と考えるべきなのかも知れませんが、小説としては書かれた時代からの経年変化には現在耐えられていないのではないでしょうか。「あの」時代の空気を伝える作品ではあると思います。

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    投稿日: 2014.05.06
  • おれのおばさん

    おれのおばさん

    佐川光晴

    集英社文芸単行本

    願いをこめて

    他の人から見ればどんなに破天荒な人生であっても、どんなに罪深い人生であっても、学ぶべき点は学ぶべき点として認める心と、自分も罪深く弱い人間である可能性を認める心を持つ、冷静でありながら、涙も流し、ひたすら前向きであろうとする主人公の中学生の心の有り様に「こうありたい」と願う作者の気持ちが反映されているように思えました。心に沁みる良作です。

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    投稿日: 2014.05.06