
神去なあなあ日常
三浦しをん
読楽
「大きい」もの。
「林業」や「自然と共に生きる」というような言葉で語られてしまっているように見える作品ですが、個人的にはそれぞれの言葉の括りに微妙な「違和感」を感じるような作品で、「大きい」存在の中で生きるという事、というかなり漠然としたイメージがこの作品の印象でした。かなり強引にこの物語の主人公を「他者」として設定したにもかかわらず、結構「従順」な形で物語に絡んでいく部分に少々物足りなさを覚えましたが、作者も「大きい」存在に圧倒されてしまったのかも、とも思います。
2投稿日: 2014.06.03
県庁おもてなし課
有川浩
角川文庫
厳しい・・・。
普通に新社会人の研修にも即使えそうで、且つ、普通のビジネス本としても読めるような内容をいつもながらの恋愛話も絡めながら、地元愛も盛大に、それでいて日本全国の「地方」にエールを送るような「物語」に落としこんで爽やかに読ませてしまうという流石の有川さんらしい作品だったとは思います。が。正直今回はあらゆる意味で「偏差値高め」の有川さん流のキャラクター群に少々凹まされ気味の自分がいたのも確かで、リアルに「厳しい世界」を感じてしまった、というのが率直な感想です。余裕が無い時の有川作品は身に応えます・・・。
2投稿日: 2014.06.03
特捜部Q―Pからのメッセージ―(下)
ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田薫,福原美穂子
ハヤカワ・ミステリ文庫
素晴らしい!
下巻に入り、とんでもないカーチェイス描写、病院でのドキドキのサスペンス、主人公側の人間のぶっ飛びの展開を経て、犯人側の人間も巻き込んだこれまたドキドキのサスペンスの果てに、犯人を追い詰めた主人公側と犯人との攻防の二転三転の末の決着と、特捜部Qシリーズらしい余韻の残るエピソードでエンディングを迎えました。今作の下巻に入ってからの物語のスピード感はとにかく素晴らしいの一言です。上下巻合わせて700ページ強の作品でしたが、余りの面白さにほぼ一日での一気読みとなりました。満足の一言です。4作目も早く読まねば!
1投稿日: 2014.05.22
特捜部Q―Pからのメッセージ―(上)
ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田薫,福原美穂子
ハヤカワ・ミステリ文庫
最高のエンターテイメント作品!
特捜部Qシリーズの第3作目。これまでの2作品以上に今作はエンタメ度が高い作品となっています。ユーモアとシリアスの絶妙なブレンド、過去と現在を行きつ戻りつする時間構成の巧みさ、ディーヴァー作品に出そうな「サイコパス」の造形の凄さにうなりながら、読む手を止める事が出来ません。下巻へと続きます・・・。
1投稿日: 2014.05.22
フリーター、家を買う。
有川浩
幻冬舎文庫
少々題名に偽り有り?
題材は違えども、有川浩さんの『シアター!』とよく似た雰囲気を感じたのはどちらも「立て直す」お話だから、という事と、主人公のお姉さんの「男前っぷり」と後半の主人公の活躍っぷりが『シアター!』の「鉄血宰相」こと司兄さんを思い出させるものがあったからかも、と思います。少し題名に偽りありという点と、物語としては中途半端に終わったような気もしますが、これは題材の重さを考え、安易な形で終わらせられないという有川浩さんの誠実さと見るべきなのかも知れません。恋愛要素は今回は不要だったかも?とも思いますが、これが無いと有川さんらしくないかも?
1投稿日: 2014.05.21
失われた町
三崎亜記
集英社文庫
喪失と再生の物語
具体的に書かれているけれども、全く訳が分からない世界、という三崎さんの小説は絶対に他人にはお勧めできない作品ですが、個人的には大好きで堪りません(笑)「喪失」と「再生」という曖昧模糊としてはかない「感情」をこれほどユニークに表現出来る人はなかなかいないのではないでしょうか。自分にどれだけ引き寄せて読めるのか、といつも考えながらの三崎さんの小説との格闘をこれからも続けられればと思います。
2投稿日: 2014.05.21
鹿男あをによし
万城目学
幻冬舎文庫
万城目ワールド!
『坊っちゃん』?という思い込みまでも利用しつつ、ファンタジー小説でもあり、奈良を舞台にした郷土小説でもあり、古都の歴史ミステリーでもあるというまさに「万城目ワールド」としか表現できない小説ですが、とにかく読み終わって清々しい気分になれる小説でした。それぞれのキャラクターも秀逸ですが、やはり堀田嬢かな?剣道部の件は純粋なスポ根物としての面白さもありで、神無月に読む神無月の小説としては勿論、神無月では無くても最高にお勧めの一冊です。
2投稿日: 2014.05.20
ラブコメ今昔
有川浩
角川文庫
甘い?甘くない?
有川さんの「自衛隊愛」「恋愛」をテーマにした短編集でした。有川さんの「本領発揮」の作品だったと思います。甘い甘いと呼ばれる事も多い有川さんの「恋愛物」ですが、個人的には甘いと感じる以上に、人間関係を非常にシビアに捉えられている印象の方が強いと感じています。いずれにしろ「愛」溢れる作品でした。
4投稿日: 2014.05.19
田舎の刑事の趣味とお仕事
滝田務雄
創元推理文庫
少々微妙のような。
日常ミステリ?という分野があるのかは個人的には良く分かりませんが、「誰も殺されない」ミステリ短編集。とにかくキャラクターで読ませる作品で、話が進むにつれ、どたばた度が増していき、主人公のキャラも「壊れていく」という少し変わったミステリ?でした。謎解き部分は意外に(失礼)凝っている作品でしたが、もう少し深みのある作品が好みではあります。
0投稿日: 2014.05.15
配達あかずきん 成風堂書店事件メモ1
大崎梢
東京創元社
本屋に行きたい。
書店を舞台にしたミステリーって?と思いつつ読みましたが、短編集として面白く読みました。書店を舞台にしている事もあり、実在する本がそれぞれの物語に出てきますが、そういう点が本好きにはこの作品の堪らないポイントかも知れません。もう少し深みのある作品が個人的には好みですが、それぞれの物語がミステリーの「型」をなぞっていたりという部分は単純に軽い読み物とも違った本作品の魅力のように感じます。
1投稿日: 2014.05.15
