チョッピーさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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オー!ファーザー
伊坂幸太郎 / 新潮社
父親が4人!その理由とは?
6
「父親が4人」という設定を聞いていた限りでは、「ほのぼの」系の話なのか?と思いきや、かなりガチの「サスペンス」系に話が流れていったのには少し驚きましたが、それぞれ個性が際立ったキャラクター設定の登場人…物が入り乱れつつの物語はいつもながら魅力的で、面白く読了しました。『ゴールデンスランバー』に至る直前の作品として見ると、物語に出てくる色々な要素が繋がっている感じも受け、その点も興味深い物語でした。結局最後の「アレ」をやりたいが為に「4人」という設定にしたのかな?という気もしましたが(笑) 続きを読む
投稿日:2014.09.15
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いちご同盟
三田誠広 / 集英社文庫
「生きろ」!
6
傑作。どこにも自分の居場所を見つける事が出来ないという思いから「死」という向こう岸への思いを募らせる主人公が、あるビデオ撮影を頼まれる事で2人の人間と係る事になる所から始まる「死」そのものの物語と、「…死」を見届ける事になる主人公が最後に「生」へと向かう事になる「再生」の物語に心が震えました。自分の年代という視点から読むと、物語に出てくる様々な「親」の立場にも色々と考えさせられる点がある物語でもあります。主人公の感情の揺れ動きが細やかに描写され、主人公に絡む2人それぞれとの関係も繊細且つ深いものがあり、素晴らしい余韻が残る物語でした。 続きを読む
投稿日:2015.05.06
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もう過去はいらない
ダニエル・フリードマン, 野口百合子 / 東京創元社
癖のある主人公と物語
5
『もう年はとれない』で大立ち回りをした後からの続きとなる「バック・シャッツ」シリーズ2作目です。前作で大けがをした関係(+加齢)の影響もあり、前作以上に「動き」が取れない主人公をカバーする為か、現在と…過去の事件を同時並行で描き、双方にかかわる人間(敵役)との物語を進めようとはしていますが、どちらの物語もなかなか動かない(これは前作にも感じましたが)為、少々物語としては弱い気がしました。主人公のキャラクターの強烈さと凶暴さへの感じ方も人それぞれ(私は許容範囲かな?)だと思いますので、万人にお勧めとはいかない作品で、作中の「人種」に関するエピソードも日本人としては理解が難しい点のように思います。主人公の息子の死の「謎」が未だ解明されない展開の為、必ずあるであろう「続編」を今から待ちたいと思います。 続きを読む
投稿日:2015.11.24
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時をかける少女
筒井康隆 / 角川文庫
全く色褪せない作品
5
超有名な表題作を含む3編のジュブナイル?SF短編集です。表題作は今更言わずもがなの「古典」ですが、この作品を読むと大林宣彦監督の映画作品(細田守監督のアニメ版等では無く)が如何に原作に忠実な「映像化」…作品であったかが改めて分かるような気がしました。他の2編はどちらかと言うとかなり「ブラック」な内容で「ジュブナイル」と呼ぶのは本当は適切では無いのかも知れませんが、どちらも少し「怪談」めいた内容が、やや古めの文体とも相まって面白く読めた作品でした。 続きを読む
投稿日:2014.07.21
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我が家の問題
奥田英朗 / 集英社文庫
心あたたまる作品
5
題名の通りに家庭で起きる色々な「問題」を題材にした短編集でした。前に書かれた『家日和』よりも題材が題材なだけに少しシビアに書かれた部分もありましたが、「問題」そのものが直接描かれる訳ではなく、それに関…わる人達の揺れ動く心の動きが丁寧に描かれていて、誰にでも共感できる内容になっていると思いました。話の落ち着く先がある種の「ホッと」した所に着地している点は『家日和』と共通している所かと思いますが、それぞれの作品の登場人物に対する作者の視線の優しさが読む者の気持ちもほっこりとさせる作品だと思います。 続きを読む
投稿日:2014.07.29
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ロスト・ケア
葉真中 顕 / 光文社文庫
現実にリンクした社会派ミステリーの良作
5
老人介護を主題にした社会派ミステリーと一言で言い表すのは簡単ですが、主題と物語のバランスが素晴らしく、読み応えがあり、一気の読了でした。登場人物の検察官の大友とその「旧友」佐久間との関係が主題、物語に…もう少しうまく絡んでいれば、という気がしないでもありませんが、無い物ねだりかもしれません。正直に言えば、今現在少々この主題に足を取られつつある我が身としてこの物語は全く他人事では無く、多分多くの人々にとってもそうであるであろうと思われるこの問題を見事に描写したこの作品を多くの人に読んで欲しいと思います。 続きを読む
投稿日:2016.05.17