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チョッピーさんのレビュー
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  • キケン

    キケン

    有川浩

    角川文庫

    全てに夢中で、一生懸命である事の素晴らしさ!

    ラーメンが無性に食べたくなる最高に罪な小説です。キラキラした「青春」の無条件に素晴らしいと思える瞬間が描かれた作品として、一生懸命に頑張る事の素晴らしさ、大切さを無条件に肯定してくれる物語として、この物語を読んでいる自分の背中を「ドン」と前に押してくれるような元気を沢山貰う事が出来た、素晴らしい作品でした。

    10
    投稿日: 2016.06.25
  • ゴーン・ガール 下

    ゴーン・ガール 下

    ギリアン・フリン,中谷友紀子

    小学館

    「不快」なだけに留まらない広がりを持った物語。

    下巻の冒頭で、上巻で気になっていた「食い違い」の部分が「タネ明かし」をされ、その事への驚きからの最後の結末に至るこの物語は、そこに至り、又その後にも続くであろう、夫ニックと妻エイミー2人のひたすら「内向き」で「虚無」な世界の物語であり、それは私達とは案外無縁な話でも無いのでは、と感じつつ読了しました。夫婦の関係だけでは無く、兄弟、親子、地縁といった様々な関係の切り口からこの作品は語られる事が可能な、間口の広い物語となっているようにも思われ、「不快」と感じる点も多々ありつつ、それ以外にも色々な感情を喚起させられた作品でした。

    7
    投稿日: 2016.06.24
  • ゴーン・ガール 上

    ゴーン・ガール 上

    ギリアン・フリン,中谷友紀子

    小学館

    実に「不快」、しかし読む手を止められない物語。

    この物語の主人公となる夫のニックの「独白」と、妻エイミーの「日記」が交互にそれぞれの視点で語られる中、妻エイミーの限りなく夫ニックが怪しいと思わせる「失踪」と、その事件の容疑が実際に夫ニックにかかる所までがゆったりとしたペースで語られる上巻となっています。妻エイミーの「日記」の内容とニックの「独白」の内容が合っていない部分が下巻への伏線であろうとは思いつつ、夫ニック、妻エイミー、2人それぞれが持つ人間としての「嫌らしさ」の描写がかなり「不快感」を伴うものとなっており、「イヤミス」と呼ばれているのも納得と思いつつ下巻へ進みます。

    7
    投稿日: 2016.06.24
  • 小さいおうち

    小さいおうち

    中島京子

    文春文庫

    昭和モダンの喪失とある「秘密」の物語

    戦前の東京を主な舞台に、平井家という家庭に女中として入った山形出身のタキという女性が、自身の過去を振り返る形で語る、まるで細い糸を使って丹念に作られた繊細な織物のような物語を堪能しました。「昭和モダン」に彩られた首都東京の今からは想像もつかない「豊か」な情景が、「事変」から「戦争」に至る過程でその姿を失っていく様の描写の見事さに胸打たれつつ、平行して語られる、はかなさをまとったある「秘密」の物語が現在と過去を結び、少しの「謎」を残して物語を閉じるその余韻にも心揺さぶられました。本当に素晴らしい作品でした。

    8
    投稿日: 2016.06.16
  • 植物図鑑【幻冬舎文庫版】

    植物図鑑【幻冬舎文庫版】

    有川浩

    幻冬舎文庫

    あり得ない!でも楽しい物語

    「それ絶対あり得ない!」という最初の設定さえ乗り越えてしまえば、有川さん流の「人間力高め」の登場人物と、この作品ではほぼ「食べる」事に特化された沢山の「植物」のトリビアで彩られる、彼と彼女の「ラブコメ」全開の物語があなたをお待ちしています、という作品でした。有川さんは最近は余りこういう作品は書かなくなってきているのかもしれませんが、今作は「自分の土俵」という盤石さが感じられ、安心して楽しく読める物語でした。樹のような人間がいればな~という女性の方は多いのではないでしょうか。道で拾うかどうかは別として(笑)

    7
    投稿日: 2016.06.09
  • ロスト・ケア

    ロスト・ケア

    葉真中 顕

    光文社文庫

    現実にリンクした社会派ミステリーの良作

    老人介護を主題にした社会派ミステリーと一言で言い表すのは簡単ですが、主題と物語のバランスが素晴らしく、読み応えがあり、一気の読了でした。登場人物の検察官の大友とその「旧友」佐久間との関係が主題、物語にもう少しうまく絡んでいれば、という気がしないでもありませんが、無い物ねだりかもしれません。正直に言えば、今現在少々この主題に足を取られつつある我が身としてこの物語は全く他人事では無く、多分多くの人々にとってもそうであるであろうと思われるこの問題を見事に描写したこの作品を多くの人に読んで欲しいと思います。

    5
    投稿日: 2016.05.17
  • 小野寺の弟・小野寺の姉

    小野寺の弟・小野寺の姉

    西田征史

    幻冬舎文庫

    相手を思いやる姉弟の物語

    共に「中年」(失礼)になりながら、2人暮らしを続ける「姉弟」の些細で平凡、それでいながらも、何故か愛おしさを感じさせる「日常」を描いた作品でした。自分よりも相手に幸せになって欲しいと考える2人の思いがベースになっている為か、非常に心地よく読める物語でした。後半のエピソードには少し涙腺が刺激されていまいましたが、ほんわかしたい気分になりたい時にお勧めしたい作品です。

    5
    投稿日: 2016.05.17
  • もう過去はいらない

    もう過去はいらない

    ダニエル・フリードマン,野口百合子

    東京創元社

    癖のある主人公と物語

    『もう年はとれない』で大立ち回りをした後からの続きとなる「バック・シャッツ」シリーズ2作目です。前作で大けがをした関係(+加齢)の影響もあり、前作以上に「動き」が取れない主人公をカバーする為か、現在と過去の事件を同時並行で描き、双方にかかわる人間(敵役)との物語を進めようとはしていますが、どちらの物語もなかなか動かない(これは前作にも感じましたが)為、少々物語としては弱い気がしました。主人公のキャラクターの強烈さと凶暴さへの感じ方も人それぞれ(私は許容範囲かな?)だと思いますので、万人にお勧めとはいかない作品で、作中の「人種」に関するエピソードも日本人としては理解が難しい点のように思います。主人公の息子の死の「謎」が未だ解明されない展開の為、必ずあるであろう「続編」を今から待ちたいと思います。

    5
    投稿日: 2015.11.24
  • シャーロック・ホームズ 絹の家

    シャーロック・ホームズ 絹の家

    アンソニー・ホロヴィッツ,駒月雅子

    角川文庫

    良質なシャーロック・ホームズのパスティーシュ物。

    コナン・ドイル財団公認の正「続編」という肩書きはともかく、シャーロック・ホームズのパスティーシュ物として、あるいは良質なミステリーとして面白く読了しました。発端となる依頼人の登場から始まった物語が途中で横滑りしたかと思いつつ、読み進めた先に現れる奇怪な事件と、発端となった事件の真相も、それまでにちりばめられた伏線がすべて回収された形で解決されるという、語り口のうまさが光る作品でした。事件そのものは正直「現代」向けとも思え、読んだ後で考えれば色々引っかかる部分も多い気がしますが、満足度は高い作品でした。シャーロック・ホームズが好きな方、シャーロック・ホームズのパスティーシュ物が好きな方、あるいは全くシャーロック・ホームズに関心の無い方にも一読をお勧めしたいと思います。

    8
    投稿日: 2015.11.24
  • 髑髏の檻

    髑髏の檻

    ジャック・カーリイ,三角和代・訳

    文春文庫

    ジェレミー!

    そこで登場するか!ジェレミー!というこのシリーズを読んでいる人間としては嬉しいもう一人の主人公の帰還に大笑い(失礼)しつつ、のカーソン・ライダー最新作です。本来の勤務地からは離れてとなる為、同僚ハリーとの掛け合いは楽しめませんでしたが、今まで同様(恋愛も)のライダーのセリフの面白さと、このシリーズの事件の変わらない猟奇的な展開にハラハラしながら今作も面白く読了しました。前作程の衝撃的な展開はありませんが、ジェレミーの役割は1、2作目辺りとはかなり違ってきているかもしれません。今後も期待のシリーズです。

    4
    投稿日: 2015.11.17