
動物園の鳥 ひきこもり探偵シリーズ3
坂木司
創元推理文庫
不覚にも感動してしまった…。うぅ~オススメです!
最初はタイトルの面白さだけで興味本位に読み始めた本でしたが、予想外に心揺さぶられました。 多分、この物語の中にみなさん多かれ少なかれ自分自身を投影してしまうのではないでしょうか。 それは過去の自分だったり、現在の自分だったり、そして未来にこうありたいという気持ちを持つんじゃないかな。青臭いとか感傷的とかそういう言葉で一蹴も出来てしまうけど、それをしないで自問自答しながら読むことの何が悪い!と開き直って読むのも悪くないですよ。 私はどちらかというとひきこもり体質で、休みでも家から1歩も出ずにひたすら本を読んだり寝たりして過ごしていますが、坂木くんのようにさりげなく外へ連れ出してくれる友人がいます。 「うぅぅ、出たくない…。」とまるで鳥井くんのように重い腰をあげて居心地の良い我が城から渋々出るのですが、あらためて友人への感謝の気持ちが沸き上がりました。そして、私は1度も坂木くんにはなっていないということもわかりました。情けないことに。 著者はあとがきで鳥井くんと坂木くんの物語は『ひとまず 完』と書いています。うん、これで終わりが一番良い。 シリーズ3巻通して、人間の本質とか核心を柔らかな文章で突かれました。効果絶大でしたね、私には。 胸を張ってオススメできる本です。迷いなく★5で!
5投稿日: 2016.09.13
仔羊の巣 ひきこもり探偵シリーズ2
坂木司
創元推理文庫
優しさに包まれたい人にオススメ
ひきこもり探偵Part2です。 読了後すぐにレビューを書いています。 前回にも増して、坂木くんの鳥井くん愛、鳥井くんの坂木くん愛は深まっています。 でも坂木くんの持ち込む新たな珍事件により、ますます二人を取り巻く人の輪が広がっていきます。 今回は高校生の仲間も加わって、賑やかしいことこの上なし。親との確執、憧れのお姉さんとの別れ、様々なドラマがあります。 自分の将来への不安は子供になっても大人になっても、それこそ老人になっても消えることがないのだなぁ…。人生はなんと面倒くさいものよ…。としみじみしてしまいました。本作は誰の身にも何度か現れる人生の岐路について考えさせられる作品でありました。 しかし、著者の坂木司さん、ものすごく優しい人なんでしょうね。文章から人柄が滲み出てくる本を久々に読んだ気がします。 あと、なかなか心の内を見せない鳥井くんが夜空に向かって笑うシーンは、ハイジの『クララが立った!』という気になりましたね。どうか、その笑顔がいつまでも続きますように。 さて、次作はとうとう完結編です。ひきこもり、治るかな?またレビューします!
5投稿日: 2016.09.13
青空の卵 ひきこもり探偵シリーズ1
坂木司
創元推理文庫
優しさ溢れるミステリー
著者と同じ名前の登場人物が出てくるのですね。辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』を思い出しました。(これ、絶品です!) で、ひきこもり探偵って面白い設定ですね。安楽椅子探偵モノも読んだことありますが、こちらは四肢麻痺でやむなくひきこもり。←(『ボーンコレクター』です。)対してこちらのひきこもり鳥井くんは、限られた範囲を親友の坂井くんと一緒なら外出可能です。 とある夏から翌年の初夏までの5篇に分かれており、それぞれ話としては完結しているのですが、前編で知り合った人物が次編にも登場したりするので、少しずつ繋がっています。 おせっかいにも程がある坂井くんが、鳥井くんのところに珍事件を持ち込んで、ズバズバ鳥井くんが解決していくのですが、鳥井くんの坂井くん以外の人に対する傍若無人な物言いも作品を面白くするスパイスのように感じました。 何だか優しさとか思いやりが溢れていて、ジーン…としてしまうことしばしば。 なんだか殺人事件が起こらないミステリーものって、平和~。一応シリーズ全買いしたので、次作またレビューします。
5投稿日: 2016.09.12
赤いベベ着せよ…
今邑彩
角川ホラー文庫
怖い要素満点なのにナゼ…。
タイトル…。怖そうですよね。これぞ、ホラーって感じ。ボリュームは私のスマホで473ページ。しかも廃寺に子供たち、変な童謡歌って遊んでるし、不気味な予感~^_^ で、レビューなんですけど…。非常に残念なことに怖くなかったんですぅ(泣) いや、こんなに怖い要素満点なのに、何でなのかしら…。とじっくり考えてみました。 あらすじは書籍説明を見ていただいて、と。 幼なじみの子供が、次々と殺されていって、鬼は誰かっちゅ~ことなんですけど、まぁ意外性はありました。まさかのあの人って感じで。 でもね、なんかモヤモヤするな~と思ったら、事の始まりの20年前の鬼が○○なんです。ネタバレになるので伏せ字にしました。 そこ!肝心じゃね?と私の気持ちが置き去りに。 子供を殺された親の気持ち、やり場がない悲しみは伝わってきましたが、それにしてもちょっと結末は強引でしたね。 まさに踏んだり蹴ったりとはこのことね…。とやるせない気持ちになりました。誰が踏んだり蹴ったりなのか興味ある方はご一読を。そして少しでも怖がれますように( ̄人 ̄)
6投稿日: 2016.09.09
狭小邸宅
新庄耕
集英社文庫
喜怒哀楽ならぬ、怒哀喜哀?面白さがギュッと詰まってます!
私のスマホで289ページ。でも内容はそれ以上!密度の濃い小説を読んだなぁと思います。 いま、ドラマで『家売るオンナ』をやっていて、それがとても面白いので、こちらの本を読むことにしました。私は一軒家に住んだことがないのですが、学生時代住宅展示場でバイトしてたことがあります。 そこで営業マンて大変だなぁと思っていたのですが、本作はその斜め上行く過酷さ。社長、部長はほとんどヤ○ザです。1日で胃に穴が空いちゃうよ…。 しかし、高学歴でこれという希望もなく不動産屋に入社した松尾。大学時代の仲間は大企業に就職していたり、院に進んだり。怒鳴られ蹴られ家を売れないと人間扱いされない自分の現状と比較して、松尾の心はやさぐれていきます。なにかというと出身大学を引き合いに出されてネチネチ言われるし。怖すぎる。 でも、松尾がお荷物の狭小住宅の販売に成功した時は、私も一緒に「うおっしゃぁぁ!」という気持ちになりました。でもこれは初めの一歩。これから松尾はここにいる限り家を売り続けなければなりません。 時々街中で、「この家薄っ。狭っ」という家をたまに見かけます。なんでこんな家に住むんだろう…。と不思議でしたが、その影には不動産屋さんのたゆまぬ努力があったのかもしれませんね。 自分は一生流浪の民ですが、今度から街中の狭小住宅に敏感になってしまいそうです。 松尾、エース営業マンになって~!と思いながら読了。この本、オススメです。
4投稿日: 2016.09.06
川を覆う闇
桐生祐狩
角川ホラー文庫
グロいものがお好きな方はどうぞ
私のスマホで591ページ。軽く1日でいけるな、と思ったのですが、何度もグロいシーンで中断。 簡単に説明すると、世の中潔癖が過ぎないか。不浄のものを排他しすぎないか。そのツケは大きいですよ。 そんなところでしょうか。 確かに私たちを取り巻く環境は、清潔至上主義に傾きつつあります。巷には抗菌グッズが溢れ、片付けられない人は肩身の狭い思いをし、ゴミ屋敷は近隣住民から非難の放火を浴び、ホームレスは時にリンチの対象になる。果たしてそれって正しいの?と考えるきっかけにはなりました。 抗菌グッズだって使えば、ゴミになりますし、それが環境汚染の一部になっているわけですから。 でもな~、私には荒唐無稽過ぎたかな。延々と続くグロいシーンに辟易しちゃって。 過ぎたるは尚、むにゃむにゃ…でした。 しかもラストシーン、あんまりだ。 人の命を何だと思ってるんだ? ごめんなさい。個人的に合わなかったみたいです。 激辛の★1で…。 ちなみにAma○onでは高評価だったことを申し添えておきマス。
5投稿日: 2016.09.06
多恵子ガール
氷室冴子
集英社コバルト文庫
思えば遠くへ来たもんだ
タイトル…武田鉄矢ではありません。古くてゴメンね。 『なぎさボーイ』と対になるこの作品。前作はなぎさの視点で、本作は多恵子の視点で語られています。 30年以上前は多恵子の気持ちに共感出来るところがたくさんあって、「わかるわ~」と思いながら読んでいた記憶があるのですが、10年一昔を3回ほど繰り返した今、「うわ~、全く共感できない~」ということがわかったのは、驚きであり、新しい発見でした。 中高生なんて、恋愛至上主義というか、恋に恋してばかりの未熟な生き物。小さな世界が全てで恋の歌を聴いてはもだもだしていたものです。 本作のテーマは「己の嫉妬の気持ちとどう折り合いをつけるか」これにつきます。ヤキモチを他人に気取られるほど格好悪いことはないわけで、しかも相手にそれを知られるなんて憤死ものです。 でも…もう嫉妬の気持ち、忘れてしまったな~。嫉妬出来るくらい好きになれるっていいな~と思わず遠い目をしてしまいました。 今の子どもたちは早熟だから、この本を読んでも響かないかもしれないけど、当時はこの本に乙女たちは一喜一憂してたのですよ。同じように感じてくれる子たちがいたら、涙出るほど嬉しいな。 こちらも私の独断と偏見、問答無用の★5で!
8投稿日: 2016.09.04
なぎさボーイ
氷室冴子
集英社コバルト文庫
中学時代にタイムスリップ
検索して見つけた時に、ホントに震えました。当時中学生だった私が夢中になって何度も何度も読み返して憧れた本。『なぎさボーイ』と30年以上経って再会出来るとは…。当時、クラスの女子の間ではコバルト文庫が大流行で、氷室冴子先生、新井素子先生が大人気でした。 当時はAma○onや○天ブックスなどない時代。小さな本屋さんに行って背表紙や表紙をためつすがめつ見つめ、少ないお小遣いからこれぞ!という本を探し求めていたっけ。私は今でもこの本を手にした時の光景を覚えています。 主人公なぎさくんは、小さな背と可愛い顔に似合わず男気溢れる中学生。彼には男前の親友と気弱な男友達とちょっと気になるお節介な女の子とその女の子の親友という仲間がおり、同じ高校を目指しています。 彼は不器用で、好きな女の子にストレートに思いを伝えることなど出来ません。その意地っ張りの性格もあって、自分や気になる彼女に言い寄ってくる人間に振り回されることになるのですが…。 私にも当時気になる幼なじみの男の子がいて、好きなどと言えない気持ちをこのストーリーに重ね合わせていました。私は転校してしまったので、懐かしくて悲しくて、必死でなぎさくんに彼の姿を重ね合わせていたのかなーと思います。彼も小さくて童顔で男気溢れる意地っ張りの男の子でした。 大人になって引っ越して多分本は処分してしまったのでしょう。でも、また再会してしまいました。買わないわけにはいきません。私は大人になりすぎて、読み返してみても当時と同じように感動はしませんでしたが、これは独断と偏見で★5です。誰が何と言おうとも(笑) ちなみに『多恵子ガール』と対になっていますので、必ず両方読んでください。
6投稿日: 2016.09.04
襲名犯
竹吉優輔
講談社文庫
もっと怖さを求ム…。
襲名犯というタイトルからしてもっと別の内容を想像していました。 連続殺人鬼の死刑執行から14年後、模倣犯による殺人が始まり、当時ブージャムと呼ばれていた殺人鬼を名乗る犯人の血塗りのメッセージが現場に…。 これだけ読むと結構ゾクゾクする内容なのですが、「あれ~?ちっとも怖くない~。おかしいな…。」 なんでかな?と思ったら、連続殺人犯だった人が神格化されるような人物ではないからなのかな~と。 それに、襲名犯が勝手に自分で襲名しちゃってるところに違和感があったかな~。イカれてて痛い…。 また、事件の中心人物の南條仁が荒波にもまれてクルクル回っている1枚の木の葉のようで本当に気の毒でした。あと、主役らしくないんだよな~。弱々しくて頼りなげで。ウジウジ悩んでばかりいて、それに付き合うのに疲れてしまいました。 襲名犯はミスリードされるように伏線が張られていましたが、ちょっとお粗末だったかな。見破れちゃったし。ごめんなさい、ちょっと辛口★2で…。
6投稿日: 2016.09.02
きょうは会社休みます。 11
藤村真理
ココハナ
田之倉くんモテモテですね…。
一回り年下の田之倉くんと婚約した花笑さん。お互いを思いやる姿がなんとも言えず微笑ましいです。 でも婚約しても田之倉くんが優しくしてくれても年上であるという引け目が花笑さんにはつきまとってしまうんですね…。分かるわ~とか言ってみたりして(スミマセン)。ウソをついてしまいました。経験ないのに。 藤村真理さんの繊細なタッチの画風にはいつもホワ~っと癒されてしまいます。 今回は田之倉くんの同窓会で、過去に田之倉くんを好きだった同級生がチラホラ…。モテる男、田之倉くん自身は自覚がないような。あぁ、自覚がないからモテるのか!花笑さん大変だなぁ。 でも花笑さんすぐ泣いちゃうんですよね…。あ、泣いた。また泣いた。あーあーまた泣いてる。と、どんだけ泣くんじゃい!と思ってしまう意地悪な私。 どうか無事に結婚して欲しいのですけど、何だかまた一波乱ありそうな予感がミシミシギシギシです。 この話どこがゴールなのかしら…。そして花笑さんはまた泣いてしまうのかしら。 女の涙に「…。」となってしまったので、★ひとつ削りました。 でも気になる終わりかたしますよ~。続き、楽しみです。
3投稿日: 2016.08.25
