クラフト★ビア★マンさんのレビュー
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進撃の巨人(15)
諫山創 / 別冊少年マガジン
今までになかった表紙の意味するものとは
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「進撃」の表紙デザインは、
1)おぞましい巨人+小さい人間
か
2)調査兵団のメンバー
のパターンしかなかったのだが(人と人の戦いが中心となる13、14巻は②となっていて、内容とリンクしている)、
本…15巻はそのどちらでもない、斬新なもの。
初めて見たとき何?書きかけの仮のやつ?と思ったが違った。
真っ白な背景に、何か知りたいような、知りたくなかったような衝撃的な事実に気づかされて呆然としているような、そんな表情のエレンだけが書かれている。
本刊を全部読むとその意味が分かります。
とうとう来たな。
(『「あの場所」に行かないでこの展開か!』と叫んでしまった・・・・・・・) 続きを読む投稿日:2014.12.10
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トマ・ピケティ『21世紀の資本論』を30分で理解する! 週刊東洋経済eビジネス新書No.76
週刊東洋経済編集部 / 東洋経済新報社
資本主義は富める者のためにあるのか?
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最近メディアで耳にする機会の多いトマ・ピケティ。分厚い経済書はなかなか読みきれないので要点をまとめたこちらに手を出してみた。
要点は3つ。
1.資本収益率は経済成長率を上回っている
2.所得と富の不…平等は21世紀を通じてさらに拡大する
3.格差を食い止めるにはグローバルな累進課税が必要
1は要は働いて稼ぐ給与よりも、資産が生み出す利益の方が大きい、つまり、元々資産を持っている資産家はより富んでいき、もたない給与取得者は追いつくことはない、ということ。
このピケティ氏が話題なのは、それを過去200年の世界中の記録から実証してしまったことにある。資本主義が前提にしてきた「頑張れば金持ちになれる」という希望を覆してしまった。「金持ちはより金持ちになり労働者は追い付けない」というわけだ。このことは、特にアメリカンドリームの国で大きな驚きを持って受け止められ、飛ぶような勢いで「21世紀の資本論」は売れているらしい。
ピケティ氏は、貧富の差を生み出す資本収益率と経済成長率の乖離を解決するには、資本への課税率を上げるべきとしている。とりわけ、3の論点で、グローバル企業の租税回避地を使った納税逃れに対して、課税をすべきだとしている。が、それは現実的には機能できる仕組みはまだ確立されておらず、理論の範疇とのこと。
基本的な話は上記の通りだが、これを受けて識者が解説、反論、展開させた論を唱える構成。個人的には池田信夫氏の論考は少し難しく感じた。
全体としては、かいつまんで話題の書の要点だけ押さえられるよいまとめだと感じた。30分ではちょっと手に余ったのは久しぶりに経済書を読んだからかもしれない。 続きを読む投稿日:2015.02.09
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デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
デービッドアトキンソン / 東洋経済新報社
相手の立場に立って考えよう
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観光産業を振興することが日本のGDP縮小への一番の対策であるとする本作。
GDPは人口の量にほぼ依存しており、避けられない少子化が既に起こっていること、そして移民政策は日本人の感情的にも経験的にも受…け入れがたく(ヨーロッパ諸国を見ていると副作用も大きい)ことからGDPが下がるのは必然。そこで提唱されているのが「短期移民」、つまり観光客だ。
マクロ経済による観光産業の規模、他国との比較による日本のいかしきれていないポテンシャルを、理性的にロジカルに説明していく。観光地としての4大要素は「気候」「自然」「文化」「食事」で、日本は全て備える稀有な国なのに、安全や便利など的外れなアピールばかりしていると。
全体を通して感じたのは日本人は他者の視線になってものを考える習慣が乏しいということだ。他者にわかってもらうことが当たり前だという感覚が共通してあるような。そこをイギリス人で京都に長年住む著者が指摘してくれている。面白いのは、思いやりを大事にする日本人だからこそ、むしろ相手の立場になって考える客観性に乏しいというパラドックス。一見矛盾して見えるが、本質をついている。
その意味で、観光論というだけでなく、普段の仕事でも相手の立場に立ってものを考え、相手の欲しいものが提供できているのか、自分に置き換えて読むことができた。
参考になる点の多い良著。 続きを読む投稿日:2016.06.01
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海街diary 7 あの日の青空(7)
吉田秋生 / 月刊flowers
相変わらず、丁寧に紡がれる良質なものがたり
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昨年の映画化によって知名度が上がったことによる悪い影響など微塵も感じさせず、丁寧に、ゆっくりと紡がれるものがたりにじっくりと向き合う喜び。
吉田秋生さんの作品は女性作家による女性向けなテイストが強い(…BANANA FISHはちょっと苦手)が、本作はそれを気にさせない普遍性があって、男性の自分でも人生の機微を味わせてもらってます。
4姉妹の恋愛も少しずつ前に向かっていて、形になってきた感じ。
と、思ったところで、恋愛面で一番取り上げられていなかった(一番恋愛キャラじゃないし)3女の様子が・・・。 続きを読む投稿日:2016.02.08
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岡崎に捧ぐ(1)
山本さほ / ビッグスペリオール
糸井重里が認めた新時代の日常系マンガ
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育児放棄に無職の父、いつもワインを飲んでいる母、すぐ「殺す」と言って暴れる妹と、よく考えるとなかなか悲惨な家庭環境にある「岡崎さん」と作者の友情を、全然重くないタッチで描いた日常系マンガ。
たしかに…「ちびまる子ちゃん」に似ているところがあるけど、もうちょっとモチーフは深刻。なのに読み口が軽くて楽しく読めてしまう。
他にはない不思議な感覚で、古いような雰囲気なのに、独特の新しさがある。
ちびまる子ちゃんと一番違うのは世代で、作者の小学生時代の風俗が濃密にリアルに描かれている。
携帯型ゲームに夢中になったこの空気感は、それを味わった世代でないと書けないリアリティにあふれていて、思わずほくそ笑んでしまう。
もとはwebマンガで、twitterで糸井重里さんが褒めたのがきっかけで出版までこぎつけた珍しいタイプの作品。
個人的にはまだまだ売れて、長期間続くアニメとかになってほしいと思っている、良質の漫画です。
ずっしりもやっとした終わり方で、なんだか考えさせられてしまう回があるのが好きです。
たぶん、子供が読むのと、大人が読むので感想が大きく異なるでしょう。
とにかくおすすめです。 続きを読む投稿日:2015.12.16
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漂流する巨船 ソニー 週刊東洋経済eビジネス新書No.101
週刊東洋経済編集部 / 東洋経済新報社
ソニーの各時代の経営者たちの声(盛田さんはいない)
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アプリのおすすめに表示されて衝動買い。
ソニーの各時代の経営者たちのインタビューがバラバラと掲載されている。
井深、大賀、出井の旧世代の経営者の、歴史を感じるインタビューに加え、
現在の経営層の平井…・吉田・十時の世代まで。
(盛田さんとストリンガーの記事はない)
記事の順番がバラバラしていて恣意的。なんでこの並びなのかはよくわからなかった。
出井さんの時代以降は厳しめの記事が並んでいる印象なのは、そういう風にソニーが見られているということなんだろうな。
不思議なのは、出井さんの記事の「デジタル・ドリーム・キッズ」という言葉には時代を感じるが、
井深さんの「アイデアやヒントはいくらでも転がっている。そのアイデアを具体的にしていくことのほうがよっぽど重要」という言葉には
まるで古さを感じないこと。
昔から本質は変わらないのだなぁと思った。
改めてソニーという会社がどんな道のりを歩んできたのか、
今どういう局面にいるのかをざざっと読みたい方におすすめ。 続きを読む投稿日:2015.03.23