緑を見ようさんのレビュー
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40
このユーザーのレビュー
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日の名残り
カズオ・イシグロ, 土屋政雄 / 早川書房
読んでよかった
6
映画は見ていない。しかし、読んでいる最中の主人公の執事と女中頭のイメージは、映画の二人。この映画は見ていなくても、他の映画で見た二人がピッタリはまる。イギリスの執事とは何か。どうあったのか。才気煥発で…仕事もそつない女中頭。激情をつい皮肉や無愛想や無視という態度に変えてしまう女性から慕われていることをそこはかと察しながらも職務遂行にプライオリティを置く執事。人生の夕暮れ時に、そのような生き方しかできなかった「執事」を思ってくれていたことをはっきり知る。自分の雇い主への尊敬と品格ある執事という職務へのプライドの結果、今後の人生はひとりであることを選びとった。その過程が丁寧に納得できるようつづられている。1973年~74年イギリスに1年滞在。執事がいるような方とはお知り合いにならなかったが「さもありなん」と思われる人間関係。土屋氏の翻訳も読みやすかった。 続きを読む
投稿日:2014.10.22
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逃げるは恥だが役に立つ(8)
海野つなみ / Kiss
テレビドラマなりましたね
5
俳優の皆様が演じるテレビ放映見ました。ドラマはドラマで面白かった。
沼田さんはあの役者さんがやるか、そうきたかって感じ。
さて、今巻の表紙は風見さんです。前巻で百合さんと風見さんが、というところで…終わっていて、
その後どうなるかと思いましたが、やっぱり、きちんと言葉にするんですね。
風見さん「けっこう、言葉の端々に入れていってたんですけど、やっぱりはっきりと言わないと、一生伝わらないんだな」と、
百合さんに「僕が絶対あなたに欲情しないと思っているでしょう」と。
百合さん、そう思っていたんだよね。そして。
みくりさんは、商店街の青空市を手伝うことになり、その才能を発揮。新たな就職先が見つかるかも。
というわけで、作者の海野つなみさんの後書きによると、「いよいよ最終コーナーに入ってきました。
それぞれの考えて出した結論が、どうか皆様のお役に立ちますように」とのこと。
私的にはこうなるといいなあというのがあるが、どうなるのかな。
続きを読む投稿日:2016.10.15
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おろしや国酔夢譚
井上靖 / 文春文庫
読ませます‼
4
読ませます‼ さまざまな資料を駆使してここまで読ませるストーリーに仕上げているとは、さすが井上靖氏。
以前にジョン万次郎さんを読んで感動したので、ロシアに漂流していった大黒屋光太夫さんのも読みたいと…思って購入しました。
ジョン万次郎さんも大黒屋光太夫さんも、彼と一緒に帰国できた磯吉さんも、実に壮健、実に聡明、実に誠実なニッポン人でした。
幕府は彼らを遇するに当たって、彼らを十分に生かすことができなかった。当時の日本の体制、日本の能力の限界であったと思いました。
どちらの本もスタイルは違いますがひょんなことから読むことができてよかったと思います。
続きを読む投稿日:2015.04.01
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逃げるは恥だが役に立つ(7)
海野つなみ / Kiss
みくりさん平匡さん別居。百合さん風見さん心通う。
3
平匡さんは転職する。それに伴って引っ越しを計画。平匡さんから、住民票を移すのを機に「未届けの妻」でなく「籍をいれませんか」。みくりさんは気持ちに正直な人だから、整理がつかないまま流されての婚姻届けはし…たくない。平匡さんと期限を区切って一か月の別居に入り、百合さんのマンションに居候することに。平匡さんとみくりさんは、別々に住み、週末は一緒という恋人生活を送ることになる。ほんと、こういうところが、このコミックの良さ。とことん悩んでください。話し合ってください。言語化してください。いい解決策を見出してください。
一方、独身で子供もいないが楽しく暮らしていると自負している叔母、百合さんだが、家事上手な姪に全部やってもらってもっと快適を発見。「これもいいかも」と。みくりさんは、「危ない危ない」。この快適さにはやっぱりはまりたくない。
百合さんは、「結婚しないと子供がいないと不幸っていう強迫観念から若い女の子たちを救ってあげたい」と思っていて、それを風見さんに言うと、「そんなこと言わないで」という反応が返ってくる。それを聞いた百合さんから制御不能の感情と涙があふれてくる。あるよね、あるよね、こういうこと。あるよね。まったく意図しない、思いもかけない感情の高ぶりに揺すられること。身体は頭より正直だってことだと思う。自分のコントロール不能だった感情が思い出された。
さて、二組のこの後はいかに? 続きを読む投稿日:2016.07.18
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日本人の知らないアフリカの真実31【要約版】
ボブ・ラントヘール / BUYMA Books
要約版じゃなく
3
要約版だからか、ところどころ、つながりがおかしかったり、日本語としてあれ?というところがあった。フルに翻訳してある版から単に抜き取っただけの日本語かなあと、フル版を探すもない。原文ならあるかとRead…er Storeを検索したがない。でも、内容をもっと知りたい。こういうときはkindle。ありました‼ 英語もすごく平易。詳しく知りたい内容にたどり着いた。生活者の目から見たアフリカ。日本人とは異なる着眼点。面白く読んでいる最中です。 続きを読む
投稿日:2016.02.26
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悪魔の飽食 第三部
森村誠一 / 角川文庫
日本人として
3
大東亜戦争のことで、知っておかなくてはならない事実のひとつだろうと思います。大学の卒論を、昭和軍国主義時代の初等教育について書いた。たくさん読んだ関連文献で、731部隊のおぞましい人体実験のことを知る…ことになった。が、きちんと向き合って読んだのは今回が初めて。わざわざ第三部から読みはじめた。三部作のうち、第一部、二部は加害者側の視点から。なぜ後ろから読んだかという理由が二つある。第三部は一部、二部を書いた後、初めて中国を訪問し、現地の人たちの案内を得て、中国側の視点も入れて書いたとのこと、これが一点。前著での写真誤用問題に関する説明が掲載されている、これが二点目。戦争だったとはいえ、過去のおぞましすぎる行為の行われた場所に案内をしてくれ、歴史に残さねばという著者への協力を惜しまない中国の人たちがいたということを知らねば、加害者側の孫か曾孫にあたる世代の人間として怖くて読み進められないだろうと思った。当初、悪魔たちの飽食の様子が、「赤旗」に掲載されたということで、写真誤用問題が出たら、共産党に対する誹謗中傷に問題がすり替えられたなどという話など、ああ、やっぱりと思うようなこと多々あった。これから、既にダウンロードしてある一部、二部と読んでいく予定です。 続きを読む
投稿日:2015.09.01