
罪と罰 2
ドストエフスキー,亀山郁夫
光文社古典新訳文庫
ラスコーリニコフの殺人思想とは。
第二巻になると、いろいろ、佳境です。 第一巻では、ラスコーリニコフの金貸し老女殺害の動機はちょっと掴みかねました。 ラスコーリニコフの思想も理解できるか否か、というよりも ラスコーリニコフの過剰な精神ならあるかも……と思ってしまいます。 しかし、登場人物たちが、想像の斜め上を大きくうわまわって ドラマチックに激情のままにわめき、激情のままに突っ走るので 第二巻もあっという間に読み終えてしまいました。 ドストエフスキーって、とにかく重くて、いろんな意味で 「偉い」と思っていましたが、ちょっと違いました。 ただ、本当にスゴイ小説だと思います。こんな面白い小説を読めるって幸せです。
1投稿日: 2017.03.06
罪と罰 1
ドストエフスキー,亀山郁夫
光文社古典新訳文庫
登場人物たちが、アツすぎる。
タイトルもインパクトあるし、 とにかく「世界文学、読んだ!」という気持ちになるであろうことを期待して手にとりました。 これ、すごい面白いんですけど!!!! ということに、驚いてしまいました。そして読みやすい。 おばあさんを殺すか否かで悩む話、 大儀のために人殺しをしてもいいのか?そんなテーマを思い描いていましたが、 実際読んでいるとちょっと違うような……。 そして出てくる人物たちが、超絶情熱的で、すごくよくしゃべります。 どこまで正気なのかよくわかりませんが、圧倒的なパワーにひきつけられて、 あっという間に読み終えてしまいました。
1投稿日: 2017.03.06
クヌルプ(新潮文庫)
ヘルマン・ヘッセ,高橋健二
新潮文庫
漂白の魂、とは。
気ままな旅を続け、明るく朗らかに人々の間を渡り歩くクヌルプ。 そこには人生の軽やかさと美しさがあり。 そして最後の神との問答に、とても感動しました。 10代のころ憧れた「生きる」ということ。そして「自由」。 この作品にはそれが描かれていました。 今も、ヘッセで何が好きか、と問われると 必ずクヌルプを挙げます。が
1投稿日: 2017.03.06
みずうみ(新潮文庫)
シュトルム,高橋義孝
新潮文庫
昔、とても好きでした。今は、愛おしい。
10代のころ「ずっと一人の人を好き」という物語に憧れて読みました。 少し散文的で、昔はそんなところに「それっぽさ」を感じて、やっぱり憧れました。 大人になって、それなりに年を重ねて改めて読むとそこには いろんな懐かしさや愛おしさがありました。 年を重ね、いろんな思い出が去っていく中で 時の流れを美しいと思う。そんな気持ちにさせてくれます。
0投稿日: 2017.03.06
カンタヴィルの幽霊/スフィンクス
ワイルド,南條竹則
光文社古典新訳文庫
オスカー・ワイルドの新たな一面を知ることができます。
ワイルドというと、『ドリアン・グレイ』から 耽美な、退廃的、といったイメージがありますが、 ここにおさめられている短編はそういったイメージとは 異なったワイルドの面がみられます。 「お話」の面白さ、巧さ、ウィット、作家としての堅実さ、というようなものも感じました。 そして何より、ワイルドと親友だったという女性作家エイダの 回想録は、とても貴重です。 ワイルドを匿い、出獄したワイルドを迎えにいったという彼女による 「ワイルド像」は意外でしたが、ワイルドの人となりを知ることができてとてもよかったです。 オスカー・ワイルドの新たな一面を知ることができる一冊です。
1投稿日: 2017.03.06
熊と踊れ 上
アンデシュ・ルースルンド,ステファン・トゥンベリ,ヘレンハルメ美穂,羽根由
ハヤカワ・ミステリ文庫
「このミステリーがすごい!2017年版」海外編第1位の凄み
スウェーデンを震撼させた現実の事件をモデルに書かれたという北欧ミステリー。 北欧ミステリーらしい力強い筆致、DV、そして暴力の連鎖……。 「制裁」を読んで、心理描写のうまさ、そして巧みな構成に驚かされたのですが、 こちらも劣らない、いや、もしかしたらそれ以上なのでは……と、 実際、ぐんぐんひきこまれて、読むのを止められません。 北欧ミステリーの骨太な力強さ、そして社会への洞察。 それらを見事に体現した傑作だと思います。 下巻が読みたくてうずうずしてます。 決して明るい、楽しい世界ではないけれども 読みはじめたら、本当にとまらないです。
4投稿日: 2017.03.02
声を聴かせて
朝比奈あすか
光文社文庫
読み継がれてほしい……そう願ってしまう小説。
穏やかで柔らかな文章で、するする読めてしまいます。 静かなのだけれども、その底にある悲しみがどうしようもなくあって、 ひたすら切ないです。 でもその悲しみをこんな風に書けるなんて、と。 終盤、電車で読んでいたにもかかわらず、涙がとまりませんでした。 切なさと優しさで心がいっぱいになりました。 いわゆるミステリーの衝撃的な人気ジャンルとは異なるものですが、 こういう小説こそ、読み継がれていってほしい、そう思いました。
4投稿日: 2017.03.02
制裁
アンデシュ・ルースルンド,ベリエ・ヘルストレム,ヘレンハルメ美穂
ハヤカワ・ミステリ文庫
傑作です。衝撃も、感動も。そして深い思考を要求される。
『熊と踊れ』の著者のデヴュー作の新訳ということで……、 文字どおり「イッキヨミ」でした。今年読んだ本の中で一番の読み応えです。 幼女ばかりを襲う殺人鬼。 その幼女の父親がおこした行動……! 著者はテレビ局に勤務するジャーナリストと刑務所での服役経験のある男性、二人による共著。 著者たちの議論を下敷きにしているということで、 司法制度や刑務所の問題をえぐりだす社会派小説。 書き出しの女児暴行殺害犯から 娘を失った親の苦しみ。そして暴力の連鎖。 他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら……。 けれど、人の生き死にを決める権利を誰にもないはず。 決して答えはでることはないのだろう問題を投げかけられます。 テーマは確かに重いのですが、この社会で生きていくうえで誰もが考えなくてはならない問題です。 ちょっとおまけですが。 「仕事が自分のすべてになってしまうなんて、ちっぽけで無意味なことだ。なぜって仕事はある日突然終わるのだから。 そうしたら自分もおわっちまうんだろうな」ここの箇所、結構大事だと思います。 当たり前ですがこういうことが書ける人だから、こういうリベラルな思想が礎にあるから こういうスゴイ小説が書けるのだとしみじみ思いました。 北欧ミステリー人気を支えているのは、 世界的にも水準が高いといわれるリベラルな北欧社会の思想なのかもしれません。
7投稿日: 2017.03.02
光の庭
吉川トリコ
光文社
衝撃を受けました。あんまり見事な小説だから。
吉川トリコさんは初読です そして、読んで、驚きました。こんなにすごい作家さんがいるなんて、その人を知らなかったなんて、と。 パワーがすごいです。 読み始めたら、まるで強烈な吸盤に吸い込まれてしまったかのように逃れられません……。 強烈な吸引力にひっぱられるように読み込んでいく。そして登場人物それぞれ誰もが、自分の中にいる「彼女」のように感じるのだ。 容赦ないリアルな心理の描写にビックリ。 すごい、すごい、すごい、すごい、もっと書いて!と興奮状態に。 吉川トリコさんの小説の魅力は、とんでもないくらい力強い。 本を閉じた瞬間、充足感で満たされました。読書の面白さを存分に味わえます。
2投稿日: 2017.03.01
森に眠る魚
角田光代
双葉文庫
角田光代さんが書く「ママ友世界」
角田光代さんによる「ママ友」世界の小説です。 でも、角田さんが書くとどちらかというと「ルポ」のような印象になり、 女性の世界を描いた「ママ友バトル」といったどろどろ感はそこまで強くありません。 それでも母になった女性たちと、その子供にふりまわされながらの 彼女たちのつきあい含めての大変さは伝わってきます。 角田さんは内容は暗く思くても、タッチが比較的ドライなので 実際に子育てをして「ママ友」世界を味わった人よりも、 その周囲にいるお父さんや家族の方が読むと「なるほど」という 説得力があるのではないかと思います。
1投稿日: 2017.02.27
