食いしん坊花子さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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僕が愛したすべての君へ
乙野四方字 / ハヤカワ文庫JA
可能性ごと、愛する。感動!
3
同じ著者の『君を愛したひとりの僕へ』とセットものです。
どちらを先に読むのがいいのか。それはもう、あなたの運命が決めるのです……なんて。
こっちから、とも、あっちから、とも言えないところがこの作品の…魅力であり、
かつ、その定まらなさが作品世界とリンクしているかのよう。
SFというと、どうしても力が入ってしまう人も、これは力を抜いて、リラックスしながら、
ガッツリ感動を味わえる作品です。
読んだ後、感想を語り合いたくなる、おすすめのタイムリープものです!
この感動は大好きなどら焼き2個分くらい!(つまり、超、おすすめ!) 続きを読む投稿日:2017.03.26
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愛すべき娘たち
よしながふみ / メロディ
よしながふみ、最高傑作のひとつ。
3
全ての女性というのは「娘」だった。
当たり前なんですが、そのことを、胸の傷を抉るように描き出しています。
「わたしだけのお母さんでいてほしい」というのも「母も、その母からの言葉を受けて生きている」と…か、
まさにその通りなのです。
その中でも娘として、というより一人の人間として
世の中で説かれている建前をグっと切り込んだ、中盤のお話が好きです。
愛するということ、の意味を暴く筆力はさすがです。
すごい。 続きを読む投稿日:2017.04.01
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午後からはワニ日和
似鳥鶏 / 文春文庫
まさに「キュートな動物園ミステリ」
3
まずはじめに。
動物園に行きたくなります!
そしたら。
飼育員さんたちが気になります!!
そして
動物園の在り方に思いを巡らし、動物と、
そして、飼育員さんたちにエールを送りたくなります!!!
個性…的な飼育員さんとテンポのよい文章にだまされたように読み進めてしまう。
キュートな動物園ミステリーです。
ネタ的な部分ですが、今回お弁当の漬物エピソードが特に好きです。
似鳥さんのこういう面白さ、もっともっと読みたくなります!
続きを読む投稿日:2017.04.04
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また、桜の国で
須賀しのぶ / 祥伝社
何度も何度も、反芻し、かみしめる感動
3
読んだ後、何度も何度も、情景を思い出し、言葉を思い出し、
そして感動をかみしめました。
第二次世界大戦時のポーランドを舞台にロシアの血をひく日本の外交官を主人公に話は展開します。
「国を愛する心は…、植えつけられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものではあってはならない」など、いつの時代にもつきささる言葉が随所にあります。
登場人物のひとりひとりが、懸命に生きている様も胸を打ちます。
「ポーランドから見る世界は、過酷かもしれないがきっと美しい」
この言葉に込められた思いに考えをめぐらすと、もう、たまらないです。
第二次世界大戦下のワルシャワの状況は想像するだに恐ろしいものですが、
その中でこうして人が生きている姿を描いてくれた著者に私は感謝の念すら感じます。
素晴らしい小説というのは、その作品だけではなく、そもそもの小説というものの可能性とすばらしさを
教えてくれるものだということを、改めて『また、桜の国で』を読んで感じました。 続きを読む投稿日:2017.02.24
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迷いアルパカ拾いました
似鳥鶏 / 文春文庫
キュートな動物ミステリー、第三弾!
3
今回はアルパカ。
動物たちの愛らしさを軽やかでユーモラスに描いているので、
やっぱり楽しいこのシリーズ。
でもやっぱり、楽しいだけでは終わらない。
動物園と動物、人と動物。
それぞれの関係性と問題点…へもしっかりスポットがあたり、
読み応えがあります。
また、推理も「ぼくたちは警察ではない」という場面があり、
ふっと現実に引き戻されるような感覚に陥りました。
推理を重ねて真実に迫ろうとした瞬間のその切り込みは、すごい、と感じました。
「脅して黙らせたほうが勝ちなんて許せない」
という場面もあり、これはぐっときました。
シリーズを重ねるごとに熱量があがっています。 続きを読む投稿日:2017.04.06
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ロードムービー
辻村深月 / 講談社文庫
『冷たい校舎の時は止まる』と併せて読みましょう。
2
『冷たい校舎の時は止まる』の番外編のような短編集ですが、
『冷たい校舎の時は止まる』を読んでいなかったとしても、充分、楽しめます。けれど、読んでいたら、10倍くらい、感動が増幅します。
と、いうわけで…読んでからがおすすめですが……あちらは長編なので、読むのが大変だよう!ということであれば、こちらを読んでしまうのもアリです。
そうしたらきっと、『冷たい校舎の時は止まる』が読みたくなるでしょう。きっと。
そうして「辻村深月……、恐ろしい子!」となるのです。 続きを読む投稿日:2017.03.08