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食いしん坊花子さんのレビュー
いいね!された数144
  • 夫のちんぽが入らない

    夫のちんぽが入らない

    こだま

    SPA!BOOKS

    タイトル以上に内容が、心に響く

    直球のタイトルが話題になった本書。 実際は「夫とだけはどうしても性交できない女性の、人生をさらした私小説」といった体で、特に卑猥な印象はありませんでした。真面目な内容です。 田舎から出てきて夫となる彼との交際が始まり、教師になり、心を病んでいく……。 彼女自身の語りで進んでいくのですが、 彼女の底なしの苦しみと悲しみ、どこか傍観しているような突き放し感……、見事です。 キャッチなタイトルもスゴイな、と思いますが、 それ以上に内容の率直さにも驚き、他人には言えない苦しさも真摯に描写されていています。 そして、彼女と夫となる彼が二人の関係を築いていく場面やお互いへの思いやりを交わす場面は、 純粋に感動しました。 夫の「ぼくはこんな心の純粋な人、見たことがないですよ」というのは、最大の賛辞です。彼から、彼女への。 綺麗ごとばかりではありません。 けれど、二人が一緒に生きていく様に心を打たれるのです。 タイトルもいいと思います。 けれど、それ以上の内容だと思います。

    0
    投稿日: 2017.04.17
  • 月下上海

    月下上海

    山口恵以子

    文春文庫

    女の強さを正面から描いた意欲作

    強く、美しく、そして賢い女の一生を、 渾身の力を込めて描いた意欲作です。 ヒロインは、愚直なまでに自分の感情に正直で、 それがとても、魅力的です。 ふらふらっとした美男子に入れ込んだり、 戦時下の上海で危ない橋をわたったり……、これでもかというくらい波乱万丈な女の人生。 ハラハラドキドキしつつも、ヒロインのドラマチックな人生をたっぷり楽しめる エンタメ小説です。

    2
    投稿日: 2017.04.16
  • 平台がおまちかね

    平台がおまちかね

    大崎梢

    創元推理文庫

    出版社の新人営業員にエールを送りたくなる一冊

    出版社の若手の営業さんのお話です。 主人公の井辻くんは、本が好きだし、本をすごく大切にしている。 ただ売り上げをのばせば、というより かわいい自分のチームの一員のように自社の本を思っているようにも感じました。 実際、知り合いの出版社の営業の友人の話とも よく通じている部分もあり、著者の方が元書店員と知り、納得です。 書店業界は決して待遇のいい場所ではないけれど、何より本好きの人たちに 支えられて動いているんだな……ということがよく伝わってきます。 そして、他の著者さんの著書も具体的に上がってきていて、そういう描写も仲間意識から生まれるのかもしれませんが、 とても嬉しかったし、楽しめました。

    3
    投稿日: 2017.04.15
  • 金の国 水の国

    金の国 水の国

    岩本ナオ

    月刊flowers

    おとぎ話の体はとりつつ人の心の描き方はリアル。

    おとぎ話の体をとってはいるものの、 描き出している人間の姿は、リアルでちょっとこわい。 けれど、美しいもの、平和なものをのぞむ、希望を捨ててはいけない。 穏やかだけれども、そんな強いメッセージ性もある作品だと思います。

    4
    投稿日: 2017.04.15
  • 一○一教室

    一○一教室

    似鳥鶏

    河出書房新社

    怖すぎるから、早く結末にたどりつきたい……

    とにかく怖くて、怖くて、本当に怖くて、しょうがない。 ………、でも、読むのをやめることができない。スゴイ小説でした。 教育の怖さ、も然りですが、 大人たちの勝手さが、猛烈に恐ろしく……。 「怖すぎるから、早く結末にたどりつきたい」と、慌てふためき逃げるように読み進めました。 ←じゃあ、読むのやめれば?と、思われそうですが、そんなことはできないぐらい、読み応えある、 スゴイ小説です! 教育や大人の勝手さが恐ろしさを煽りますが、 社会の歪みを端的に抉り出す筆はさすがです。 「軍国主義に全体主義。減私奉公と殉死。そういったものにロマンを感じる人間がいるのは知っている。だが、そういう人たちの「ロマン」はあくまで他人の減私奉公であり、他人の殉死なのだ。かくあれかしと叫ぶ人間ほど、自分が苦労する気はない。自らが前線に行くなどとは全く思っておらず、後ろで号令をかけるだけのつもりでいる」 読み応え、抜群です。

    6
    投稿日: 2017.04.11
  • 迷いアルパカ拾いました

    迷いアルパカ拾いました

    似鳥鶏

    文春文庫

    キュートな動物ミステリー、第三弾!

    今回はアルパカ。 動物たちの愛らしさを軽やかでユーモラスに描いているので、 やっぱり楽しいこのシリーズ。 でもやっぱり、楽しいだけでは終わらない。 動物園と動物、人と動物。 それぞれの関係性と問題点へもしっかりスポットがあたり、 読み応えがあります。 また、推理も「ぼくたちは警察ではない」という場面があり、 ふっと現実に引き戻されるような感覚に陥りました。 推理を重ねて真実に迫ろうとした瞬間のその切り込みは、すごい、と感じました。 「脅して黙らせたほうが勝ちなんて許せない」 という場面もあり、これはぐっときました。 シリーズを重ねるごとに熱量があがっています。

    3
    投稿日: 2017.04.06
  • ダチョウは軽車両に該当します

    ダチョウは軽車両に該当します

    似鳥鶏

    文春文庫

    キュートな動物ミステリー第二弾!

    『午後からはワニ日和』に続く第二弾、キュートな動物園ミステリー。 主人公の「人間のほうのモモさん」の彼が、 周りの人の表情や様子を学んでいく様子、そして事件度がアップ……、していくように感じました。 本気でコワイ、と思う……。 軽いタッチで始まりますが、じわじわと核心に迫っていくドキドキ感。 ミステリーとしての盛り上がりと登場人物たちの関係性や成長が見えていくのも面白いですね! 特に、鴇先生の過去が明かされていくのですが……それもみどころのひとつ。 第三弾の『迷いアルパカ』も読み始めましたが、気づいたらはまりつつある……。 そんな魅力のあるシリーズです!

    2
    投稿日: 2017.04.06
  • 午後からはワニ日和

    午後からはワニ日和

    似鳥鶏

    文春文庫

    まさに「キュートな動物園ミステリ」

    まずはじめに。 動物園に行きたくなります! そしたら。 飼育員さんたちが気になります!! そして 動物園の在り方に思いを巡らし、動物と、 そして、飼育員さんたちにエールを送りたくなります!!! 個性的な飼育員さんとテンポのよい文章にだまされたように読み進めてしまう。 キュートな動物園ミステリーです。 ネタ的な部分ですが、今回お弁当の漬物エピソードが特に好きです。 似鳥さんのこういう面白さ、もっともっと読みたくなります!

    3
    投稿日: 2017.04.04
  • 愛すべき娘たち

    愛すべき娘たち

    よしながふみ

    メロディ

    よしながふみ、最高傑作のひとつ。

    全ての女性というのは「娘」だった。 当たり前なんですが、そのことを、胸の傷を抉るように描き出しています。 「わたしだけのお母さんでいてほしい」というのも「母も、その母からの言葉を受けて生きている」とか、 まさにその通りなのです。 その中でも娘として、というより一人の人間として 世の中で説かれている建前をグっと切り込んだ、中盤のお話が好きです。 愛するということ、の意味を暴く筆力はさすがです。 すごい。

    3
    投稿日: 2017.04.01
  • 君を愛したひとりの僕へ

    君を愛したひとりの僕へ

    乙野四方字

    ハヤカワ文庫JA

    SFの、切ないラブストーリー

    こちらの本と『僕が愛したすべての君へ』とは対になっています。 どちらから先に読んでもいいけれど、絶対、両方読んでくだださい!と、懇願したくなってしまうほど、 両方読むことで見えてくる、広がる感動は他のものではなかなか味わうことのできないものです。 どちらも人を一生懸命愛し、どちらも一生懸命生きている。 そして、平行世界の面白さ、タイムリープの仕組みなどが非常に丁寧にかかれているので やはりSFとしても、しっかりと楽しめます。 表紙の雰囲気から、若年層を対象にしているのかな? と読み始めましたが、確かに読みやすいものの、読み応えは本物です。

    7
    投稿日: 2017.04.01