食いしん坊花子さんのレビュー
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144
このユーザーのレビュー
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愚行録
貫井徳郎 / 東京創元社
これもまた、イヤミス……。
5
インタヴュー形式で語られていくので、
主観で語られる気持ち悪さと閉塞感が、効果的。
誰が犯人か、というよりも、「一見、とても幸せそうなひとたち」というものの
怖さをこういう形で描きだす見事さ。
世間的…に「幸せそう」というのは、見えない部分で犠牲にしているもの、残酷な部分があるのだということを改めて教えてくれる。読み応えあるし、夢中になって読んでしまう小説でした。面白かったです! 続きを読む投稿日:2017.02.20
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黄昏に眠る秋
ヨハン・テオリン, 三角和代 / ハヤカワ・ミステリ文庫
読み応えある北欧ミステリの傑作。
4
少年の失踪から物語は始まる。
少年の母と祖父の悲しみとやるせなさが漂いますが、
感傷的どころか、冷静な筆致はその陰影を増幅させる。
さすが北欧ミステリ……、そんな印象すら与えます。
終盤の一行で、涙…をこらえることができませんでした。
ずっしりと読み応えある北欧ミステリーの傑作です。
続きを読む投稿日:2017.02.25
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桜風堂ものがたり
村山早紀 / PHP研究所
素晴らしい読後感!
4
すごく心が揺さぶられた小説です。
何度も何度も、目頭が熱くなり、電車の中で読んでいたので困りました。
紡ぎだされる言葉、本当に心にためらいなく響き、感動を与えてくれます。
いろんな「願い」がこもってい…るお話だと思います。本が好きな人、本屋さんが好きな人、一生懸命頑張っている人、苦しく辛い状況にある人、そして家族への思い。
「ひとはたぶん、未来への夢や、この先良くなっていくかも知れないという希望がないと生きていけない」。
それぞれの思い、それぞれの優しさとしなやかな心の強さがこめられた、あたたかな小説です。
とても読みやすいと思いますし、是非多くの人に読んでほしいです。 続きを読む投稿日:2017.02.20
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声を聴かせて
朝比奈あすか / 光文社文庫
読み継がれてほしい……そう願ってしまう小説。
4
穏やかで柔らかな文章で、するする読めてしまいます。
静かなのだけれども、その底にある悲しみがどうしようもなくあって、
ひたすら切ないです。
でもその悲しみをこんな風に書けるなんて、と。
終盤、電車で…読んでいたにもかかわらず、涙がとまりませんでした。
切なさと優しさで心がいっぱいになりました。
いわゆるミステリーの衝撃的な人気ジャンルとは異なるものですが、
こういう小説こそ、読み継がれていってほしい、そう思いました。
続きを読む投稿日:2017.03.02
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熊と踊れ 上
アンデシュ・ルースルンド, ステファン・トゥンベリ, ヘレンハルメ美穂, 羽根由 / ハヤカワ・ミステリ文庫
「このミステリーがすごい!2017年版」海外編第1位の凄み
4
スウェーデンを震撼させた現実の事件をモデルに書かれたという北欧ミステリー。
北欧ミステリーらしい力強い筆致、DV、そして暴力の連鎖……。
「制裁」を読んで、心理描写のうまさ、そして巧みな構成に驚かさ…れたのですが、
こちらも劣らない、いや、もしかしたらそれ以上なのでは……と、
実際、ぐんぐんひきこまれて、読むのを止められません。
北欧ミステリーの骨太な力強さ、そして社会への洞察。
それらを見事に体現した傑作だと思います。
下巻が読みたくてうずうずしてます。
決して明るい、楽しい世界ではないけれども
読みはじめたら、本当にとまらないです。 続きを読む投稿日:2017.03.02
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スーツケースの中の少年
レナ・コバブール, アニタ・フリース, 土屋京子 / 講談社文庫
女性たちの子供への愛を力強く描く
4
警察小説が多いといわれる北欧ミステリーの中で
一般女性が活躍するお話。
コインロッカーのスーツケースの中には裸の少年が……!
スーツケースを預けたカーリン、受け取ったニーナ、そしてその少年の母シギータ…、
そしてもう一人の母……。
女性たちの逞しさと信念、そして子供への愛情を力強く描いた傑作。
それぞれの子どもに対する愛が、事件を解決へと導いていく。
感動します。
続きを読む投稿日:2017.04.23