
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック,浅倉久志
早川書房
ディックの入門としては、お勧めの作品です
ディックの小説の中でも、分かり易い部類に入る作品です。 物語の最初は、アンドロイドを狩ることを主軸に展開をしていきます。そして生物である「人」と、人として人工的につくられた、非生物である「アンドロイド」の何が違うのか?精神世界と現実世界の区別とは?そして人とは何なのかといった疑問を、近未来を舞台に、物語の最後に投げかけてきました。 独特の世界観と語り口が個人的には、好きな作品です。しかし娯楽作品というよりは、純文学に近いSFといった方が良いと思います。映画の影響などから娯楽作品と考えて読むと、特に後半の部分において、難解な部分があることから、驚く方がいるかもしれません。 しかし日頃からSF作品を読む方には、面白いと感じる作品だと思います。
29投稿日: 2014.06.08
白い雨
赤川次郎
光文社文庫
白い雨によってもたらされる凶行
突然ですが、誰かを憎んだことはありますか? 私はありますが、胸の内にしまい込みました。握り拳を作ってはいましたが・・・。 このような心の内に秘めていた憎しみが、「白い雨」によって表在化し、表在化したものが殺人という行動へと繋がっていき、一つの地域を、悪夢のような惨状の渦中へと巻き込んでいきます。 ホラーというよりは、狂気に取りつかれた人物が形成するパニックものという感じが強いと感じました。あまり怖いという印象は受けませんでした。 面白いということはもちろん、ページ数も少なく、かつ読みやすい本をお探しの方に打ってつけです!
0投稿日: 2014.05.24
ドリアン・グレイの肖像
ワイルド,仁木めぐみ
光文社古典新訳文庫
快楽と美への飽くなき追及をする主人公。行きつく先は何なのか?
美青年ドリアンは、ヘンリー卿や画家バジルとの出会いによって、快楽と美に溺れていきます。そして快楽と美への飽くなき追及によって、堕落した魂は、彼が堕落をする以前の姿を描いた肖像画に、少しずつ表面化していきます・・・。 容姿端麗な人でも、その人の心は果たしてそれと同じように美しいものなのか?美や快楽を追及するドリアンを通して、心のあり方や本当に美しいものは何なのか? これらの事について、考えさせられました。 私が高校生の時に、衝撃を受けた本の一つです。純文学がお好きな方に、オススメです。
6投稿日: 2014.05.05
テラフォーマーズ 1
貴家悠,橘賢一
ミラクルジャンプ
人に勧めづらい部分もあるが、面白かったです!
増えすぎた人類が火星への移住のために障壁となる、火星において原人のように独自に進化したゴキブリを相手に死闘を繰り広げる、バトルマンガです。異常ともいえる生命力と知性を持ち、そして怪力と防御力を併せ持つ火星のゴキブリに対抗するため、人類は生物のDNAを人間に組み込んだ、人間を送り込んでいく・・・。国家間の思惑に加え、前線で戦う人たちは、戦いを通じて何が見えてくるのか、今後の展開が楽しみです。 一巻は物語の序章としての位置づけと考えた方が良いです。 そして人体欠損は、普通にありますので、苦手な方はサンプルなどを参考にして見てください。
2投稿日: 2014.04.26
神去なあなあ日常
三浦しをん
読楽
神去村でのゆっくりのんびりな日常
平野勇気という青年が、三重県の神去村という村で暮らし、林業で生活していく姿を描いた作品です。辛い林業の仕事や人との交流、恋愛などを経て、平野が成長していく姿も描かれますが、林業の実際の作業もリアルに描かれており、臨場感あふれる内容でした。 神隠しを信じていたり、人付き合いの深さなど、この神去村はジブリなどで出てくるような、古き良き日本の田舎を感じる村です。そのため林業に関するお仕事小説や青春小説という面だけでなく、日本の原風景という面も描かれていると感じました。そして温かい気持ちにさせてくれた小説でした。
9投稿日: 2014.04.15
毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー,高橋泰邦
東京創元社
さぁ、誰が毒入りチョコで殺人を犯したか、探っていこうじゃないか!
犯罪研究会に所属する6人が、難事件「ベンディックス夫人毒殺事件」を、それぞれが推理、捜査し、その結果を一人一人が発表していくことで、事件解決を試みるという物語です。謎解きの進み方も探偵の脳内を垣間見るようで面白かったですし、動機も納得です。あなたも一人の犯罪研究会の会員として、同席したと思い、6人の話を読んでいってください! 一つ注意としましては、この書籍の発行が、1971年ということもあり、文章も少し複雑で、今ではあまり使わない言葉や言い回しもたまにあり、少し難しいと感じてしまう部分が多々ある点です。しかし、日頃から本をよく読まれる方は、大丈夫だと思います。
1投稿日: 2014.04.05
サクリファイス
近藤史恵
新潮社
不完全燃焼に感じました。
己のチーム内での居場所は何処なのか、レースにかける思いや考えを模索している自転車ロードレーサーが主人公の物語で、ある事件の謎解きもあるという、サスペンスの要素もある青春小説です。そしてサスペンスの部分は、物語の分岐点としての役割が強いため、ほぼ青春小説です。 サスペンスの際の動機が、個人的には首を傾げるものでした。何だか不完全燃焼のまま、物語が進み、終わてしまいました。自転車ロードレースという特殊な環境下ではあるのですが・・・。自転車ロードレースの描写などの際は、引き込まれたのですが、後半が個人的には不満でした。
0投稿日: 2014.03.31
東京喰種トーキョーグール 1
石田スイ
週刊ヤングジャンプ
苦悩、葛藤、闘争、他の者の主張や生き様。金木が出していく答えとは?
人を喰らう「グール」と呼ばれるものが蔓延る(はびこる)世界。 20区という都市に住み、読書が趣味である金木研には、いつも足を運んでいる喫茶店に気になる女性がいた。あることがキッカケとなり、彼女とデートをすることとなった金木。楽しい時間はあっという間に過ぎ、暗くなってしまったため、彼女を送り届けることになるが・・・・。 という出だしで始まっていきます。物語自体はとてもシンプルで、主人公+味方VS敵という構図ですが、キャラクターたちの主義や主張、生き様、そして主人公の葛藤が大きな見どころではないでしょうか。話の展開も早く、緊迫感のあるストーリーが展開されていきます。他の漫画とかぶる部分がありますが、また違う面白さがあります。楽しく読ませていただきました!
5投稿日: 2014.03.24
野性の呼び声
ロンドン,深町眞理子
光文社古典新訳文庫
自然が持つ力強さと残酷さ
とある理由からカナダに来た大型犬バックが、犬ぞりの犬として生き、やがて原野へと帰っていく物語です。「野生の呼び声」というタイトルの意味は、最後の方になると分かります。バックという犬から見た視点での人間(彼から見れば、人間も生き物であり、自然の一部)や他の生き物に対する記述が面白かったです。 時には冷酷な仕打ちを受けたとしても、生きる意義を見出し、生きていく一匹の犬の姿に、あなたは何を感じるでしょうか?手軽に読める厚さなので、是非読んでみてください。
1投稿日: 2014.03.11
煙か土か食い物
舞城王太郎
講談社文庫
愛、暴力、福井弁がテンポよく進んでいく小説
母親が事件の被害者になったという一報を受け、アメリカから帰国した息子が、持ち前の能力と人脈を使い犯人を探していく・・・というのが、本作の主なストーリーです。しかしただの小説ではなく、暴力、愛、嫉妬そして福井弁を絡めた独自の文章で物語が描かれています。 久しぶりに、文章に独自性がたっぷりの本に出会いました。文章に人を圧する力があります。すべての人に受ける本であるかというと、そうではありませんが、面白い小説です。
0投稿日: 2014.02.03
