
吉原手引草
松井今朝子
幻冬舎文庫
ミステリー要素よりも吉原について知ることが出来る作品
全盛を誇ったにもかかわらず、忽然と姿を消した花魁「葛城」。彼女はなぜ消えたのか、この謎を彼女の関係者から話を聞いていくことによって、解き明かそうとしていくという、ストーリーとなっています。 書籍説明にあるように、確かにミステリー系ではありますが、最後の犯行方法などの種明しは正直、ミステリーを読みなれている人間にとっては、物足りないと感じました。 むしろ吉原で働く人々の生き方や礼儀作法などが、おもしろいと感じました。ドラマやマンガなどで、漠然と花魁や遊郭は知っていましたが、本作ではこれらの本当の姿を垣間見ることができ、その点が面白かったです。
5投稿日: 2014.12.12
BLAME!(1)
弐瓶勉
アフタヌーン
読む人を選ぶが、ハマると最高に面白い作品
個人的にはとても楽しめた作品でした。作中の世界観やキャラクター、そして建物などの構造物が独創的で、癖になり、読み直したほどです。 物語の内容としては上記の「書籍説明」通りです。ただ個人的には、必ずしも万人受けする作品ではないという印象を受けました。会話が少ないため、作中の用語や世界観の理解は最初の1巻では出来ませんし、戦闘シーンもコマ数が少なくわかりにくいです。また1巻は、ほぼ戦闘シーンで終わる為、ある程度読み進めないと、この作品の面白さが分かりません。 SFが好きな方には、是非手に取っていただきたいですが、1巻だけの試し読みは、個人的にはお勧めしません。
6投稿日: 2014.11.15
千年樹
荻原浩
集英社文庫
一本の樹から生まれる8つの物語
各短編の登場人物や時代設定が変わるものの、一本の木にまつわる8つの物語が、収録されています。それぞれのドラマを読んでいくにつれ、切ない気持ちでいっぱいになっていきます。しかしただ切ないだけでなく、どこか前向きにさせてくれた作品でした。 荻原浩氏の作品の中で、私にとって一番好きな作品です。それぞれの物語の時代や人間模様をうまく描いた作品だと思います。展開も早いので、すぐに読み終わりました。 切ない気持ちになる事もありますが、他に大事なものはあるのだと気づかせてくれるストーリーが多いので、知識ではない何かを与えてくれる本を読んでみたい方にお勧めです。
4投稿日: 2014.11.08
黒い春
山田宗樹
幻冬舎文庫
死に至る謎の黒色胞子との戦い
覚せい剤中毒によって死亡をした少女から見つかった謎の「黒色胞子」。一部の人々が警鐘を鳴らすものの、その後忘れ去られてしまう。しかし、時が過ぎるにつれ各地で謎の死が起きていき・・・というストーリーとなっています。 この黒色胞子とは3人の主要登場人物が、戦うこととなり、3人それぞれの家庭状況や恋人、仕事内容等に加え、黒色胞子の起源の謎解きも交え、飽きさせないストーリー展開でした。訳が分からない医療用語等の難しい話もなく、読みやすかったです。
4投稿日: 2014.11.08
黒いトランク
鮎川哲也
創元推理文庫
時刻表と己の足で捜査し、推理していく著者のデビュー作
時刻表からトランクの動きを推理したり、アリバイ調査などの為、捜査官自身が現地に赴き、現地の入念な捜査を行っていくことによって、犯人は誰なのかを推理していくというスタイルの推理小説です。 戦後ということで「文が読みにくかったり、漢字が古いのでは?」と思いましたが、そのようなことは無く、言い回し等は今ではあまり使わないものがあるものの、読みやすかったです。そして、おもしろかったです! 推理小説好きの方に、オススメです。
7投稿日: 2014.10.20
緋文字
ホーソーン,小川高義
光文社古典新訳文庫
「不倫の罪」を軸にし、深く人の心理に迫った作品
不倫の罪を犯した女性を中心にし、その不倫相手の男性や復讐に燃える男の心理も踏まえながら、罪を克服し、生きようとする物語です。 不倫した女性に対する仕打ちや態度などから、宗教色を強く感じる作品ではありますが、罪の意識といった人の心理描写を巧みに記した作品でした。冒頭部分は少し退屈する部分でしたが、進むにつれ、各登場人物たちの思惑や行動が重なっていき、最後はある行動を決行していくというストーリー展開の為、後半は退屈することなく読むことが出来ました。 純粋に文学を楽しみたい方に、オススメです。
5投稿日: 2014.10.13
Self-Reference ENGINE
円城塔
ハヤカワ文庫JA
SF好きでも人を選ぶ作品です!
時空構造が崩壊した結果、過去と未来という因果関係は無くなり、過去や現在、そして未来にまで上書き可能となっている世界が舞台です。この世界観の中、人や人工知能が主人公である短編が続いていく構成となっており、登場人物が同じであるなど関連した話もあります。 様々なテーマの短編が続き、読者を置いてひたすら物語が進んでいきます。そのため、理解が追い付かず、また書き方も独特の為、理解不能でした。流れや言い回しを楽しむ小説でした。ハードSFは好きなジャンルですが、本書は正直何が面白いのか分かりませんでした。 人によっては面白いと感じる作品のようですので、冒頭の部分を読んでみてから、読むかどうか決めてみて下さい。
2投稿日: 2014.09.27
ぼくらの(1)
鬼頭莫宏
月刊IKKI
完結しているロボット系SFの名作
巨大ロボットの搭乗者として契約をした、中学生たち。彼らはこのロボットが持つ力を利用することが出来、そして現れる敵を倒すことによって、多くの人の命を救うことが出来る。しかし、搭乗者たちには、敵を倒しても必ず死ぬという代償があった・・・。 死という避けられぬ運命の中から生まれる葛藤や悲しみ。殺すことになる敵に対する気持ち。やがては散る少年少女たちが、これらを乗り越えていき、覚悟の上戦いに臨みます。 中学生なのに背負っているものが重すぎるのではという疑問はあったものの、ここまで人の心情を描写しているロボットものは無いのではないでしょうか。ロボット系SFの名作です。
1投稿日: 2014.09.17
あなたのための物語
長谷敏司
ハヤカワ文庫JA
少し玄人向けのSF作品です
ITPと呼ばれる人工知能(人工知能としましたが、的確な表現が思いつきませんでした)の開発責任者となったものの、開発中に、ただ死を待つだけの身に突如なってしまったサマンサ。彼女が死に直面し、そして死にどう対処していくのかというストーリーとなっています。 ひたすら死について考えさせられる作品なので、重い内容ですが、wanna beとの会話や彼女自身が取る行動や決心には、深く考えさせられました。そして非生命であるwanna beとサマンサの死に関する会話が、この作品の大きな盛り上がりであり、そのあとに続く「とあるもの」との会話も、生命や人工的な知能について、問題提起していると感じました。 ただ文章が分かりづらく、そして長すぎると感じ、その為★は3つにしました。しかしSF作品の読書としては、十分に楽しめました。 日頃読書をしない方や、初めて読むSF作品としては、ちょっとオススメはできませんが、内容自体は素晴らしい作品です。
4投稿日: 2014.08.24
監視官 常守朱 1
三好輝,サイコパス製作委員会,天野明,虚淵玄(ニトロプラス)
ジャンプSQ.
管理社会の秩序を守る、SF刑事ストーリー
〈シビュラシステム〉と呼ばれるシステムにより、心理状態や性格などが数値化され、この数値によって人の生活や将来が確立された近未来の日本。この数値はPsycho-pass(サイコパス)と呼ばれ、中でも「犯罪係数」と呼ばれる数値は、規定値を逸脱した場合は、潜在的な犯罪者として裁かれる。この潜在的な犯罪者を取り締まる刑事として、主人公、常守朱が、それぞれの事件の捜査活動をしていく話となっております。 一つの異常な事件を捜査していくストーリーとなっており、作中では〈シビュラシステム〉の全容が判明していったりなど、かなり物語として完成度が高いと感じました。 アニメ第2期が今年10月に始めるとのことでしたので、復習を兼ねて読みました。絵はアニメと似ており、違和感がありませんでしたが、ストーリーは、飛ばしている部分や追加されている部分がありました。 しかし十分面白かったです。アニメ第2期が楽しみです!
3投稿日: 2014.08.24
