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  • ハサミ男

    ハサミ男

    殊能将之

    講談社文庫

    殺人犯の手記

    話は猟奇殺人犯視点でほとんど進んでいき、それに刑事視点が時々加わるという進み方をしていきます。猟奇殺人もので多い、詳細な惨殺シーンや性的描写もなく、こういうシーンが苦手な方でも平気だと思います。(ただし殺害するシーンがないわけではありません) 登場人物としてプロファイラーが出てきますが、あまりプロファイリングに重点を置かずに、地道に捜査をしていくというところが日本の推理小説らしさが出ているなぁと思いました。よく海外の猟奇殺人ものを読んでいる人間なので逆に新鮮でした。 日本人の小説で猟奇殺人を扱った本を読みたい人には、打ってつけだと思います。もちろん初心者の方にもオススメです。

    4
    投稿日: 2013.10.14
  • フランケンシュタイン

    フランケンシュタイン

    メアリー・シェリー,森下弓子

    創元推理文庫

    フランケンシュタインは怪物名ではなく人物名です

    ホラーの代表的な怪物としてよく出てくるので、ホラー作品なのかなと思い読みましたが、恐怖ものよりも悲劇だと思いました。 特に作り出したフランケンシュタイン博士と怪物との会話が印象的でした。互いの意見をぶつけ合います。そして物語の最後はある事件を境に両者の対決へと進んでいくことになります。 大好きな作品です。後世にも大きな影響を与えた作品でもあり、恐怖ではないものを読者に与えさせてくれる作品です。もっと多くの人にも読んでいってもらいたいと思います。

    0
    投稿日: 2013.10.13
  • 虐殺器官

    虐殺器官

    伊藤計劃

    早川書房

    近未来SFの素晴らしさを感じた一冊

    メタルギアシリーズなどを手掛けている小島秀夫氏の影響も受けていることもあり、メタルギアの世界観に似ていることが印象的でした。 物語は、米軍の暗殺専門チームの隊長であるシェパード大尉が、自分の身に起きてきたことを独白していく形になっています。そのため各登場人物の描写は詳しくありません。近未来SFで軍事色が少し強い作品ですが、すべての場面が撃ち合いや暗殺といったわけではなく、主人公の心理に重点が置かれていると思います。アクションと思って読もうとすると少し肩透かしを食わされると思います。

    2
    投稿日: 2013.10.12
  • 1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編

    1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編

    O・ヘンリー,芹澤恵

    光文社古典新訳文庫

    古き良き時代のアメリカ

    英語の優れた短編小説に送られるO・ヘンリー賞というのがあります。これからもわかりますが、短編の名手と謳われている作家の作品集です。人生の皮肉さ、素晴らしい恋愛、数奇な運命などそれぞれの作品から見えてくるもの、感じるものは違い、各作品が生き生きとしています。 読者の世代や性別、人生観などによって好きな作品が違ってくるというのが魅力の1つだと思います。私は「千ドル」、「幻の混合酒」、そして好きな作品という人が多い「最後の一葉」が好きです。ぜひ古典文学に興味がある方は読んでみて、自分の好きな作品を見つけてみて下さい。

    5
    投稿日: 2013.10.12
  • 海と毒薬(新潮文庫)

    海と毒薬(新潮文庫)

    遠藤周作

    新潮文庫

    日本の罪の欠如

    私が遠藤周作を読むキッカケとなった作品です。昔の作品ですが、今でもこの小説が持つ力は健在です。 小説では戦争捕虜を殺しても何も感じないにもかかわらず、医院の上層部の親戚を手術で死なせた場合は、「人を殺した」という罪が芽生えるという話があります。このように書籍説明にもありますが、日本人の罪の意識の不在を扱っており、これは現代でも、顕著ではないのでしょうか。例えば、小説の話ほどの深刻さではないですが、不祥事の責任を逃れたり、または自分に非があるのに何とも思わなかったという記憶があるのではないのでしょうか? 戦時中の事件を題材に、罪について深く考えさせられた小説でした。

    0
    投稿日: 2013.10.11
  • 渚にて 人類最後の日

    渚にて 人類最後の日

    ネヴィル・シュート,佐藤龍雄

    創元SF文庫

    時が経つごとに確実に崩壊していく世界

    最初は書籍説明にあるような生存者を求めて汚染地域を目指していく、ロードムービーのような作品なのかなと思い読み始めましたが、全く違いました。主に4人の登場人物が世界が滅び、自分たちの人生も終わりに近づいていく中で、残された時間をそれぞれどのように過ごし、どのように感じていくかに焦点があてられています。登場人物たちは、自分の運命に抗うことなく、己の運命を受け入れます。 ちなみに書籍説明には「感動」とありますが、泣けるタイプではありません。しかし、心を打たれることは確かです。久々に読んでよかったと思わせてくれた作品でした。名作と呼ばれるのも納得です。

    14
    投稿日: 2013.10.03
  • 掏摸

    掏摸

    中村文則

    河出文庫

    身の回りの世界と調和できない人間を描いた作品だと思います

    とある凄腕のスリ師が、ある男との出会いによって、破滅へと陥っていきます。個人的には話の内容や感じとしては、カミュやカフカを思わせました。 文章は読みやすく、ページ数が少ないこともあり、展開も早いです。掏摸の描写もリアルです。しかし女性に関する描写が、物足りないまたは力量が足りないと思いました。 加えて小説の登場人物や終わり方が、はっきりとしていないので、もやもやするのが嫌いな人には、きついかも知れません。

    2
    投稿日: 2013.10.01
  • エンブリオ 下

    エンブリオ 下

    帚木蓬生

    集英社文庫

    医療のみならず人としてのタブーも犯す岸川

    医学会の国際発表で「男性の妊娠」について発表をした岸川。その後に起こる自身の医療技術の流出問題。いったい誰が情報や技術を流しているのか・・・。この流出問題の対処でこの物語のクライマックスが訪れます。上巻で大きく述べられている岸川の医療の考えや行動を維持するために、人としてのタブーも平気で犯す岸川。医者としては、最高であっても、人としてはどうなのか・・・。後半はサスペンスものとしても楽しめました。

    0
    投稿日: 2013.09.29
  • エンブリオ 上

    エンブリオ 上

    帚木蓬生

    集英社文庫

    マッドサイエンティスト?!

    生殖医療(中絶や不妊治療など)を題材にした小説で、岸川という医師による、患者の治療を通して今の生殖医療の現状を知ることができます。この岸川は今でも議論がやまない、生殖医療を自分なりの解釈と方法でタブーなどは無視してどんどん進めていきます。はたして胎児は一人の人間なのか、そして臓器移植や中絶、胎児の性別診断による産み分け(男の子が欲しいから女の子ならばおろすなど)は良いのか・・・・。非常に重いテーマではありますが、一読をオススメします。

    1
    投稿日: 2013.09.29
  • ドリフターズ(1)

    ドリフターズ(1)

    平野耕太

    ヤングキングアワーズ

    今後誰が登場するのか、楽しみです!

    伯父である島津義弘を逃がすために戦い、重傷を負った島津豊久は、山中を彷徨っていると、いつの間にか扉に囲まれた廊下のような空間にいるのに気づく。そしてその場にいた眼鏡をかけた男に突如異世界に送られてしまう。送られた異世界には、かつて本能寺で死んだはずの男や源平合戦の弓の達人がおり、そして・・・・・。                          というのが大まかな出だしです。 あまり作品の説明を書いてしまうと面白さがなくなってしまうので以後は省きますが、簡潔に言えば、もしも同じ時代に歴史上の人物たちが、敵味方と別れて戦ったらどうなるのかというのを描いたものです。日本人以外の人物も、もちろん登場していますし、一人一人のキャラの個性も際立っています。今後の展開が楽しみです!!

    3
    投稿日: 2013.09.27