
天使の囀り
貴志祐介
角川ホラー文庫
アマゾンで取り付いたものの正体は・・・
ホラー作品ですが、悪魔や霊といった類のホラーではありません。アマゾンに行った際に、とあるものに取りつかれ、死に対し羨望を抱くようになった人物たちがもたらす恐怖が主体です。基本は北島早苗を中心のストーリーが展開され、それに加えてとある青年が中心の物語が展開されることで、読者はさらに物語を詳しく知ることが出来ます。 ストーリーの展開や内容は正直に言ってしまいますと、ありきたりでした。どこかで読んだことがあるような感じがしてしまいました。ただし描写がリアル(←虫がダメな方は要注意!)です。個人的にはあまり恐怖感は感じませんでした。厚めなので一気読みには向かないですが、何故か読んでしまうタイプの作品です。 *「ありきたり」と言っていますが、あくまで個人的な感想です。貴志祐介氏のファンの方やこの本が好きな方は、あまり気になさらないで下さい
2投稿日: 2013.11.19
宇宙戦争
H・G・ウェルズ,井上勇
東京創元社
私がSFを読む、きっかけとなった本です。
スピルバーグが2005年に再映画化したこともあり(たまにテレビでやっていますよね!私が大好きな映画の一つです)ご存知の方も多いものと思われます。映画では現代兵器を駆使しますが、原作のこの小説の時代設定では大砲が最新兵器です。また原作はイギリスが舞台です。 突如飛来し、開始した火星人の地球侵攻を、食い止めようとする人類。最新兵器を駆使しても致命傷を負わせることなく、撤退しか無くなっていき、追い詰められていきます。しかし火星人はあることを考慮せずに侵攻をしたために・・・。主人公は兵士ではなく単なる民間人なのですが、戦いの場面、そして火星人の生態が判明する場面に居合わせることになります。娯楽小説として十分楽しめます。そして深く読んでいただくと、火星人は未来の我々を暗示していることにも気付くと思います。SFの入門にも打ってつけです。
14投稿日: 2013.11.18
カーテン
アガサ・クリスティー,田口俊樹
クリスティー文庫
スタイルズ荘で始まり、スタイルズ荘で幕が閉じる
ポアロが初めて登場するスタイルズ荘。そしてなんと、今回の舞台もスタイルズ荘ですが、今作がポアロのラストの作品となります。灰色の脳細胞を使い難事件を解決した彼は、今や老い、病床にある状態です。そんな時、ヘイスティングズ(本作の書き手)に5件の事件を提示するポアロ。この5件には、真犯人がいるのだというが・・・ 完全犯罪を扱っていますが、この完全犯罪を崩そうとしていきます。完全犯罪の全容が分かった後には、ラストとして、おどろきの結末が展開されます。ポアロのファンで未読の方には、是非読んでいただきたいです。初めての方でも十分読むことが出来ますが、出来ればポアロの代表作をいくつか読んでから読んでいただきたいと思います。読んで損しないミステリーです。
4投稿日: 2013.11.17
孤島の鬼
江戸川乱歩
東京創元社
完全に歪んでしまった殺人「鬼」
恋人を殺され、殺めた人物に対し罪を償わせる決心をする、主人公。そして素人探偵である深山木に調査を頼むが、彼もその餌食となってしまう。それもありえない殺害方法によってである。いったいどうやって?背後には何が・・・? 前半は上記の謎解きをしていくミステリーですが、後半は犯人の住む孤島へと乗り込み・・・という感じで、頭も使っていきますがどちらかと言えば、体を張る行動主体の物語になっています。様々なミステリーを読んでいるので、いろいろな犯罪の動機を読みましたが、この小説の犯人の動機は異常なほど歪んでいます。「鬼」と書かれているのも納得です。昔の小説なので難しい表現や漢字などが出ると思いましたが、そんなことは無く読みやすかったです。ただし差別的な表現がありますので、嫌な思いをする方もいるかもしれません。
1投稿日: 2013.11.17
天才科学者たちの奇跡 それは、小さな「気づき」から始まった
三田誠広
PHP文庫
小さな気付きが築きあげた、発見
中学の理科や高校の化学や生物、物理で出てくる、~の定理や~の法則。学校の授業では、式や概要を話して終わりですが、それぞれの科学者が見つけ、その学者の名前が付けられた定理や法則にはそれぞれのドラマがあります。各発見者がどのように発見したのかを分かり易く書いてくれています。伝記のように固くはなく、エピソードも面白かったです。その科学者に関する興味も湧きますので、科学系の本を読む入門用に良いかも知れません。
2投稿日: 2013.11.16
解錠師
スティーヴ・ハミルトン,越前敏弥
早川書房
犯罪小説でもあり青春小説でもある
ミステリー・推理のジャンルに入っていますが、個人的には青春小説に近いと思いました。主人公マイクが自身生い立ちや記憶を、書いていくという形式で物語は進んでいきます。犯罪やサスペンスの要素はもちろん、学校での生活、家庭の環境、友情、別れ、そして恋愛などが展開されていきます。この物語では、この恋愛が非常に重要です。 そしてなんといっても、「解錠師」という題名からも分かるように、解錠=ピッキングのシーンが素晴らしいです。犯罪ですが、ある意味芸術的です。自身の回想を書いていくので、青春系の物語と犯罪を扱う物語の両方が中心に進んでいきます。訳も分かり易いので、厚めですがスグに読み終わりました。最近の作品で、面白い本を探している方は、読んでみてください。
9投稿日: 2013.11.15
ニッポンの大学
小林哲夫
講談社現代新書
私の入っている大学は、何位だろう?
大学に関する様々なランキングを見ることで、いろいろな観点から大学の実情を見ることが出来ます。単なる偏差値だけでみるのでは無く、いろいろな観点から見ていくのは、面白かったです。例としては、大学教授の論文数、鳥人間やロボットなどのコンテストの優勝回数、挙句の果てにはグラビア雑誌に載ってるアイドルなどの所属大学のランキングなどが挙げられていきます。各ランキングにそれぞれ解説が述べられており、色々な物差しで大学を見ていくことが出来ます。 しかし、おそらく2度読みはしないので、星は3つにさせていただきました。
1投稿日: 2013.11.15
華氏451度
レイ・ブラッドベリ,宇野利泰
早川書房
科学の進歩は人を幸福にするか?
現代文明がもつ矛盾点やおかしな点に気付かせてくれた作品です。現代文明に囚われ、大事な何かを無くしているモンターグの妻、ミルドレッド。そして主人公モンターグを変えていく人物たち。当初本を燃やすことに疑念を持たない主人公でしたが、話が進んでいくうちに疑問を感じるようになります。そして本を守る側へと転じていき・・・・。 一つのエンターテイメントの作品としても十分楽しめる作品です。しかしこの本から得られるものは、必ずしも楽しいひと時だけでは、ありません。色々なことに気付かせてくれます。決して難しい小説ではありません。深い小説を読みたい方は、是非読んでみてください。
3投稿日: 2013.11.14
日本農業への正しい絶望法(新潮新書)
神門善久
新潮新書
日本の農業の実態とは?
識者やマスコミが描く農業とは全く違う農業の実態が暴かれます。 有機栽培や日本の農業関係の法律などが暴かれていきます。人によってはショックを受けるかもしれません。農家の人=良い人みたいなイメージがありますが、これも崩れました。農業がこのような状態であるなど考えもしませんでした。TPPだけでなく、農業に関してはやるべきことが山積みなのは、危機感を覚えます。 個人的には、非常に共感が多かったです。特に「消費者の舌の劣化」が特に共感しました。野菜の味を楽しみたいのに、ドレッシングでべちゃべちゃなサラダが出て来ると、本書のこの項目の話が思い出されます。
3投稿日: 2013.11.14
UNDER GROUND MARKET
藤井太洋
朝日新聞出版
すぐそこに待っているかもしれない、日本の未来
約7割が本編で、残りは解説という構成でした。「Gene Mapper」と似たような展開を経ていきます。日本の末路が描かれていますが、非常に現実味があります。今ある日本の問題や課題を、このまま放置し続けていくと、こうなっていくのではと恐ろしくなりました。日本の政治に危機感を覚えました。 そして電子決済が持つ問題点も明らかになります。電子決済があらゆるものに進んでいる現在。「便利で速いから、電子決済は良いもの」と安易に考えていた私でしたが、不安を感じました。表では問題点があまり言われませんが、こんな問題をはらんでいたとは知りませんでした。 30分ほどで読み終わりましたが、非常に内容が濃い作品でした。藤井太洋氏の入門用にも適していると思います。
1投稿日: 2013.11.11
