
ネクロポリス 上
恩田陸
朝日新聞出版
「V.ファー」なる国の妙な空気感がよい
故人と再会できる「アナザー・ヒル」で起きた殺人事件(?)の犯人捜し。 日本とイギリスを足したような文化をもつ「V.ファー」なる国の妙な空気感は興味深い。 けれど,故人との交流というファンタジー部分と,殺人事件の犯人捜しというミステリー部分があっちへ飛びこっちへ飛びして足場が定まらない感じがもどかしい。 下巻でうまく融合することを期待。
0投稿日: 2015.03.10Self-Reference ENGINE
円城塔
ハヤカワ文庫JA
理解可能と意味不明の境界
フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞作品。 時空を超越しまくり,伝統の箱を転がし,大量のフロイトが出現。 そのたびに,じわじわきたり,くすくすきたり。 理解可能と意味不明の境界ぎりぎり,ちょっと意味不明側,という感じ(笑)。良。
1投稿日: 2015.03.06臨機巧緻のディープ・ブルー
小川一水,カサハラテツロー
朝日新聞出版
異星で知的生命3種がごったごた(笑)
地球外知的生命ものは,人類の方が文明レベルが低いことが多いと思うけれど, この物語は人類が大人(笑)
0投稿日: 2015.03.06グッドラック 戦闘妖精・雪風
神林長平
ハヤカワ文庫JA
「自己」とは? 人が人たり得るのは?
零と雪風が“覚醒”。 人類のアイデンティティーを問うた前作からさらに進み,「自己」とは何かという禅問答が今回のテーマか。 状況が大きく動く,異星体ジャムとの戦闘の場面は,雪風との駆け引きも相まって緊張感満点で,思わず息を止めて読み進めた。 得体の知れない異星体ジャム・戦闘知性体(人工知能)の雪風・人間 深井零大尉というグラデーションを通して, 「自己」とは何か,人が人たり得るのはなぜか,を考えさせる展開に呻る。 あと,雪風かわいい(ミギーかわいい的に)。
1投稿日: 2015.03.04盤上の夜
宮内悠介
東京創元社
正気か狂気か
正気と狂気の境界というか,なんというか。 冲方丁氏の解説がまたすごい。
0投稿日: 2015.03.03戦闘妖精・雪風(改)
神林長平
ハヤカワ文庫JA
揺らぐ人類のアイデンティティ
正体不明の異星体ジャムと特殊な空軍の戦い。 各章が脈絡なく展開されるようでいて,一貫してクリティカルな問いをじわじわと突きつけてくる。 「人類」のアイデンティティが揺るがされる展開にぐっとくる。
0投稿日: 2015.02.17My Humanity
長谷敏司
ハヤカワ文庫JA
しみ出すような後味の悪さも,心を惹きつける
SFとはつくづく「人間」を問う物語である。 短編4編からなるこのMy Humanity。 疑似神経制御言語による人格の補完技術,人の知性を超えた超高度AI, 自己増殖し人の制御を離れてしまったナノマシンと,その超テクノロジーに心をくすぐられないわけがない! しかしやっぱり物語の根幹は,それら超テクノロジーを介して描かれる「人間性」。 4編通して,えも言われぬ絶望感や後味の悪さがしみ出すような物語であるのに, どれもこれもが,ぐっと心を惹きつける。 長谷氏が描く絶望的な物語は,とてもよい。
4投稿日: 2015.02.16ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
三上延
メディアワークス文庫
深く織り込まれた謎
ドラマで見たので,栞子さんのイメージが頭の中で混線…。 それはともかく,乱歩を題材として開かずの間,じゃない金庫やら隠しなんとかやらとナゾトキ要素が盛りだくさん。 ギミックのみならず登場人物たちが織りなす二重三重に絡んだ謎に,まだあるのか! と追い打ちをかけられる。 しかし,三上氏はどれほど乱歩を調べまくったのだろうか。
1投稿日: 2015.02.14Gene Mapper -full build-
藤井太洋
ハヤカワ文庫JA
疾走感満点
なかなかハードなSF。スピード感を意識して書かれたそうで,まさに疾走の展開。 kindle で最初に出版されたのもの(core)よりも丁寧に描かれ,それでも疾走感が失われず。 おもしろい小説は,頭の中で展開される映像がとても鮮明。
0投稿日: 2015.02.13かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目学
角川文庫
すずちゃんの「あれ」
マドレーヌ夫人の大冒険。 ほんのり切ないお話だが,私の中では,すずちゃんの「あれ」が max 。たぶんみんなそう。
1投稿日: 2015.02.13