
プラネタリウムの外側
早瀬 耕
ハヤカワ文庫JA
混線する仮想と現実
『未必のマクベス』の作者による、5編の短編連作。 まず、タイトルが秀逸。これだけで購入決定ですよ。 そして、その中身も期待を裏切らない良作だった。 仮想と現実、過去と現在、夢と現が混線するその世界観に、酩酊にも似た心地良さ(というと語弊があるか)を感じながら、最後まであっという間に読み切ってしまった。 『グリフォンズ・ガーデン』もすぐ読もう。
0投稿日: 2018.04.20私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?
森博嗣
講談社タイガ
生きているとはどういうことか。
ハギリ博士一行,新たな地「富の谷」を調査。彼らが体験する“新しい生命のあり方”。 で,事件に巻き込まれる(笑)。 限りなく寿命が延び,子供も生まれず,ロボットとヒトとの境や仮想と現実の区別がますます曖昧になる世界で, 生命と何か,生きているとはどういうことかを問う。それに対するハギリ博士らの考えは興味深い。 そうした問いにウォーカロンの存在は,重要な位置を占めるが, ウォーカロンと『スカイ・クロラ』シリーズに登場するキルドレの類似性を感じた。 そしてこの問いのもう一つのカギ的存在であるトランスファのデボラ。 彼女(?)との会話がまたよい。
1投稿日: 2017.04.02灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない
十文字青,白井鋭利
オーバーラップ文庫
明かされつつあるグリムガルの秘密……そして!
しつこいゴリラ様のモンスター,グォレラの大群に追われながら,始まりの町オルタナを目指す苦痛の旅。 相変わらずの肉体的・精神的ギリギリ状態。 そんな中で,見つけた村に住む謎の男。 グリムガルの秘密について大きなヒントが……もどかしい。 同時に,惚れた腫れたの恋愛関係……も,もどかしい。 そして衝撃のラスト。 もうね,もうそろそろハルヒロたちを休ませてあげて! 安心させてあげて! 心の休息を! 読んでいるこちらが疲弊する(笑) 次巻が待たれる!
1投稿日: 2017.04.02新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣 新装版
水野良,美樹本晴彦
角川スニーカー文庫
遠い記憶より全然良かった!
新戦記は途中まで読んだ記憶があったが,読んでみると内容全然覚えていなかった。 しかも,当時,旧戦記にくらべていまいち感があった気がしていたのだけど, 今読むとそんなこともないじゃないか! やっぱりフォーセリアはいいなぁ。
2投稿日: 2017.02.20ソードアート・オンライン プログレッシブ4
川原礫,abec
電撃文庫
じわじわ活発化するラフコフ
第五層攻略。 じわじわと活発化するラフコフ。軽率アスナに,はらはらさせられ手に汗握る。 しかし,まだ五層にしてアスナとの親密度隠しパラメータが上がりすぎではないのか。 そしてどれだけ続くんだこれ。また来年。
1投稿日: 2017.02.20ソードアート・オンライン18 アリシゼーション・ラスティング
川原礫,abec
電撃文庫
文字通り次元を超えた最終決戦!
SAO完結! 果てしなく続いてきたアリシゼーション編がついに終わる(笑) 超絶スーパー俺TUEEEE同士の文字通り次元を超えた最終決戦は圧倒的。 囚われのデスゲームからスタートした物語がとてつもなく壮大な世界までやってきたものだけど, やっぱりアインクラット編のあの緊迫感と悲壮感に心をつかまれた者としては, そこから遠く離れてしまったのは少し残念ではある。 読後に見た裏表紙(カバー)のイラストがうぷぷ。
1投稿日: 2017.02.20ガール・ミーツ・ガール
誉田哲也
光文社文庫
疾風少女がまた一つ大人になる
『疾風ガール』に続く,天才的ミュージシャン夏美の物語。 まもなくデビューというところに,ひょんなことから, 夏美とはなにもかも正反対な売れっ子お嬢様シンガーとコラボすることになるのだが, 音楽ものの青春小説にも俺tueee系ってあるんだなって思って読んだ(笑) 大人たちの世界の理不尽に巻き込まれながらも,まっすぐに突き進む彼女たちの清々しさに, そしてクライマックスのそのシーンにちょっと心を打たれてしまう。 というわけで,やっぱり疾風少女のド直球青春小説なのであった。 あと,お父さん!
2投稿日: 2017.02.13疾風ガール
誉田哲也
光文社文庫
ミステリー? 否,ド直球な青春小説だ
アマチュアロックバンドで天才的なギターの才能をみせる夏美。 彼女を描くド直球な青春小説かと思いきや,途中から急にミステリーに。 登場キャラと共についつい真相を追いかけたくなり,すいすいと読み進めてしまう。 が,そうして最後まで読み終えてみると,結局のところ紛うことなき「疾風少女のド直球な青春小説」でした。 それにしてもこれ,「あの子」が全部もっていっただろ。
3投稿日: 2017.02.13高い城の男
フィリップ・K・ディック,浅倉久志
早川書房
虚構と現実,本物と贋作の狭間で
第二次世界大戦でナチスと日本が勝利し,アメリカを占領統治しているという歴史改変もの。 ヒューゴー賞受賞作で評価の高い作品だが,読みやすいかというと正直そうでもない。 物語の中で逆にアメリカが勝利していたら……という小説が登場し, 虚構の中の虚構は現実といったギミックや,古物の本物と贋作の考察などは面白みがあるものの, 人物達の繋がりや全体としてのまとまりが感じられず,結局,何なの? といった印象が拭えない。 その点,Amazonのドラマ版は,世界観・心理描写・サスペンス要素などとてもよく作り替えたのだなと思う。
2投稿日: 2017.01.03君の名は。 Another Side:Earthbound
加納新太,田中将賀,朝日川日和,新海誠
角川スニーカー文庫
本編に比肩する奇跡のストーリー
映画『君の名は。』の4人の登場人物を掘り下げた4編オムニバス。 映画の中ではほとんど語られない,一人ひとりの裏側が明かされる。 映画のあのシーンで,彼女や彼はどんな立場でいたのか,どんな心境でいたのか。 どの物語も文章の運びに勢いがあり軽妙で読みやすいながらも,心理や情景がとても深く描かれていて感動した。 4編のどれもがそれぞれに光っていたけれど,妹の四葉の「アースバウンド」と,特に父の俊樹の「あなたが結んだもの」は秀逸。 本編に比肩する奇跡のストーリーであった。 映画を見た人には是非ともおすすめ。
1投稿日: 2016.12.10