K.Kさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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火星の人
アンディ・ウィアー, 小野田和子 / ハヤカワ文庫SF
不毛の惑星で知力を武器に独り戦う
26
ああ,もう本当にこれは素晴らしい!
不慮の事故でたった一人火星に取り残された宇宙飛行士ワトニーのサバイバルストーリー。
一歩間違えば死という過酷な環境を生き延びるため,物資と知力を駆使して四苦八苦。…
そのリアリティある展開に終始“目も心”も奪われる。これが科学だ!
そして随所で披露されるワトニーのユーモアが秀逸。思わず噴き出してしまうけれど,
そのユーモアが深刻な事態を冷静に見通す目であり,状況打破の根幹だろう。
今年読んだ最高の物語。感動! 続きを読む投稿日:2014.10.13
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土漠の花
月村了衛 / 幻冬舎文庫
熱い!
15
遥か異国のソマリアで救出活動の任務にあたる陸上自衛隊空挺団を現地ゲリラが襲う。
息をつかせぬ猛追からの撤退戦。
その展開から目が離せず,ページをめくる手が止まらない。
特殊な事情を抱える自衛隊だから…こその葛藤や,複雑な心情をもつ間柄でありつつも,
自らの使命を成し遂げようとする自衛官の使命感・絆に心揺さぶられる。 続きを読む投稿日:2014.10.20
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作家の収支
森博嗣 / 幻冬舎新書
すべてがマイナ化する
7
淡々とというかズバズバとありのままを述べる安定の森節。
印税その他、収入と支出の話はまあそうだろうね、という感じで、一例としてとてもおもしろい。
それはともかく、終盤の、出版のみならず、ものの売れ方に…ついての未来というか現状もズバリ。
すべてがマイナ化する。
関係ないけど、私も早く一日の労働時間を1時間にできるように努力したい。 続きを読む投稿日:2016.02.21
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屍者の帝国
伊藤計劃, 円城塔 / 河出文庫
禁忌的な世界に引き込まれる
6
舞台は,死者を甦らせて使役する技術が普及した19世紀末。
脳内イメージはロバート・デ・ニーロ主演の映画『フランケンシュタイン』そのまま。
灰色で茶色の視界が広がり,その禁忌的な世界にすぐさま引き込まれ…る。
そして,人の意識の根源を問う古くて新しい視点に釘付けに。
歴史改変具合が絶妙で,そこにつながるのか! と惚れ惚れ。
何より驚愕の結末に戦いた。
多くを円城塔氏が書き継いだとはいえ,夭折した伊藤計劃氏の『虐殺器官』『ハーモニー』に通じる
“何か”をその文章から感じずにはいられかった。文庫版あとがきも必見。 続きを読む投稿日:2014.12.31
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My Humanity
長谷敏司 / ハヤカワ文庫JA
しみ出すような後味の悪さも,心を惹きつける
4
SFとはつくづく「人間」を問う物語である。
短編4編からなるこのMy Humanity。
疑似神経制御言語による人格の補完技術,人の知性を超えた超高度AI,
自己増殖し人の制御を離れてしまったナノマシ…ンと,その超テクノロジーに心をくすぐられないわけがない!
しかしやっぱり物語の根幹は,それら超テクノロジーを介して描かれる「人間性」。
4編通して,えも言われぬ絶望感や後味の悪さがしみ出すような物語であるのに,
どれもこれもが,ぐっと心を惹きつける。
長谷氏が描く絶望的な物語は,とてもよい。 続きを読む投稿日:2015.02.16
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天冥の標 IX PART1 ヒトであるヒトとないヒトと
小川一水 / ハヤカワ文庫JA
ここへきて再加速する物語!
3
前巻ラストからこの巻で話が収束していくのだと思いきや,
新たに明かされた事実によって再び物語が「加速」するとは!
そうした世界の進行と並行して描かれる,ヒトと元ヒトとヒトでないものたちとの
共存・愛情…のあり方というシリーズを通したテーマもみどころ。
壮大な物語の行き着く先はどうなる? 次巻が待ち遠しい! 続きを読む投稿日:2015.12.31