
かがみの孤城
辻村深月
ポプラ社
終盤は圧巻だが
導入部から前半部分はこの作者が得意とする悪意がじっとりと漂う学校いじめもの、悪意が鼻について全く感情移入できず、読んでいて途中で投げ出したくなった。中盤からようやく読みやすくなり、終盤は圧巻となった。しかし推理小説としてみた場合、登場人物たちが「現在の年 や世の中の出来事 TV番組 流行り物」について全く話をしなかった 可能性はまずないので、仕掛は破綻してると思う。
1投稿日: 2022.07.28
ダイロクセンス(3)
長門知大
週刊少年マガジン
コンパクトにまとめたな
ダラダラと長く続くシリーズが多い中、この作者はコンパクトに3巻でまとめた。このほうが中身が詰まっていて良いように思う。この巻は、主人公ルイのトラウマの謎解きを兼ねた回顧録部分と事件の解決部分が盛り込まれていて比較的濃い内容になっている。ハッピーエンド的な明るさを保った終わり方なので、読後感は悪くない。もっともこの作者は前作「将来的に死んでくれ」のようなコミカルな作品のほうが相性が良いのではないかと感じた。
0投稿日: 2022.07.26
蛇にピアス
金原ひとみ
集英社文庫
これが芥川賞か?
確かに刺激的衝撃的な作品ではあるが、逆にそれ以外の要素に何があるかというと考え込まざるをえない。パンクな人々の生態を赤裸々に描き出した というだけに過ぎないような気がする。とは言うものの芥川賞作品というだけあって、文章はこなれていて難解な言い回しもなくスラスラと読めることは読めるが、世界観について行けない。
0投稿日: 2022.07.26
ラスト・ワルツ
柳広司
角川文庫
まとまりにとぼしい
D機関にまつわる連作短編集である。各々の短編そのものはまずまず面白いのだが、一冊の本としてみた場合、各短編間の関連性が殆どなく、ブツブツと切れてしまっている感じが残念である。D機関のメンバーが優秀なのはよく分かるが、ストーリーの展開があまりもご都合主義な感じがして白けてしまう。 とは言うものの単純に読み物として大変に面白い。
0投稿日: 2022.07.25
末世炎上
諸田玲子
講談社文庫
平安朝の闇
平安朝の上辺は華やかであるが、覗き込んでみると深い闇を抱えている、そんな時代をミステリータッチで描き出している。当時実在すると信じられていた怨霊などを実に巧みに使っている。最後はハッピーエンドとは言えないとは思うが、単なるハッピーエンドより遥かに印象深い終わり方である。
0投稿日: 2022.07.25
ワンナイト・モーニング(7)
奥山ケニチ
ヤングキング
中だるみかな
このシリーズも巻を重ねて第7巻目になった。初めの方の巻にあったピリピリした切ない雰囲気が薄れ勝ちになり、ほんわかしたホームドラマ的な雰囲気が増してきているような気がする。ちょっと残念である。ただし絵柄は引き続きしっかりとしていて可愛らしくとても読みやすい。
0投稿日: 2022.07.25
イサック(13)
真刈信二,DOUBLEーS
アフタヌーン
激しい戦いの連続
この巻の登場人物やストーリーはすべて激しい戦いの描写でそれ以外の要素はまったくない。戦いの描写はしっかりした絵柄と合わせて、大変に手に汗を握る迫力あるものであり読み応えがある。ただ戦い以外の要素がまったくないのも、ちょっとどうかとは思う。
0投稿日: 2022.07.25
黄金旅風
飯嶋和一
小学館文庫
現代の政治にもつながる群像
江戸時代初期 鎖国直前の長崎を描いた作品である。登場人物たちに馴染みがないのでフィクションと史実の区別がつきづらいが、ある程度史実を下敷きにしているように思われる。この作家の他の時代物作品にも現れるような、政治 社会への怒りが底流として流れている。とは言うものの他の作品と比べて華やかさにかけているかな。
0投稿日: 2022.07.24
出星前夜
飯嶋和一
小学館
長大な作品
同じ作者の「雷電本紀」の流れをくむ 政治・社会への怒り 絶望感を主題として打ち出した長大な作品である。一部と二部とでかなり雰囲気や緊迫感が異なるが、やはり激しい戦いの描写が凄まじい迫力を伝えてくる第二部のほうが読み応えがあるかな。宗教そのものが持つ一種のいかがわしさもいくらか感じることができる。
0投稿日: 2022.07.24
くれなゐの紐
須賀しのぶ
光文社文庫
雰囲気はいいが
大正時代、大震災前の浅草が舞台の悪漢もの というわかりやすく 雰囲気があるストーリーの舞台である。芙蓉千里や神の棘 革命前夜などの重厚な歴史ものとはまったく異なるラノベっぽい雰囲気の作品である。まあコバルト文庫出身の作家だからこの系統が得意なのも当たり前か。気軽に読めるがそれほど手応えはない。
0投稿日: 2022.07.24
