ずっと高レベルのストーリー展開を実現してきたこのシリーズだが少しだけ息切れかと思わせるような巻であった。整形外科以外に記憶喪失や頭蓋骨からの復顔と言った新たなる視点や手法を持ち込んでいるが今一つ落ち着きが悪い。ただし叶精作の華麗な絵柄は健在である。

紛争もののエピソードが特に印象に残った。「1枚の写真が世界の世論を動かす」ということが実際あったが、このエピソードもそれに近いものを描き出している。この話では主人公は完全な脇役になっている。その他の話もなかなかレベルが高い。

整形外科といえば当然美容整形外科を想起する。美容整形大国と言われる隣国の世相批判については月並みだけれど考えさせられた。第一話も類似のテーマである。時事ものテロ物もあり変化に富んだ内容である。もちろん叶精作の華麗な絵柄は健在である。

まず叶精作の華麗な絵柄がとても目を引く。その上 ゴルゴ13を少し思わせるような主人公がいろいろな事件 出来事をさばいてゆく。単なる勧善懲悪ものだけではなく人情もの 時事物などストーリーの主題もバラエティに富んでいる。

浅田次郎が得意とするいくつかの分野の中での自衛隊ものである。現在でもそうだが憲法違反と言われている中途半端な日陰者状態の自衛隊と、日本を破滅に至らせたと言われている旧帝国陸軍のせめぎあいを読み取ることができる。この当時と比べるとマシにはなったがまだまだ日陰者なのかな。

絵はきれいだけれどストーリー展開はごくごく単純で全く深みがない。長ったらしい題名がストーリーの内容を象徴しているが、登場人物のキャラクター設定がありふれていてしかもストーリーがあってないようなものなのでなんと言いようがない。

青春の日常風景に限定し、登場人物も基本二人に限定し、舞台も限定し と厳しく限定しているにも関わらず、読者にほとんどそれを意識させないさりげない技巧が素晴らしい。どの話も相当に意表をついた謎解きであった。謎解きは脇において社会的問題にもなった赤と緑の話が印象に残った。

取り立てて特徴はないのだがとても可愛らしい二人の物語である。イチャイチャぶりが初々しい。読んでいてニヤニヤ笑いが止まらない。絵柄もストーリーの雰囲気をよく反映していて可愛らしいし、とても読みやすい。ただあまりにも当たり前なので、ちょっと退屈かな。

いま戦いの中にあるウクライナからポーランドにかかるガリチア地方の19世紀なかばの話。19世紀なかばなのに中世のような土俗的な風習にまみれた農民たちと役人夫妻 地主夫妻。独立革命の話も絡んでいるが、土俗的な奇習の話と必ずしも相性が良くない。どうにも落ち着きの悪い作品だと感じた。

ダラダラと続くシリーズが多い中、一応四巻でまとめ上げたところは良いと思う。このシリーズの魅力はしっかりかっちりしてしかも丁寧な絵柄である。24区の風景描写の書き込みは大したものである。しかしストーリー内容の方は、要所に登場する少年漫画ヒーローたちにどうも違和感がある。絵がいいので次回作に期待する。