
イノサン 4
坂本眞一
週刊ヤングジャンプ
華麗な絵で
華麗な絵でこの上なく残虐な場面を描き出している。処刑人の内心の葛藤は、時代も場所も全く違うが日本の江戸時代の処刑人一家 山田浅右衛門を描いた 綱淵謙錠の「斬」を思い浮かべてしまった。華麗な筆致で象徴的な場面を多く描いているので、ストーリーの進むテンポとしてはかなり遅い。しかしあまりにも凄まじいので、この程度が良いのかもしれない。
0投稿日: 2023.03.22
イノサン 5
坂本眞一
週刊ヤングジャンプ
次女マリーのデビュー
次女マリーのデビューがいかにもサンソン家らしく凄惨でしかも華麗である。このシリーズ全般に言えることだがとにかく絵が豪華で華麗でしかも凄惨である。全く画風は違うが、芳幾や芳年の無残絵を思い出した。デュ・バリー夫人やマダムベルタンを登場させたところも面白い。
0投稿日: 2023.03.22
跳ぶ男
青山文平
文春文庫
清冽な雰囲気
多くの人にとって全く馴染みのない「能」をメインテーマに据え、能をストイックに追求する主人公を、これまたストイックに微細な心情描写で描きこんでいった作者に敬意を評したい。清冽な雰囲気と心情描写が、森博嗣の「ヴォイドシェイパシリーズ」を思わせるところがある。ただ一つ難を言えば、最終幕のところ。この程度の行為で幕府から譲歩を引き出すことができるのか、今ひとつ腑に落ちなかった。
0投稿日: 2023.03.21
#真相をお話しします 無料お試し版
結城真一郎
新潮社
怖い話
ミステリーとしての完成度はまずまずの水準である。今流行りのユーチューバーがという ストーリー背景やスマホなどの小道具類は、それほど凝っているわけではないが効果的な使われ方がされている。せっかく「子供が四人しかいない小さな島」というストーリー舞台を設定しているのだから島らしい天候や風俗をトリックに取り込めばより良かったと思う。
0投稿日: 2023.03.19
残月記 【無料お試し版】
小田雅久仁
双葉社
忍び寄る怖さ
淡々として平易ではあるが底の見えない不気味さ.仄暗さを湛えた語り口.文体が大変に良い。自分自身のものだと信じて疑わなかった生活.家族が突然にすり替わったら という、SF ファンタジーなストーリー設定を非常に自然に表現している。テーマである「満月」の扱いも大変に巧みである。
0投稿日: 2023.03.19
AX アックス
伊坂幸太郎
角川文庫
殺し屋シリ-ズ三作目
グラスホッパー、マリアビートルに続く殺し屋シリーズ三作目である。連作短編集の形を取るが、前半3作と後半2作とでずいぶん色合いテイストが違う。最後の解説を読んでテイストの違いに納得した。私は前半三作の軽妙で技巧を凝らした軽い味わいの作風のほうが好きだな。
0投稿日: 2023.03.18
あさのあつこ短編小説 夏を見上げて。
あさのあつこ
物語を創ろう!
少年時代
少年時代の淡い思い出を描いたような作品である。直接の関係はないが井上陽水の古い曲を思い出した。作者あさのあつこが少年たちの気持ちを感情移入しながら語っているのが印象的である。しかし私は今ひとつこの作者の語り口が好きではない。
0投稿日: 2023.03.14
神田川デイズ
豊島ミホ
角川文庫
冴えない人たちの連作短編集
冴えない人たちを次々と描いた連作短編集である。どの短編の主人公も何らかの屈託を持っていて、新しい環境に馴染めなく、落ち着き場所を探しているという感じである。どの短編も面白くないわけではなく、不愉快なところもないが、主人公たちのややいじけた感じが読みてにまで伝わってきて、どの短編もスッキリとしない読後感であった。
0投稿日: 2023.03.13
ヘヴンリー・ヘヴン Heavenly heaven
沢木まひろ
MF文庫ダ・ヴィンチ
やや不器用な
やや不器用な大人の恋愛をえがいた短編集である。各短編間の明確なつながりはないが、どの短編も似た雰囲気をまとっている。そしてどの話もハッピーエンドではないが、だからといって絶望的な終わり方をするわけでもない。その微妙なところがこの短編集、そしてこの作者の味わいなのかもしれない。
0投稿日: 2023.03.13
変な絵 【無料お試し版】
雨穴
双葉社
たしかに怖い
すんなりサラリと読めるような読み易さはあるのに、後で恐怖感が蘇ってきてゾッとしてしまい、その次が読みにくくなった作品である。伏線や謎解きという点で見るとやや無理筋なところもあり、ミステリーとしての出来は超一級品とはいえないが、それにもまして地味な恐怖感がこの作品の魅力と言えるだろう。変な家も読んでみよう。
0投稿日: 2023.02.28
