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じゃがいもさんのレビュー
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  • 禍 無料お試し版

    禍 無料お試し版

    小田雅久仁

    新潮社

    斬新な手法

    SFやホラー小説で「他人の体に憑依する」というのはよく使われる手法であるが、耳を使った手法というのは秀逸である。言われてみれば随分 不気味だしな。ストーリーの構成はとても良いが、語り口がどうにもベトベトしていてあまりこのみにあわない。

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    投稿日: 2023.05.23
  • 銀閣建立

    銀閣建立

    岩井三四二

    講談社文庫

    国宝 銀閣寺

    時代小説としての面白みよりも、職人史 寺社建築史としての面白みのほうが勝っている作品である。国宝銀閣寺の外見がどうもチグハグな理由もよくわかった。 主人公の家庭内の悩み 室町時代末期の荒れた世の中 無理な取り立て 等の要素も加えているが、やや中途半端かな。オチの部分の地獄極楽の部分も今ひとつ腑に落ちない。

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    投稿日: 2023.05.23
  • 江戸の高利貸

    江戸の高利貸

    北原進

    角川ソフィア文庫

    国の富とは?

    江戸時代の支配者階級の多くは、「国の富=米」と信じて疑わなかった、江戸時代の武士の窮乏化はこの点に尽きると思う。本書はこの課題を直接取り上げることはないが、根本原因に対策をせず、糊塗策に終始するとどうなるかを描いている。本書の主人公である札差もこの矛盾した体制に依存しているため、幕府と運命を共にした と書いてあるが実に感慨深い。

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    投稿日: 2023.05.22
  • 空挺ドラゴンズ(15)

    空挺ドラゴンズ(15)

    桑原太矩

    good!アフタヌーン

    息抜きの巻

    緊迫感に満ちた第14巻の戦いの後日談のような巻であり、大きな山場はない。過去を振りかえるシーンや父と息子の話、昔の戦争の話など、切れ切れのトピックスの羅列のようで、読んでいて戸惑うことがあった。次巻以降が楽しみである。

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    投稿日: 2023.05.20
  • 小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む

    小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む

    増川宏一,北村六合光

    角川ソフィア文庫

    事実の記録という重み

    書かれてある内容は、江戸時代を舞台とした小説やドラマ 解説本なので繰り返し述べられてきたものであり、それほど目新しいものではない。しかし、この「会所日記」が150年間も書き続けられた本物の行政文書である という事実は非常に重たい。最後、戊辰戦争の記録で終わるところなど実に感慨深い。 小説やドラマの「捕物帖」を思わせる犯罪捜査記録も面白い。実際にこのようなことがあったのだと認識させられた。

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    投稿日: 2023.05.19
  • 天地雷動

    天地雷動

    伊東潤

    角川文庫

    多数の視点から

    使い古された戦国時代の終盤戦「長篠の合戦」をテーマにした作品であるが、作者の巧みな筆さばきにより極上の料理に仕上がっている。章ごとに語り部を変え複数視点からの作りになっている。信長や勝頼たち有名武将の語りだけではなく、農兵の語りも入っていることにより作品の奥深さが出ている。鉄砲商人や鉄砲職人の語りが入っていればよりいっそう面白くなったことだろうと思う。

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    投稿日: 2023.05.17
  • 続 悪霊列伝

    続 悪霊列伝

    永井路子

    ゴマブックス

    後書き

    著者の主張したかったことが巻末の後書きに手際よくまとめられている。本書及び前巻はこの後書きの主張の実例 という位置づけである。政治というものは今も昔も人々にとっては不満の多いものであり、不満のぶつけ先としてしばしばスケープゴートを必要とする。その道具の一つが悪霊であるというのは大変に面白い。現代では政権交代やデモになっているのかな。

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    投稿日: 2023.05.16
  • 戦国秘譚 神々に告ぐ(下)

    戦国秘譚 神々に告ぐ(下)

    安部龍太郎

    角川文庫

    筆を折ったような

    筆を折ったような終わり方にがっかりしてしまった。権威とは人々の気持ち 信仰 信心があって成立するもの。そのための道具立てとして伝統 慣習 仕来り 儀式があり、天皇を始めとした公家衆がいる。前巻に引き続き旧来の権威側の近衛前嗣と新興勢力側の松永久秀そして織田信長の対比が際立っている。それはいいのだが、オカルト的な手法の多用はどうも。

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    投稿日: 2023.04.30
  • 戦国秘譚 神々に告ぐ(上)

    戦国秘譚 神々に告ぐ(上)

    安部龍太郎

    角川文庫

    対照をなす二人

    織田信長の伝奇などにしばしば姿を表す「関白・近衛前嗣」とはこのような人物だったのだな、と認識を新たにした。構成の我々の視点から見ると、天皇中心の王政へ復古しようとする努力が痛々しくも的外れであることがわかっているだけに、なんとも情けない。対象としての実力本位 下剋上の松永久秀の存在 振る舞いが際立っている。

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    投稿日: 2023.04.29
  • 雷の季節の終わりに

    雷の季節の終わりに

    恒川光太郎

    角川ホラー文庫

    ホラーファンタジーにやや残虐さが

    同じ作者の「夜市」や「夜行の冬」で際立っているリリカルで繊細な雰囲気がこの作品全体にも漂っている。ただ他の作品と比べるとむき出しの暴力や殺人が描かれていて、私として今ひとつしっくりこない。やはりこの作者は、長編よりは中.短編で余韻を持って話をまとめたほうが落ち着きが良いのではないかと感じた。

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    投稿日: 2023.04.28
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