
被害者は誰?
貫井徳郎
講談社文庫
軽いと侮るなかれ。
貫井さんにしてはライトなテイスト。連作短篇集。表題作『被害者は誰?』豪邸の庭から白骨死体が見つかり、その家から犯行に至る手記が見つかる。その手記を元に被害者を推理する。どの話にもユーモアと騙しが隠されていて、うわまた騙されたーの連続。典型的安楽椅子探偵、吉祥院慶彦は頭脳、美貌、態度も全てスーパーでありつつどこかゲスい。なので、ラストの『名探偵は誰?』で、え?ってなって、うわまたまた騙されたー!! という流れに気持ち良さすら感じた。軽いと思って楽に読んでいたら騙されまくった一冊でした。
7投稿日: 2016.07.10
トリックスターズD
久住四季
メディアワークス文庫
学園祭の最中に起きた、魔術による監禁事件。シリーズ第三弾。
シリーズ第三弾。 前作で、前々作に出てきた周に関するアレコレが伏せられていたのが、こういう形で活かされるのは面白い。これ一冊でも楽しめるけれど、やはり真犯人を予想するには前二作は必須か。学園祭の最中に起きた魔術による監禁事件。シリーズ最初からメタ色が強かったけれど、煙に巻こうという意識をすごく感じるので、逆に淡々と読めたような、よく見ればシンプル。周の成長が一番の驚愕だったかも。いつの間にそこまで…!
6投稿日: 2016.07.10
キケン
有川浩
角川文庫
無茶も馬鹿も、何事にも全力!
何事にも全力!無茶も馬鹿も本気の本気。成南電気工科大学にあるサークル「機械制御研究部」通称キケン。部長のユナ・ボマー上野を筆頭に、副部長も二つ名を持つ癖物ぞろい。1回生の元山と池谷が、入学早々そのサークルに引きずり込まれる場面から物語は始まりますが、”彼”が昔を懐かしむ回想録的な書かれ方は、終盤になるにつれ、あの楽しかった頃には戻れないという一抹の淋しさも滲みます。が、新入生獲得ミッション、学園祭の奇跡の味、ロボット相撲。楽しくて楽しくて、あっという間に読み終えた一冊でした。
12投稿日: 2016.07.05
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ
知念実希人
幻冬舎文庫
性格に難ありな、天才美容外科医。
天才美容外科医・柊貴之は、自他共に認める超一流。ただし性格には難あり。金さえ積めば、どんな手術でも引き受ける彼の元には、幾つもの厄介な依頼が舞い込んでくる。物語は、柊と、新しく雇った麻酔科医・朝霧明日香との掛け合いで進んでいき、やがて四年前に起きた連続殺人事件との関わりが見えてくる…。幕間で感じていた違和感は、成る程ラストでスッキリ。あの展開は面白かったけれど、登場キャラの名前があからさま過ぎでニヤニヤしてしまった。俗物で軽薄…なのは、柊先生の仮面の1つかな。読了感も良く、満足。面白かったです。
6投稿日: 2016.07.05
オペラ・フィオーレ 花よ荒野に咲け
栗原ちひろ,THORES柴本
角川ビーンズ文庫
ミリアンの過去がほんのりと…な、シリーズ第三幕。
シリーズ第三幕。カエキリアから闇魔法教会へと。カナギ、ソラ、ミリアンの三人が、仲間として自然になってきた。ミリアンが自分に素直になって、どんどん可愛くなっていく。ソラも、カナギとミリアンに影響されてなのか、超越した存在から人間味が出てきたというか。闇魔法教会の教主は全くもって食えねえジジイで面白かっただけに残念だ。今後は光魔法教会と闇魔法教会の争いに発展…って事なんだろうか。黒いゆりかごや、ラストに出てきた光魔法教会の教主、ラングレーの言動、物語はますますきな臭い。バシュラール…お前、それでいいのか?
4投稿日: 2016.06.13
トリックスターズL
久住四季
メディアワークス文庫
うーん。
テンポよくサクッと読了。面白かったですけど、相変わらず煽りすぎ感。最初の実験段階からバレバレじゃないですか。というわけで「あっと驚く結末」という割に驚きませんでしたが、それでも佐杏先生の奇行とか、周のトンデモ推理とか、『嵐の山荘』の定義とか、ツッコミ入れつつも楽しめました。Lの結末は悲しいなぁ。 周に関する(前作で明かされた)あれこれが今回のストーリーに全く出てこない…のは次作への布石かなんかですかね?
7投稿日: 2016.06.13
暗黒館の殺人(四)
綾辻行人
講談社文庫
幻想怪奇小説としてなら…
最終巻。頭の芯が痺れるような読了感。長かった。 んーー、幻想怪奇小説としてなら文句なく面白かったと思うけれど。ミステリとしてはどうかな…変化球というか暴投気味。あざとい。超常現象的なものではなく、ロジカルな結末を期待していたので、視点の正体とか、偶然とか偶然とか偶然とかのラストとか、ぶん投げ感には 「あ、はい…」 としか言えなかった。 中村青司のエピソード0という意味合いでは雰囲気も良く楽しめましたが、読了後に疲労感を覚えている時点で、残念ながらこの結末は私には合わなかったようです。
7投稿日: 2016.06.02
暗黒館の殺人(三)
綾辻行人
講談社文庫
核心に迫る…
浦登家とダリアの核心に迫る三巻目。浦登って名前から連想するヴラド・ツェペシュ。暗黒と血…とくれば吸血鬼かねーそんな単純じゃないかなーなんて一巻目を読んでいた時に漠然と思っていたけれど、中也が食べさせられた「肉」もストレートに想像通りだったし、そこら辺りは意外と普通だったような。(普通の定義がオカシイ…)しかし、なぜ中也が選ばれたのか、視点とは一体…と、謎は残る。江南くんはどうなるのか、鹿谷はいつになったら登場するのか、ラスト数ページでの展開…美魚と美鳥はどうなってしまうのか。いよいよ次巻ラストへ。
6投稿日: 2016.06.02
暗黒館の殺人(二)
綾辻行人
講談社文庫
幻想怪奇小説のような雰囲気
全四巻の二巻目。冒頭からの殺人事件。事故で大怪我を負い、そのまま放置していても死んだであろう蛭山が絞殺される。それは無駄な殺人なのか。物語全体に漂う薄ら寒さ。外部との交通手段も、連絡手段すら遮断され、隔絶されてしまった暗黒館。そして第二の絞殺。十角塔から墜落し、記憶をなくした江南くんにも回復の兆しは見えず。中也が食べさせられた「肉」とは何だったのか。どんな意図があるというのか…何も知らされずにダリアの宴に参加させられた中也が気の毒でならない。市郎が漸く表に登場も、物語はまだ、薄暗く広がったままです。
6投稿日: 2016.06.02
暗黒館の殺人(一)
綾辻行人
講談社文庫
シリーズ第七弾。
全四巻の一巻目…まだまだ序章かな。蒼白い霧の峠を越えた先、湖上の小島に建つ漆黒の館・暗黒館。当主の息子である玄児に招かれた大学生・中也の「私」視点で物語は進む。忌まわしき浦登家。どこもかしこも暗い屋敷。十角塔の上には座敷牢。美しいシャム双生児。奇怪な宴。まるで昭和初期に書かれた怪奇幻想小説のような雰囲気です。 今までのシリーズに登場した名前もチラホラ。そして中村青司の名に惹かれ、暗黒館に辿り着き、導かれるように上った十角塔から墜落したのは…!! さて次巻。
7投稿日: 2016.06.02
