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ナチ_コチ_ショチさんのレビュー
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  • 夜を急ぐ者よ

    夜を急ぐ者よ

    佐々木譲

    集英社文庫

    佐々木譲の初期のころの作品 : 佐々木作品を全部読みたい方にはどうぞ!

    代表的な作品と言えば、『笑う警官シリーズ』、『警察の血シリーズ』などの警察小説があげられるが、『エトロフ発緊急電』等の近代史をテーマにした優れた小説も多い。この『夜を急ぐ者よ』は初期のころにかかれた作品で、ハードボイルドを意識しすぎて、ストーリーのプロットが雑になってしまった感はある。小説の完成度としてはお勧めできないが、後の佐々木作品につながるであろう雰囲気は味わえる。

    0
    投稿日: 2014.07.13
  • 硝子のハンマー

    硝子のハンマー

    貴志祐介

    角川文庫

    主人公は、ある意味、日本版ルパン三世か?!

    貴志祐介本の初読。何年か前に話題になっていたのを記憶していたので、カドカワセールの折に手に取ってみた。文章力があり、リズム感もあり、最後まで飽きずに読めたが、内容の割にはボリュームがあり、途中の中だるみ感はぬぐえない。主人公である榎本径は、前職が泥棒くさいというより、現在でも立派な泥棒でありながら探偵業もこなすという今までにないキャラクター設定が大変面白い(推理小説ファンには堪らないと思われる)。エピローグ的に登場するダイヤのすり替えもお見事。

    0
    投稿日: 2014.07.10
  • 箕作り弥平商伝記

    箕作り弥平商伝記

    熊谷達也

    講談社文庫

    前半はコミカルに、最後はほろっとくる佳作

    生まれつき左右の足の長さが違う弥平の二十歳までを描いた小説。小説の始まりはコミカル調ですんなりと入っていける。後半は、弥平のおキヌに対する恋情が中心になるが、エタ・非人といった部落問題・サンカ問題も取り上げられていて、ページ数の割には内容は盛り沢山。弥平の直向きな一途さに頭が下がると同時に、何処かに旅立ったおキヌ一家にも幸あれと願う。

    1
    投稿日: 2014.06.28
  • 血の轍

    血の轍

    相場英雄

    幻冬舎文庫

    多少は誇張のある警察小説と思うが・・・ストリーは起伏に富み面白かった。

    公安警察(ひたすら冷徹の世界)がここまで個人をマークしているのかと考えると不気味に思える部分はあったが、かって刑事部(ある意味、義理人情の世界)に所属した兄弟分の志水と兎沢が袂を分かち、理解しえぬ関係になるのは痛々しくもある。ストーリーテリングとして読むには面白い小説だが、人によっては苦手な世界かもしれない。殺伐とした刑事vs公安の対立の中で、エピローグが秀逸。

    3
    投稿日: 2014.06.24
  • 夢は荒れ地を

    夢は荒れ地を

    船戸与一

    集英社文庫

    一味違う、破滅の文学・・・希望の残る船戸節

    カンボジアの闇(政府の腐敗・人身売買・文盲率)がテーマとなっており、ベトナムを舞台とした『蝶舞う館』と同じような設定と想像しながら読んだが、はるかに迫力のある、各登場人物の描写にも血が通っている読みごたえのある一冊であった。この本には船戸作品に固有の殺伐としたやるせなさが感じられない。それでいて、辺境に思いを寄せる船戸氏の意欲もひしひしと伝わってくる。この手の作品(船戸作品)が苦手な読者にもお勧めの一冊。

    1
    投稿日: 2014.06.21
  • 燃ゆる樹影

    燃ゆる樹影

    藤田宜永

    角川文庫

    大人の恋愛は未だによくわからない

    小説前半は、『焼けぼっくいに火がついた』的な雰囲気で熟年どおしの恋愛が連綿と展開(再開)される。単なるまどろっこしい恋愛小説(?)と思いながら読み進めていくと、後半には、色々なものが重層をなしながら、小気味よく流れるようになる。前半(導入)を我慢すれば、後半は一気読みか。もういい加減いい歳の私でも、この手の恋愛はよく分からない。

    1
    投稿日: 2014.06.13
  • パレード

    パレード

    吉田修一

    幻冬舎

    5人の奇妙な同居者たちの、それぞれを一人称とした5つのプロット・・・最後に何で

    5人の男女が、それそれ私・僕・おれなどの一人称で5つのストーリーが展開される。同じ出来事を別の観点から見ていくのが面白い。作家自体に文章力があるので、それなりのテンポで読んでいけるが、最後に何で暗転する?久しぶりに純文学を読んだ感じがした。

    6
    投稿日: 2014.05.24
  • 朝倉恭介

    朝倉恭介

    楡周平

    角川文庫

    大作 朝倉恭介vs川瀬雅彦シリーズの最終巻にふさわしい仕上がり

    2,4巻の川瀬雅彦シリーズは面白かったが、1,3,5巻の朝倉恭介シリーズは、主人公が『あまりにも完全無敵のダークヒーロー』だったために、感情移入できずにきたが、最終巻での無敵ぶりに綻びが生じたあたりから人間らしさが出てきているところが面白い。最後は、善玉vs悪玉(このシンプルな構図にするところが好きではないが)という人間どおしの接触および会話が興味深く、海に飛び込んだ朝倉恭介がどこかで生き延びているかもしれないと期待しつつ、楡氏の大作に乾杯!

    0
    投稿日: 2014.05.16
  • ターゲット

    ターゲット

    楡周平

    角川文庫

    ウイルス兵器を巡るCIA vs 北朝鮮の戦い。落合信彦氏の小説を彷彿とさせるが・・・

    プロットが緻密であり、いかにもありそうな(実現可能な)小説で、迫力もありスリルもあった。この意味ではストーリーとしては面白かった。ただし、朝倉恭介シリーズは、一貫して人物の深掘りが少なく登場人物に入り込みにくい。私としては、若いころに読んだ落合信彦氏の小説の方が分がある。

    0
    投稿日: 2014.05.11
  • あの空の下で

    あの空の下で

    吉田修一

    集英社文庫

    読みやすい文体。可もなく不可もなく、お手すきの折に丁度いい。

    吉田修一氏の初読。文章にはリズムがあり読みやすい。『翼の王国』に各月毎に掲載されたエッセイ集だが、統一されたテーマがあるわけではなく、まとめて読むというより、ちょっとだけ時間が空いたときに一つづつ読むのにちょうど良い。

    0
    投稿日: 2014.04.28