Reader Store オフィシャルさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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夏への扉
ロバート・A・ハインライン, 福島正実 / ハヤカワ文庫SF
SFを好きになりたい人へ
15
「SF」と聞くと、「何だか難しかったり面倒くさそう」と感じる人も多いかもしれません。でも、ご安心を。『夏への扉』はそんな方へのSF入門としてうってつけの本です。内容は王道のタイムスリップもの。家事用ロ…ボットを作っていた主人公ダンは、同僚のマイルズと婚約者のベルに裏切られ会社を追い出されます。悲しみの中ダンは冷凍睡眠によって30年後の世界に行くことを決めるのです。シンプルなストーリーと、きれいに回収されていく伏線。そしてロマンチックな物語。未来でダンを迎える意外な女性とは?多くのSFファンからも支持される古典とも言える1冊です。(スタッフI) 続きを読む
投稿日:2013.09.20
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旅人 ある物理学者の回想
湯川秀樹 / 角川ソフィア文庫
ただひたすら考え続けた男の半生
15
日本人として初めてノーベル賞を受賞した、湯川秀樹。
彼の成し遂げた快挙は、戦後日本の輝かしい希望として多くの人に注目されました。
そんな彼の自伝となる本書では、あくまでも平易な文章でその半生を振り返…り、科学者らしい客観的なまなざしで綴られるひとつひとつの言葉は、読み手にすんなりと染み込んでいきます。
天才として語られることの多い彼ですが、少年期はあまりパッとせず、口数も少なく、「言わん」の一言で物事を済ませる様子から「イワンちゃん」というあだ名を持っていたそうです。
それでも、幼い頃から数学だけは得意だった湯川。
物理学に興味を持ち始めるとともに、その才能は一気に開花していきます。
彼の研究内容よりも、その生い立ちがメインとなっているため読みやすく、明治から昭和初期の日本の暮らしや様子が垣間見られるのも面白いところ。
偉人の自伝、といった固さはなく、ひとりの科学者の実直な生き様を直に味わうことができます。 続きを読む投稿日:2015.09.10
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テラフォーマーズ 1
貴家悠, 橘賢一 / ミラクルジャンプ
キモい!熱い!
14
「もしゴキブリが、人間サイズになって襲ってきたら?」そんな空想を実現してしまったのがこの怪作、『テラフォーマーズ』。人間のように二足歩行で襲いかかってくるゴキブリは恐怖そのもの。圧倒的な暴力を誇る彼ら…ですが、バグズ手術を行った人間たちがそれを迎え撃ちます。昆虫や他の生物のDNAを人間の体に入れ込む、バグズ手術。オオスズメバチをベースにした毒針付きの拳を振るう者から、再生能力を持つタスマニアン・キング・クラブのDNAを持つ者まで。異能の人間とゴキブリたちが繰り広げる死闘!熱いです!(スタッフI) 続きを読む
投稿日:2013.09.20
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ガダラの豚 I
中島らも / 集英社文庫
一気読みがおすすめです!
13
本書は3部構成の長編小説ですが、時間を忘れて読みふけってしまうほど読者を引き込む魅力があります。
主人公はアフリカ文化研究の第一人者の大学教授。新興宗教やアフリカ呪術の驚異から、主人公とその家族、超…能力者や精神科医などのユニークな仲間たちとともに、“科学”と“非科学”を用いて戦うストーリーは実におもしろいです。
本書の醍醐味は、それぞれのテーマ・文化背景について非常によく研究されている点で、著者の執念と緻密さが感じられます。また、おどろおどろしい表現が多く書かれているにもかかわらず、登場人物たちのとぼけたキャラクターがあいまって、とても気持ちの良い読後感を得られるのも本書の特長と言えるでしょう。休日などに一気に読み切ってしまうことをおすすめします!(スタッフI) 続きを読む投稿日:2013.09.24
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キングダム 1
原泰久 / 週刊ヤングジャンプ
500年戦いづつける国を治める王になる男の誕生
13
これはおもしろい! 小難しいことではなく、読む快楽を与えてくれるマンガ。中国全体がまだ統一されたことのない春秋時代が舞台なのも珍しく、新鮮。国を追われた嬴政は王を目指し、戦争孤児の信は将軍を目指すふた…りの少年は、ひたすら戦い抜いて、頂点を目指します。無数のキャラクターが登場しながらも、しっかりとそれぞれの個性が描き分けられ、埋もれていくことがない。これが連載デビュー作とは思えない力。近代的な武器が発明される前の戦いは、人が人に飛び込み、物理的にぶつかり合う戦闘のみ。戦場の群衆や背景も丁寧に描かれ、遠い時代の遠い場所ということを忘れさせる没入感に、熱と勢いが溢れています。嬴政が始皇帝になるという歴史的事実を踏まえた上でなお、読み進めるワクワクが止まらない歴史ファンタジー。(スタッフI) 続きを読む
投稿日:2013.09.20
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有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいのマンガで読む。
ドリヤス工場 / トーチ
パロディがたどり着いた境地
13
水木しげるの絵のタッチ、雰囲気を忠実に再現したパロディ作品で人気を博しているドリヤス工場。本作はそのタイトルの通り、古今東西の名作たちを10ページ程度に圧縮した短編集です。
太宰治の「人間失格」、夢…野久作の「ドグラ・マグラ」といった日本の古典からフランツ・カフカの「変身」まで、あらゆる文学作品を水木しげる風味に変換していきます。
独特のミスマッチさにシュールな面白みを感じますが、お話自体は決してコメディタッチではありません。元となる作品の要所をきちんと抑えた話運びと、憂いを感じさせるラストはどれも秀逸。
一見取っ付きにくい雰囲気をたたえる本書ですが、実は至極真っ当な文学入門として機能しているのです。 続きを読む投稿日:2015.12.28