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oisomomijiさんのレビュー
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  • 死者の代弁者〔新訳版〕(上)

    死者の代弁者〔新訳版〕(上)

    オースン・スコット・カード,中原 尚哉

    ハヤカワ文庫SF

    カードの最高傑作キタ----------!!!

    「エンダーのゲーム」が映画化され、小説も再販されたのに、続編である本編は、絶版のままでした。その「代弁者」シリーズがやっと出ました!個人的には、カードの最高傑作、マイSFベスト10作品!なのですが、「エンダーのゲーム」だけを読んだ方は戸惑うかもしれません。  この作品には、戦うべき異星人もライバルの少年もいません。「エンダーのゲーム」でバガーに勝ったことでエンダーは重い十字架を背負いました。虐殺者として深い苦悩を抱え35才になったエンダーが立ち向かうのは、異星人と人類の二度めのファーストコンタクトです。豚に似た外観のピギーは、まったく理解できないバレルセ(完全な異生物)なのか、交流できるラマン(人間的に認識できるものの、べつの世界から来たよそ者)なのか?全く理解できないピギーたちの行動を、深い洞察と共感力を武器に、エンダーが謎解きをしていきます。異星人とのコンタクト/謎解きという面ではJPホーガンの「巨人」シリーズに近い面もありますが、この作品の特色は、非常に宗教的な面が強いことでしょうか。宗教家としてのカードの信念が色濃く出ています。  「彼らがやるのはただ死者の人生の真実を解明し、それを聞きたい人々のまえで語るだけです。」  この作品のタイトルにもなっている代弁者を表している言葉です。ある種の宗教として存在している代弁者の語る「真実」は時に人を傷つけ、時に人を癒します。作者の信じる「言葉の力」に圧倒されますが、とても思索的な作品です。

    1
    投稿日: 2015.06.11
  • 乙嫁語り 7巻

    乙嫁語り 7巻

    森薫

    Fellows!

    表紙がすべて??

    6巻までと絵柄もストーリーもがらっと変わります。 巻末のあとがきで作者も書いているように、この変化は、作者の意図なのでが、今までのファンの人はだいぶ戸惑うでしょう。 生まれた世界に流される繊細な主人公が、それでも徐々に変わっていく物語。イスラム世界の制限の中での女性だけの世界がどんな感じなのかは、興味深く描かれていますが、今までの荒波の中で逞しく生きる、眉太で芯強な今までの登場人物とは大分トーンが違います。 場面も、風呂やが中心で、女性の裸が溢れていて(いやらしさは無いのですが)人前で読めません、 作品の善し悪しは別として、今までの「乙嫁」ファンでこの巻を受け入れられない人もいると思います。(私はイマイチに感じました。) 善くも悪くも、表紙が総てをあらわしています。 表紙を見て「??」と感じた人はパスするのが正解です。

    1
    投稿日: 2015.04.01
  • ナナとカオル 1巻

    ナナとカオル 1巻

    甘詰留太

    ヤングアニマル

    SMの教科書デス

     この作品を読むとSMが究極の愛の形だということが伝わります。 Mの人間の相手に対する全面の信頼と委ね。Sの人間の相手への理解と思いやり。その二つがあって、初めてSMが成立するのだと。  一般誌連載ならではの抑えた表現で、裸は出さず、性行為(一般的な)もない展開が、却ってエロさ100倍!!!の作品となっています。  幼なじみで恋人未満の二人が、SMをキーワードに手探りで進む姿は、ボーイミーツガールとしてもサイコーです。今後、二人の関係がどこまで行くのか!?

    2
    投稿日: 2015.03.04
  • 姉の結婚(8)

    姉の結婚(8)

    西炯子

    月刊flowers

    昼メロ官能マンガ最終巻

    全巻とおして、きわどい描写も多く「R15では?」と思う「姉の結婚」。 ずっと疑問だったのは、主人公ヨリの動機が見えないことでした。 真木にとっては高校からの純愛で、それが高じての変態的な執着や、他の女性を拒絶する姿勢、妻との結婚に後悔する姿など、とても魅力的に描かれているのですが、 ヨリは?? たまたま体を許した不倫相手に溺れていく、ただの馬鹿女? 「ハーレクイン官能マンガ!」的な批判もネットで散見します。そんな7巻までも、昼メロ漫画として、浸れば楽しいと思いますが、最終巻では、答えとしてのヨリの動機/ヨリの心がやっと描かれ、ヨリの物語りとして昇華されます。 各巻 巻末の真木の変態4コマも大好きです。

    4
    投稿日: 2015.03.04
  • 3月のライオン 10巻

    3月のライオン 10巻

    羽海野チカ

    ヤングアニマル

    裏ボス登場!?

    ひなちゃんも無事に高校に入学し、いじめ問題も終了。零の人間的な成長も感じられ、これから将棋の世界(=闘い)中心になるかと思いきや、まさかの展開です。 でも、ホント、海野さんの人間描写、心理描写はすごくリアル。外伝的に挿入されているChap97の愛と憎しみに揺れる細やかな心情も見事ですが、今号登場の新キャラクター!!ここまでヤな奴、なんで描けるのだろう。そして現実世界にいる、こんな奴!そんなヤな奴にどう立ち向かうのか、これからの展開も目が離せません。

    1
    投稿日: 2015.02.11
  • 繕い裁つ人(5)

    繕い裁つ人(5)

    池辺葵

    Kiss

    じんわり癒され、勇気づけられる

     街に寄り添い、着る人に寄り添い。服を愛して、自分の仕事を愛する主人公を、「一人称」にせず、外からの目線で、ちょっと突き放すかのようなタッチで描かれています。  恋愛話もあるような無いような、進んでいるのかわからない感じで描かれていて、「藤井がパリに!」で大きく動くかと思ったけど、それでも淡々と...  世にあふれるヒット作品とかと比べるといろんなことがもどかしく、「もっと内面を!とか、「ドラマチックな展開を!」とか思ってしまいますが、いつのまにかこのペースが癖になります。  1巻から続けて読んで、じんわりじんわり染みこんで、5巻真ん中でほろりと泣きました。  主人公の仕事に向かう姿勢に、自分もこんな風に一途に仕事と向き合いたいと思わせてくれました。

    1
    投稿日: 2015.01.08
  • 大奥 3巻

    大奥 3巻

    よしながふみ

    メロディ

    ツンデレ好きな人にも!

     数々の賞に輝いた「大奥」ですが、家光編の完成度は群を抜いています。特にラブストーリーとしての輝きはハンパ無いです。  清廉潔白、高潔、4拍子も5拍子も揃ったイケメン有功が嫉妬に苦しむ姿も美しいのですが、将軍家光のツンデレぶりがたまりません。最高権力者にツンデレで想われたら…..!  そして歳とともに変わりゆく関係、成熟した二人が模索する愛の形。まさに大河ドラマな恋です。 2015年4月追加 「そうまでしてまもらなければならぬ徳川家とは!」  世継ぎを求めて二人を引き裂こうとする春日の局に、有功が詰め寄ります。それに対する春日の答えがこの作品のもう一つの高みを示しています。ラブロマンスとしてだけではなく、歴史哲学SFとしても、もちろん傑作です。

    1
    投稿日: 2014.12.13
  • 大奥 2巻

    大奥 2巻

    よしながふみ

    メロディ

    ジェンダーを超えた愛の形!!

     ライトノベル的な軽いSFで、イケメン達を楽しめるのかなと思って(ドラマ等は見てない勝手なイメージで)読んだけど、その深さに驚かされました。  男だけの世界で男色ネタも出てくるけど、何より女性の強さを思い知らされます。一巻であった、「一体上様は何をお考えか?」に対する答え「この国の行く末を」、二巻での「そうまでして守らなければならぬ徳川家とは?」「xxxxxxx」 今この国で政治家と自称している人たちに聞かせたい!!  1巻は人情話で、架空の江戸に読者を引き込みましたが、その謎を解く展開。歴史ものとしての層も厚く、伏線が解ける楽しみも味わえますが、そんなことを吹き飛ばす、ラブストーリーが2、3、4巻で展開されます。男と女の役割が逆転している世界で、それでも役割に縛られてもがく愛の形。「魂の結びつきは、ジェンダーを超える!」深い愛の物語を味わえます。

    1
    投稿日: 2014.12.07
  • いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)

    いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)

    竜田一人

    モーニング

    現代史の必修本です

    淡々と描かれているのは、日本のどこにでもありそうな労働者の風景。 力のあるものが上にいて、何重にも上前をはねられ、最低限の賃金しか得られない。 目の前の作業に追われ、理想の未来など考えられない。そんな日常でささやかな幸せを見いだし生きている。 日本全国どこにでもある労働者の生活。 それがメルトダウンした原発の現場にもあることを、この本は教えてくれる。 主義や善悪を出さず、現実を提示する作者の姿勢は、ジャーナリストの一つの方法論としてはありなのかもしれないが、表現者としては????? これでは、すき○のバイト体験記や、マン喫暮らしで日雇い生活記、といったものと変わらない。それでも、他には無い現場の貴重なルポとして、無視できない現代史の資料として必読の本ではある。

    2
    投稿日: 2014.11.21
  • A―A’

    A―A’

    萩尾望都

    プチフラワー

    私=私である理由

     恋人がその本人であることは何で決まるのか? 姿形?記憶?DNA? それらすべてを持つクローン、アデラド。でも恋人として自分と過ごした記憶は無い。彼女は何者なのか?  SFとしては普遍的、古典的なテーマを、見事なラブストーリーにしたてつつ、「人とは何か」を浮かび上がらせる名作!  全体としては、能力を持つ一角獣種をテーマとして、主人公は変わり、ストーリーのつながりもありません。表題作以外は、他者と違うことの孤独を軸にしたラブストーリーで、SF色は薄い感じです。  それでも表題作だけでも読む価値ありです!

    0
    投稿日: 2014.11.17