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oisomomijiさんのレビュー
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  • きのう何食べた?(1)

    きのう何食べた?(1)

    よしながふみ

    モーニング

    ふつうのカップルのふつうのごはん(ゲイ)

     いわしの梅煮、キャベツとベーコンの煮びたし、菜の花からし和え、出てくる料理はごくごく普通の家庭料理ばっかりです。出汁だって、だしの素や白だしを使うし、素材もスーパーの特売品から決めて、調理に凝りまくっている訳でもありません。でもおいしくするための細やかな気遣い、味付けが重ならないように副菜を選んだり、一品作っている途中で、他の作業をする段取りとか、普通の生活のリアリティーが、とても共感できます。レシピ本としても普通ごはんのレパートリー増になるし、ちょっとしたワンポイントが参考になります。  で、その台所に立つのが、ゲイの筧氏(イケメン弁護士43才)なのですが、ホント普通の人です。(ただし、安さを求めてスーパーをはしごしてしまう普通の主婦という意味で)  そんな普通の筧氏ですが、パートナーが同性であるため、普通の生活が普通でなくなります。筧氏に普通に接しようとするほど取り乱してしまう母親など、いろんな「ゲイあるある」的エピソードが、笑えたり、泣けたり、おいしくいただけます。  どんな人にも「普通」の生活があって、毎日のごはんがある。二人のステキな生活はストレートの人間がみても羨ましいく、癒されます。

    3
    投稿日: 2016.03.12
  • かくかくしかじか 1

    かくかくしかじか 1

    東村アキコ

    ココハナ

    正座して読みました

     2015年まんが大賞を取った時も、その前に話題本で本屋で平積みされていた時も、「ああいつものギャグ路線でおもしろおかしくやっているのネ」と早とちりしていました。先生と最初にあったエピソードで正座。「これは真剣に向き合わなければ!」と5巻最終話まで一気読み!  泣きました.....。  作者の自伝で、美術系の大学受験から漫画家になるまでが、恩師を軸に描かれています。ギャグのトーンは抑えられていますが、普通でない登場人物たちのエピソードはおもしろく「これネタじゃないの!?」「どんだけ盛ってるの!?」と思ってしまうのですが、インタビューによると全部実話だそうです。(何故、起こったことをそのまま描いているかも作品を読み進めるとわかります)  でもそんな面白エピソードを凌駕してこの作品に感動するのは、「今だからわかる、幼い自分/身勝手な自分、貴重な時間を浪費してきたこと」の数々が、飾り無く赤裸々に描かれていることです。 「昔のバカな自分をぶん殴りたいよ」という作者の言葉が何回かでます。でもそんな自分を、否定せず受け入れている。嫌な自分も含めて、「全てが血肉となって自分がいる。」という悟りと、それでも残る後悔のせめぎ合いがこの作品のすばらしさです。  自分の子どもに読ませたいけど、まだ半分も伝わらないのだろうな。これがわかるのは20年後なんだろうな、きっと。  実技試験の無い芸術学科に入って作中に描かれている脳内妖精さん状態だった自分には、本当に突き刺さる物語でした。

    1
    投稿日: 2016.03.06
  • 剣嵐の大地(下)

    剣嵐の大地(下)

    ジョージ・R・R・マーティン,岡部宏之

    ハヤカワ文庫SF

    陰謀、裏切り、死!死!死!

    数えきれない裏切りと陰謀、数えきれない死。 
どの死がもっとも哀しいのか? どの裏切りがもっとも卑劣なのか? 「ヴァラー・モルグリス」前作『王狼たちの戦旗』でアリアが受け取った言葉が、様々な場所で囁かれるようになった。 “人はみな、いつか死なねばならぬ” これがこのシリーズの裏テーマなのだろうか? そして、本作では、いくつかの謎が解き明かされる。 キングスレイヤーの真実。ティリオンの結婚の結婚の真実。 中でも、物語の発端となったジョン・アリンの死の真相は本当に驚きだ。 それにしても死が多すぎる。この世界では、誰一人幸せになれないのか? 「ヴァラー・モルグリス」

    2
    投稿日: 2015.11.21
  • 黒博物館 ゴーストアンドレディ(上)

    黒博物館 ゴーストアンドレディ(上)

    藤田和日郎

    モーニング

    一本の線にこめられた熱情!

     NHKの「浦沢直樹の漫勉」を見た。なんという線の重ね方!! あたりだけのコマに、下描きもなインクを入れる。そこにホワイトを入れ、ペンを入れ、またホワイトを入れ、を繰り返して作っていく!あの迫力のかたまりが、こんな風に作られていたとは!  今まで、藤田作品に心を揺さぶられ、泣かされるのは、卓越したストーリーテリングのせいだたと思っていた。違った、あの迫力の「線」に、魂のこもった「眼」に、あの熱に満ちた「画」にやられていたのだ!!  番組を見てそれに気づけました。作品を読んだ人には是非、番組も見て欲しいです。この作品の生原稿がアップで、真っ白い紙の中に生まれていくのが見られます。

    3
    投稿日: 2015.09.20
  • はなしっぱなし 新装版 上

    はなしっぱなし 新装版 上

    五十嵐大介

    河出書房新社

    砂浜で拾ったガラス片のようにキラキラしている宝物

     他人には全く価値がないかもしれないけど、自分にとっては大切なもの、砂浜で必死に集めた貝殻やガラス片のよう。  とても、短い作品ばかりで、起承転結の、「起」「承」で、「すとん」と終わっているような作品が多いです。その先は読者に委ねている感じ。  一作終わるたびに、一息ついて余韻に浸る。そんな詩情にあふれた作品群です。

    0
    投稿日: 2015.09.05
  • イティハーサ(1)

    イティハーサ(1)

    水樹和佳子

    クリーク・アンド・リバー社

    古代日本を舞台とした神話ファンタジー

     古代の日本を舞台に、見事な世界観で作り上げられた神話ファンタジーであり、神と人の関係を問うSFでもあります。 古来からの「目に見えぬ神々」が消えた時代、「目に見える神々」威神と亞神が外国(とつくに)より来て争う。そんな舞台が幕開けです。 美しい絵、美形ぞろいのキャラクター、破綻無いストーリー、神々の謎、本当に完成度の高い作品です。  絵だけでなく、物語で登場する様々な言葉の美しさも格別です。その人の魂に刻まれた名前、真名(真名)、現世での仮名(かな)、力を呼び出す真言告(まことのり)、作者が選び抜いた言葉は、読む人を違和感無く日本神話に吸い込みます。 第一部は「神名を持つ國」  「この國は神名(カムナ)を持つ國   未来永永末始終   多くの仮名(カナ)で呼び響(とよ)められしも   秘めし神名でよばれることはない   それ故   いかなる神々にも   決して支配されることはない」  日本という国のなりたちが、本当に自然に表現されていて、現代日本とつながっているので、「これ、古事記と日本書紀をマンガ化したんだよ」と言われたら信じてしまうくらいの『日本』がそこにあります。こんな作品が30年も前に描かれたとは。その構成力、世界観の壮大さは「指輪物語」にも匹敵します。また、神と人間の関係を考察するSFとしては、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を彷彿させます。2000年度星雲賞も受賞している傑作SFです。  巻末には、電子化にあたって、新規の作者あたがきが(2014)もあり、それもうれしいポイントです。

    1
    投稿日: 2015.07.10
  • からくりサーカス(24)

    からくりサーカス(24)

    藤田和日郎

    少年サンデー

    短くも幸せな時間

    本編では、色恋沙汰は発展しませんが、15巻のフランシーヌといい、過去編は素敵なラブストーリーに泣かされます。 そして、25、26巻では、アンジェリーナ、フランシーヌ人形、エレオノールの運命が交錯し、過去の謎が一部解き明かされます。(さらに深まる謎も) この過去編では、個人的には、ギイのマザコンの理由が一番泣けました。

    0
    投稿日: 2015.06.30
  • からくりサーカス(15)

    からくりサーカス(15)

    藤田和日郎

    少年サンデー

    最高の笑顔!

    真夜中のサーカス、ゾナハ病、この災いの元凶となった、銀と金とフランシーヌの物語はとても切ないラブストーリーです。それにしても人間フランシーヌの笑顔は素敵すぎる。この笑顔からの、「笑うことのできない」人形フランシーヌ、しろがねという流れはさすがです。

    0
    投稿日: 2015.06.30
  • 聲の形(7)

    聲の形(7)

    大今良時

    週刊少年マガジン

    感謝

    登場人物それぞれののリアルな黒さやイタさにが、思い出したくない自分を思い出させ、「読みたくない!」と身悶えしながら、読み続けた『聲の形』が完結しました。 (ネタバレになるので中身には触れません。) ただただ、この作品に出会えたことに感謝!

    2
    投稿日: 2015.06.25
  • エンダーの子どもたち(上)

    エンダーの子どもたち(上)

    オースン・スコット・カード,田中 一江

    ハヤカワ文庫SF

    順番に注意!

    ストアの解説ではわかりづらいのですが、執筆順は 「エンダーのゲーム 」 「死者の代弁者 」 「ゼノサイド」 「エンダーの子どもたち」 です。 特に、「代弁者」〜「子どもたち」は、惑星ルジタニアでのひとつながりの物語なので、「エンダーのゲーム」の次にこの作品を読むとちんぷんかんぷんでしょう。 また「シャドウ」シリーズとして 「エンダーズ・シャドウ」 「シャドウ・オブ・ヘゲモン」 「シャドウ・パペッツ」 が別の年代のひとつながりになっています。 個人的には、 ネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞を受賞した代弁者シリーズの1作目「死者の代弁者」がNo1です。 代弁者シリーズ是非読んでください!

    3
    投稿日: 2015.06.17