
日の名残り
カズオ・イシグロ,土屋政雄
早川書房
ノスタルジーや希望とは違う、スティーブンスの立つ舞台
読み初めの頃は、スティーブンスは面白い人だなあという感想が、 少し読み進めると、おいおい、大丈夫かいスティーブンス、になって、 最後のほうは、スティーブンスそれはまずい、大変まずい。というより…。 読み進めると、スティーブンスを取り巻く人や社会情勢に合わせて、 スティーブンス自身の考え方の変化をしていくのですが、 最後はやはりスティーブンスらしい結末だな、と思ってしまいました。 著者の持ち味、なんと呼んだらいいかわかりませんが、皮肉というのでしょうか。 ここは皮肉ではなく素晴らしいと感じます。 文章の端々から、ミス・ケントンに何があったかなど推測すると、本当にもう、 こんな最悪な可能性が隠れているのに、フェミニストにすら叩かれないどころか、 賞を取るなんて、不快にさせない煙の巻き方が本当にすごいと思います。 自分で選んで罪を犯したことがある人や、 自分自身をかえりみて、勘違いや思い込みで自分を正当化しているかもしれない、 と思う人が、この本を読んだら、 もしかすると、人生の新しい楽しさに気付くのかもしれない、と思いました。
1投稿日: 2017.12.12とっても優しいあまえちゃん!
ちると
ドラゴンコミックスエイジ
劇薬注意、気をつけて。
かつて、だだ甘お姉ちゃんというジャンルがありましたが、 時代は、だだ甘ロリになっていたのですね。 ばぶみという言葉は、私には、実感としてよくわからないのですが、 異性に理性があるのが嫌いという思考タイプのキャラクターは、定期的にブームが来るのかも。
0投稿日: 2017.12.06麻衣の虫ぐらし(1)
雨がっぱ少女群
バンブーコミックス
個人的には虫の気持ち悪さはそんなに。よほど苦手じゃなければ
絵がうまいとかアングルがいいとか見た目の良さもありますが、 田舎の農家がどんなお仕事、生活されているのかに想像が馳せられて、興味が湧きます。 毎日忙しく食事していると、トマトの匂いすら忘れかけていて、 昔に思いを馳せられるということは、とても豊かな事なのかなと思いました。
2投稿日: 2017.12.06パラレルパラダイス 特装版(1)
岡本倫
ヤングマガジン
恐ろししくシンプルな異世界物
主人公が男ということ、それ自体がスキルになるという、恐ろししくシンプルな異世界物。 現実、私たちの生きる世界の常識、あるいはタブーでさえ、何か理由があればひっくり返され、無くなってしまう。 ましてや作者の設定した物語の世界なんて。 これから何がひっくり返るのか、楽しみです。
3投稿日: 2017.08.13りゅうおうのおしごと! 5巻
白鳥士郎,カズキ,こげたおこげ,しらび,西遊棋
ヤングガンガン
人が人を、幸せにできるとしたら
内容が熱い。将棋対戦の漫画表現が結実し初めている。 大人も子供もない、勝負の世界。一門の家族のような繋がり。 ほかでもない、将棋を、人の繋がりを肯定する信念が熱い。
0投稿日: 2017.07.22勇者様、湯加減はいかがですか?(1)
まりも
マンガワン
こころほぐす読みごこち
主人公が元勇者とか、お風呂シーンが多いとか、そんな設定や肌を見せるサービスがある、だけではなくて、 そういう要素を使って、人を癒そうとしてくれる漫画でした。ほっこり。
1投稿日: 2017.07.22ルーツビア 1
ルーツ
デジタル版コミックアーススター
飲み会で疲れたあとに。
おもしろかった。 こんな風にビールのみたい。すっきりで読みやすい本。
1投稿日: 2017.06.18物の怪らんちき戦争 1巻
夢来鳥ねむ
ビーグリー
日本神道、日本の妖怪観
この作者さんは、「HAUNTED じゃんくしょん」 のほうが有名だと思います。 アニメ化されて深夜アニメ枠を切り開いてたし。 しかし、物の怪らんちき戦争が好きでした。 見えないところにいて、スッと現れ、スッと消える。 日本神道、日本の妖怪観そのまま話になった、 そういう意味で珍しいし、神懸っていました。 書籍説明で座敷童押し…わかる。 4巻の後の後日譚一話と、ババアさんの解説があったはず。 電子化しないかな。
0投稿日: 2016.05.22俺のプロレスネタ、誰も食いつかないんだが。 1巻
さかなこうじ,柴田惣一
くらげバンチ
今、衰退している何かのコンテンツのファンの人に、読んで欲しいです。
昭和のプロレスファンの漫画です。 ずっと、プロレスは不思議だと思っていたので買いました。 (不特定多数が参加するコミュニケーション、SNSで言うと、 例えばFacebook。より過剰に演じた自分で参加するという意味で、 演劇とかアイドルに近くて、言葉の使い方に特徴があるコミュニケーション。 例えばTwitter。有象無象、数多のつぶやきを並べていく形で、 物語のような流れが作られていく、時間軸のあるコミュニケーション。 プロレスは、四角いリングの上で人が戦って、 観客が囲んでみていて、リング上と観客が応え合う空間コミュニケーション。 これが不思議。) この本は、プロレスが衰退に向かう直前を、 今のプロレスファン振り返っているようでもあり、想いを感じます。 (プロレスは一度衰退しました。そして近年復活しました。) 一巻では、衰退する前の、一般人とプロレスファンの溝と、その修復。 二巻では、衰退する前の、プロレスファン同士の溝と、その修復が描かれています。 (周りの人に、その趣味を否定され、趣味をあきらめたい気持ちになる。 世間に希望が持てなくなった人が、唯一人間に希望が持てるきっかけが趣味だとしたら。 その希望をコンテンツ、ファンどちらに見ているにしても、 自分の幸せを見つけるのに、どれだけ遠回りなのか、と思うことがあります。 新規古参、わかってるわかってない。 個人攻撃が過熱するのは、衰退するコンテンツのフラグなのでしょうか。) プロレスだけじゃなく、衰退する全てのコンテンツを心配する人に、読んで欲しいです。
1投稿日: 2016.05.22最弱無敗の神装機竜《バハムート》 1巻
明月千里,唯浦史,渡辺樹,春日歩
ガンガンONLINE
テンプレ英雄譚のトリックスター?
ライトノベルのコミカライズ。アニメ化されたタイトル。 芸能エンタメを見渡せば、型が有る無しで面白さはわからない。 最近のラノベはテンプレばかりなどと言われ、絶望されている方もいらっしゃるようですが、 古典の時代から英雄譚はテンプレ。私は気にしない、むしろご機嫌な挨拶みたいに思います。 信号機を見るたび、また三色か、なんで三色なんだよ。と突っ込むようなもの。 ここまでテンプレが認知されると、テンプレをトリックに使うことも夢じゃないです。 この本は、アニメ一話を見て、キャラ設定の造りが気になり買いました。 まず主人公の立ち位置。私には敵か味方かわかりません。 全体的に北欧神話風なのですが、ロキ、シグルズ、スルト…何かおかしい。 出てきたヒロインは赤い鎧ですが、トールでなく敵側、混沌の巨人族の設定にも見えます。 他のヒロインも、金色の鎧なのにハンマーを持っていたり。 とにかく初めに見えるピースがバラバラ。私では統一性を見せなくて。 定型テンプレ物語の裏で、モザイクのかかったキャラクターと背景。 だからこの先、王道を含む、どんな展開でもありえます。 純粋な北欧神話なら… 始まりは火と氷。 命を落とした勇士はヴァルハラに導かれ、武を磨き続けます。 終わりにラグナロクがあり、混沌の巨人族に、秩序の神族が敗北します。 純粋なテンプレライトノベルなら… はじめは炎使いヒロインとバトル。 恋に落ちたちょろいんがハーレムに入り、ラッキースケベが続きます。 この先、ラグナロクで終わるかもしれない。 でも、ホラーになったり、タイムスリップで昭和のSFになったり、宇宙人が出てきても。 絶対に驚かないですから。
2投稿日: 2016.01.17