
春を背負って
笹本稜平
文春文庫
美しくも厳しい山での生活に、人の死と再生を爽やかに描いています
美しい花に囲まれた自然溢れる奥秩父の山小屋 この小さな山小屋を舞台に人の命と再生を爽やかに描いた山岳小説 厳しい自然と対峙する山小屋での生活 穏やかなトーンの会話が読む者に安心感を抱かせ 静かな時間の流れに心地よく身を預けられる 山の美しさとすぐ隣り合わせにある危険な環境の対比が 作品のテーマである人の死と再生を際立たせています
2投稿日: 2014.07.19町長選挙
奥田英朗
文春文庫
お馴染み伊良部医師シリーズ第3弾
お馴染み伊良部医師シリーズ第3弾 注射ばかりでロクな診察もしないハチャメチャぶりはいつもの事 今回は某大手新聞社の会長ナベマンや IT長者で有名なアンポンマンなど どこかで見た事のあるようなセレブ患者が登場 普通の人の悩みからスケールアップしたぶん セレブ患者の高慢さに同情の念が浮ばず 気楽に笑えて爽快さもアップ 離れ小島に出向する話もありますが 個人的に言わせてもらうと やっぱり伊良部は薄暗い地下室で「いらっしゃ~い♪」の方がしっくりくるかな
7投稿日: 2014.07.18空中ブランコ
奥田英朗
文春文庫
名(迷)医、伊良部医師シリーズ第2弾
ご存じ無敵の名(迷)医、伊良部医師シリーズ第2弾 いや~笑わせてもらいました 前回に引き続き伊良部の破天荒な行為の数々はもちろん 今回は小ネタも抜群! 天丼には爆笑させられました また今回は伊良部の学生時代の話題もあり興味が尽きず 「インザプール」を楽しんだ方はこちらも必見です
8投稿日: 2014.07.17萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永南央
文春文庫
表紙のイメージに違和感あり
私が勝手にそんなイメージを抱いてしまったのがいけないのかも知れませんが 表紙のほんわかしたイラストから 日本の優しいおばあちゃん的な話を期待して読み始めたら 悪い話ではないのですがけっこう重い話が多く少々面喰いました それでも主人公の人柄や周囲の人たちとの関係など 引きつけられる要素はたくさんあります それだけになおさら間違った印象で読み始めてしまったのが もったいなく感じられてしまって残念でした この本に興味を持たれた方の参考になれば幸いです
1投稿日: 2014.07.15イン・ザ・プール
奥田英朗
文春文庫
名(迷)医、伊良部医師を世に送り出した記念すべきシリーズ第1作目
無敵の名(迷)医、伊良部医師を世に送り出した 記念すべきシリーズ第1作目 40代、色白ぽっちゃり男、注射フェチでマザコン 総合病院の薄暗い地下の一室でこんな医師が「いらっしゃ~い」と出迎える 考えるだけでもゾッとしますが これが他人事となるともう大笑い とてもまともとは言えぬ治療法で 次々と患者の悩みを解決していく伊良部 患者だけでなく読んでる人も爽快な気分にしてくれるのだから やっぱり名医なんだろうなぁ
10投稿日: 2014.07.11まほろ駅前多田便利軒
三浦しをん
文春文庫
迷コンビの魅力全開です
東京の南部、まほろ市(どう見ても町田ですけどー)を舞台に ちょっと怪しい便利屋二人組が大活躍!? 共に結婚に失敗、地道に仕事をこなす多田と掴みどころのない行天 二人にかかればどんな依頼も不思議ときな臭い方向に… 主役の二人をはじめ脇を固める人たちと こう言うクセの有る人物を三浦さんに描かせたら抜群で 実際には友達にしたくないタイプの人も 何故か魅力的に輝きだすから不思議です 一見するとただのドタバタ劇のようですが どの依頼にも家族であったり過去と再生と言った主題を キチンと盛り込んであるのもさすがです
2投稿日: 2014.07.11プリンセス・トヨトミ
万城目学
文春文庫
現実に大阪人が何か隠しているんじゃないかと勘繰りたくなりました
法螺は大きければ大きいほど面白いのですが 大法螺をキッチリとまとめあげ スペクタクルに仕上げてしまうのが万城目ワールドの真骨頂 また大阪という舞台設定が絶妙で 現実に大阪人が何か隠しているんじゃないかと思えるほどでした これを読んだら「とっぴんぱらりの風太郎」がもっと楽しくなりますし 逆に「とっぴんぱらりの風太郎」を読んでからも面白いかも知れません
3投稿日: 2014.07.08イニシエーション・ラブ
乾くるみ
文春文庫
みなさんのレビューが楽しみです
この本もレビュー対象になったのですね 評価が分かれやすい作品なのでみなさんのレビューが楽しみです 結論は良く練られた作品だと思います ヘタに内容を知ってしまうと面白さが半減する恐れがありますので そのあたりには触れないようにします この作品を読んだ後の感想には幾つかのパターンが見えてきます 1、運命の2行目で伏線の全てが繋がり「おおっ!」などの感嘆の声をあげてしまう人 2、運命の2行目で戸惑いを憶え「あれっ」などと戸惑い読み返すなどして「何だそう言うことか」と納得する人 3、運命の2行目をサラッと読み「は~?」、何が面白いの?と仕掛け自体に気付かない人 当然1から3にいくに従い★の数が減っていくのでしょうが なかには全てを見通して「やっぱりそうか!」といった達人も居られるかもしれませんね さてあなたはどのタイプでしょうか 私は2だったので★3つです
17投稿日: 2014.07.06ビタミンF
重松清
新潮社
父親、家族を描かせたら重松さんの右に出る人はいないのでは…
いつでも開ける短編集はReaderと相性が良いと思いますが 人生半ばに差し掛かり 家庭での居場所に窮屈さを感じるように感じ出した父親と その家族を描いたこの作品は腰を落ち着けてじっくり読みたい作品 A,B,Cなど15種類ある中で存在しないビタミンF 存在しないFをFamily、Father、Friendなどの言葉にかけて作られたFiction(話) Fiction(話)の力を感じる作品です
5投稿日: 2014.06.29カササギたちの四季
道尾秀介
光文社文庫
ダークな話を敬遠する人も安心して楽しめます
ダークな作品も多い道尾さんですが これは気軽に読めてホッと一息つける連作短編に仕上がっています こういう話がReaderに入っていると空き時間に開きやすいので助かります 謎解き要素は軽めですが 手法に一捻りあり、なかなか楽しめますし フッと微笑みたくなる女子中学生の控えめなどんでん返しで 着地点も見事でした ディープな道尾ファンには少々物足りなさが残るかも
4投稿日: 2014.06.21