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イン・ザ・メガチャーチ
イン・ザ・メガチャーチ
朝井リョウ/日経BP
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総合評価

514件)
4.5
281
150
41
2
2
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    私たちは夢中になれる物語を欲している__。 消費社会、オタクの本質、人間心理が的確な言葉で炙り出されていた。推し活はもはや趣味の領域を超えて、人生に影響を及ぼす存在になったのだ。 生きづらい世の中で生きていくために、何かに夢中になって視界を狭める。それは、現実逃避であり自己防衛。うん、、、それってすごく大事だよなと共感。 朝井リョウって何者?と思う程に全視点網羅しててさすがでした!! あと、宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』で推しを背骨に例えてたな〜絶妙だよなぁと思い出したりした。自分の主軸になるぐらい推しの存在は大きい。

    18
    投稿日: 2025.09.23
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    面白くてすぐ読み切った。 「正欲」とテーマは違うけど、今の世の中を自分じゃ気づけない視点からの違和感みたいなのを今回も見れた。 まさに、時代を切り取る本って感じ。 自分はこの視点に気づかず、想像力乏しくぼーっと生きてたのかと今回も反省する。けどそれが痛気持ちいい。 人は何かの物語に熱中していたい。自分を使い切りたい。我に帰った現実、余白は無機質すぎるから。 視野を広げている風の人も別の物語に熱中しているだけ。 朝井リョウさん、こんな違和感を感じでるってことは普段世界のこと見ててめちゃくちゃ腹たってるんちゃう? 昔のサラリーマンも自分の仕事が日本を発展させてるって言う物語を信じて働いてたのかな。 視野が広すぎても行動できない、視野を狭めてこそ思い切った行動ができる。恥ずかしさをわすれて。良くも悪くも。 最後のシーンの後どうなるのか気になる。

    3
    投稿日: 2025.09.23
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    すごく面白かった。 やってきたことよりやらなかったことが重みを持ってくるってすごくそうだと思う。 そして、教義を布教し信徒を獲得していくという、ビジネスの凄さ。そして勝手に物語を発動させるための点火物の大切さ。 100万人に広げるよりもお金を使う1万人に広げていく。ビジネス本としてもおもしろい。

    2
    投稿日: 2025.09.22
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    めちゃくちゃ面白くて、どんどん読み進めてしまった! まず、ヲタク経験者からの感想としては、ヲタクの解像度が高すぎる。ヲタクってこういう会話するわ〜っていうのを的確に抑えてて、あるあるをみてる感じで楽しめた。 あと、推しを見つけた瞬間の心情とか、気の合わない友達といるときの感覚とか、トラブルで青ざめる瞬間の気持ちとか、自分では言語化できなかったけど、あーそうそうこれこれ、と納得しながら読めた。 ヲタクは本当に脳死。 マーケティングを洗脳と捉えたら、そうなのかも。本質だけみたら、確かに何も生まれないし浪費と思われるかもしれない。でも、救われる瞬間があるんだよなあ。 これ読んでるとヲタクの視野の狭さを客観的に観れて、あんまり飲み込まれない様にしないと、って思った。

    14
    投稿日: 2025.09.22
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    ゆとりシリーズはじめ『正欲』『生殖記』と朝井さんの作品に魅了され続けています。また、とんでもないものを生み出してしまわれて、、 朝井さんは読み手の誰もを決して逃げさせてはくれないですね。自分で言葉に表したことはないけど、表せる語彙も術も持っていないけど、そんな名もなき感情(名付けずに済ませていた)や世の中の現象を、もうやめてください限界ですというところまでキツく言語化してくださいます。だから読んでいてめちゃめちゃしんどくなります。一度読んだら、読む前の自分には戻れない。世界の見え方が変わります。私にはこの本の面白さを伝える言葉を持っていませんが、とにかく読んでほしい。今の日本の空気感が一冊に詰まっています。今、全てを読み終えて装丁の紫色を捉えた瞬間に、はぁと溜め息をついたところです。いつも読書に浸かれない時期が訪れる度に、朝井さんの作品が本の面白さを思い出させてくれます。

    4
    投稿日: 2025.09.22
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    『正欲』『生殖記』にハマったので、こちらも読みました。久しぶりに本に“没頭”しました。 前2作は、こんな価値観もあったのかと天地がひっくり返るような感覚がありましたが、今回は日々感じていたモヤモヤが次々と言語化されていく感じがしました。好きな文もたくさん見つかり、線を引きながら読みました。 ただ終わり方がやはり。 推し活から距離を置いているタイミングで読んだことは救いでした。 ぽやぽやハッピーエンドが読みたい気分です。

    7
    投稿日: 2025.09.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    いわゆる推し活界隈を題材にしたお話。 私自身も学生時代はジャニーズから始まってヴィジュアル系へ、アラフォーとなった今では乃木坂46を応援。オタクの自覚はあるが、SNS発信もしないし趣味友もいないし音源は必要最低限しか買わないし…かなり分別ありすぎなタイプである。(もうちょっと課金しようぜ…) 今作は、近年過熱気味の「オーディション番組を経てデビューするアイドル」を軸に、ファンダム経済を築く(煽る)者・のめり込む者・かつてのめり込んでいた者が登場する。 アイドル運営側の戦略、 進路に迷う自分に見えた希望の光・それをもっともっと輝かせたいと猛進する姿、 生活のすべてだった光を喪失し・どうにか光の一筋を掴んでいたいと妄信する姿 どれも怖かった。 作者のインタビューにあった「現在を缶詰にして世に出した」と評した今作、とても面白かった。 自他とのボーダーを常に意識しておかないと、人は簡単に飲み込まれるのだ。 物語性の持つ力。 今は何でも脚色しがちだよな。創作物でもドキュメンタリーでも個人発信のSNSでも。 共鳴できる「それ」に出会ってしまうと、宗教的な側面をもってしまうのかな。(ヴィジュアル系の一部では、それも皮肉ってLIVEをサバトとかミサと呼称していた文化だったか)どうでもいいこと思い出しちゃった。 2025年現在、昨年から続く米騒動、物価高、経済低迷、出生率低下、異常気象、外国人による犯罪増加…とにかく庶民が明るい未来を描くことが難しい。 人生における「正解のルート」がもうどこにも存在しないから、我を忘れて何かに夢中になることは確かに一つの幸せの形なんだろう、とは理解できる。 でも私はそもそも「我」自身もロクに信用できていないから、いつまでもボーダーを超えることはできない気がする。だからこそ、家族・友人・職場の全てが奪われたら、簡単にひっくり返る危険性も感じながら生きている。 感想がまだふわっとしちゃうので、時間おいて再読しないと。

    3
    投稿日: 2025.09.22
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    今の世の中を俯瞰で見つめ、切り取り、文学的に落とし込むという点に於いては現代小説家では突出していて、右に出る者はいないのではないかと思う。とにかく「文学的テーマの投げかけ」と「物語的面白さ」のバランス感と絶妙さこそ、著者の持つ最大の魅力。

    7
    投稿日: 2025.09.22
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    個人的には本屋大賞にノミネートされると予想する。 かなり刺さるフレーズが多かったし、考えさせられる事も多かった。 それに情報量が多く、リアルだから読んでいるだけで「疲れる、痛い」と感じる人が多いのではないかと思う。

    3
    投稿日: 2025.09.22
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    こわこわ 私はあんまり、推しとかには貢がんけど、リアルの好きな人には宗教並みに盲目だよなと。でも終盤で出てきたようにわかっていてもハマってる時ってたのしいんだよなぁぁぁ

    1
    投稿日: 2025.09.22
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    「確かにその通りかもしれない」と思った思考をさらに広い視点から悉く裏切ってくる、朝井リョウのお得意の手法のオンパレード。 「自分が本当に大切なものに自分を使い果たすこと」が正解なんだっておじさんは最終的に思ってたけど、それだって行き過ぎるとただの過干渉だし 「自分を使い果たす」ということに謎の使命感を持つ必要なんか別にないのになぁと思った。

    1
    投稿日: 2025.09.22
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    朝井リョウの新作は、まさに「今の世相」を反映した作品だと感じました。作品世界と現実社会が地続きになっているようで、読む側も否応なく巻き込まれていきます。そのため、この本はできるだけ鮮度が高いうちに読むことを強く勧めたいです。 鮮度が高い分、登場人物たちが視野を狭め、息苦しく追い込まれていく過程には妙なリアリティがありました。10ページ進むごとに、自分自身も息切れしてしまうほどの圧迫感があり、読みながら体感的に消耗していく感覚が残ります。 もっとも、朝井リョウ作品は「これが正解だ」と道筋を示してくれるものではありません。そのため、読後感がスッキリするわけではないのですが、朝井リョウという作家の視点を通して「今」という世相を凝視することで、普段の生活の中では見過ごしてしまうであろう細部に気づかされます。 そうした発見を与えてくれるのも、読書の醍醐味のひとつだと改めて感じました。

    11
    投稿日: 2025.09.22
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    痛い痛い。油断するとすぐ刺される。分かってるけど見ないようにしている本当のこと、がノーガードでお出しされるのでかなり痛い。そしてすごい。 私は推しがいなくて、熱狂できるものがないことがかえってコンプレックスでもあり推し活というものに無縁な人生だから、共感できるのかな〜?と思って読み始めたけど、共感するどころかグサグサに刺されて相当苦しかった。 ファンダムを作る側の視点も興味深くそして恐ろしく。フィクションなんだけど本当のことなんだろう。これ本当にフィクションですか? 村田沙耶香さんが本作のことを‘’文化保存小説‘’と称していた意味もよく分かる。 2024年に連載が終了しているとすら思えないくらい、2025年の今まさにここで起きていて感じていることが本になっていた。MBTIや最近の選挙の動き、Z世代の描写に何より推し活、SNSへの解像度の高さ。50年後この本はどういう立ち位置になるんだろう。あと50年生きて確かめてみたい。 主な登場人物は3人。3人とも、最終的には私には真似出来ない(したくない)ところまで行ってしまうのだけど、でも、そうなるに至った心境の変化や環境には物凄く共感できるところがあって苦しい。特に澄香のパートは本当にやめてくれよという気持ちで読んでいた。まだ言葉のナイフが刺さったまま。小説は考えるきっかけはくれても正解をくれるわけではないから、読み終わった後も苦しいままです、朝井さん。 視野を広げたって狭めたって、どっちを選んだって正解がない。どこかしらで自分を削り、拒絶されることと孤独を恐れて生きていく。ありのままで生きることが素晴らしいと謳われたって、ありのままの自分が好きじゃないならどうすればいいの。

    24
    投稿日: 2025.09.21
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    面白かった!!朝井リョウの性格の悪さが、全面に出ている 推し活にハマる人、ハマっていた人、ハマらせる人、それぞれの視点で書かれた物語が交差する様が素晴らしい。 ある程度こんな感じかな〜って予想して読んでいたけど、ここまで話が展開するとは思ってなかった!

    7
    投稿日: 2025.09.21
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    終盤に怒涛の面白さ 国見の言葉が本作のテーマの代弁をしているように感じた。 読後は「じゃあどうやって生きりゃあ良いんだ」と思った。

    3
    投稿日: 2025.09.21
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    40歳になり、初読了作品です! ---------------------------------- 「神がいないこの国で  人を操るには、  “物語”を使うのが  一番いいんですよ」 沈みゆく列島で“界隈”は沸騰する。 事実と解釈、連帯と暴走、成長と信仰、 幸福と中毒、人生と孤独ー呑むか呑まれるか。 『正欲』『生殖記』……更なる衝撃が、時代を穿つ! ---------------------------------- 装丁が綺麗で、テーマはファンダム経済で、 かなりボリュームのある一冊で、 読むのを躊躇していましたが、 書店に行けばかならず目に入り、 好奇心に勝てず手に取りました。 アイドルを売り出す側(物語の作り手)と、 それにのめり込むファン(信徒)と、 推しを失ったファン(神を喪った信徒)の3人が、 それぞれ登場しながら物語が進みます。 中盤ぐらいまでは、 ほーってぐらいの距離感で読んでたのですが。 後半に向かうにつれ、 どんどん揺れが激しくなるような感覚で。 「踊る阿呆に、見る阿呆、  同じ阿呆なら踊らにゃ損」 という言葉が浮かび、 この言葉を最初に発した人は踊ってたんだろうか、 それとも踊らせてたんだろうか?と思い。 視野を拡げる、狭める。 自分を消費する。 信じる。 解釈する。 それぞれの物語ができていく。 最後は畳み掛けられるような言葉たちで。 終わり際、 これは小説で、物語で、 じゃあこの物語を創っている人(著者)がいるんだと思い、妙な気持ちになりました。苦笑 私はこの物語を夢中で読み切り、踊らされていたのかもと。

    17
    投稿日: 2025.09.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    今作は「物語」という帯のキーワードに目がいって購入。 孤独を感じ始めた中年の男性、自分に自信がなく周囲に馴染めない女子大学生、金銭的に余裕が無い非正規雇用の女性、三者の視点から、推しにはまる心理やそれを金銭に導く運営の狙い、ネットにはびこる陰謀論やそこに絡め取られる人たちの心理が描かれます。 作中、様々な意見や立場が述べられ、次の章ではそれが批判的に描かれ、と、まるでディスカッションをしているようでもあり、また、作中のキーワードでもある、視野、視点が広げられたり、狭められたり、します。 やや理屈っぽいところもあり、小説というか、インタビュー記事のような感じもあります。 ただ、個人的に、昔から、物語が人を惹きつける力や怖さにとても関心があるので、現代社会における物語のありようを感じることができて、面白かったです。 あと、こうした社会の様を切り取って物事にする作風は、昔の村上龍みたいだな、と思いました。

    4
    投稿日: 2025.09.21
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    物語る。 自分の話だった。 この部分俺の膝、肘、頬など痛烈に心が痛かった。 この作品は読んでるというより摂取しているという方が適しているような気がする。 人は自分ごとになった時や、揺れた時に一気に視野が狭くなる。この狭くなるという感覚はとても新鮮な表現だった。 知れば知るほど広くなると思っていたからこそ、そしてそれを信じていたから。

    8
    投稿日: 2025.09.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【感想】 推し活という現代のトレンドを3つの視点で描いた力作。 推し活をしていた者『隅川絢子』、推し活にハマっていくもの『武藤澄香』、推し活を仕掛けていく者『久保田慶彦』の3人の視点で、ある俳優の自殺とアイドルデビューが交錯し物語が進んでいく。 【神がいないこの国でを操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ】という帯のセリフの通り、オーディション番組による今の推し活のマーケティングが解像度高く描かれていた。 【熱狂を生む1万人】を作る為にユーザーをタイプ化(信徒タイプや委員長タイプなど)し、そこに対して適切な情報を与える事で最大限に資金を引き出す手法を細かく描いていて、国見の講演会を開いて欲しいぐらいだった。 幸せの形が多様化し、自身で選べるからこそ「皆んなが自分を何かで使い切りたい」という欲望があり、その何かを求めているという心理はとても興味深かったが、それは宗教などから始まって、今は推し活と姿を変えているだけで根本的には同じ。 そういった熱狂に危機感や怖さを抱きつつも、自身も仕事であったり、他の趣味に何か熱狂や没頭している事があると自覚させられた。 仕事などでも視野を広くと言われる世の中だが、その人や役割によってその視野の範囲の必要性は変わってくるだろうし、広いのが正解で狭いのが誤りと画一的に言えることでもないと実感した。 MBTIのように16パターンでしか割り当てられない事をさも自分自身のように捉えてしまうのは血液型占いや動物占いの時代と同じく、皆何かしらの指標がないと不安になるというのは日本人の気質なのか。 隅川絢子と武藤澄香が同じ『すみちゃん』でも立場は逆でお互いを認識したところや、推し活を仕掛ける久保田の娘が澄香である事、また久保田自身も最後に視野を狭めてしまう事など報われない結果に終わるのも朝井リョウさんらしく個人的に好きなラストでした。 小説としてはもちろん、マーケティング本としても遜色がないくらいの一冊でした。 【あらすじ】 沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。 あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。 「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」

    8
    投稿日: 2025.09.21
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    物語に狂う小説で、いやはやこれは現実で、ノンフィクションであることがまた、より一層わたしらをこわくさせる、

    3
    投稿日: 2025.09.21
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    初めて朝井リョウさんの本を読みましたが、ここまで推し活やファンダムに対しての解像度や言語化能力が高く、現実味があり他人事とは思えなかったので怖かったです。 個人的にコロナ以降、推し活に対してのハードルが低くなったと感じ、自然と身の回りにも推し活をしている人が増えたと思います。この本を読んで、より一層手軽に楽しめる推し活に対する考えが鮮明になったというか、自分に対してポジティブな思考や有意義な時間を過ごせるならまだしも、ネガティブな思考を持ち続けてしまうのなら推し活から線を引くべきだと…自分自身を客観的にみて、わざと視野を狭く突き進みたいと、自覚しながら自分のペースで進むならいいと思いますが、気づかないうちに視野が狭くなっていて、もうすでに引き返せないところまで来ていたとしたら恐ろしいとも感じました。なので、視野の範囲を上手い具合に調節する必要が私にはあるとも思いました。 小説を読んで初めてここまでの衝撃を受けたので、朝井リョウさんの他の本も読んでみたいです。

    4
    投稿日: 2025.09.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ファンダム経済を築く側の中年男性の久保田、ファンダムにのめりこむ大学生の澄香、ファンダムにのめりこんでいた三十代派遣社員の隅川の三人の視点でそれぞれに描かれる、「推し活」についてが描かれた話。 とにかく面白かった。朝井リョウのこういう社会風刺が大好き。2025年の日本社会を見事に描いていた。 俳優の藤見倫太郎のファン達の総称が「りんファミ」なのも、新人アイドルグループの「bloome」のファンネームが「花道」なのも、めちゃくちゃありそうすぎた。ありそうというか、“ある”と思った。全体通してオタク達の会話のテンポ感とか、使われる単語とか、いちいち言い回しが壮大で誇張されているところとかの解像度が高すぎて苦しかった。SNSのオタク達の反応なども、あまりにも見たことがありすぎた。 「推し活」が現代の人々にもたらしている功罪が描かれていて、推し活にのめりこむ人達を風刺する内容かと思っていたが、推し活には孤独から脱することができる効能があるということも書かれていて、なるほどたしかにな……と思った。 ファンダムはある種の共同体だなと思っているので、ファンダムでしか人との会話が発生しない隅川などは読んでいて痛々しささえ感じてしまった。すごくわかるなあと思ったし、わかるなと思ってしまったことが私にとっては痛かった。ファンダムって基本的にエコーチェンバーするから自分に似た人が周りにいるようになって、それゆえ居心地がよくてあたたかいんだよな……ということを、澄香(ちゃみする)のファンダムとの交流を通して感じてしまった。何かのコンテンツについて、自分と同じ角度で、同じ熱量で好きな人達との連帯って、本当に麻薬だなあと思う。 また、日常に孤独を感じていた中年男性代表のような久保田が、人生で久しぶりに雑談らしい雑談をして、そこから勝手に親密さを増幅させてしまっていた……という流れ、すごく「現実」だな……と思った。若い人との交流ができるようになったかと思いきや、中年男性が勝手に暴走していた、というオチにするのが残酷だなと思ったし、残酷だからこそ現実だな、と思った。 読み進める中で毎ページのように「わかる」と思うことが書かれていて、最近の推し活の波の中でぼんやりと思っていたことがつぶさに言葉に表されているように感じた。 隅川といづみさんのハッシュタグ活動、「うわやってる人いるんだろうな……」と思った。藤見倫太郎の眉の動きひとつだけで「ファンへの感謝もあるし、ランダムブロマイドなどの運営の搾取的な売り方に罪悪感を感じているんだろう」と物語を作れるの、あまりにも見たことがあった。「倫太郎の、ほんの数秒の映像。たった一枚の写真、一行の言葉。それらから、何百倍もの情報量を吸い上げて、一気に心身がおぼれていく。」これ本当に“そう”としか言えなかった。オタクは推しのたった一言から、その何百倍もの情報を吸い上げて、勝手に物語を作るのだ。この辺あまりにも「わかり」がありすぎて、なんでこんなにオタクの生態を知ってるんだよ……と、朝井リョウに対して畏怖の感情が湧き上がった。 アイドルのオタクを5分類するのも、その分類も「わかる」と思った。プロデューサー、アナリスト、学級委員、疑似恋愛、信徒。どの分類のオタクも「いる」なあ……と思いながら読んだし、なんなら普段私が見ているオタクって「生まれてきてくれてありがとう」「ここにいてくれてありがとう」という信徒型のオタクなの怖いな……と思った。 推しが自殺をして陰謀論にのめりこんでいきそうになるいづみさん。そのいづみさんとの交流をなくしたくないから、見て見ぬフリをして染まっていく隅川に哀切を感じた。 「我を忘れて何かに夢中になっているほうが、楽だからです」「ずっと我に返ったまま生きるにはこの世界は殺伐としすぎていますし、人間の寿命は長すぎますから」この辺もめちゃくちゃそうだなと思った。何かに夢中になっている方が本当に楽なのだ、人生って。この辺は陰謀論に浸かっていく隅川が正にそんな感じで描かれていたなと思う。生活としてはどう考えても苦しいのに、搾取されているのに、何かに夢中になっている、やることがある、それだけで人は楽になれるのだな……と思った。 大学で菜々が友人達と話していた海外のメガチャーチの話が推し活の原理と連動しているとわかるパートが好き。推し活は宗教みたいだと言われて久しいが、本当に類似点しかないな……と感じた。 今の世の中には、視野狭窄になるからこそ得られる楽しさや嬉しさがあって、視野を拡げていった先にあるのは冷笑だけ、誰とも何とも連帯できなくなるほど世界から離れることと同義で、いろんなものに冷笑した先にあるのが、人生の砂時計を眺めているだけ、という状況なのも、本当にそうだなと思った。 「どこかで、”この視野で、ある程度の確率で、間違う”と覚悟を決めるしかないのだ。」 何かに熱量を注ぎ、「間違って」いる時、たしかに楽しい。どこかで覚悟を決めるしかないんだよなあ……と思わされた。 なぜ人は推し活にハマるのか、という根源的な問いについて「自分を余らせたくないから」という回答も見事だった。人生の指針がなく、どの人生のパターンでも穴がある、正解の部屋がないから、間違わなかったとしても「間違わなかった人」になるだけ。人は自分を使い切りたいと思っている……という一連の文章がすごく刺さった。今の自分を解体されているような感覚になった。自分を使い切りたいし、砂時計を眺めているだけの人生って虚無すぎるのだ、本当に。 社会学の新書のような分析に、物語の読みやすさが重なり、ものすごく面白く読めた。社会風刺に長けた朝井リョウの推し活がテーマの作品ということで、きっとグサグサ刺されるようなことが書いてあるんだろうなと思って期待して読みはじめたわけだが、期待以上に刺されたし、その刺される感覚がとても痛快で最高だった。

    7
    投稿日: 2025.09.20
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    恐ろしい本でした。一気に読まざるを得ないくらいの迫力がありました。 嵌めに行く人、嵌まる人、さらに先に行ってしまう人 描写があまりにもグロテスクで生々しくて鋭利。 本読んでて心底気持ち悪くなる(良い意味)のは久々でした 私はこれまで推し活文化については小馬鹿にしつつも夢中になれる事があるのは良いことだよねぐらいの感覚でした 現実に狂気のファンダムの世界に呑み込まれている人はこの本を読んでどういう感想を持つんだろう。 あるあるだよね〜くらいで終わりそうだ。 何事も一つに集中し過ぎるのは良くないと思う 視野を極限まで狭めるのがとても幸福で満たされることなのだとしても。 沢山の趣味や関心事を持ち続けようと改めて思いました。それは社会問題や戦争といった深刻な問題だけではなく、下らなくて笑える、漠然と癒されるといったものへも積極的に手を伸ばす。 それが私の孤独との戦い方です。

    16
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    孤独なバツイチのサラリーマン 左遷部署からアイドルの運営チームにはいるが、その1人ミチヤに気持ちを入れ込んでしまう その娘 留学を夢見ていたが、意識高い系グループの中でうまくやっていけず、ミチヤ推しに。父親から多額の金銭を無心する 元推し活、現在は陰謀論グループ 推しの自殺をきっかけに、反日のスパイが日本を弱体化されているという陰謀論にハマっていく

    1
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    多様性とは気にしないこと。 だからこそ人と人のつながりが希薄になり、孤独と感じる人が多い。その人は自分を守るために何かにのめり込んだり、信じ込む。 それに付け入るために上の人間は物語を使う。コミュニティを設ける。 ドイツ旅行でのデモ、まるでフェスやお祭りのようだった。何か楽しそうと近づく人がいるからだろう。れいわ新選組のデモもそう。1億人に理解されるより100万人の熱狂的な信者を作ろうとする。 この本で印象に残っているキーワードは「視野」と「信じるもの」だと思う。 「視野」について、視野を拡げようとするもの視野を狭めたいものが対比で描かれる。 自分はこれまで視野が拡い人が望ましいと思っていた。でも「どの角度から見ても間違いなく本質的に正しい答えなんて、どこにもない。どこかで“この視野で、ある程度の確率で、間違う”と覚悟を決めるしかないのだ。 その事実を受け入れず、可能な限り本質的でありたいあまり、そして誰からも攻撃されたくないあまり、さらに視野を拡げるべく視点をどんどん後ろへ引いていくと、いつの間にか誰の姿も見えないくらいに自分だけが全てから遠ざかっている。そうなるともう、何の行動にも出られなくなる。」という文を読んでハッとした。まさに今の自分。仕事や人間関係で自分は視野が拡いと思い込み自己満足するが結局誰のためにも行動できていない。今後本当に大切なものを守りたいと思うときには時には視野を狭める必要があると感じた。 そして、「信じるもの」。 自分が何を信じるか経験してきたかによって見える景色は変わる。たとえそれが同じ景色でも見え方が変わる。アイドルにのめり込む澄香と陰謀論にのめり込む絢子。一見違うように見えるが信じる対象が違うだけで同じことをしている。今までの経験、今の環境が違うだけでそれが入れ替わったら反対のものを信じていただろう。 だからこそ、今の現実自分と違うものを信じていたり違う価値観を持っている人をどうして指差せるのか。 その人の立場に立っていたら同じことをするかもしれない。 こんな正解もなく、昨日まで当たり前だったものが平気でひっくり返る世の中ならばなおさら。

    2
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    何も信じられない、でも何かを信じたい すっげ、、なんでこんなに若者の解像度高いんだろう?中年男性の解像度も高いのでは? 300pあたり、キタキタこれぞ朝井リョウ!という書き方 倫太郎が亡くなったときにすみちゃんが悲しいのは、人の死とはその人がいたからこそいた自分の死、その人やあるいはその他の人と過ごせた時間との決別でもあるから悲しいんだと思う

    2
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    めちゃくちゃ面白かった 視野を狭める、金・時間・思考を使い果たす、本質的ではなくとも カフェで理由もなく会って雑談する男性がいない、それは小さい情報共有や助け合いによる連帯をしてきた女性とは異なる、強い立場にいるからこそ連帯を必要としないから、みたいな解釈のとこかなり良かった

    5
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    それぞれ異なった視点立場での解像度が高すぎる。推しに魂を売るもの、推しという構造をシステマチックに操るもの、推しや自分自身を投影するために買い売りを当たり前とする時代。物語があると人を操れるというのは推し文化に限らずあらゆる場面で遭遇することが多くなるだろう。

    3
    投稿日: 2025.09.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    推し文化と多様化や孤独化が進む日本の現在に合った内容でテーマ選びが刺さった。今を生きてる人しか書けない生の小説という印象を受けた。さらに登場人物の解像度が高く序盤から物語に引き込まれた。 大人になるにつれて仕事外で友達と呼べる人と親睦を深めることは中々ない。けれども年齢関係なく自分から一歩歩み寄る、素直になる、それだけで自然と友人が出来るかもしれない。まずは笑顔やコンシーラーから始めてみてもいいのかもしれない。 推し活でも趣味でも同じものに没頭している仲間とは話が弾み、何時間でも話してられる。そんな経験をしたことがある人も多いだろう。行き過ぎた没入は宗教と似ている。 推しがいなかった私にとって推し活は宗教に近いとずっと思っていたけれど、声に出すことはできなかった。そんな思いを小説に書いた朝井さんは、私の様な社会の隅の視点を引き摺り出してくれた。多様性の価値観をどうしてこんなにも理解できるのだろう 孤独を紛らわす手段として推し活仲間と分かち合うことはいいかもしれない。

    5
    投稿日: 2025.09.19
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    読み進めているうちにドンドン怖くなった 何が正しいのか、自分が見えている現実は他の人とは違うのか 昔、自分は死ぬことも狂うことも、宗教に入ることもできないと判った気がしていたけど、もう歪んでしまっているんだろうか とりあえず1つに依存するのは良くないということだけは判った

    3
    投稿日: 2025.09.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    推し活へ思っていたことをものすごく的確に言語化してくれていた。大学生の娘がどこまで沼っていくんだろうとはらはらしながら読んだ。推し活するなら他人ではなく、自分を推すべきだと強く感じた。

    2
    投稿日: 2025.09.19
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    面白すぎて一気に読んだ。視野を広げる、一見ポジティブで良いことに感じるけど、それで身動きが取れなくなることってある。 どこかで、〝この視野で、ある程度の確率で、間違う〟と覚悟を決めるしかないのだ。 この言葉が心に残った。

    6
    投稿日: 2025.09.19
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    他人と繋がっていられる安心感は誰もが求めるもの。 推し活、仕事など何かに没頭することで視野が狭まる。それは即ち、我を忘れて何かに夢中になっている状態で、幸せを感じることができる。人生は、そのような中毒症状がある方が楽で皆それを求めている。 逆に俯瞰して、「それって何の意味があるの?」と他人を見下すような広い視野を持つ人は、何かを間違えないだけ。何にも没頭できない、寂しい感情が残る。 視野を広げること、狭めること、両方に良いことと悪いことがある。 自分は何かに没頭する経験が乏しいので、思い切って実行して何かを間違えることが羨ましく思いました。

    53
    投稿日: 2025.09.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「推し活」という言葉で表現するにはあまりにも大きな“物語”。 物語というキーワード、繰り返し出てくる「視野」「本質」という言葉。 ぬくぬくと心地よくひたっている「推し活」が内包する物語の危うさ。 離婚し一人暮らしの部屋から月に一度の娘との電話が楽しみな男。ファンダム経済を回すため推し活を作り出していく側。 内向的な性格を隠し周りに合わせることに疲れ果てている女子大生。初めての推し活への課金にのめりこむ。 推しの「自死報道」をきっかけに世の中に存在する大きな組織の陰謀を信じ込む女性。陰謀を暴くため活動を始める。三者三様の思惑と活動が丁寧にリアルに描かれていく。 令和の今の日本のすべてがここにある。推しへの課金。その巨大なマーケットの動かし方を朝井リョウは容赦なくあぶりだしていく。 視野を広げることと狭めて集中していくこと。肯定的に受け取りがちなそのどちらもこれほど大きな危険をはらんでいたとは。ファンダム経済に組み込むために一番大切なもの、それが視野の狭窄。 あおられ、操られ、搾り取られていく。大切な推しにお金を使うことは無意味なのか。全国の推し活民の震えが伝わってくるようだ。 『桐島、部活辞めるってよ』から始まった朝井リョウの社会への問題提起は加速の一途をたどる。 いったいどこまで行くんだ朝井リョウ。

    8
    投稿日: 2025.09.18
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    誰しも、この作家さんの言葉はスルッと言葉が心に入っていく、という感覚があるんじゃないかなってる思ってるんだけど、私にとってその人は朝井リョウさんの言葉。新刊のイン・ザ・メガチャーチ。推し活と孤独と信仰と物語。するすると読み込んでしまった。「視野を拡げる」って容易くいうけど、拡げることで見える世界、見えなくなる世界、どちらに住むのが自分にとって正しくて心地が良いのか。視野が狭くなった途端に夢中に入り込むあの瞬間は、熱を帯びて周りのことが見えなくなってしまって仕方がなく楽しい。大切にすべきこと、大切にすべき人を考えたい。見失わないように。

    5
    投稿日: 2025.09.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    こんな感じのなら楽しく読める! 物語に飲み込まれずに生きていけるのか、無意識に物語へ入り込もうとするのか。 俯瞰して間違わずにを徹底してる国見の姿が刺さる〜。 やっぱり朝井リョウを読むなら出てすぐですね。時事ネタがあり、今と地続きなのも読んでて楽しい。 2人のすみちゃんが途中混じってどっちか分かんないとこ良かった。 娘のアルバイト先での話が印象的。 テキパキ仕事しているバイトより、正社員が適当に視察して報告する仕事の方が給料が高いって皮肉は色んなとこで見れますよね。こんなやつ居なくてもいいのにって、それよりあのちゃんと仕事してる人をもっとしっかり評価してよってやつ。 パレスチナの虐殺について考えたり、情報を見るにつけ自分のいましていることは正しいんだろうかと問いかけられているように感じ、ちょっとしょうもないことをしてはそういうことが頭をよぎって楽しめないなんて、今これを感じる人めっちゃ多いと思う。けどそれだけじゃ生きていけないから自分のための時間もいるしなあ。花冠さんみたいなのが充実してるってことに思える。結局は無理して生きすぎてたんね、大きく物事みてちゃんと出来る人にはなりたいけどそうはなれない自分を受け入れられたらなぁ

    92
    投稿日: 2025.09.18
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    人間は何かに依存しないと生きていけないからこそ、という感じ。アイドルのオタ活という面ではこういう人いるな〜をめちゃくちゃ感じたし、ノンフィクションに思えるレベルだった。

    3
    投稿日: 2025.09.18
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    なかなかの大作。 推し活を仕掛ける人、推し活にすべてを捧げる人、いろんな目線からの物語。 今の時代の縮図というかすごく的を得た解釈で、なんだか読み終わったあとすっきりした。 人と人との関係が希薄ないま、推し活で知り合った仲間が一番の理解者になるんだなあ。

    21
    投稿日: 2025.09.18
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    父親はひたすら働いて家計を支えるべき、と思ってひたすら働いてるお父さんも、他に何もいらないくらい推し活で満たされてる若者も、まあ幸せは人それぞれだからねと言って何事にも熱せられない常に客観的立場を貫いてる人も、みんな読むべし。 親しい人のでも他人のでも、必要以上の情報が簡単に勝手に手に入りすぎる現代社会、結局みんな孤独を恐れているんだと思った。 孤独という、人間にとって最も恐ろしいものについて考える余地がないくらいに、みんな何かをしていたいだけ。 没頭するため、納得するためにはストーリーが必要で、自分にとって都合のいい物語をそれぞれ無意識に構成している。その物語が自分の中で収まる人もいれば、暴走して外の社会との関わりが大きくズレてしまう人がいる。 他人事ではない、現代で生きる私の話。 相変わらず「現代」を切り抜くのがうますぎる朝井リョウ。 今を生きる私自身も無意識に抱えている不安や疑問を、なんでこんなにうまく言葉にしてストーリーに落とし込めるんだ。 私はアイドルオタクでも、家庭を省みずに働き続けたおじさんでも、大切な推しを失った生きる方向性を見失った女でもないけど、共感できる部分がたくさんあって怖い。怖すぎる。 3人それぞれのストーリーや行動は、一面から見るととても幸せでまっとうなことに思われるけど、見方を変えればそれはすぐに反転しうる。それぞれが見ている景色が事実で、それに迷惑をかけられたり嫌な思いをする人がいるのも事実。 本当に、現代の幸せってなんだろうと思う。 ブルームマイセルフ、自分を咲かせる、しか幸せの選択肢がない世界。 ファンダム、という言葉を実は初めて知った。世はまさにファンダム経済なんだ、、。 オタクは「搾取されている」ていう思想さえ1ミリもないと思ってたけど、一概には言えないけどもちろんそんなこともないんだな。分かってて、それでも生きがいだからせっせと推しに課金してる勢もいるんだな。 ここに宗教、陰謀論者も絡んでくるの怖すぎる。 これが世のリアルなのかと思うと、余計に幸せって何だろうこの先この世界でどう生きていくのがいいんだろうかく言うわたしも読書とか作品に没頭して依存してエネルギーの矛先を探しているのかなとか思ったり 推し活ビジネス、ファンダムビジネス?の仕掛ける側の思考はとてもおもしろかった。国見さんのセリフめっちゃ分かりやすい。客観的に物事を考えて正解を選んでしまう国見さんは、その冷静さと引き換えに自分が何かに熱狂するという経験も失っているわけで。それこそ、正解がない世の中で、間違えなかっただけの人がどうやって生きていくのが幸せなのか。全部を分かってるように思える国見さんでも「どうでした?」と久保田に楽しげに質問するんだもんな 道也や青木という世代の違う「友達」ができてちょっと価値観が変わった久保田が、人生な基盤となる大切なこの学生時期を推し活に費やすなんて、とちゃみするに対して思う気持ち。でも「正解ではなく本物」を感じ取って道也の家に走った瞬間は楽しかったと思う気持ち。ちゃみするが澄華だとわかった時の気持ち。 否定したいけど否定できない でも「まあそういう生き方もあるか」と手放しで納得するには、家族は近すぎる。 幸せに正解はない、と思う人たちがたとえば熱狂的な推し活を受け入れているようでも、自分や身内の話になると急に「でもやっぱり、、」となる感じ。 「視野が狭い」「視野が広い」って何なんだろう。 視野を広く持とうね、で終わらせられるすべての環境問題や現代社会の問題。視野を広くもったところで何かが変わるわけではなく、世界は苦しいことで溢れてるのでつらい。 あえて視野を狭めて、自分の半径5メートルだけ好きなもので満たす生き方と、どっちが幸せなんだろう。でもそれもすみちゃんみたいになってしまうと狂っていくよな。 幸せの形は人それぞれ 使い切ったもん勝ち。 信じるものがない人たちには、神の代わりになるストーリーが必要で、そのストーリーをコミュニティと一緒に提供できるのがメガチャーチ。 終盤の数ページだけ見ると、すみかが推し活を始めたおかげで新しい自分に出会えてとてもハッピーなお話だった。それこそ、それだけでストーリーが完成する。内気な女の子が推し活を始めた本当の自分を見つけていくハッピーストーリー。 すみちゃん同士が見つめ合うところ、お互いがお互いを自分だ、と思う。 すみかはかつての自分に、すみちゃんもかつての自分に、相手を重ねる。 これから返ってくることは、やってきたことより、やらなかったこと。それはたしかにそうかもしれない。 p203 私は何が欠けていて、何が過剰すぎるんだろう プロデューサー気質、アナリスト気質、学級委員気質、疑似恋愛気質、信徒気質。アイドルのファンを5層に分けて分類するのおもしろい。疑似恋愛気質への「写真一枚で一晩しんどくなれる人たち」っていう表現、的を射すぎている。 一の情報から十の感情を受け取り、自分の人生に引き寄せて百の物語を生み出す。そして、その物語に自分以外の人間を巻き込むべく、千の布教に励む。 みんなそれぞれ、孤独な現実や価値のない自分に向き合いたくなくて、視野を狭める。没入する。我に帰らないように。 りんファミのような妄信的なコミュニティを無意識に下に見ながら読んだ。 団結、意識共有の危うさに共感しながら。 でも、ミチヤと久保田がカフェで2人で話すシーンで新しい側面を見せられる。 女性は男性と違って、色んな意味で生きていくうえで男性とは違うレベルでの情報共有が必要だった。情報共有ってつまり助け合い。そういう連帯が昔から日常だったから母は今でも友達がいっぱいいる。 逆に父は、そういう意味で誰かと連携する機会が少なかった。その集団で一番強い立場でいることって、助け合う必要がないってことでもあるから、楽だけどある意味孤独。もちろん仕事上で助け合ったり教えあったりすることはたくさんあっても、その連携は、退職したら終わり。理由や目的がなくなってしまう。 長時間、鏡に向き合ったことありますか自分がどういう形で、どんな髪型が似合って、どんなデザインのシルエットの服を着れば良いか、真剣に考えたことありますか? メイクも服も髪型も男に比べると女性はやることも種類も多すぎる、サボった時の影響は男より断然大きい、だから友達同士で助け合う機会が多かった。 誰とも何とも理由や目的のない連帯を成立させられず、本題を終えた人生をやり過ごすだけになる。そうならないために、何かしなくちゃ。

    3
    投稿日: 2025.09.18
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    推し活やその仕掛ける側の今がとてもよく分かる。年代の違う3人の視点や心境がリアルに描かれていて引き込まれた。とくに47歳男性の姿には、思わず切なさを感じた。

    24
    投稿日: 2025.09.17
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    いやあ、とんでもなく引き込まれる小説だった。 今"推し活"をしている人や過去に"推し"がいた人とかは、色んな意味で感情がグチャグチャになるかもしれないです笑 「中毒症状があるほうが苦しくないのだ、人生は」 「結局皆、信じるものが欲しいんだと思います。特に、この社会は生きづらい、自分はこの世界に不当に扱われていると感じている人ほど」 「ファンダムとは、程度の差はあれどすでに多少は視野が狭まっている人間の集まりです。その人間たちが、拡散や連帯との相性が良すぎるSNSという場所に集っているんです」 今という時代のことを知りたいならば、朝井さんの小説を読めばいいと思います。

    7
    投稿日: 2025.09.17
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    Amazonの紹介より 沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。 あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。 「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」 とにかく凄いといいましょうか、推し活における見方が変わりましたし、「推し」にのめり込む人達の勢いが凄く、圧倒されました。 約450ページという量の多さでしたが、3人の物語がどう結びついていくのか、「推し」を追求していく3人の不安や苦悩に惹きこまれました。 個人的にも、共感する部分もあって、自分ももしかして沼にハマってる!?と思うくらい、次々と展開する出来事に変化する心の動きが気になるばかりで、面白かったです。 内容の構成としては、3人の登場人物を中心に3つの物語で展開していきます。不安な境遇から、ある「推し」を見つけ、推し活していく人物、推し活を演出する人物、推し活にのめりこみ過ぎた人物の3人に分かれています。 その他にも、脇役として、色んな人が「推し活」に参加するのですが、それぞれが抱える不安や孤独も如実に表れていて、時折グサッと心に刺さりました。 作家の朝井さんは、モーニング娘といったハロプロ推しということもあり、そういった事情は網羅しているのでは⁉と思うくらい、推し活における事情を垣間見ました。 特にビジネスにおける推し活の演出が勉強になりました。題名のメガチャーチという意味にも影響するのですが、推しの演出方にも様々なパターンがあって、どのようにしてお金を出させるのかといったことがわかって、推し活の裏側を知りました。 昨今、様々なアイドルが登場し、色んなやり方でデビューしていきます。いかにそのグループを応援していくのか。推す側の人の心理もわかって、自分にとっては開いた口がふさがらないと思うくらい、驚きがありました。 なぜそこまでお金を使うのか?なぜそこまでのめり込むことができるのか? なかなか読んだ後でもわからない部分がありますが、人生における癒しとして、グループを応援し続けたい思いに凄さを感じました。 また、その一歩進んだ人の心理に驚きと共に恐怖を感じました。推しを通しての陰謀論やスパイ論といった拡大過ぎる解釈が凄かったです。 以前、亡くなった三浦春馬さんも同じようなパターンをSNSで拝見したことがありますが、その人達の心理を垣間見ることができました。その暴走に圧倒されました。 ボリュームの量でしたが、そんなに長いという印象はありませんでした。というのも朝井さんならでの文章が、現代の問題を的確に随所に表現されていて魅了されたことがポイントかなと思いました。 自分も似たような思いがあったこともあって、共感する部分が多くあり、それが個人的に心に刺さったのかなと思いました。 そして、3つの物語がどう融合していくか。三者三様「推し」にのめりこんでいく展開は、第3者から見ると滑稽と思う一方で、何事も程々だなと思いました。 のめり込み過ぎたが故の代償は、夢から現実へ、風船が割れたかのように儚く、切ないなと思ってしまいました。仲間がいることのありがたさを感じた作品でした。

    12
    投稿日: 2025.09.17
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    三者の視点からファンダム経済を描く。 ファンダム経済を作る側(おじさん) 享受する側(大学生) かつて享受してた側(30後半おばさん) どの目線から見ても、人は物語の中でしか生きられないなと。なにも物語がないと無為になってしまう。誰かのために頑張る私、綺麗になりたい自分… 作ってる側は一貫してどこにも属していない、フラットな目線と言ってたけど、裏を返せば「フラットにファンダム経済を構築している俺」の物語にいるからな。 時世を切り取った面白い小説だと思いました。

    2
    投稿日: 2025.09.17
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    令和の世を舞台にした小説って、多かれ少なかれSNSを絡ませてくるものが多いけど、この小説はSNSそのものをど真ん中に置いてしまうというぶっ飛んだ設定の話だったように思う。ラストシーンの後の阿鼻叫喚ぶりを想像すると、震えが止まらない。

    3
    投稿日: 2025.09.17
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    いつもながら、社会の中で生きていく大人として「わかっているけど、それは言わないお約束なのにー」というところを、分かりやすく何度も明確に言葉にしてしまう朝井さん。 今回もえぐられる本でした。敵を作っていつか刺されてしまうのでは、と心配になってしまいます。

    6
    投稿日: 2025.09.17
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    またこんなゾッとするような小説を… 推し活とは縁のない人生だったので、こういう心境なのか…と人の心の中を覗き見てるような気持ちで読んだ。美容に勤しむ青木もそうだけど、みんな何かしら宗教じみた崇拝に近いハマっているものがあるんだろうなと思った。 引き続き目の前の家族や周りの友人たちに多くの時間を使う人間でいたい。

    3
    投稿日: 2025.09.17
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    勝手にもっともっと踏み込んだ物語を想定してしまっていたので、綺麗にまとまったことに物足りなさを感じてしまった。もっとえぐるような、もっと読み進めるのを躊躇うような、朝井リョウを期待していた。それに十分耐えうる題材だったと思うだけに、新聞連載ということでブレーキをかけられたのかな?などと邪推した。朝井リョウ×アイドル界隈、いくらでも読みたい!

    1
    投稿日: 2025.09.17
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    他人事だと思って読み進めていたけど、いつの間にか自分の物語になっていた。視野が広がったのか狭まったのか。不快感と幸福感の同居。私は今、どんな「教会」にいるのだろうか

    4
    投稿日: 2025.09.17
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    恐るべし朝井リョウ。 文句なしの今年ベストです。 現代社会の「人間疎外」に鋭く斬り込んだ作品。 人としての尊厳を奪われて、何を生きがいにいきていけば、この人生をやり過ごせるのか、「疎外」された人々の傷がその人たちだけの傷でなく、普遍的なものだということを読者に示す、その手腕たるや! そして、ハラリが言うように、人類を発展させることができたのはフィクションの力「物語」だとすれば、人類を操ることも「物語」には可能だ。 その危険な「物語」を操ろうとする人々、操られる人々を、「物語」に溢れるまさに今描いたのは、さすがすぎる。アンテナ立ちまくりです。朝井さん。 テーマがまずいい!構成もとてもとても素晴らしい!全部いい。 ものすごい作家になられました。 小説家になってくれてありがとう!生まれてきてくれてありがとう笑 私が「すみちゃん」になりそう笑 この小説の3つの視点 ひとつめ 視野を広げることで見つけた正解を実践することのしんどさ。 ふたつめ 「物語」の中に視野を狭めて没頭することの幸福感、依存の気持ちよさ。そしてその行き着く先の忘我、狂気。 みっつめ その熱量の高い人間たちを「物語」を巧みに作り上げることでコントロールし利用して莫大な利益を得ようとするマーケット。さらに広がる支配の構造。 言い換えると 現代社会、地球の危機への視点。 生きづらい弱い孤立した人間への共感。 利潤と権力を得ることを至上とする世の中の仕組み。 この3つが巧みに一つの「物語」となった、今読むべき小説。 いやホント、朝井リョウすごい。

    86
    投稿日: 2025.09.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    多様性。自由。一人でも生きられる時代。 何が正解で、何が間違いなのか分からない。 幸せの形は人それぞれ。 だからこそ、自分は何がしたくて、何を幸せと感じるのかが分からない。正直、幸せの形が決まっていたほうが少なくとも自分は楽だったのに、と思ってしまう。 描かれる三人の視点はそれぞれ全く異なっている。だが、自分自身、いつ、誰の立場になってもおかしくないと思った。幸せとか正解とかよく分からない世の中で、それくらい人は簡単に揺らいでしまう。一つの出来事や一人との出会いという些細なきっかけで。 この本を読み終えてもなお、視野は広く持っていたいとは思う。人は信じたいものしか信じない。それでいい。自分に素直に生きればいいのだと思う。だけど、それでも、人を傷つけたり、違う価値観を否定したり、そういうことはあってほしくない。だからこそ、視野は広く持ち、あらゆる価値観に触れても、考えることを放棄せず、自分自身を見失わずに生きていきたい。 だけど、視野を狭め、これこそが自分の幸せなのだと思い込むことでしか得られない生きがいがある。頭の中で疑念がほんの少し生まれたとしても、これが自分の幸せだと思いたい。疑念から目を逸らしていなければ幸せは逃げてしまう。 現代における推し活がテーマだからこそ、すごく共感できる内容だった。だけどやはり、結局自己満なのかもしれないと思わされた。推しに幸せになってほしいという気持ちでする行動も、それは推しのためになっているのだろうか。搾取する側の人間の思惑通りに動いているだけなのかもしれない。他のグループを下げてまで評価されても嬉しいのだろうか。 これは推しのためだ、と言い聞かせて、周りが見えなくなるほど自分自身を捧げる。生きる意味や幸せを感じられたとしても、その後に残るのはなんなのだろう、と考えずにはいられなかった。のめりこみやすいタイプというのは存在するのだろう。それを利用したビジネスを積極的に肯定する気にはなれない。

    3
    投稿日: 2025.09.17
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    今更ながら朝井リョウさんの作品を初めて拝読しましたが、それぞれの登場人物の心の奥底の感情を物凄くリアルに表現されていて、かつ全体としても綺麗に纏まっていて驚きました。 こんな作家さんがいたとは。。。頭の中どうなってるの!?私はこれまであまりにも視野が狭かったようです。 特に久保田は比較的私と年齢も近く、またいま私が抱えている恐怖に似たものも持ち合わせているということで凄く感情移入しました。 でも視野狭窄になるくらい何かに熱中したい自分もどこかにいて。。。 もう今年はこれを超える作品は出てこないかも。

    19
    投稿日: 2025.09.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    分厚いのに本当に面白くて、3日で読んでしまった。サクサク進めるエンタメ性の高さと、テーマの深さが本当に高いレベルで両立していた。 「どの角度から見ても間違いなく本質的に正しい答えなんて、どこにもない。どこかで、“この視野で、ある程度の確率で、間違う”と覚悟を決めるしかないのだ」の言葉が、凄く自分の中で大事なキーワードになった。ずっと忘れたくない。 3人の主人公は、「取返しがつかないほどの大失敗」をしてしまったのかもしれない。でも、私は3人ともこの先も生きていけると思う。むしろ、この「自分を使い切った経験」を得たことは、とても大事で価値のあることだと思う。失ったものはあるけれど、得たものも確実にあるはずだ。この「自分を使い切った経験」があるのとないのとでは、この先の人生はきっと違うと思う。 特に久保田には本当に共感した。道哉のことを「友達」と思っていたのは、結局一方通行の思い込みだったけれど、「道哉は大切な友達で、道哉のもとに行かなければならない」と思い込んだこと、視野を一点に狭めて突っ走ったあの瞬間は、とても輝いていた。それが全く真実でなくて、結果が失敗だったとしても、私はあの瞬間、あの行動、あの時の「本物の気持ち」、「楽しいという感情」を、なければよかったとは思わない。 青木からのビタミン剤を「お守り」と思い込んで握りしめたことも、私はあの瞬間を本当に美しいと思った。青木がその後久保田から簡単に離れても、青木にとっては友達でも何でもなかったとしても、久保田だけから見えたあの瞬間の世界の美しさ、久保田が自分の思い込みだけで生み出した人生のきらめきを、私は尊いと思う。

    27
    投稿日: 2025.09.16
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    『推し活』をテーマに、エグい解像度で書かれた一冊。『正欲』のときも思ったけれど、物事を多角面的に描くのが本当に上手くて惚れ惚れする。 推し活にのめり込んでいたもの、推し活を冷笑していたがのめり込んでいってしまうもの、ファンダム経済を築く者の視点で描かれる物語は見事なことに令和の日本を浮き彫りにしている。 三者がそれぞれ抱えている孤独や生きづらさは、アイドルや俳優を応援することで、または誰かと繋がることで埋め合わされていく。視野が広いと遠くから物事を俯瞰しているだけで何にも夢中になれることがなく一生を終えてしまう。視野が狭いと自分の生活や人間関係を破綻させてしまうほど一つのことに執着してしまう。どちらも自分のたった一歩先、目の前にある物語だなと思った。 特に251ページからの章は個人的に印象に残っている。歳をとるにつれて「友達」と呼べる存在がいなくなる男性、いつまでも友達がいる女性、その切り口から語られる男女論は目から鱗だった。なるほどなあ〜。

    13
    投稿日: 2025.09.16
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    唯一新刊通知して、毎回新刊発売と同時に購入させていただいてる作家朝井リョウさん。 今回の作品もかましてました。 MBTI、推し活、タレントの自殺 メディアの誤報道… 現代のすべての風刺総まとめ。 触れてほしい内容をグサグサついてくる。 自我がない人はとても精神的にきそう、この本は。 そうなんだよ、MBTIを考えた人間も、推し活も 何かを信じて、1人でいたくない人間が生み出したものだと私も思っていた。 多様性の時代を謳いつつ、みんな1人になりたくない。 変わってる人、になりたくない。 世の常識から著しくそぐわない人間への世間の嫌悪感。 はみ出したことをして、失敗できる人間がこの世に何%いるだろうか。 今回の作品も本当に素晴らしい。 食い入るように、読み尽くした。この表現が正しい、 次の作品も期待大、。

    14
    投稿日: 2025.09.16
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    宗教とか推しとか信仰がある人って良いなぁって思ってた私を代弁してくれる内容 朝井さんはどうしてこんなにも詳細に書けるのだろう 時事ネタパラダイスだから文庫本になるの待つんじゃなくてたった今読むべき

    5
    投稿日: 2025.09.16
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    ・幸福や正しさの「共通物差し」はもはや存在せず、人生の指針を求めて、人はそれぞれが“物語”を信じて生きている。 ・「視野が狭い」状態は、没頭と行動を生む源泉。暴走のリスクはあるが、そこで初めて何かが生まれる。まさに「信じる者は救われる」。 ・「視野が広い」状態は、冷静で正しさに近づけるが、正誤ばかりにとらわれて結局何も生み出さないのかもしれない。 ・人を動かすのは「完全無欠の正しさ」ではなく、「間違う覚悟を持って信じ込む強度」。 ・その没頭の中で、同じ目線を共有する相手と出会えたとき、初めて友情や繋がりが生まれる。 ・生きるうえで大事なのは「間違わないこと」ではなく、「恥をかく覚悟を持って没頭し続けること」。

    4
    投稿日: 2025.09.16
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    日経で連載時に読んでいたので程なく読了。 めちゃくちゃ面白いしちょっと怖いです。笑 怖い、というのは自分に刺さる部分があるから。 登場人物に自分を投影させてしまうから。 でも、誰もが誰かの『推し活』をしている、そうに違いないと思いました。 ぜひ読んで実感して見てほしいです! 朝井リョウ先生、この世の中に対しての皮肉が上手すぎる。 現実世界があって、そこから延長させた具体的な物語を描き、それを抽象化させて文章に落とし込む。 その想像力に惚れ惚れします!

    27
    投稿日: 2025.09.15
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    誰も触れていないのですが、帯のQRから購読者特典の動画が見られることご存知でしょうか。(期間限定?) 本編の余韻に浸っている時に、連続して見たら、あまりのゆるさにびっくり!でも作家さんのビハインドストーリーて見たこと無かったら面白かった。当たり前だけど書くだけじゃなくこうやって手元に来るのか。そしてこれも朝井リョウファンダムの中に取り込まれている気がして怖い…。 本編感想===== 同世代だからか、小説を読んでいるというより、SNSを読んでいるようにスラスラ読める。INFPで、広告業を生業にしている自分にとっては、このリアルさが読んでいて疲労感も生むなと思った。あとマーケティングの勉強にもなる。。。 夏目漱石の言葉で、死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教が苦悩を救うというような話があったが、狂気と宗教てんこ盛りの推し活は、人を救うのか? 宗教って、統計学みたいだなと思っており、幸福になるための手段が教義として体系化されていると思っている。物事を自分で考えたくないという欲求が強い今の世の中で、自分に代わって幸福になる手段を考えてくれる推しこそが、特定の宗教を持たない日本では、よすがになるのかもしれない。 自分は推しがいないけど、推しがいながら読むのは苦痛だろうなと思った。 視野を広くするのがよしとされている世の中で、その弊害が描かれているのが面白かった 気になった言葉===== ・この人たちの脳みそをどこまで溶かせるのだろうかという、ある種の人体実験にも似た甘く冷たい緊張感が湧き上がってくる。今後どれほど視野狭窄を促せるのか、どれほど自他の境界を溶かせるのか、自分の中に潜む酷く暴力的な興味が燻り始めるのがわかる。 ・“視野を拡げて考えてみると”という呪文を唱えさえすれば、その答えを永遠に反転させられる。つまり、どの角度から見ても間違いなく本質的に正しい答えなんて、どこにもない。 ・どのパターンの人生でも穴があるんです。家庭を持っても今の日本じゃ将来苦しくなるだけだとか、お金や影響力を手にしても虚しいだけだとか、もう長生きしたって辛いだけとか、何でも視点を変えればマイナスになる要素があって、万人に通ずる物差しなんて存在せず、何もかもが簡単に引っくり返ることが急速に知れ渡りました。今は誰もが、幸せの形は人それぞれっていう話ばかりしています。でもそれって、言い換えれば、自分というリソースを使い切ったもん勝ち、ってことでもあると思うんんですよね。万人に通ずる物差しがなくなったということは、その対象が何であれ、自分を使い切っている人には外部からのジャッジが一切通用しないということでもあります。 ・皆自分を余らせたくない→自分を使い切りたい

    5
    投稿日: 2025.09.15
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    途中からはずっと恐ろしさを感じながら読んでいましたが、3人の思考や状況を客観的に見て恐ろしさを感じでいただけではなく、3人に少なからず他人事とは思えない部分を感じるゆえの恐ろしさもあった気がします。 一般的には「視野が広い」は良い意味で、「視野が狭い」は悪い意味で捉えられることがほとんどですが、その両面の功罪がフィクションの話にのせて鮮やかに表現されていて、久しぶりにガツンと衝撃を感じる種類の読後感を感じています…

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    今作も朝井さんの思考と惹きつけられるような展開に、どっぷりのめり込んでしまいました。思想感強めですが、大衆的な要素も取り入れたこともあって、読みやすく、そして共感が得られやすい内容だったと思います。 本作のテーマは広義でいう「推し活」。端的に言えば、人が自分の好きなものにのめり込む様子を、推し活ブームという現象を通して切り取った作品です。 私が特にすごいなと思ったのは中でも特にすごいなと思ったのが、昨今のオーディション番組ブームに言及するシーンでした。 最近のオーディション番組ブームに表されるように、人はストーリーを好むという考えは、すごい自分の中でしっくりきたものがあって、何かに熱中している時の没入感を上手く言語化しているように感じました。 私の中では本作は特におすすめで、今作も本屋大賞候補にノミネートされる予感がします。

    82
    投稿日: 2025.09.15
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    サバイバル番組出身グループを推している人間にとっては刺さりすぎて動悸がした。 あまりにもオタクの解像度が高すぎて、自分のSNSのタイムラインを覗かれてるような気がした。 2023年12月にデビューメンバーが決まってから、自分よりも年下の女の子に耐え難いほどの誹謗中傷がポストされているタイムラインのおすすめ欄をみて、まるで自分が言われているかのようにその一つ一つのポストに傷つけられていた。 そんな自分のMBTIは、自他境界が曖昧と言われ、おそらくこの本で何度もターゲットにされている層であるINFPです。

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    まさしく今を切り取る作品だった 「推したい」何かがなければ、味気ない毎日、これは間違いない 思いを同じくする人と集まり楽しむのは、とてもいい事だけれど、暴走は怖い 冷静な目に操られている視点を忘れずにいないと危うい 父娘はいつ対面するのだろうと気になっていたので、その場面でだけ、にやりとした

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    現代社会における「推し活」をテーマに書かれた話。 車内広告で目が離せなくなって、久しぶりの新刊一気読みしました。 一言でいうと人の感情とコントロールの戦いというか。一定読み通りになるけど、全部がうまくいかないから、この世はうまくいっているみたいな感覚になったなぁ。 朝井さんの本はいつもそうだけど、とにかくリアル。というか、「小説はフィクション」というエクスキューズをもって、実際のことや言いたいことをすべて作り話化しているというほうが正しいのかもしれない。その意味で私はいつも「そこらへんで起きてること書いただけ」と感じるし、最後をはっきり書かない(誰も書けない気もするが)のも、前もそうだったような・・と思うのだけど、それでも著者の視点は興味深く、もはや時事ネタを小説の形にしていろんな人に届ける役回りにすら思えてきていて、結局読み続けているのだから思うツボかもしれない。

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    単行本かつ文量もしっかりあり物質的な重さもさることながら、内容もずしりと重たかったです。 人の心はどう動くのか、宗教が浸透していない日本において推し活を通して語られていく。 翻ってみると、昔のファンって自分と遠い存在であってもイケメンや可愛い子が人気だった気がします。が、今は自分に近い存在、自分と似通っているところがある人をファンになっている気がします。 MBTIが出てきたり、アイドルオーディションの話が出てきたり、今の時代を反映させた内容で深く刺さる題材でした。

    18
    投稿日: 2025.09.15
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    帯に書かれる「神はいないこの国」が適切なのかは別として、「物語」があることが生きる駆動力になるとは思う。そういう話なのかなと読み始めて、中毒に陥ることが人間の根本にある欲のひとつなのかもしれないとなった。読み終えても頭の中がぐるぐる回り続けている。 自分自身はどちらかといえば、いろいろなことについて目の前のことにそのまま関わるというよりは、良くも悪くも距離をとって俯瞰するタイプなので、没頭しすぎる人が怖いとも思うしすごいなとも思っている。 そして「視野」という言葉がたびたび出てきて、視野を広げる・視野狭窄というのはどういうことなのか分からなくなった。広げたつもりが狭まるし、一点集中したつもりが逆に広くなる、みたいな例がたくさん出てきた。全体を通して一番俯瞰しているように思えた国見という人にしても、果たして本当に広い視野を持っているのかと問われると分からない。 MBTIもそうだけれど、中世(今もか)の教会のように生きる上での道標や指針がなんなのか分からないから縋りたくなるものの存在が本書を通底してあるように思える。それによって、以前宗教の信仰者と話したときに感じた「拠って立つことのできる存在があることの強み」が改めて本書を通して感じられた。 「それが社会通念的にどれだけ有意義だとされていても、自分の人生はこれでいいんだろうかという迷いは誰でも生じる。今とは違う道を選んだ人生の影は、誰にでもふいに差し込んできます」と国見が言い、そういうときに資金や時間や思考力の余白があると、客観視できてしまうためにより迷いが膨らんでしまい、道標のない大海原に放り出される……そういう迷いというのが自分の中でも時々芽を出してくるので、ぎくっとなる。だから猪突猛進することで全力で生きることが正解になりやすい。でも本当に果たして「正解」であるのかはやっぱり分からない。 こうして感想を書くことも俯瞰的にもなるし、一点集中の猪突猛進にもなるのかもしれない。現代の言葉にしきれないモヤモヤや苦しさをと向き合う上で、朝井リョウさんは常にぴったりなタイミングで小説を書いてくれるな。

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終えて、のめり込んだり呑まれたり、視野狭窄に陥ったり視野を定めることについて考えさせられた。自分で行動していると思っていても、何かのストーリーに呑まれて誘導されているかもしれないと自覚したい。 ・どの角度から見ても間違いなく本質的に正しい答えなんてどこにもなくて、ある程度の確率で間違うと覚悟を決めて行動するしかない。 ・なにもかもが揺らぎやすい今、確固たる信仰対象があり、それに対して自分を使い切ることで幸福を得られる。 ・はじめは久保田がまともに見えたし、次第に感情移入してしまい、道哉に寄り添おうとする場面は一緒にのめり込んでしまい、後でハッとした。自分しか助けられない、澄香にできなかったことをしてあげられる、と視野狭窄にもほどがある、と頭ぶん殴られた。 ・2人のすみちゃんが互いに過去の自分だったところもぞくぞくした。 ・花道に共感していた久保田は、本当の澄香を知って怒るだけなのか、寄り添えるのか。そこがまた孤独に進むか、澄香との関係を再構築できるかの分かれ目になるのか。隅田は自分を使い切ったあと、次はどんな信仰を頼りにしていくのか。 おもしろかった点は5つに絞った。 1.ファンダムの解像度が高い。どうやって動画の再生回数を稼ぐとか、CDを何枚も購入する描写や、別のファンダムの攻撃や、TLのポストなど。5気質も見たことあるなーと。 2.近年の時事ネタが多い。MBTI、選挙、コロナ、某俳優の死…。今読まないともったいない。数年後に再読したら懐かしい気持ちになるかもしれない。 3.ぞくぞくする展開。さすが朝井さん。 4.最近読んだ朝井リョウ作品に比べて親しみのある内容で読みやすく、色々と考え甲斐があった。あのあと3人はどうなるのか、読んだ人と話したい。 5.購読者特典の謎動画。軽やかで面白くて、読んだ後のお口直しによかった。 あらすじ(ネタバレあり) 「ファンダム経済をしかける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側、3つの視点」と紹介されているが、3人とも弱点、生きづらさを刺激するストーリーにのめり込む/呑まれる形で行動変容していく。久保田は行動が暴走して終了、澄香は間もなく終わることを察し、隅田は自分を使い切ったことで目が覚める。 ・久保田:中年男性。これまでの人生で家族(特に澄香)との向き合い方について後悔し孤独に悩まされていたところ、仕事を通じて道哉、青木と今までやってこなかった関係を築き始めた。しかし弱点(孤独)+視野狭窄(何としても孤独を断ち切りたい)により、行動力は暴走し、問題を起こして終了。孤独へ戻る。 ・澄香:久保田の娘。視野を拡げすぎたこと、自分がしたいことを定められていないことで、何も行動できていない自分に嫌悪感を抱く。また大学での友人との関係もうまくいかず、孤立する。ところが道哉というアイドルに出会い、同じ性格の彼を花道というコミュニティで応援することに充実感を覚える。弱点(行動力の無さ、孤立)+事務所が用意したストーリーに呑まれて(のめり込んで)視野狭窄に陥り、行動力が加速する。父に嘘をついて資金をもらうまでにのめり込む。小説終盤、母には怪しまれていると記載があり、本人もこの推し活はそう長く続けられないと察している。 ・隅川:もともと倫太郎を推していたが、亡くなってしまい深い悲しみに暮れる。その弱点につけこまれる形で陰謀論にはまり、今までにしなかったような行動も。陰謀論を信じているほうがラクで、コミュニティに属している安心感にすがっているよう。最終的には自分を使い切ったことで目が覚める。陰謀論信者たちは「視野を拡げよう」というが、それを信じ込む姿は逆に視野狭窄なのではないか。

    4
    投稿日: 2025.09.15
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    「推し活」にハマっている人を羨ましく思っていた。自分以外の何かに愛を注ぎ込める人に対して、そういう対象のない自分がひどくつまらなく感じていた。だからこそこの本に興味を持った。 前半は文章全てに赤線を引かなければいけないんじゃないかというくらい3人全員に共感した。中年男性、Z世代、派遣社員… 一見異なる3人に共通しているのは「生きづらさ」。そしてこの3人の属性に当てはまらない私も「生きづらさ」を感じている。感じさせられている。何も持っていない、何かに縋りつきたい、何もかも忘れさせてくれるような夢を見させてほしい、それが夢でしかないとわかっていても。 まさに夢から醒めるようなラストは一見絶望的で、でも私はハッピーエンドだと思った。そこから始まる予感がした。結局私は正気を保ちながら生きていくんだろう。 朝井リョウさんが「今の空気を瓶詰めにした小説」というようなことを仰ってた。彼の小説を並べたら現代日本の標本ができそう。同じ時代の渦の中で読めるなんて本当に面白い。何年後かに読み返すときにはどんな時代になっているだろう。

    13
    投稿日: 2025.09.15
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    まさに現代小説という感じだった。 『ずっと我に返ったまま生きるにはこの世界は殺伐としすぎていますし、人間の寿命は長すぎますから』 中毒症状があるほうが苦しくないのだ、人生は。 今後還ってくるのは、これまでやってきたことよりやってこなかったこと というフレーズが3度ほど登場していてそこに現代のいわゆるおじさんたちの悲しさみたいなものが詰め込まれていた 最後の展開がどうなるんだろう?という気持ちで中盤から後半にかけて一気読みでした。 朝井さん自身がオーディション番組好きというのもあってオタクの理解も深すぎる。 そして音楽業界(運営側)のことも…←何故?! コロナ、陰謀論、政治経済、孤独、生き方 全部この本に詰まってた。 生殖記あんまりだったなーって人、こちらのverどうですか?とお勧めしたい。

    18
    投稿日: 2025.09.15
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    おもしろすぎる! 単行本久々に買ったけど絶対に今読むべき。 2025年に読むからこそ刺さることがある。 これも友達と話したいから、すぐ映像化してほしいな~

    3
    投稿日: 2025.09.15
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    帯と描かれる題材に惹かれて読みました。 朝井リョウさんの作品を見るのはまだ二作目ですが、本当にいい意味でかなり刺激が強い。大体自分が題材に対してかなり興味を持ったタイミングで読んだため、より刺激的だったんだろうとは思いますが。読了後の感覚が、朝井リョウさんの作品を以前読んだときもこうだったなぁとしみじみ感じる一冊でした。本当に読んだあとにいろいろと考えさせられる。 3視点から物語を描くことで、昨今の推し活文化と称されるものをかなり解像度高く描かれているのだろうなと個人的には感じました。ビジネス観点からすると興味深く感じ、一時期サバ番の光景を観ていたいち視聴者からするとかつてを彷彿とさせるシーンがあり。こうして文章に表されると、凄いムーブメントだよなと改めて感じました。

    2
    投稿日: 2025.09.15
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    現代社会において心の中にしまっていた色んな感情が、読み進めるほどにグサグサ刺さって外に飛び出していくような感覚を覚え、まさに朝井リョウ作品、という感じがしました。このゾクゾク感、たまりません。笑 自分にも推しがいて、推し活をしているからか、物語に飲み込まれそうな危うさを感じつつ、なんとか踏ん張って読み終えた、という感じです。後味がよい、とは言い切れませんが、世に溢れるストーリーの裏側の一端を覗き込んだような気分です。人は、確かなものを求めるために、色々な物語の中に入っていくのかもしれません。誰もが自分自身の物語の主人公なのだと言われると、聞こえは良いですが、誰かに造られた物語の中で、主人公に仕立て上げられてしまうと、それはまた違ってくるのかな…と色んなことを考えてしまいます。そして、まさにこの物語に飲まれてしまったな、と我に返ります笑

    5
    投稿日: 2025.09.14
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    朝井リョウ作品は単行本をすぐ読むに限ります....!今回も、いいもの読んだな〜とほかほかする読後感。 連載しているときは着眼点・思想が早すぎ、単行本がでたとき(2025年の今)ちょうどよく、文庫になったら多分ちょっと遅いだろう。現代社会の空気感と時代を支配するキーワード、そして現代人の心模様をすごい解像度で見透かして記録していっている作家!なんでこんなに全てを分かってるんや... 登場人物の一挙手一投足がまるまる自分の一部である、あるいは袖振り合う半径50m以内の隣人の話であることを確かに感じる。現代の今この時間のこの社会であることがわかる。とにかく明るい現代史すぎる。アモアスの守護天使のような視点で読める。面白いしタメにもなるしで、あとちょっとこわいです。物語の展開がハラハラしてこわいからってメタに逃げても朝井リョウが見透かしすぎててこわいので詰んでる。 同時代に生きてて新作が読めて嬉しいです!ありがとうございます!

    3
    投稿日: 2025.09.14
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    私は普段B to Bのマーケティングを生業にしている。 なので、分野が違うものの本書の話はよく理解できたし、とても胸が痛かった。 マーケティングは価値創造の手段であって、本来、お客さんの需要を見極め、コミュニケーションを取りながら求められている商品を開発し、その情報を必要な人に届ける一連のプロセスだ。世の中を良くするためのものであって、決して搾取を目的にしてはならない。 自分に何ができるか日々考え、技術を研鑽し、社会に貢献するという目的を見失わないようにしたい。

    5
    投稿日: 2025.09.14
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    佐久間さん(佐久間宣行さん)が大傑作、なんて言ってたもんだから買わずにはいられず。 今、ふつうに語られていること。ニュースになっていること。目に、耳にしていることが書かれているだけなはずのに、なんでこんなにこれはヤバい、と思うのか。恐ろしくなってくるのか。やっぱり現代はヤバくて恐ろしい世界なのか。 学生生活や自分自身に不安を抱える女子大生と、音楽業界の第一線を退き孤独に暮らす彼女の父親、そしてこの世を去った推しの真相を探る女性。誰かが作り出す物語にずぶずぶと飲み込まれていく様が、それぞれの視点で描かれる。凄まじい筆の力でえぐられていく。怖い。そしていつからか私がこの物語にずぶずぶと飲み込まれている…。おっもしろすぎて、ちょっとこのスピードで読み終わったらもったいない!と思いつつ読み終え、大学生の娘にすぐさま貸した。

    5
    投稿日: 2025.09.13
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    いや、おもしろすぎるって 「あの人、やばっ」って言ってる私たちは、誰かから見たあの人なんだろうなと思った。怖い、今は怖くてたまらない。自分を変えたくてしょうがないけど、そこから1歩踏み外したら、また繰り返す。あーおもしろかった!

    5
    投稿日: 2025.09.13
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    よくできた本だなあというのが最初の感想。朝井さんの作品はどれもそうかもしれませんが。 「推し活」と「物語」をキーワードに、いくつかの人物の視点から一つの『物語』を追っていくような展開。 読み終わってどっと疲れた。私は身近にいる人を推し、暮らしていけるような存在でありたい。そんな気がした。

    2
    投稿日: 2025.09.13
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    人間観察の解像度が高すぎてゲロ吐きそうになった。 朝井リョウ極まってきてる。 ファンダムの時代要請、普遍性、内在的論理の言語化がすごすぎる。 学術書を読むより、こうして群像劇として、物語として読むからこそ、一段階深く現象を理解できる。

    3
    投稿日: 2025.09.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    朝井リョウに見透かされてる。誰も彼も。 また今回も恐ろしい小説だった。 「中年以降は今までの人生でやってこなかったことが返ってくる」っていうのは、一見厳しい現実の気付きのようで、かなり都合のいい考えだ。 全力でやったって報われないことなんていくらでもあるし、そもそもやりさえすればすべてできると思ってるのが傲慢。 家族とコミュニケーションとろう、信頼関係を育てようと一方的に張り切ったって、上滑りして終了の可能性大なのに。 「もっとたくさんのものを手に入れた、もっと幸福な本当の俺」みたいな幻想があるんだろうか。 勉強したら100点とれるテストと人生は違うんだよーーー。人間こえーーーー。 中盤、おじさんの生きづらさに希望の光が差し込む話かと思い、それも今の時代に必要な物語ではあると感じたけれど、 最終的に自分の好意が簡単に加害になるというところまで描かれていていたのが印象的だった。 孤独で疲弊していると、思い込み激しく暴走しがち。 どうか人類、自分のことを山から降りてきた熊だと思って、慎重に行動してほしい。私も心掛けます。

    11
    投稿日: 2025.09.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    グサっとくる一冊だった。 朝井リョウの他の作品を読んでも感じるが、今の社会の見えていない部分も含めて的確に表現し、現実を突き付けてくる。 今回のテーマは、推し活、ファンダム。 私自身は推し活ってしたことがなく、そんなに夢中になれるものがあるって凄いと思う反面、何がそんなに良いんだろう…みたいな冷めた目線も持ち合わせていた。 何がそこまで人を駆り立てるのかこの本を読んでよく分かったし、視野を狭めることで見えてくるものがあるという話がしっくり来た。 主な登場人物は、ファンダム経済を仕掛ける側、仕掛けられる側、かつてのめり込んでいた側の三人。 自分に似ている人間は出てこないのに、一つひとつの場面を取り上げるとすごく共感できる部分があったりする。 言葉のセンスというか、言葉の選び方が上手いんだろうな。 新刊発売と共に動画などもたくさん出されていて、それらを見ればさらに作品への理解が深まって面白い。 朝井リョウが作り出すファンダムに見事に嵌められている気がする。

    5
    投稿日: 2025.09.13
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    ​人生を変えるのは「やったこと」ではなく、「やらなかったこと」かもしれない…。 ​仕事や勉強、SNS。人に見せるための「やったこと」で自分を語りがちになる。でも、本当の自分は、誰にも見せない検索履歴の奥に隠れているのかもしれない。 ​他人には理解されない愚かさに夢中になる時間。誰の役にも立たないと分かっていながら、心を掴んで離さない「推し」の存在。そんな「無駄」な瞬間にこそ、自分だけの幸せや希望を見つけることができる。 ​この世界は、「正しさ」と「効率」を求めていく。でも、そのすべてを捨てて、心に従う「やらなかったこと」にこそ、光のような希望が宿る。恥ずかしかったり、滑稽に見えたりしても、心のままに打ち込んでいくこと。その時間が、本当の姿を輝かせてくれる。

    6
    投稿日: 2025.09.13
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    『推し活』をテーマに、ファンダム経済を築く者、のめり込む者、のめり込んでいた者の視点で描かれる物語。三者とも孤独や生きづらさを抱えていて、その不安や渇望を誰かが創り出した"物語”で埋めていくことに。どこかで本質的ではないことに気付きながら、後戻りできなくなっていく過程がリアルでとても怖かったです。視野を広く、解像度が高いことが良いことと感じていましたが、それが逆に生きづらさに繋がってしまう人がいるということ。狭い視野の中で、自分が唯一、自分らしく生きられる人がいるということ。 『推し活』を通して、のめり込むことの怖さを実感した作品です。ラストが特に最高!朝井さんの作品でNo. 1です。

    42
    投稿日: 2025.09.13
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    25年最高傑作かもしれない。 もう今の世の中で生きていくためにファンダム経済と関わらずにはいられない。こんなカオスな時代になった時点でもう取り返しがつかない。 オタクを馬鹿にしていた自分も心のどこかにいて、その狭窄的な幸せを羨んでいる自分もいる。最終的に何が幸せなのかを問われている。 終わり方の絶望が本当に最高だった。

    16
    投稿日: 2025.09.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    始まりは離婚して一人暮らしの男性の実情が描かれていて、娘に留学日を迫られるも繋がりを保ち続けたいと願う姿だった。推し方を通してアイドルとの関わり方が昔とは変わっていく。 この小説では、優しさという繋がりがテーマになっているのかもしれないと思った。推し活ができるおかげで、孤独や孤立になることなく生きていける。自分は推し活をした事がない。ただのファンであることはあっても、熱狂的なファンになることはない。その人を応援したいと思ったことはない。ただ自分が好きなだというだけ。だから推し活でアイドルが不祥事を起こした時などには絶望の淵に突き落とされた気持ちになることはない。それは推し活が生き甲斐になっているからだと思う。そこの繋がりが生きる上での糧になっていたんだと思う。氷川きよしのファンであるおばあちゃんが長生きするというのは良く聞く話だが、推し活が生き甲斐になっているという分かりやすい例なのではないか。 すみかの話は痛いくらい共感できた。あまりに溶け込むのが苦手だし、それにあえて交わらない自分はかっこいいと思っていた。推し活?性格診断のくだらなさ、そんなもので自分のことを図られてたまるかと思っているのだが、どうしようもない時には結局、占いとかに頼っている自分もいる。結局、自分があるようで全くないのだ。薄っぺらい人間なのに、そう思われるのにすごく怯えている。 搾取する側と搾取される側の物語。推し活とは素晴らしいものですよ。推しも喜ぶし、推す側も人と繋がれる。仲間も増える。そんないいことばかりを並べて、お金を搾取する。ただそれは会社だけにとどまらず、国からも搾取されると気がつくべき。ファンダムは視野を狭くする。推し活、ゲームなど視野が狭い人間にとって、それが生き甲斐になり人生の全てになってしまう。視野を広げることで、意味があることなのか?と問う事が足りなくなっているのかもしれない。前も自分は広告に騙されていたと思う。最新機器に変えたい。少しでもいいものを使いたい。ただそれは広告がいいように見せているだけだ。実際それを手にしても、生活水準は変わらない、それどころかお金ばかり搾取されていた。視野を広く持つべきだ。情報に流されずに自分の考えをしっかりと持つべきだと強く感じた。 しかし視野狭窄に陥るのは、現実逃避でもある。搾取され続けて、頑張ってるのに報われない孤独を抱えている、人と簡単に繋がる世の中なのに他人との距離は果てしなく遠く感じる。夢や希望が持てない人にとっての拠り所なのだ。自分もファンダムになれるのは羨ましいと思う。一つのことにハマって人生を謳歌できることは幸せなことだと思う。ただそこにお金が絡んでくると人生が狂いかねないので、やはり視野は広く持つべきなのだ。自分を見失わない程度である事が必要不可欠だとも思う。 視野の広さや狭さというのは、人それぞれだという事が分かる。視野を広く持ちすぎるのも良くないのか。広告を見て信じ切ってしまうのが視野の狭さなら、広告を見て日本弱体化に結びつけてしまうのが視野の広さ。どっちも行きすぎてると思う。結局どちらも影響されすぎて自分を見失っているのは変わらないんじゃないか。 アイドルに注ぎ込む人って、ホストにハマる人と同じな気がする。 どう転んでも辛い。搾取する側とされる側。自分は搾取される側だとしても、搾取され続けるのが幸せか。搾取されずに生きていけるのか。現代社会って息苦しいんだと改めて思った。何が正解なんて分からないけど、損得勘定を考ない繋がりの大切さを再確認できた。

    7
    投稿日: 2025.09.12
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    何気なく寄った書店で、ふと目にした美しい装丁の本。朝井リョウさんの新刊かぁ、なんて思いながら帯を見ると、"界隈"の文字。「ん?界隈?めっちゃ馴染みのある単語なんだがw」と思いながらその後に続く言葉を読む。「事実と解釈、連帯と暴走、成長と信仰、幸福と中毒、人生と孤独ー呑むか、呑まれるか」 …これは、読むしかない。と迷わず購入した作品。 話としては「推し活」がテーマになっていて、仕掛ける側(運営・公式)、新規ファン、推しを失ったファンの3つの視点で話が展開していく。 内容が素晴らしいのはもちろんだが、ファンの言動がリアル過ぎる。朝井先生、私たちファンダムの集いをどこかから見てらっしゃいましたか?と問いたくなるようなリアルさ。 人の孤独や物語への没入による視野狭窄、あーそういうことか…言われてみればそうだな…と思うことが多すぎた。 この本は推し活についてその功罪を説いているわけでもないし、何か指針を示しているわけでもないけれど、推し活をする人、推される側の人、両者にとって心のどこかでもやもやと燻っている表しきれない気持ちを表現してくれていると思った。 とても考えさせられた作品でした。

    5
    投稿日: 2025.09.12
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    ぎゃーーー!これ以上気づかせないでくれーー って感じで、自分の中にあるものに向き合わされたお話だった… 面白すぎる。 ⚫︎ まず、推すものがあると人生楽しい♫ってよりも楽。ほんとそうなんだよな。 他の様々な面倒や、考えなきゃいけない未来にも一旦蓋をして、目の前の娯楽に没頭するのはラクなんですよ。 ハマってるドラマや、タイムレスプロジェクトや、そんなのがある時って空いた時間ぜんぶそれを詰め込めば勝手に楽しくさせてくれるからいいんだよな。 積極的に思考停止させられてる、って客観的に言い当てられた気がしてドキッとした。 昔と比べてどんどんバカになってる気がするけど、辞められない。ギクリとした。 ⚫︎ 信徒が勝手に物語をつくって、ヒートアップしていく。というマーケ側の視点もすごい! さすがハロプロとかオーディション番組好きな作者、界隈の解像度が高すぎる。 出演者の過去から、ストーリーを作り出してるポストとか没頭して読んでたわ。私も信徒気質なのかも。 ⚫︎ 作中出てきたInfpって私と一緒!仲介者。 澄香の、ぐるぐると内省と自己嫌悪が止まらず、似たタイプにやたら共感してしまうのもめちゃわかった。自分の生きづらさに酔っていそうなところにハラハラした。 ⚫︎ 何かを埋めるように誰かに没頭して、お金を払って、託して… のサイクルが、父娘でグルグル回ってるのすごい構造だったな。 結局拠り所が欲しい、受け入れてもらって安心して息ができる世界が欲しい。ってこと。 ⚫︎ 最後、すみかの留学資金が推しに使い込まれてるのが父にバレて…っていう結末だと思ってたのに、そこまでは描かないところが意外だった。 もう、モニターで娘を見ても気づかないくらいまで、距離が開いているようにも見えた。 ⚫︎ 人生を使い切りたい。使い切らなきゃ。 って切実な気持ち、確かに。 ただ淡々と、食べて労働して寝るだけの日々だと満足できなくて不安で、何か日々をキラキラさせることをしないと。生きてるって実感できることをしないと。って焦燥感に駆られることがある。 気づくと、誰かのストーリーに自分を載せて、でもそれは観客として盛り上がっているだけ。 自分の人生を、きちんと生きることの何と難しいことか。

    5
    投稿日: 2025.09.12
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    朝井リョウは、他作家と比べて世情の汲み取り方が群を抜いて解像度高く、彼を通して想像を越えた新しい視点で、世界を知ることができる。著者自身もファンダム経済にのめり込んでいたことが過去にあったのではないか、と疑うほどだった。周囲を見渡すとファンダム経済にのめり込む、または虜となっている人間がたくさんいる。どうしてそんなにものめり込むことができるのか不思議で仕方なかったけど、「自分を余らせたくない」思いからという考えに、思わず膝を打った。確かに。私も人に比べて多趣味であるほうだけど、それは所属している教会の種類が多いだけで、多いからのめり込む必要がないだけで、根本的にはすみちゃんと同じじゃないかと思った。どんな物語でも、自分が信じると覚悟を決めて飛び込んだ先には、強烈な熱狂や、心の底から湧き立つ生きる気力みたいなものがある。信じると決めて、間違っていても覚悟を決めて歩いていくことの素晴らしさを知った。しばらく私生活がままならないほど熱中し、読後、背表紙を眺めながら放心していた。結末を迎えたあと、物語から突き放されたような感覚が残るのは、それほどこの物語に"のめり込んでしまった"ということ。悔しい、悔しいくらい面白かった。噂通りの大傑作。

    6
    投稿日: 2025.09.12
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    すごい本だった 数年前に読んだ辻村深月の「傲慢と善良」ぶりの衝撃と脅威を感じている どうやって終わるのか早く知りたくて知りたくて 駆け足で読んだので、再読したい 「物語」に動かされる人 動かされる人によって動く経済 「物語」で搾取する人される人 広いつもりが激狭の視野 視野が広いだけだと孤独になる 視野は狭い方が毎日が充実することもある 視野の広い人に搾取される狭い人 みんな視野はどこかの部分で広くて、どこかの部分で狭い なんとかみんな幸せになってほしかったけど これは…登場人物全員バッドエンドだよなー… でもたぶん人間ってわりとこんな感じ こうやって俯瞰する私の視野も狭い

    5
    投稿日: 2025.09.12
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    誰かが創り上げた物語の上で誰かがまた物語を創り上げて、何かに縋っていることが唯一の幸せという今の日本社会に一石を投じるような本で面白かった。 今自分たちがこうして本を読んで美味しいものを食べて寝るという幸せも誰かが描いた物語の一つに過ぎないのかも

    5
    投稿日: 2025.09.12
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    #イン・ザ・メガチャーチ #朝井リョウ 頭の芯を激しく揺さぶられ、まだその痺れの余韻が残っている。ここまで心に刺さったのは、辻村深月さんの「傲慢と善良」以来かも。 いつもなら、ただの小説、お話の中のことと割り切るけれど、本作はそうはいかなかった。 作中にも出でくるけれど、これはまさに自分たちの物語だ。 自分もモノを売る仕事をしていて、#楠木健氏の著作なんかを読んで、物語の持つ力は何となく理解していたつもりだったけど、本作で目の当たりにしたのは、もはや暴力とも言える物語の渦。 色んな界隈で一生懸命生きる人たちが、これほどに困難にさらされて、なおかつ搾取の対象になってしまう時代。誰かとつながって生きたい、居場所が欲しいだけなのだ。僕たちは。 #読書好きな人と繋がりたい

    9
    投稿日: 2025.09.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    あああ、読み終わってしまった。 すっごく、"今" (2025年)の話だと思った。 この直後、ちゃみするが自分の娘だと判明してどう思うんだろう、自分が留学の支援のためと思って送っていたお金が、自分がプロデュースに携わりハマったグループ・メンバーに流れていたとわかって何を思うんだろう、とすごく気になる終わり方だった。 ファンダムを宗教化して、信徒を増やしたり育成していくプロセスはすごく怖く感じた。国見に人間味がなさすぎるから。でも、最後の最後に言っていたことには少し理解ができた。ファンや道哉から搾り取ってるのではなく、搾り取ってあげないといけない、なぜなら、ファンは搾り取られたいと思ってるから、自分を余したくないから、という部分。初めの方の国見の言葉に、「何かに夢中になってる方が楽」というのがあったけど、これもほんとうにその通りだと思って、最終的に合点がいった。私もなにもない1人の時間がいつも膨大で孤独でしんどくなるから、久保田のおいしくもないインスタント味噌汁を啜る時間がつらいこと、家族の喪失を経てるから私よりもずっと辛いんだろと思った。 久保田に、「友達」の感覚を感じさせてくれた道哉のこと、感謝したい。久保田に、「友達っています?」とかコンシーラーのこととか教えてくれたシーン、すごく好きだった。 終わり方久保田からすると友達と認識し始めた道哉も青山もいなくなってしまい寂しかったけど、道哉は道哉で夢が叶ってつらい今周りに支えてくれる友だち、仲間がいる状態になってよかった。久保田が今だいぶメンタルが落ちてしまってるだろうからいきなりは難しくても、また友達が見つかるといいなと思う。自分の父の姿が久保田にどうしても重なるところがあった。おじさんの友達問題。 道哉に出会うまでのすみかの感じるいろいろが、いやな部分もそうでない部分も自分にすごく重なって、しんどくもなったし、朝井リョウはなんでこの気持ちが書けるの?誰と話したらここまで想像が及ぶの?と疑問に思った。ああ、本当に朝井リョウと友達になりたいです。 MBTIも好きじゃないし、聞いてたのと違うみたいな友人とのコミュニケーションもひどく傷つくしその人から一気に離れてしまう。 すみちゃんが、隣人に出会して瞬時に家に入ったときの「叩かないで」「叩いて」の両立する気持ち、読んでて苦しかった。もはや怪しいかもとかわかりだしてるのに、倫太郎の喪失を埋めるやることがあること、それをする仲間がいることでいっぱいで何も言えなくなってた。最後、いづみさんをただ眺めるところで、少し安心?した。やることやって満たされ尽くしたのならよかった。 ------------ 130ページの最後 143 最後。ユリちゃんすごい

    6
    投稿日: 2025.09.11
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    この本を手に取った理由は単純で、朝井リョウのファンであり、かつ過去にアイドルオタクだったからだ。 私はたびたび「アイドルは物語だ」と感じていた。オーディションを経てデビューし、テレビに出演する。そしてライブ会場は次第に大きくなり、最後には東京ドームでライブをする。大抵のアイドルは東京ドームでのライブをゴールに設定するのだ。けれど、その東京ドームは本当にアイドルたちが望んだものなのだろうか。この物語は本当にアイドル自身が思い描いた物語なのだろうか。そんな疑問を抱いてから、私はアイドル文化から次第に疎遠になっていった。心のどこかで、アイドルたちの物語を裏で書いている脚本家の存在に気付いていたのだ。脚本家が書いた物語は本質的ではない。だから、それに熱中する自分も本質的ではないのだと思ってしまった。 そんな中、この本で印象的だったフレーズがある。 「自分を使い切ることが今の時代に手に入れられる唯一の正解であり、〝幸せ〟なので」 これは国見のセリフだ。 私は疑問を持つ。本質的な幸せとは何なのだろう。本質的ではないものから得られる幸福は、本質的ではないのだろうか。過去を振り返れば、そんなことはないと断言できる。たしかに「本質的」ではないかもしれないが、応援していたアイドルがデビューを果たしたとき、私は涙を流した。大きな会場でライブをするのを心から嬉しかった。この幸せは、余った自分を全部注ぎ込み、使い切れていたからこそ得られたのかもしれない。 本質的なものとは何なのか。この本を読んで私の中に生まれたのは、そんな疑問だった。けれど、どれだけ視野を広げても、この世界に「本質的に正しいもの」など存在しないのだと感じる。だからこそ、腹を括って間違いを信じるしかない。視野を狭めるしかないのだ。たとえそれが間違いだったとしても、自分が信じたものに自分を使い切れるのなら――それを幸福と呼ぶのだろう

    6
    投稿日: 2025.09.11
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    危ない。 危なすぎる。 感受性が豊かで共感能力の高い方、 もしくは自己が確立していない方は心に刺さりすぎてもってかれてしまうので注意です。 登場人物の孤独と先が真っ暗な不安とか、 自分への嫌悪とか居心地の悪さとか 他人からの一線引いた目線とか 自分の経験かと脳みそが勘違いするほどに的確な描写で、とても辛くなりました。。 朝井リョウさんはどんどん洗練されてくなー 巻末の動画特典も私の笑いのツボにはピンポイントで刺さって、総じてめっちゃ最高な読書体験でしたー

    9
    投稿日: 2025.09.11
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    同世代のバツイチ子持ち一人暮らしの男には、ちょっと身に染みる切ないお話でした。ネガティブになりがちな方はご注意ください

    16
    投稿日: 2025.09.11
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    今年のマイベスト10に入りそう。 3人の登場人物、それぞれに共感する部分あり。 視野が狭まる事によって、尖った行動をとることが出来る(出来てしまう) かと言って、視野を広げたところで、行動移行しずらくなる。 推し活、陰謀論、物語、メガチャーチ 気になっていたこれらのフレーズを小説で体感したようだった

    9
    投稿日: 2025.09.10
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    ひっさしぶり読んだ後、グサグサ刺されたところからすぐに血が止まらなかった。 なんなら読んだ次の日もまだ止まってなくて… 「正欲」の何十倍も私には刺さりました。 「ほっしぃな、ほっしぃな ほんとうのおともだちほっしぃな ともだちができたらなら、 あったかいそうげんでねころんで ごろんごろんごろんごろん あそぶんだぁ⭐︎ どうしたらどうしたら ともだちってできるのかな? ほっしぃな、ほっしぃな ほんとうのおともだちほっしぃな」 このよく知らない子供向けっぽい歌の歌詞、メガチャーチ読む前と読む後だと、感じ方全く変わると思いませんか… なんか子供向けの歌で「ともだちっていいな」みたいな曲なかったっけ?!って思って検索したら、探していたものは出てこず、(多分本当に子供向けではない?)この曲がヒットしたんだけど、要するに幼児のころに歌ったような、「ともだちって大事、ともだちって良いな」が人間の根本にあるのか?とふとこの小説を読み終えて思ったので、引用させてもらった。 孤独でたまらない人が、横の繋がりを求めて爆走するのか? 「幸せは人それぞれ」って時代になってから、自由になったというよりは、人は指針を失って、自分を「余らせる」ことなく向かっていける目標、やりがいを感じるものを追い求めるあまりに、爆走するのか? 「宗教がないこの国」で、生きる指針を求める人たちは、「推し=神」のために信者になり、金銭的にも貢献し、聖地巡礼をして、生きる意味を導いてもらっているのか? 本当に宗教なんだよ。 推し活の裏側、知らないことだらけで… そして黒幕説…日本のメディア批判。 日本を弱体化させるためのメディア。 これ、あながち全部間違ってはいないと思う私はクレイジー? もちろんシェルターを作って今すぐに第三次世界大戦に備えるのが正解だとは思わないけど。 年齢的に、35歳女性の「すみちゃん」に一番感情移入してしまい、心が痛くて痛くてたまらなかった。苦しかった。 すみちゃん。絶対良い人なんだよ。 すみちゃんの幸せが何か分からない。だけど満足いく人生を歩んでほしい。すみちゃん。 1の情報から100の物語を勝手に作っている私は、まんまと朝井リョウさんの信者になるのかもしれない。 朝井リョウさんの物語が素晴らしいから。

    13
    投稿日: 2025.09.10
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    主な登場人物のいずれとも属性は違うけど、いずれにも共感する部分は少しずつあって、しかも仄暗い部分に。 昨年の生殖記に続き、今年のこの本もすごい作品だった!

    5
    投稿日: 2025.09.10
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    孤独、コミュニティ、連帯、排他、陰謀論、視野狭窄、搾取、そして物語性というところを繋ぎ合わせて現代社会の熟しきって腐りかけている風俗にフォーカスを当てた物語。登場人物三者三様の行動の変容があって、結果だけ見ると異常ともとれる行為に走っていたりはするものの、思考のプロセスを辿っていけば無理なく行き着く結果であるところが現実すぎた。出版区で朝井リョウも言ってたけど私も全員に共感した。 事象に物語を付随させること、それによって人の行動を変容させるところを宗教施設であるメガチャーチの構造に見出だしているのも、最近気になるトピックのかなり上位にくるものだったので個人的にタイムリーだった。自分がオタクという存在の異質さを敬遠するのは宗教の原典至上主義のような結束と攻撃力を感じるからなのだが、その点についての理解が一致しているようにも感じる。 「みんな現実しんどくない?一緒に推しに人生託してあたおかになって辛いこと忘れようよその代わり現実の生活は破滅するけどこれがうちらの幸せだと思い込めば大丈夫だよ!」っていう暗黙のルールが潜む界隈の片隅はすぐそこにあって、作中にもあったように『いつだって搾取する側には余裕がある』のを忘れちゃいけない。うちらは物語に殺されうるんだと思う。 やっぱり年齢が近くて同じものを吸収して生きてきてるからか、朝井リョウの小説って読みやすい。作家15周年記念みたいだけどめっちゃ面白かった。

    26
    投稿日: 2025.09.08
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    めちゃくちゃ面白くて一気に読み切ってしまった。後半はずっとこの物語がどう着地するのかドキドキしていた。

    15
    投稿日: 2025.09.08
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    人生とは、これまでやってきたことよりも、これまでやってこなかったことが還ってくるものかもしれない。やってこなかったことが還ってくるというのは、こんなに恐ろしいことだったのか。 半分くらいまでは単純に話が面白くて、後半からはこの話がどんな展開になってしまうのかが怖くて、読み進める手が止まらなくなった。そして読後の余韻がすごい。 現代は、“正しさ”“幸せ”は人それぞれだと肯定してくれる社会だ。出世すること、結婚して子どもを育てることだけが正解じゃない。そうやって逆に、何をすればいいのか、何を信じればいいのかわからなくなった人々を動かすのが物語の力だ。聖書がイエスの物語であり、メガチャーチに何千人もの信者を集めるように、推しの物語に共鳴した信者がSNSや街に集う。聖書を人々が様々に解釈し布教するように、推しの物語に自分を投影し、動画や写真を拡散する。物語の一員になって自分を使い切ることは気持ちいい。人は信じたいものを信じるし、信じるものがあった方が人は生きやすい。 この小説は、信じるものや信じ方を誤った人々の物語だ。これまでやってこなかったことが還ってきた人々の話だ。それでも、物語に熱狂して道を誤る人の方が、冷静ぶって遠くから世の中を俯瞰している人よりも幸せそうに見えるのは不思議だ。 「こういうことを頑張っていて偉い、ではなく、よくわからないけどめちゃくちゃ本気で生きてて眩しい。そういう世界に私たちは生きているんです」

    24
    投稿日: 2025.09.08
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    「推し活」という事象を軸に、アイドルグループの運営側、推す側、そして、そのグループではないがとある舞台俳優を推す人物の三名の視点からなる、群像小説。キーワードは「物語」。 推される対象(ここではアイドルや俳優)の背景にある物語こそが、人間を動かす。 「一億総推し活」と言ったら言い過ぎかもしれないが、それくらい私たちの生活に馴染む「推し活」という現象。その対象は多岐にわたるが、確かに、自分自身を省みても「物語」や「関係性」に魅力を感じたことは多々ある。それをさまざまな立場から描いた小説なのだが。 まず、その構造(構成)にびびった。読んでいくとわかるのだが、三者は一見無関係なように見えて、実は密接に関わっていることがだんだん見えてくる。その「判明」ポイントがいくつかあって、そのたびに鳥肌がたった。ある意味朝井リョウの腹黒さが存分に発揮されているといえる。 そして、わたしが読みながら気になったのは各所にちりばめられた「共通するキーワード」だ。前述とも重なるが、同じアイテムを置くことによって、それぞれの立場の違いや見えている景色の違いを表現している(ように見える)。より三者の対比が視覚的に感じられた。 作家デビュー15周年作品ということもあり、朝井リョウの進化をずっと追ってきた身として、現代を写し取る天才が到達した地点に深く思いを馳せる。また、『武道館』で「推される側」を描いた著者であるからこそ、本書で本当の意味の「ファンダム小説」の完成を感じられた。また『武道館』も再読したら本書を踏まえた新たな発見もありそうだ。 ここまで長々と書いておいてなんだが、『武道館』や『スペードの3』も踏まえ、「朝井リョウが描く推し活」を総括したような文章を書いてみようかなと思った。 【ブクログだけの追記】 結局、視野が広いとか狭いとか、正しいとか正しくないとかではなく、人は信じたいものを信じるし、信じたいものにお金と時間を使うのだなと感じた。 自分だってそうだ。本書に出てきたオタクほどではないけれど、好きなバンドのラジオを聴いたりライブに行ったりCDを買ったりする。本を買うのだって推し活と言えばそうなのかもしれない。 そして、孤独をおそれ連帯を望むからこそ、ファン同士で繋がり、場合によっては巨大なファンダムとして「信仰する存在」に身も心も捧げてしまうのだ。

    22
    投稿日: 2025.09.08