
総合評価
(391件)| 122 | ||
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powered by ブクログ後半は一気に読んだ。休憩入れないほうがいいとなんとなく思ったから 世界をより良くするために、人間の生活をより良くするための研究や汚い感情の除去をしてるのにどんどん感情がなくなるクリーンな世界 本当に怖いディストピア ほぼみんなピョコルンになりたい、なると思ってるところもまた怖い この世界で白藤さんは異端だっただろうけど唯一のまともだよね 疲労感がどっときました
3投稿日: 2025.05.14
powered by ブクログ自分にはとくにトラウマはない、と思っている人でも、作中のエピソードがかつての記憶と結びつき、構造が言語化されることによって誤魔化しようがなくなって、改めて鮮烈にダメージをくらう恐れがある。 読み進めるの、相当きつかった。 この作品は確かにディストピア小説でも思考実験でもあるんだろうけど、でも書かれていることの多くを見知っている。 底なし沼のような地獄に首まで浸かった登場人物たちは、警鐘を鳴らしているのか、道連れを探しているのか。 吐き気がするほどの不快感と、好きな気持ちが両立するのが不思議。 次回作も呻きながら読むと思う。
4投稿日: 2025.05.14
powered by ブクログ村田沙耶香さんが書く世界の見え方は異質で、違う世界からこちらを見てるような不思議な感覚になります。今回もぶっ飛んだ思想をご馳走様でした。
10投稿日: 2025.05.12
powered by ブクログ正直何から書くべきか迷ってしまいます。著者はディストピア物語でちょいグロが得意な分野かと。「消滅世界」「地球星人」「殺人出産」等々例を挙げればキリがありませんが、今作はその集大成と言うべき傑作でした。ただ過去作がサクっとキリっと終わるのに対して、上下巻合わせて800p超えの大長編!後半は「な、なげーな…」と思ってしまいました。でもラロロリン人やピョコルンと言った設定、そのディストピアな世界観の重厚さには圧倒されました。なんでこんな突拍子もない唯一無二の発想が出来るのだろう?と基本的にかなりぶっ飛んでるのは間違いないですが、所々ってか結構共感できる部分があるんです。そこが最大の魅力なのかも。完全にないとも言い切れない世界観。ひょっとしたら自分らの未来はこうなっているのかも?と思わせるところが惹かれるポイントなのかなと。物語は如月空子の幼少期から89歳までの抒情詩的。自分の世界を拡げてみたい、新たな世界を覗き見たい人にはお勧めです。ちょいグロが苦手な人は注意です。
13投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
下巻でいきなり空子は49歳になっていた。 人生も後半戦になると 世界によって性格を変えることに それほど違和感がなくなり、 10代の頃から全く変わらない白藤さんの方がおかしな人に見えてくる。 しかし「汚い感情を持たない」というのは 一見理想的な生き方と思うけれど かえって歪なものになる。 個人的には清濁バランス良くある人が 一番魅力的なんだと思う。 空子49歳の世の中は ピョコルンが家事だけでなく 性交渉や出産、育児まで担うようになる。 人間以外の全ての生命体は子孫繁栄、種の保存が生きる目的なのに、それらを全てピョコルンに「捨てた」人間は何のために生きるのか。 (朝井リョウの生殖記を思い出した) 空子がなぜピョコルンになる道を選んだのか あまり納得できなかった。 あんなに蔑んでいた母と同じ「道具」になるのに。 下巻はあまりサクサクとは読めなかった。 次の本がもう図書館から来ていて さらーっと読み流してしまったところも。 下巻は私にはちょっとわからなさすぎた。 上巻はものすごい違和感、不快感の中にちょっとの共感があってそれがゾワゾワしてよかったのに。
29投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログ上巻の衝撃に慣れてしまったせいか下巻ではアップダウンなく読了。 上下を通して思うのは、ぶっ飛んだディストピアなのにどこかリアルな現実とリンクしていてそれが妙に気持ち悪いということ。 村田沙耶香は創造主の視点でこの作品を描いてるなと思う。 感情や喜怒哀楽があることが実は苦しくもあり人間に与えられた特権でもあるはずだが。 ただ、ここで描かれた世界は人間のエゴで実現されてもおかしくないなとも思う。 要所要所で用いられる村田語録の子宮を監視されているとか、トレースとか、搾取とか、この表現は絶妙だなと。 新しい世界観を見た…そんな感覚。
3投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログ下巻にはあまり盛り上がりはなく、救いのないまま終わりました。現代社会への風刺に溢れた、村田さんならではの作品でした。
30投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログ読了後、時間が経過しての感想。 途中、読むのが億劫になりながらも、やっとのことで読み終わった下巻。 変な疲れがどっときました。 やはり、私には村田先生の作品が理解できない愚かな人間なのか・・・いや無理して理解しなくてもいいんだ!!と思うぐらい。何か変に感情をぐちゃぐちゃにされました。 しかし、この『世界99』の世界に生まれなくて良かったなあ。 これ映像化したら、ある意味凄い作品になりそう。
12投稿日: 2025.05.10
powered by ブクログ小早川さんに話しかけて、自分の言葉を発して相手の反応を見る前に今ミスったと自覚する感覚がとても共感できた。自分の賞味期限が切れ、まだ賞味期限が切れてない子供を心配する感覚は私にはまだないがきっとこれも似たものなんだろう。白藤さんをかわいそうとして、自分に干渉してきても付き合い続けたのは主人公の意志かつかわいそうを娯楽にしてきたから?なのか。
2投稿日: 2025.05.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
平野啓一郎の「分人主義」は全てのキャラが本物だという立場だけど、村田沙耶香は全てのキャラがニセモノで、自分はカラッポだという。 その「トレース」が上巻の主なテーマだった。 面白かったが、そこらへんは、村田沙耶香の社会や他者への眼差しがそのまま描かれているね、と思った。 いや、十分面白いのだけど、このテーマは少し既視感はあるんだよね。 「クリーンな世界では、怒りは汚い言葉として避けられる。たとえ暴力を受けても痴漢にあっても、その人を傷つける言葉は汚いとされる。」 この世界観も、既視感あり。(いや面白いんですよ) しかし! 村田沙耶香はそれで書き終わらない! そこがこの小説のすごいところ。 下巻は、そこからさらにどんどん世界観が広がります。 まずは人間のピョコルンへの再生へ。 「孕まされるために製造され、性欲処理のために挿入され、命がけで子供を産まされ、赤ん坊を育てる役目を背負わされ、役割が終わってからも死ぬまで家事を請け負い、死んだら淡々とリサイクルされるだけの、私たちの人生がより便利になるためだけに存在しているかわいい生き物。」ピョコルン。 孕ませられる性、搾取され続ける性を「異化」したピョコルン。 気持ち悪すぎて、なかなかやります。 さらに!最後がすごい。 均一記憶人間リサイクルに至るディストピアへ一気呵成に話は突き進む。 下巻どんどん面白くなりました。 ディストピア極まれり。 この作品は、他の村田沙耶香の作品同様、すぐに海外で翻訳されるだろうが、どのような反響を呼ぶかなあ。 村田沙耶香すごいではないですか。
24投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログ上巻を読んだ際、テーマの独創性に衝撃を受けすぎたせいか、下巻は惰性で刺激少なめに感じて途中少しマンネリしました(そうは言ってもやはり世界観凄すぎて脳みそぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような読了感ですが) 登場人物みんな狂ってたけど、私は特に音ちゃんが苦手かな…。「儀式」を運営する音ちゃんじゃなくて、そもそも元来の「理想の友達を演じられる人工感動製造機」の音ちゃんが、リアルの友人や自分自身と重なるところがあって怖い。 さてと。現実世界に復帰するために、しばらく村田沙耶香断ちしてリハビリします!笑
12投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログ上下もあると村田沙耶香でお腹いっぱいになる。 個人的主題としては2つ。 性格は「呼応」と「トレース」の繰り返し…これはすごく納得できた。 「常識の変化」って誰も疑わない…村田沙耶香ワールドでゴリゴリ極端に表現されててよくわかんなくなっちゃったけど、、、
3投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
上下読破!誰か読んだ人と語りたい!! 平成初期産まれの私からしたら 最近の時代の移り変わりの速さに SNS、すぐ炎上、多方面から見れない人の多さに 感情を出すことに疲れてきて クリーンな人になりつつあるな。と思ってしまった。 空子さん生きてます? あまり生きてないかも この表現にもドキリとした。 今の世の中放っておけばこうなるよ。 という皮肉めいた予言書のようだった。 さすがの一言。
2投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログ中盤はえーっその決断するが凄かったが 最後はなんだか予定調和の終了で少しガッカリ 空気を読む能力が高い人はいい人だみたいな 世間の流れがあるが 空気を読まない人生もなかなかキツそうで責任感も 背負い込む感じも表現されていて心苦しかった 都心のあの公園に行った時の感じ方が かなり変わるであろうことは容易に想像できる かなり斬新な作品だった
2投稿日: 2025.05.07
powered by ブクログ長い物語だったけど、あっという間に下巻も読み終えた。個人的には下巻は上巻よりも読みやすかったけど、気持ち悪さで言ったら上巻と異なるベクトルで気持ち悪かった…何度でも言うが村田さん凄すぎるよ… 下巻はクリーンな世界になり、表面的には平和で穏やかだけどみんな裏では差別がまかり通っている世界。どんなにクリーンにしても差別はみんな無意識的にしてしまうんだなー。 1番印象に残っているのは空子が何度も「この世界に媚びるための祭り」と表現していたところ。物語とは関係ないがこの考えは理不尽なことがあって自分を曲げなきゃいけない時に折り合いをつけるために心の中でつぶやいていこうと思った。 衝撃が強過ぎたけどめっちゃ面白かったので何年後かに読み返したい作品!
13投稿日: 2025.05.07
powered by ブクログリセット後の世界。「恵まれた人」「クリーンな人」といった統一された価値観を共有することで平和な世界が築きあげられるというディストピア。挙句、みんな生への意欲は減退し記憶のワクチンで考えなくて良い世界へと… 自分が自分でいる事は、白藤さんのように自分自身が何らかの思想にとらわれているだけで本当にそれが「自分らしい」のかは当の自分にもわからないのかもしれない。本当に自由でいるとはどういう状態なのか?一部の天才を除けば、本当に自分自身の中から湧き出てくるものなどあるのだろうか?経済的に満たされていれば、あとは1人じゃないと思える程度に他人との関わりを持ち必要とされているという感情が満たされさえすれば、考える事などどうでもいいのか? もしかして究極の幸せの形はピョコルンになる事なのか?そうでないとすれば一体幸せとは何で自分らしさって何なのか?そんな事を問いかけられているような気持ちになる。この小説からはそういう問題提起を投げかけられているのか。例えばキューブリックの映画を観たような言葉にできないドロっとした感情を直接受け取ったような感覚、そういうある種の重さがこの小説にはある。 久しぶりの村田沙耶香さんの長編小説としてしっかり読み応えがあって良かった。
12投稿日: 2025.05.07
powered by ブクログ色々と要素を詰め込みすぎて、何がテーマなのかがもやっとしてしまったように感じました。 タイトルにあるように、空子が性格を人によって使い分けているのがメインテーマだと思いますが、それによって物語が大きく展開するわけでもなく。 そこにピョコルンやら差別やら結婚やら出産やらと、色々ととんでも設定な要素が詰め込まれすぎて、どんどんファンタジーな世界になっていきます。とんでも設定たちを眺めているようで感情移入が出来なかったです… ピョコルンというペットが終始重要な役割で出てくるのですが、動物の外見なのに人間の性欲を処理できて出産も出来るというのが、ファンタジーすぎて理解できなかったです。人間そっくりな姿をしているとかだったら、ピョコルンに発情する人達の気持ちも理解できて印象も違ったのかなと思います。 それぞれの設定は面白いと思うのですが、個人的には一つの作品に入れ込みすぎだと思いました。
4投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログかなりのディストピア小説 そこに加えて専業主婦という存在の徹底的なこき下ろし 上巻は淡々と絶望を描いているだけだったが、下巻は動きが出てきて引き込まれるものがあった 遠慮のない書き方のため読む人は選ぶと思うが、強烈な印象は残る
9投稿日: 2025.05.04
powered by ブクログ読んでてすごく頭を使ったなっていうのがいちばんの感想。(いい意味でですよ!) ピョコルンや家族観のこと、世界①②③...99のことも、呼応とトレースのことも、恵まれた人・クリーンな人・汚い感情のこと、一見奇妙に感じるけど誰しも経験していることなのかもしれないと思った。少なくとも私は、人によって自分(世界)を使い分けるし、呼応もトレースもしたことはあるし、世界99に安心したこともある。クリーンでいたいと思いながら汚い感情を持ったり、汚い感情を持った人にうんざりしている。(この小説や村田沙耶香さんに媚びているわけでもなく、空子をトレースしているわけではないですよ笑) 私も恋愛関係ではないけど心から支え合える大切なパートナーがいたら、友情婚をしてピョコルンを迎え入れて子供を産んでもらって...そうすれば幸せになれるのかも知れない。自分の幸せのためにピョコルンが居たらなんて、そんなこと考えちゃう私は、世界99の人になってる?相応おかしいのかも知れない。(白藤さんに怒られちゃう)でも友情婚が現実になったらもっと生きやすくなりそう。 あとは、出てくる登場人物のニックネームがそれぞれの世界観と一致してて面白い。氷砂糖ちゃんとかね!笑 ピョールのお産シーンもかなりリアルで、おおってなった。匠くんの女の賞味期限発言は、ゾワっとするけど、世の中には中身が匠くんの人、結構いるよね。 結果考えたのは、私は、自我や性格を持っていたい(形成していきたい)し、統一された記憶じゃなく自分の記憶を持って、生命維持と労働だけじゃなく娯楽を楽しんで人間らしく、自分の人生を生きたい!! 倫理観について考えること感じることや感想が膨大すぎて、纏まらないけど語らずにはいられない一冊です。 やっぱり私は村田沙耶香さんが好きです。 読んでよかった!!!
30投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログ幼い頃から周囲の人に呼応し、その場にふさわしいキャラクターとして生きてきた空子。 世界に媚びを売り続け、そうすることで安全安心に人生を生きようとするが、徐々に世界は変わりつつあった。 優秀な遺伝子を持つとされるラロロリン人。愛玩動物から子宮生物へと進化を遂げたピョコルン。羨望や差別の種となるこれらが世界にもたらすものとは。 いやー、相変わらず気持ち悪い!(褒め言葉です) 空子は「誰かといるときの自分」、白藤さんは「正義感」、誰しもが少なからず持っているものを極端にするとやはりそれは歪で、人間は多面的でいてこそ人間らしいのかもしれないと思った。 汚い感情は無ければ理想なのかもしれないけど、嫌なものが何もないなんてそんなことはありえないから。怒る時は怒るべきで、嫌なものには拒絶を示すべき。 平坦な世界の静かなおぞましさにぞっとする読後感でした。
11投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間の本質とは何なのか。 あなたが「自分」だと思っているもの、ほんとうにそうですか? 世界への「呼応」、「トレース」、身に覚えがないとは言わせません。オリジナルの「自分」ってなんですか? ここに描かれているのは紛れもなく、今、私たちが生きている地獄。 この作品をファンタジーと捉える人も多いでしょう。でもこれは、現実を少し煮つめただけの世界。 ずっと視界には入っていたのに気づこうとしなかった現実がここにあります。 ちゃんと直視してください。この世は地獄だということを。 ちゃんと自覚してください。本当の自分なんて実際にはないことを。 どんなにクリーンな世界になったって、加害も差別もなくならない。自分の身代わりのような存在ができたって、万事解決とはいかない。 絶望はいつまでもしぶとく付きまとってきます。 その中でピョコルンだけが光でした。 正確には「ピョコルンになること」が唯一の救いでした。 私はこの小説にどうしようもなく救われています。
4投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログ上巻よりもえげつない描写が少なくなり読みやすくなって、より人との関係性についての物語になった 上下巻読み切るのに1ヶ月かかり、しばらくはアルパカを見るたびにピョコルンを思い出してげんなりしそう
5投稿日: 2025.05.02
powered by ブクログ上下巻を読んでみて面白かったが、 途中の描写が気持ち悪く、 不快になる表現もいくつかあった。 読み終わった後は2部作映画を見終わったような気持ちになった。 空子は最後まで空子だったし、 ただ毎日過ごしているだけの人生は案外そういうものかもなーと思わされた作品でした。
3投稿日: 2025.04.30
powered by ブクログ上巻の興奮冷めやらぬまま下巻に突入。 私にとってこの本は「善悪とは何か」「モラルとはなんなのか」を突きつけられる内容だった。 誰もが生きているうちになんとなくしている「ズルいおこない」をしっかり言葉にして世の中に提示していく作者のある意味冷徹な文章力と観察眼に圧倒される上巻。「ズルくない人なんているのか??」ってそうなんだよ。多かれ少なかれみんなそうなんだよと思う。文人主義はそういう人間の肯定という感じで優しさを感じる主義だが、この作者はただそのものを文章にする。 主人公が待ち焦がれた相手に再び出会った時の心の中を刻んだ言葉も素晴らしい。 作者の村田さんはどんどん前へ歩いている。
5投稿日: 2025.04.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昔、奴隷時代があった。奴隷は家事、労働以外にもいろんなことをさせられていたのだろう。人として扱ってもらえない存在。 または選ばれし人達による世界征服の陰謀論。はたまた今も根強く残る人種差別。 世界99を読みなからふとそんなことを考えてしまった。 この本は一言で言うと日本の近未来を描いていると思う。 主人公はいろんな世界において器用に相手に合わせるが故に人生は不器用であった。上巻冒頭に分裂という言葉を使って多重人格な一面を見せているが、皆少なからず同じように振る舞っているのではないだろうか。作中ののプロ友達にはそうそうなれないが、自分の世界で自分なりに演技はしているだろう。私もこの場だからこんな語り口になっている。 世界何番の私だろうか。笑 でも、そんな必要がなくなると言わんばかりにだんだんと淘汰されていく世界99! ウエガイコクもシタガイコクもラロロリン人も人間もピョコルンも全てが作られた同一になる。 きっとそれはホントに世界の一部の人だけが楽しめる退屈で色のない世界なのだろう。 でも、ホントそう遠くない未来に淘汰された世界ぎまってそうで怖い。 それにしてもピョコルンの出産は面白い。代理母を人間以外(元は人間だが)にして、性欲までピョコルンに向ける人間になっていくなんて。 ありえるのかな? 是非ともピョコルンを見てみたい!
24投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人。 男性、女性、その他、ピョコルン。 人工感動製造機、人工清潔行動製造機。 ラロロリン人の死体が再利用されていた、という衝撃の事実が明るみになったピョコルン。 如月空子にとっての世界99として再構築された、ピョコルンを人類の性奴隷とすることで性犯罪の減った世界は、ユートピア的ディストピアなのか、ディストピア的ユートピアなのか。 中学生の波ちゃん&琴花ちゃんが友情婚をして、二人がピョコルンを孕ませ、出産を経て"雨"が産まれるくだりはぶっとびすぎててさすがに物語から振り落とされそうだった。 波ちゃんちに住む美しいピョコルン「ピョール」は家事育児能力がとほうもなく低くて、結局は二人の保護者でもある白藤さんが身を粉にしてお世話している現実。 さらに結末もぶっとんでる。 人類があらゆる雑務や性欲、汚い感情、出産・育児という重労働を平気でピョコルンに捨てるようになり、記憶ワクチンで人類の性格が均一化された社会で、自身を還元するべく、音に頼んで、実用的輪廻転生用大量均一記憶人間リサイクル製造施設と名付けられたドームで行われる「儀式」に参加させてもらい、ピョコルンとなって生まれ変わった空子。 空子がピョコルンになっても、白藤さんだけは、89歳になってなおそんな世の中に抗い続けている。 上巻ともまるで異なるような、不思議だけど妙に生々しい世界99の世界観にすっかり呑まれた。 〈私の「呼応」も「トレース」もシンプルになっていた。今の私にはなるべく完璧な「クリーンな人」になることだけが、適応の手段だった。これが今自分が生きている世界で、最高に喜ばれる「媚び」だった。〉
5投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログ上巻、下巻ともに読み終わりました。 いやー、辛かった!が正直な感想。 生々しい、顔をしかめてしまう描写で精神がやられていき、読み終わるまで1週間程かかってしまいました。 でも、読了できて、途中で止めなくてよかった!と今では思います。 SFなようで、こんな未来もありえるかもしれないと思ってしまう。身近なようでうんと遠いお話。 とても面白かったです。
8投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログとても面白かった。 ぴょこるんは現実にいないんだけど、そこで描かれている人間はとってもリアルだった。 変わって行く世界でどのように世界や周りの人と関わっていくか考えてしまうような1冊でした
3投稿日: 2025.04.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
図書館にて。 読み終わりました。下巻は上巻とはまた雰囲気が違い、静かに進んでいったように思う。空子さんがそれほど大きく世界によって自分を変えなかったせいかもしれない。 上巻の終わりの方で明人が「ピョコルンになりたい」と言ったときに最初になぜ?と思ったけれど、最後まで人間がどうしていつかピョコルンになりたいと思うのか、思うようになったのが不思議だった。 見た目が美しいとされている愛玩的な要素もあるからだろうか。優しくされ、養われたいという願望。 ピョコルンなぞ、人間の嫌な仕事を全部引き受けて、拒否権もなく、ろくに意思の疎通もできないのに。性欲の対象となっているところが一番おぞましい。 使う人にとっては究極に都合のいい存在だと思う。考えただけで胸糞悪い(汚い言葉ですまない)。 でもなりたい人にすれば文中で言う「汚い感情」を持たなくていい、考えることをやめたり悩むことをあきらめたり、思考停止がかなう存在なのだろうか。自殺願望のようだと思った。 価値観が時間とともに変わっていくのが恐ろしかった。 ラロロリン人についてもそう。昔はラロロリン人というだけであんなにも迫害されていたのに。 その変化が全部醜悪でグロテスクだ。でも上巻でも思っていたけど、こういうのってどこかで見たことのある風景。現実にラロロリン人はいないけれど、こういう価値観の不安定さ、手のひら返しは珍しいことではないよね。 そして自分もその中にいる。 ピョールの出産のくだりもぞっとした。子供二人の知能の差なども絡めてくるあたりが本当容赦なくて緻密だと思った。その後の白藤さんに全部負担がいくだろうことも予想ができるだろうに、自分のことではないと見ないことができる子供たちと、わかってて押し付ける周囲。 ピョコルンがその役割を担うはずだろうに、そうじゃなくなっていく流れ。 上巻にあった母ルンという言葉がそのものだった。 ぶれずに正しいと思うことをしようとする白藤さんがすごく不器用に見える。実際不器用なのかもしれないけれど、見ていて辛い。かたくなまでに正しいからだろうか。 ラストの不穏でありながら平和な風景、それでいいかどうかももう誰も考えない。 恐ろしい。本当に怖かった。 この本は間違っても道徳的な本ではないけれど、みんなにちゃんと、この本が気持ち悪いと思ってほしい。 人にはあまり勧められないけれど、読んだ人がいたら感想を聞いてみたい。 本当に思っていることを話してくれるかはわからないけれど。 作者の村田沙耶香さんのインタビューなども全く読まず、この本に込められたものなどを知らずにただ読んだ感想がこれだ。 インタビューなどもあるらしいので、読んでみたいと思う。 特に下巻は、よくわかっていない部分も多い気がする。読み違えている部分があるなら、ちゃんと知りたいと思う。 昨夜は毛虫がたくさん出てくる夢を見た。 私にとってのこの本の怖さがそういう感じだったのだろうか。
2投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログめちゃくちゃ面白かった。 上巻の終わり方が怖かったので、下巻を読むの少し怖かったです。起こっていることはめちゃくちゃグロデスクなんだけど主人公があんまり悲しまないので淡々と進んでゆく感じ。後でもうちょっと感想まとめたいかも。
2投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログ「面白かった」と言い切っていいのか、不思議な感じ。ただ、上下巻の分厚さを忘れるほど夢中でページをめくり続けたのは間違いなく、気づけば一気読みしていました!! 読んでいる間、凝り固まっていた価値観や「常識」と思い込んでいたものが崩されては、再構築されていく。その繰り返しに、頭の中がぐらぐら揺さぶられるような感覚がありました。でもその再構築があまりにもぶっ飛んでいて、ついていけない自分もいたりして…混乱しながらも読み進めてしまう、そんな不思議な力のある物語でした。 差別や搾取、そして「綺麗な感情だけが許される世界」への違和感。もし、出産や子育て、性欲処理といった“体を張る苦行”を、女性より弱い存在に押しつけられるとしたら?そんな問いを突きつけられた気がします。 特に印象に残っているのが、音ちゃんの「それにしても、差別されるのって、いいですよね。一種類の差別をされているだけで、まるで自分が他の種類の差別をまったくしていないような気持ちになれませんか? そんなわけないのに」というセリフ。ぎくっとさせられました。自分は「差別される側の立場」に安心していたことはないのかと自問しました。 「感動」さえも、どこか安全な場所から眺めているからこそ“娯楽”になっているのでは? という視点にもハッとさせられました。 感想をうまく言葉にできない不思議な読後感。読んだあともしばらく世界99のことが頭から離れない状態です。
8投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログこれまで村田さんが書いてきたものの集大成と呼んで差し支えない大作。一ファンとしては世界観を含めて概ね楽しむことは出来たけれど、もう少しピントを絞って深く掘り下げて欲しかったと個人的には思う。差別する者とされる者、搾取する側とされる側は容易に揺らいで反転するという構造性の不安定さの提示は興味深く読んだ。
2投稿日: 2025.04.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白くて読みやすくてあっという間に読めた。 トレースと呼応は共感ができる。 私はそれをやりすぎて疲れて誰とも会わなくて良い、1人がいいってなるタイプだなと思った。 出てくる男性がみんな気持ち悪く見えるのは私だけですか?現実でもあんなに性的に若い子を見ているのか?男性の方ははどう思うのかな? 家事子育て手伝ってくれるなら人ならいてほしいと思う。本当に大変だから。でもピョコルンみたいな動物は嫌かな 性欲処理や出産はわからない。だけど女性に性加害する奴は本当に只々最悪だな。
5投稿日: 2025.04.24
powered by ブクログ衝撃は上巻ほどではないが唸るほど考えさせられる。 多様から均一へ。羨ましくも悍ましい。 現実世界でもそうなるのかもしれないと思わせる。 シロちゃんかキサちゃんかどちらが幸せなんだろう。 きっと現実世界での生き方や周りの環境によって、どちらが幸せと感じるかは分かれるかもしれない。 感動は娯楽、と言い切ってしまえる所が凄かった。
5投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログ上下巻合わせて800ページ越え一気読み。 被害者、搾取される側は固定されていない。立場や環境が変われば容易に変わる。 ひたすらボディブローを決められ続けた読書体験だったはずなのに、不思議と読後感がさわやかにも感じられるのはなぜなのでしょう…w
10投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログ重たいわ、気持ち悪いわでなかなか読み進めることができなかったけど、圧巻。これぞある意味でのハッピーエンド。人類皆ぴょこるん化。こんな作品読んだことないし、今後も出会えないなと思ったけどまた数年後村田さん自身にその記録塗り替えられるんだろな。トラウマ級の、一生忘れることができない作品
11投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログどんどん自分の思考が追いついていかない様が分かっていって、どうか読み終えたいと願う自分を俯瞰していた。興味と吐き気の連鎖に、疲労が襲う。 大人になるにつれて世界がひとつに集約されていく空子は、誰もが空子で、音ちゃんのように、皆もまた呼応しトレースすることが当たり前であったことに、やっと気がつく。 同時に心からの感情を持たない者たちは、個人の記憶の信憑性すらままならず、何が本当で偽物で、何が正解で不正解なのかすら、世界の流れに判断するしかないことへの諦めになっていく。 自分の目で見たものだけが正解、なのではなく、大衆の判断こそが正解になる。これは今に始まったことではなく、世界が続く限り行われるものなのだ。
4投稿日: 2025.04.20
powered by ブクログ下巻(第三章)に入ると、上巻までの話の流れががらっと変わる。これはちょっと想定外で、ついていくのが精一杯になってしまった。 呼応とトレースは空子独自の設定だと思っていたのだが実は違っていて、誰もが程度の差こそあれ実践しているようだ。ラロロリン人やピョコルンはあまりにも大きな理由付けがされてしまった。 この物語は、よくわからない幻想的な世界において、アンバランスな昭和的男尊女卑や奴隷的な妻といった女性像を描くのが目的だと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。 うーん、下巻はちょっと期待はずれだったな。
5投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
下巻になるとぴょこるんが進化し、価値観がアップデート(笑)された世界。 空子も以前とは少し違うような感じ。 やり取りのキレの良さがずっと続くの最高。 連れ子の波ちゃんは馬鹿だから何もしなくていい、頭のいい人が決めたことに従うスタンスが身につまされる。空子はそっちが楽だから意識的にやってる。 「馬鹿でいるのは楽ですから。 自分が綺麗でいられる言い訳さえあれば、いくらでも人に押し付けて楽に生きたいと思ってます。」 波ちゃんは幼児的な感じで考えなくていいやと放棄してる。 シロちゃんとキサちゃんがここにきて復活するのが切ない。彼女は存在しないのに… たまにサービスでキサちゃんを出すのがせこい(笑) ぴょこるんになってしまう手術シーンは完全にギャグでしたね、身体切り刻まられてるのに笑顔でいろとかおかしい。 今までの村田さんの要素全て入ったようなおそろしい小説でした。 コンビニ人間とか生命式とか好きな人なら大丈夫。
63投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ついにピョコルンもここまで来たか…。ピョコルンがいれば人間の生殖は不要になるから、女子は早めに子宮を取ってしまうのが当たり前の世界。生理がないのは正直めちゃめちゃ羨ましい。子を産む産まないの選択自体がストレスだが、ピョコルンがいれば選択などする必要もない。非常にストレスフリーな世界なんじゃなかろうか。 子孫を増やすことが全てとは思わないが、ピョコルンに妊娠から出産まで全てを代理で行わせるなら、人間の存在はピョコルンに取ってかわられてもおかしくない。人間の存在価値って何なんだろう。空子が人間をやめてピョコルンになろうと決めたのも当然のことのように思えてしまう。 空子は離婚するまでずっと搾取され続けてきた。だからこそ、彼女はきっといずれ誰かを搾取する側に回ろうと思っているんだろうな、彼女が搾取されるだけの人生で終わるはずないと思っていた。 しかし、空子は意外にもピョコルンになることを選択した。これはどう解釈すれば良いんだろう。 世の中の圧力、期待という枷から逃げ出して自由になりたかった?ただただ可愛いと大事にされる存在になりたかった? 私には難しかった。
5投稿日: 2025.04.18
powered by ブクログ下巻の空子ちゃんは、上巻の空子ちゃんから立場が変わり、立場が変わればそっちの見方になってしまうわけで、、、 うーん、何が正しいとか本当に分からないし、正しいを決めなくてもいい。でも、皆同じ考えをもつ必要もなく。。。またまたグルグル考え込んでしまった。
7投稿日: 2025.04.18
powered by ブクログ都合上途中までしか読めなかったけど、音ちゃんにワクチンの提案され、それを受諾したところまでは読んだ。 上巻が多元的自己をテーマとしていたのに対し、下巻では一元的な自己がテーマとなったように思う。 「汚い感情」は忌み嫌われ、当たり障りのない「きれいな感情」を表現し、それに順応しない異端者は排除される。そうして世界は一つになり、自己も一つに収斂する。そんなユートピア(ディストピア?)を描いていたのが下巻だと思う。 その一方で、性欲もピョコルンに全て代替されるはずだったのに、男性から女性に対する性欲がなかなか消え去らなかったことを記述するあたりが、村田さんらしいと思った。
3投稿日: 2025.04.17
powered by ブクログ上巻の衝撃を経て、下巻も勢いそのまま読み終わりました。上巻では物語が描かれている世界に「現実味」が残っていたのに対し、下巻は世界が変容し、さまざまなものが失われていく様子が描かれていた印象です。 上下巻を通して感じたこととしては、「世界のうねり」とどう向き合うかということです。本作では、「ピョコルン」という架空の生き物が世界に侵食していく過程の中で、倫理観や社会の文化、人の性生活が変容していく様が描かれております。 本作はあくまでファンタジーなので、多少過激に描かれているのですが、現実世界でもこういううねりが起きる可能性を秘めているのではないかと思います。あくまで私の感想にはなるのですが、現実世界の「AI」が、本作品でいう「ピョコルン」になり得る可能性があるのではないかと思いました。
78投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SL 2025.4.13-2025.4.16 下巻は完全に異世界で、この設定がけっこうブッ飛んでいて、それに性的なことが露骨で気持ち悪い。この世界が目指していたのは全ての人が均一になることだったのか。 「完璧に調合された、善良な行動のみを生産する 人間になるのに最適な記憶のワクチン」 それにしてもそこかしこに現在の現実が見え隠れすることがまた恐ろしい。
3投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログとんでもないディストピア...と思う反面よく考えたらこの世は世界99のそのもやんて気づくところからが本当の恐怖。気づけば私も世界99の住人だった。 過激な描写がありますという注意が施された様だが、平常運転の村田沙耶香です。よくぞ書いてくださいました!!
7投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログ自らの意思はゼロ、「良い悪い」「好き嫌い」といった感情を持たずただひたすらその場の空気を読んで周りと同調することを頼りに生きる空子。相手によって姫にもオッサンにも左寄りにも右寄りにもなってしまう、そんな彼女がそれぞれの人格をさらに俯瞰的に傍観しているような、そんな世界観で生きていくの 物語りだと思いました。旧来女性的なものとされてきて未だに一面そうである家事育児について語ったものであるようにも思います。私としてはグロテスクでシニカルなものと感じて賛同できるところがなく、星2つとさせていただきました。賛否分かれる内容か、という印象です。
3投稿日: 2025.04.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
架空世界でペットとして、また性愛の対象ともなり、家政婦としても扱われる“ピョコルン” 主人公空子は自分を持たない空っぽのトレース人間。 幼馴染の白藤遥は真反対の性格、真面目で自分の考えを貫く女性。2人の間で育てる波はピョコルンに憧れる中学生。 ラロロリン人、クリーンな人、ウエガイコクなどこの世界だけの言葉もあるが、他の世界観は日本と変わらない。 最後に空子が選ぶピョコルンになるという未来、本人は最後にどう思うのか。
3投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ期待通りの村田沙耶香さんだった。 常識とは普通とは?あらゆる固定観念を揺さぶって破壊していく。 空子の特殊さが途中、え?空子の考えって真っ当なんじゃ?周りがおかしくない?に変わっていった時、頭の中が揺さぶられる感覚がした。 面白かったけれど、人には勧めにくいんだよなぁ。
14投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ一冊分で良かったのではと思う。中身のない主人公が後半ではだいぶ感情の揺れ幅を感じるとこもあり、ストーリーの軸がよくわからなくなった。 ピョコルンのイラストを見てピンときたのだが村田さんはピューッと吹くジャガーのニャンピョウをモデルにしたのではないだろうか。
3投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログディストピアとしては世界の情報は断片的で、性に関するトピックは露悪的であまり好きな感じではなかった。村田さやかさんは、コンビニ人間や地球星人がすごく好きだったけど、これはそこまで、という印象。
3投稿日: 2025.04.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
幼稚園の集団登園で、毎朝行きたくないと大泣きしているきくちゃんを見て、いつか真似たことを思い出した 大泣きして行きたくないと言ったらどうなるのか? 世界が広がるたびに、そのときどきに合わせて呼応、トレース、分裂を繰り返してきた行動は、呼吸のように当たり前の事なのに言語化すると、妙なものに感じる 描いてあることは多少「大げさ」かもしれないが日常的であり、世界の尋常ならざる生きにくさを詳らかにしているのは確実だ どれが真実でどれがフェイクか、自分の答えは本当に自分の考えなのか これまでは正義とされていたことが一転して悪となり、信じていたものに裏切られているにも関わらず、知らない間に操作され天と地さえも逆転する 記憶ですら外からも内からもキレイに改竄される この世界はディストピアではなく進行形の現在であり、いまその中心にいるかもしれない 空子がピョコルンになることを選択し、公開手術で見せつけること 傍観していたはずが、手術台からの冷ややかな視線が突き刺さる 意外と痛い
7投稿日: 2025.04.11
powered by ブクログあまりにも周囲に合わせすぎというのもどうなの?揉め事が少なくなる? これが私、というしっかりとした自我を持ちたいものだ。
2投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
上巻では自分とほぼ同年代で終わったため下巻はほぼ自分の未来を見守る気持ちで読みました。 未来はピョコルンの新しい性能で今の現実とはちょっと違うSFなディストピアになっているのに、やっぱり自分たちの未来予知にも感じる。 キャラクターの一人一人に重なる自分の知り合いが居て、他人事として読めなかったからかもしれない。 それくらいキャラクターみんなそこらじゅうにいる人たちで、性格工場が正常に働いているのだろうなと納得しちゃいました。 ピョコルンも、すごいキャラクターだと思います。ある時は女である時は母親である時は実家の祖母である時は赤ちゃんで……と様々な役割を持っている。性的搾取される、妊娠出産を担う、家事育児をする、でも完璧に育児するんじゃなくて何となく手伝い程度しか出来なかったりする、お風呂に入れてあげたりの介護が必要、見た目だけで可愛い可愛いと愛でられる、そんな女の生きているだけで押し付けられる全ての要素が全部上手いこと詰まっていて、ゾッとする。 良くある「ロボットの開発が進んで、仕事をしてくれたり家事をしてくれる」というSFに近い感覚。「デトロイトビカムヒューマン」というゲームを思い出してしまった。やったことない人は是非ともゲームやってみてください。YouTubeなどでもゲーム実況している人たくさんいるので(キヨさんとかヒカキンさんもやってます!)下巻が気に入った方は是非。正直、あのゲームで私は(せっかく人間が楽をしたくて生活を豊かにしたくてロボットを開発して働かせてるのに、そのロボットが反抗してきて人権を認めろ!とか言ってきたら引くな〜。今さら洗濯機が「俺を働かせるな!感謝しろ!人間が手で洗えよ!人間扱いしろ!」とか言ってきたら(買い替えよう)って思うよな〜って。だからきっと実際にピョコルンが開発されたら喜んでピョコルンに何でもさせそう。高い金払って買ったんだから働けよ、とか思いそう。白藤さんごめん。でも自分が空子のお母さんみたいになるのは絶対に嫌だし、世の中の女性がそうされているのはクッッッソ不快だし、娘たちにも幸せに生きて欲しいから現状は変えたい気持ちはある。ダブスタというのだろうか。空っぽだ。 ラストはハッピーエンドかもしれない。 匠くんがしんだのが一番嬉しいかも。私が白藤さんのこと好きだからか。正しい人にはなれないから正しくあろうとする人は尊敬する。
4投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログ2026年本屋大賞を予想して当てる楽しみがなくなった。今年一年でこれを超える作品は現れないだろうけど、生きることの気持ち悪さを存分に包含したこの作品は本屋大賞にはなり得ないだろうから。
13投稿日: 2025.04.08
powered by ブクログ私たちは支配され、支配する無限の連鎖の中で息をしている。性格のない主人公は分裂した世界を乗りこなしながら白色で色のない世界へと変容していく社会に安堵と諦念を感じる。次々と変わりゆく社会の価値観を受け入れることのグロテスクさ、確固たる価値観を持ち続ける清廉さと馬鹿らしさ。公と私の間に揺蕩うあなたのための小説。
9投稿日: 2025.04.08
powered by ブクログ記憶のワクチンは痛みを和らげる麻薬のようなワクチンだと思うけれど、はたしてそれでいいのだろうか…。ここ数年思考停止して痛みに気がつかないふりをしてきたけれど、「麻痺した、傷まない痛み」が蔓延しているように思える現代の恐ろしさや、自分の加害性に気づけたので、お互いを尊重しつつ「痛み」が和らげられるためにはどうしたらよいか、考え続けていきたい。
4投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
まだ消化しきれてない。 空子、最終的にピョコルンになる結末。 人間が均一化される、そういう話? 記憶のワクチン、皆一緒に幸せを感じるクリーンな人たちで溢れる世界。 おぞましくて怖いデストピア小説なんだね。 かわいそうな人、っていう表現とか、怖い。 かわいそうは娯楽、あ、そうかもって思ってしまった。 本当はずっと前からわかっていたのに、言葉にされて、その自分の残酷さに気づかされるっていう状態。 作家さんってすげーな、、、 白藤さんはずーっとキサちゃんを待ってて、でもそれを知っていて尚、キサちゃん(空子)は拒否ししつづける。 それはもう出会いからなんだけど、表面上は二人は友達っぽくて、、、暗いわー。 中身がなくて空気だけ読んで、生き延びてきてサバイバー(って言っていいのか?)な主人公の人生と、心の内側の話。 音ちゃんと、奏さんの行動も気になるんだよね。 あっち側はどういう感じだったんだろうな、、、とか。 下巻は、さらに複雑化した展開で、難しかった。 簡単に上部だけを読んでいけば、ま、ありがちな展開なのだろうけど、空子視点から描かれているので、難解になっちゃうのかな? それが面白かったんだけど。 誰か、解説してほしい。
6投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログ性格の何割かは環境に影響を受けると認識はしていたが、自分の中でその環境とは、家族や友達、せいぜい学校など日常で会う人たちとの関係のことだった。 この本を読んで、もっと広い社会や国の在り方からも影響を受けるのかもしれない、と思い直した。 …素の自分って、どんな性格なんだろう?
3投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログピョコルンの正体というか中身がわかって、世界はリセットされたかのように大きく変わった。 差別されていたピロロリン人もピロロリンキャリアとして恵まれた生活を営んでいる。 上巻とは別世界のように穏やかになるけど、こちらの世界の方がむしろ不気味に感じた。 最後まで読んだけど、私には難し過ぎて理解できない部分があった。
47投稿日: 2025.04.06
powered by ブクログ読み終えた。 村田沙耶香作品は今回が初めてだった。 上巻も刺激的な内容だったが、下巻もやはりという感じ。 上巻のそれとは刺激の志向性が別だった。ただやはりこの世界99の世界は、わたしたちの実世界となんら変わらないな、というよりむしろわたしたちの世界そのもの、汚い部分、綺麗であろうとする部分、見えているもの、見えざるもの、そういったものが全て似ているように思えた。 だからだろうか。空子の空は空っぽというセリフには共感しかなく、自分という存在の位置付けはコミューンによるものだというところはひどく心に響いた。そして差別というテーマを見ても、する側される側という一方向的なものではなく、される側にもまったくの差別がない状況なんてあり得ないし、立ち位置というか役割みたいなものを得ることは、快楽となりうるんだと本書を読んで改めて思った。それは自覚的無自覚的どちらにおいてもだが。 孤独は人を酷く単純させ、コントロールしやすくする。コントロールする側もされる側もお互いがお互いを貪っているという表現にはハッとしたし、そういう役割であることが快楽でありエンタメなんだと記されているところにはなるほどなと唸るばかりだったが、それは人という生き物が社会性のある動物であるからであり、どうしようもないことなのだろうとも感じた。 世界99のように、たとえクリーンな世界や見える化した世界を追求しようともそれは汚い部分や見えない部分をより際立たせ、ときにそれを目の当たりにして人を生きづらくさせるのではないかとさえ思う。 最後に。わたしは大人計画の"人間御破産"という芝居が好きで個人的に大切にしているが、その主人公、加瀬実之介の存在が、なんとも空子とダブっていてなんとも興味深く思っている。 ほんとうは世界99なんてものはなくて、全てではないが、空子の頭の中の妄想だったのではないか、そうも思えてしまう。
14投稿日: 2025.04.06
powered by ブクログ最後近くは、活字から思わず顔を背けるほど 強烈だった 妙なリアリティとトンデモ設定が 融合した奇妙なディストピア その世界を生きた空子の一生は、何だったのか たくさんの出会いの中でも くすりと笑ったり、無意識に人を守ろうとしたり、 時折垣間見せた空っぽではない心 他の結末を迎えれなかったのかと つい考えてしまう 読了後の正直な感想は 白藤さん。。 ピョコルン、一生忘れられない 固有名詞になりそう
47投稿日: 2025.04.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
リセットと再生でまた世界が大きく変わった下巻。 「人間リサイクルシステム」の悍ましさみたいなものが非現実的すぎてピョコルンの血肉をかき分けたら人の生首が出てきましたとか、死んだ人間がリサイクルされてピョコルンになるとか、ピョコルンに性欲処理相手になってもらう出産を代わってもらうとか、全く気持ち悪さが伴わなくて全然読める。ピョコルンのことも最後までどんな風貌なのかイメージができなかった。 人は自分の都合のいいように記憶や世界を改竄するみたいな表現が多くて空子までも何が事実だかわからなくなってるところで、あぁ空子もダメだ…と思った。ひとり世界99にいてそれぞれの世界を生きる人間を傍観しながら時にチャンネルを合わせていた空子が割と好きだったのでクリーンな人間になってしまった、と悲しく思った。でも時々自分の記憶の中にいる危険な大人(匠くんみたいな)から波を守ろうとするところ、自分が子供のときにいて欲しかった大人を演じるようなところが、空子が世界に呼応せず抵抗しているように見えた。(クリーンな人間になりきれないのは、リセット以前を生きてきたからだと思った) 圧倒的な質量で上下巻ともに読む手が止まらずめちゃくちゃ面白かった。世界観が変わるというよりかはもう今すでにこんな世界じゃんと思う方が強かった。 わたしは女なので上巻の空子を取り巻く人や社会に見覚えありすぎて気持ち悪かったし どこまでも男って勝手〜!!!!キモい〜〜〜!!!!!!と思った(主語デカ)し、女性特有のコミュニティの中で生き延びなければならないことも昔を思い出して息苦しかった。 それぞれが一生懸命に見栄を張って自分を作って生きていること、世界が変化するスピードの速さ、何を信じればいいのか、自分ってどこにあるのか、とか考えても考え尽きることはないことを村田沙耶香の不思議で異様な物語を通して見ることができた。凄まじい小説だ……
6投稿日: 2025.04.05
powered by ブクログ上巻の終わり方が不穏な感じで終わった中で、下巻を読み始めるといきなり穏やかになっている。しかしその穏やかさが逆に怖い。「汚い感情」が封じ込められた世界、「クリーンな人」のいる世界。しかし自分の中の倫理観が受け付けることを拒んでいる。 ピョコルンの存在の不気味さの濃度がさらに濃くなった。完全にディストピアな世界であればまだ安心して読むこともできるが、微妙に実際の世界と似通った 描写もあり、今の世界の延長線上になんらかの形で発生してもおかしくはないのかなとも思ってしまうことが少々恐ろしい。
4投稿日: 2025.04.05
powered by ブクログこれは映画化とかされたら最高に怖いだろうなと思った。 吐き気をもよおすほどの気持ち悪さだった。 『実用的輪廻転生用大量均一記憶人間リサイクル製造施設』 というネーミングにも怖すぎて唖然としてしまった。ヘタなSFよりもリアルすぎて怖い。
12投稿日: 2025.04.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読後、自分のいる世界がどんなだったかを思い出すのに、少し時間がかかった。ピョコルンが人間のリサイクルだと知って、なぜかホッとした。家事出産や性処理を受け持ってくれる存在がいるのを、羨ましいなと思ってしまった(私だけかな?)私はピョコルンになりたくないよ〜しばらく、かわいい動物とか見たら、思い出してモヤっとしそう 負の感情を持つことを嫌うとか、感動を消費することとか、この本で描かれている世界が、結構今いる世界と共通していることも多い。どんな世界になるのがいいことなんだろう。
5投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログうわああああああ ああああああ! マジでラスト近くで叫んでしまった。衝撃すぎる。 これは時間をかけて再読しないと言葉にならない。 ピョコルンは私たちであり、私たちが作り出しているものであり、 今この瞬間、あらゆる場所で生まれ消費され廃棄さている。
7投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ちょっと不気味な不思議な世界 人間ロボットから本物のロボット(ピョコルン)になるようなお話?ピョコルンにならなくてもみんなロボットみたいな感じだけど 全てをピョコルンに捨てられるようになった世界は、なんかちょっと寂しく思えた ピョコルンがいる世界、汚い感情を捨てたクリーンな世界はつまらなさそう
4投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終わった瞬間の余韻の感じ方がとてつもなかった 。 空子と白藤さんは最後の最後までわかり合えてなかったけれど、2人がお互いを自分の価値観で想いあって終わった気がしました。 文章は空子の一人称ですが、それは空子の「意識的」な部分であって、 よくわからないけど、「無意識」な部分を僕らに想像させる素晴らしい本だったんじゃないかなと思う。 世界が平和になったら(個人の想いが無くなっていく平和)芸術とか無くなるんじゃないか、みたいなことを想っていたので、ちょっと似たようなことが書かれていて、正直嬉しかった。 早く世界が進んで、あの人が「理想的な記憶」に包まれますように。 という文章に感動した。
4投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
被害を受けたり搾取された立場の人間の心理とか、真偽は別として正しいとされる社会の価値観に倣ったとしてもそれが本当に正しいかは定かじゃなくてマイノリティ側の人間を蔑ろにすることもあることとか、いろいろ思うことはあるけどこの感想を言語化できない
3投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ピョコルンの受け止めるものが変化し、人個体の受ける傷や搾取される辛さ、悍ましさから解放されるはずが、逆にピョコルンに使われる側になるとは 愛玩動物のはずだったピョコルンの変化は彼らも望んだもののはず その進化を受け止める覚悟が必要な上下834ページ 差別、搾取、再生、リサイクル 村田沙耶香様の作品の魅力がギュッとつまった集大成のような作品 暫くは再読するのが恐ろしい程の読後感 悍ましい(褒めてる)のに この世界が正しく思えてくる 作者村田沙耶香様はユートピアを書いているはずがディストピアになってしまうという これこそが真のユートピアなのなもしれない クレイジー沙耶香様の真骨頂、進化版
5投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログ上の方が面白かった。 とはいえ、上下で読み応えはかなりあり、やっぱり私はこの人の作品が好きなんだと思った笑 読んでいてしんどい部分もあったが、この本で考えさせられたことは今後の生活にも多少の影響が出そうだ。 村田沙耶香の作品はは極端な設定のまま話が進むから、ついていけなくなる人も多数いるだろう。 が、一部表現が過激なだけで「自分も実は空子のように空気を読むマシーンと化している時はあるな」「ラロロリン人が対象じゃないだけで自分も無意識に人をカテゴライズしてしまう時はあるな」というように、 さっきまでぶっ飛んだ世界観の価値観だったはずが突然自分の身近な日常の価値観に近づくような、村田沙耶香の描く登場人物にぐっと刺される感覚になる時がある。そこが好きだ。 空子は様々な人から「粒子」を取り入れ、自分のキャラをコミュニティに応じて信じられないほど器用に作りかえている。 だから空子自身も「自分がない」「空虚な人間」だと思っているけど、 周りの人間が性加害に遭った時、何とかしてその子を助け出そうという素直な善の行動が見て取れる。空子は無自覚だがその行動は本来の空子そのものから溢れる行動なのだと思った。 本人の中で言語化は出来ていないものの、空子自身も「空虚な人間である」というキャラクターを自身に当てはめているように感じて、なんだかなあ、、と思った。 人に影響されやすい、とか、周りに合わせて空気を読む、という行動を私も取ってしまうが、どこまでが自分でどこまでが他人の影響なのか。 この本を読んでいると分からなくなる。 自分の周りに空子のような人間がいたら私は仲良くなるのだろうか。分からない。
14投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
最高ですね…村田先生…ありがとう… 赤ちゃんの対応を、死なないように見張ってという事だと思うというの、すごくビビッと来た素晴らしい言語化笑 いやーー女子高生達が一回出産した中古のピョコルンは嫌だという台詞、痺れたなぁ… それが数年前は男達が若い女の子達に使っていた言葉だという気持ち良い伏線 あと波ちゃんが怒りの感情の出し方分からなくてカラスを模してカァカァ鳴くの、おもろ過ぎる 馬鹿にしてる感が心地良い 匠くんは拉致されて記憶ウイルスを注入されたって事かな? 匠くんを殺したいと思うのは、果たして白藤さん、それは呼応なのか?? 空子はあんなに使われるのは嫌がってたのに、結局ピョコルンになるんだね〜 白藤さんにとってはこれはバッドエンドじゃないか? 感動を強制させられるっていう言葉の納得感と言語化能力、とにかく読んでて楽しかった、ありがとう村田先生、次回作も楽しみにしてます これはSF感強かったかな?とにかく最高
6投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログ2025.3.28 読了 推しの村田沙耶香先生の新作、ずっと楽しみにしてた!読み始めたら、今まで読んだ村田沙耶香作品のいいとこ取りみたいな、映画で言ったらR18!って感じの倫理観とかそっちのけで、ワクワクしながら読んだ!ピョコルンの純粋な真っ黒な目を思い出し怖くなる位にはのめり込んだ。 だけど、下巻になったらなんかしりつぼみ感が…。面白かったけど、最後まで駆け抜けて行って欲しかった。でも、村田沙耶香ワールドにどっぷり浸かれて、疲れたけど幸せだったなぁ。
13投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログとんでもないディストピア小説に出会ってしまった。 個人的には正体が明かされてから全くかわいく思えないピョコルンに皆が憧れているのが不思議。キモくないかさすがに(笑)でも色んなことにピョコルンがこき使われる世界。 でもきっと波ちゃんの世界から見た今の私たちの生活もまたディストピアなんだろうなと思った。 人格を変え、ピョコルンに支配され…、空子さんの人生は、幸せだったんだろうか。
10投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログ上巻の最後の衝撃からの下巻の読み始めは ドラゴンヘッドの食料食べた後の人間みたいな。思考が奪われている。 上巻は女子が経験した嫌な事を煮詰めた感じと思っていたが、ちゃうわ。これ今の日本の現実を揶揄してるんやわ。 途中諦めに花が咲いて、悟りの境地、空海かいな。っ気がしてきたけど、ただの思考停止でしたわ。 多分ここまで書けるって凄いのだと思う。 しかし、途中斜め読みする場面もあった。 とにかく疲れた。次の本は食エッセイとかほのぼのしたのを読みたい…
4投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
壮絶な、狂いに狂った、恐ろしい世界だった。 このような世界を作り上げて文字に落とし込んで読者を激しく揺さぶることができる村田さん、本当に凄すぎる。 産む機械・育てる機械・家族の“機械”としての役割を持った“女”が一般的だった世界から、性欲・妊娠出産・家事を担う役割としてピョコルンが普及した世界へと変わっていく。 ピョコルンは人間の面倒事をすべて請け負いながらも、「無条件に可愛い」として愛される生き物。 相反する面を持つのに、可愛くて、何故か若者の憧れ。 この世界の移り変わりにどれだけ馴染めるか。 変わりゆく常識に「きれいな言葉しか持たぬまま」付いていけるか。 恐ろしかった……常識が通じない、常識が変わった世界。 ピョコルンが人間のリサイクルとして発覚した「リセット」を堺にどんどん世界が狂っていく。 人間の家畜として産み出されたはずの「人間のリサイクル」であるピョコルンは、憧憬され尊敬され、「なりたい最終目的」になる。 そして、記憶も自由に操る世界へと移り変わっていく。 こんな世界に産まれなくて良かった。 誰もが同じ記憶で、同じ表情で、白くて綺麗で無機質な街で典型的人生を過ごし、ピョコルンへ愛を注ぐ……本当にこんな世界は嫌すぎる。 でもいつか、似たような世界に近づいていくんだろうな。 結局世界の本質は変わらないまま、綺麗な所だけ強調させて。 村田さんは人間が嫌いなのか?女性が恨めしいのか?何かが許せないのか?と思うような作品が多いけど、これはそれを煮詰めに煮詰めた作品だった。 面白かった!
5投稿日: 2025.03.23
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やばすぎたな。 読んでから、自分の普段の生活に戻った時に、村田沙耶香さんの視点が頭をよぎる。私は母親を母ルンと思ったことはなかっただろうか、母親を母親から解放してあげれたことは今までにあっただろうか。 私は子どもが欲しいと思っているが、出産して、一生誰かのために尽くす人生なのだろうか。それで私はいいのか。自分の人生への問いも含めて、心の中がドロドロと揺れている気がする。 朝井リョウさんの正欲を読んだ時と、同じような、この本を読む前には絶対戻れないと思う感覚だ。たまにしか出会えない感覚。 本の内容に関して思うことは、ラストは白藤さんは彼女の正しさを貫いたようだった。彼女だけが周りに呼応するのを拒絶し、人間であることを守り抜いた。白藤さんはあの世界では、かわいそうな人、蔑視される側かもしれないが、白藤さんだけが人間だったんじゃないかな。人間であろうとした希望の人だったんじゃないかな。 空子の呼応して、トレースする感覚は普段自分も何気なく薄っすらと実践している感覚がある。 村田さんが日々の生活で削られてきたこと、違和感を感じてきたことを、ここまで広げて深掘って書き切るのはすごい。私はそこまで真正面から向き合えない。
6投稿日: 2025.03.23
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知りたくなかった。 これを知ってしまったら、知る前にはもう戻れない。 過去の記憶が、書き換わる。 友だちに対して、「あなたは特別だし、私の一番だよ」と心から言っていると思っていたのに、 その友だちが少し幸せになる兆候が見られたときに、少し残念に思ったこと。 上司に対して、「関わる人を幸せにしたい」と本気で言っていたはずなのに、上司のレイヤーによって、情報を少しずつ調整していたこと。 両親に対して、無邪気で素直な少しどんくさい娘を、演じていること。 そしてそれを出来ない兄妹を「下手くそだな」と思っていること。 気付かされてしまった。 それと同時に、自分の本音がどこにあるのかもわからなくなった。 気を付けてください。 この小説は劇薬です。 これはまじでR指定必要だと思う、、
10投稿日: 2025.03.23
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その昔『笑う犬の冒険』というコント番組でネプチューンの原田泰造さん・堀内健さんがやってた「テリー&ドリー」というキャラで「生きてるってなんだろ 生きてるってなあに」と歌っていたけれども、本作のテーマはまさにそれだと思う。 「生きてる」ことについて私がパッと思いつく範囲だとはっぱ隊は「葉っぱ一枚あればいい 生きているからLUCKYだ」と歌っていたし、じゃあ「LUCKY」についてキッチン戦隊クックルンは「平和とはなんだ、幸せとはなんだ、おいしいごはんを食べることだ!」と歌っているし、ハチワレは「なんだもう朝かとひとりごつ 焼けたパンにバターぬりぬり」とごはんを食べて生きることを歌っているし、GLAYは「誰ひとり優しさと強さがなければ生きては行けないと」長過ぎる夜に光を探している訳であります。 もうそろそろ止めときますが、つまり、上巻の感想でも書きましたが女性が生きているだけで直面せねばならない苦役である出産・育児・家事・介護・性欲処理などの‘社会全般から受ける搾取’というものを全て「ピョコルン」が引き受けてくれる社会では何が見えてきて何が見えなくなっていくのか。読み進むにつれてゆっくりと崩壊してゆく正常と異常のあわいの中で、私たち読者は「究極の思考実験」(上巻オビより)に立ち会う経験を積むのです。 なにからどう書けばいいかすごく悩むのでとりとめがありませんが。。 「ピョコルンが子供を産むことが一般的になるまで、自分の子宮が見張られている感覚があった。」(p105) 「ピョコルンがいてもなお、私の子宮はずっと見張られてきた。明人に、匠くんに、アミちゃんに、サキに、奏さんに、そして母に。」(p193) …なかなか衝撃の表現ながらもハッとさせられた部分。「明人〜」以降の名前は空子が各世界で出会って「トレース」「呼応」をしてきた人たち。ピョコルン以前の世界(つまり我々が生きる‘いま’)では親・親類・友人・知人・他人、あらゆる他者から「子宮」即ち「女性らしい行動や選択や振舞いや見た目」をずっと品定めされていて、それは異性のみならず同性からも向けられるものであり、知らないうちにランク付け・評点までされて勝手に失望される感覚というのは男性にはまず無いのではなかろうか。他人のペニスを見張る/見張られる感覚なんてないでしょう。「あいつは男らしくやってんのか」「彼の家での父親っぷりはどうなんだ」「こんど入ってくる子、金玉大きいかな」みたいなことが普段気になるタイプなんて聞いたことがないし、多分無いんだと思う。適切な例えかわかりませんが、赤ちゃんを育てられなくて遺棄してしまったりする事件があった時に逮捕報道されるのは母親ばかりで、父親まで追及されるパターンはピンと来ませんよね。それだけ、社会そのものが「母親」なり「母的なもの」=「女性性」に向ける眼差しが厳しいと言えるのではないでしょうか。 〈白藤遥〉について …「私たちが最初に出会った日のこと、覚えてる?私あれから、雨が降るたびにキサちゃんのことを思い出して安心するの。まるでキサちゃんの魂に包まれてるみたいな気持ちになる。」(p167) (注・「キサちゃん」は白藤さんが呼ぶ空子のあだ名) 最初から最後まで空子の近くにいて、それなのに全然空子と分かり合えなくてとんちんかんな関係を結んでいた白藤さん。本来のヒロイン然として正しいことを正しく振る舞う、正義のモンスター、「『正しい』教の狂信者」(上巻p236)。悲しいかな、白藤さんが空子と出会った時には「自分が作り出した自分の幻影に、白藤さんは開いた傘を差しだし」(上巻p16)とあるように、10歳の時からずっと空子のことを「きっと優しくても芯が強い人」(上巻p14)という幻影を重ねており、何度も気付くタイミングはあったはずなのに空子への呼びかけを止めることがなかった彼女。 正しさにすっかり擦り切れて疲弊しきった彼女は空子と「友情婚」関係を結び、娘(血縁関係はない)とピョコルンと暮らす選択をする。が、彼女は家族全員(ピョコルン含)から搾取を受ける羽目になるのだが生来の過剰な正しさ・真面目さによって体型が変わるほどのストレスを受けつつも頑張る。頑張ってるのに、空子からの評価は「迷惑で恥ずかしいけれど、「嫌い」ではない。」(p16)という身も蓋も無いもの。 本作は空子やピョコルンのとんでもなさが目立つが白藤さんの生き方も十分とんでもなく…というか、彼女の場合はちょっとスピリチュアルに傾倒してしまった感もあるが、現実でも‘正しさ’‘正論’に取り憑かれたあまりに生きにくそうな人っているので、そういう人たちを寓話化した存在なのではなかろうか。 正しく生きることが善く生きることとは似て非なる、というか。 人間のまま生きて、穏やかな老後を過ごせた様子なのは救いではある。 人間時代の空子が最期に見た雨は、白藤さんと出会った「あの日」に降っていた雨だったのではなかろうか。 生きてるってなんだろう。生きてるってなあに。 生への執着や死への畏れすらもかき払ったクリーンな世界は、果たしてユートピアなのか、はたまた新たな終末世界の始まりなのか。 知性も尊厳も、その代わり苦労や悩みもかなぐり捨てて自分を‘ピョコルン化’出来る選択肢を、あなたなら選びますか。 とてつもない読書体験だった事は間違いない。 1刷 2025.3.22
18投稿日: 2025.03.22
powered by ブクログ読んでいて、何度も何度も気分が悪くなった。 村田沙耶香さんの世界とその文章をこの分厚い上下巻分浴びるわけだからそりゃあもうもの凄くて、私はちょっと負けてしまったというか、入り込みすぎて、考えすぎてしまって、到底受け止め切れていない。 私は動物と暮らしていて、かつ女なので、この作品の中でこういった存在がいかにして扱われているかをどうしても自分ごととして捉えていちいち想像してしまって辛かった。 道具としての一生を送る母の描写に対して自分の母親を見ているようで罪悪感を覚えつつ、次はお前だと言われているような気持ちにもなる。 特に匠くんに対する嫌悪感が凄い。というか出てくる男性が揃いも揃って酷いのに、みんな現実味がある。こういう人を確かに私は知っている。確かに自尊心を削られてきた実感がある。思い出したくない記憶を引っ張り出される。 上巻のショッキングな展開にかなり疲弊していたのに、下巻でだんだん麻痺してきた結果私も‘世界99’の側の人間になってしまったのか色んなことを受け入れ始めていて、自分が怖くなった。 描いている世界はディストピア的ではあるけれど、ファンタジーではない。こうなるわけないと言いきれない恐ろしさがある。 その場に馴染むために‘呼応’しながら色んな自分を作り上げて、 自分の立場を守るために自分の記憶を手術する。 私も意図せずとも何度もやっていて、もうとっくに本当の自分も本当の記憶も失っているのかもしれない。突然自分の中身をからっぽにされたような感覚になる。 結局私も、“だれか”の寄せ集めでできた人格でしかないから私なんていないのかも。なんて考えて思考がどんどん暗闇に落ちていく。 色々と身につまされるような言葉はあったけれど、一番ぎくりとしたのは「未来がないと世界が明るい」という言葉。 「信頼できる麻痺」「倫理の賞味期限」なんかも、知っている感覚に名前がついたようで痺れる。 暴力的とも言える性描写、強烈な差別にいじめ、そしてペット的存在の死、その尊厳など、 公式が出しているトリガーアラートを見て覚悟はしていたものの本当にしんどかった。 すごい作品、だけど私が読書に求めているのはこういう苦しみではないのかもとは思った。 面白い、面白くない、という土俵にいない作品。読めてよかったなとは思っているけれど、とてもじゃないが好きとは言えない苦しさがあった。 本当に、村田さんの頭の中はいったいどうなっているんだろう。
25投稿日: 2025.03.22
powered by ブクログもしこれをティーンエイジャーの時に読んでたら人格形成にとてつもない悪影響を与えてたなと思う。この作品が地獄(ディストピア)なのではなく、現実が地獄なことを、この作品が再び思い出させてくる。 忘れていた(逃れようとがんばった)ものが、また頭のへばりついて離れなくなるのは本当につらい。 でも面白すぎた、村田沙耶香の最高傑作
6投稿日: 2025.03.22
powered by ブクログ下巻も一瞬で読み終えてしまった。作者名を見なくても誰が書いた作品かわかるぐらい村田さんらしかった。ピョコルンの中身が判明し、私にとってはとても恐ろしいものだと思ったが、その後も可愛い生き物だと性欲処理として人々の身近なものとして扱われているのがとにかく怖かった。ピョコルンになりたいと言っている人物がよくいたが、それはピョコルンの良いところしか見ていないからだと思う。皆から注目され、必要とされる存在に見えるもの、ノーということができないピョコルンは何もかもやらなければならない。更に、ピョコルンには自我が若干残っているのではないかという描写があったので、私だったら絶対にピョコルンにはなりたくないなと思いながら読み進めていた。 村田ワールドに入るとなかなか現実とパラレルワールドの間にいるようで抜け出せなくなる。今回も最後まで読んで現実に戻って来ることができた。よくここまで想像を膨らませる事ができるなと思うが、人間の不条理さを訴えているようにも感じた。だからといってピョコルンになって人間に奉仕するのもとは思う。上下巻合わせて900ページ以上あったが結末が気になり2日間で読了した。
3投稿日: 2025.03.21
powered by ブクログ読み終わってしまった、、 壮絶な話で、読んでからすごく引きずりそう、、 はぁ〜っていう言葉が合う作品
10投稿日: 2025.03.20
powered by ブクログ凄まじいとしか言いようがありません。いったいどうしてこんな話を思いつけるのだろう。グロテスクでありながら静謐で美しさすらある。そしてどこかこの世界を自分も知っているという怖ろしい感覚に襲われました。
4投稿日: 2025.03.20
powered by ブクログこんなの書けるのすごい…脳みそどうなってるの…と思った。自分にないものを読むのは楽しい。とてもトレースなんてできそうにない作品。
5投稿日: 2025.03.17
powered by ブクログときどき挟まる「空」の描写が印象的でした。あなたの空とわたしの空、つながっているようで、そっちは晴れててもこっちは霧雨が舞っている。空っぽな空、が世界99のことなんだろうと思う。
6投稿日: 2025.03.15
powered by ブクログ読み終えたあと、自分自身の中から感情も立場も全てが取っ払われて、”空洞”になった感覚に陥った。 読み終えるのが惜しいくらいに、この世界観にどっぷり浸かることができた。 新しい世界に自分はいる。 この本で起きた革命が、内面で起こったような、そんな気分で今世界を眺めている。 上巻よりも、さらにSF的世界観が構築されている。 一見ユートピアに見えるが、こういう世界に住みたいか?と言われるとそうでもないし、今自分に備わっているものを”捨てる”世界は、怖くて奇妙な世界に映った。 上巻は、空子がつねに性的に搾取されるかもしれない緊張感があったが、下巻は全く異なる危うさを感じた。 現在とは異なる生物的な繁殖法を手に入れた人類。 クリーンな言葉を選び、汚い言葉をとおざける。 すごく突拍子もないはずの世界なのに、この令和の世の中の傾向からいうと、なるべく美しいものを目にして、差別を平にしようとする選択肢を取り続けた未来の人類は、似たような倫理観で生きているのかもなぁとイメージできる。 私たちの世界の延長線上にある、そう感じたのが下巻で描かれた世界。 汚いことから解放されて幸せなはずが、なんだろう、この違和感は。 その世界を否定する役割は、たった一人の女性が担うことになる。 しかし、否定する側が正しいわけではなく、揺るぎない個を確立することが辛く、惨めにすら映る。 個性、個人、性差が粉々に打ち砕かれる。 この本で一番新鮮に感じた部分が”夫の立場”や”使う側の立場”に共感させられたこと。 男視点で暴力的になる構図は見たことがないわけではなかったが、その内面まで描いた小説は実は初めて読んだかもしれない。 マジかよ、わたし、支配する側、暴力振るって理不尽な要求を突きつけてくる、嫌な夫の立場に共感しちゃったよ!とびっくりした。 しかも、それを女性の立場から書いているのが大きい。今のフェミニストたちが、男性に改善を求めていることを、女性たちがなんの気無しにする社会を描き、”安心”して加害者の側に”共感”できてしまう。 これってすごいことだと思う。 おかげでなぜ、支配的になるのか、暴力的になるのか、理解できた気がした。 この本の中では、被害者が加害者に、加害者が被害者にもなりうる。これまでの一方的な関係性が、双方向性を持ったことにより、本の中で差別すること、されることで、”平等性”が生まれる。 こういった社会構造は、現代社会のリアルの中では絶対に有り得ない。 なぜなら、私たちには性別があるから。 性差の役割をゼロにはできず、どちらかの性が家庭の役割を背負わなくてはならないから。 話し合い、家事育児の役割は分担できても、女性には出産がある。 必然的に女性が”被害者”側になることが多くなる。 でも、この本では違う。 すべてはピョコルンが背負ってくれたから…。 ピョコルンという存在によって、私たち女性が女性であるがゆえに受け入れさせられてきた、性欲、出産、育児、家事などを、新しい視点で描いている。 ピョコルンの存在は、ほんとに天才的な発明だと思う。 私の中にある善意も悪意も、女としての性も、生き方としてこだわってきた部分も、この本の中ですべて説明されている気がした。 否定も肯定もされず、でも的確に枠にはめられ、善意でやってきたつもりのことが、本当な酷く滑稽で自意識に満ちたものかもしれないこと。 差別していたかもしれない、そんな自分で蓋をしていた部分も、人間にとっては自分の立場と他者の立場を比べていたがゆえの、世界への媚であったかもしれないこと。 自分の持っている信条を分析されると、こだわってたものが馬鹿馬鹿しくなるというか、自分を一つ上の段階から眺められるようになるというか…。 これが世界99にいるってことなのかもしれない。 この本一冊で、見ている世界が破壊された気がした。 でも、それがとても心地よく、新しい自分になり、感情に左右されない、まっさらな気持ちで世の中を見られるようになれる。
26投稿日: 2025.03.14
powered by ブクログ村田沙耶香作品のことを希望のあるディストピアだと認識していたけど、この作品は別かもしれない。 媚びることと「呼応」と「トレース」を繰り返すことが殺されない術であると学んでいる空子がむなしく、同時に自分だと感じる。 第一章では女性や子どもに与えられる地獄を書き、第二章は人種差別や階級社会の地獄を書き、第三章は「リセット」後の世界で生きることを書く。全部地獄でしかないのに、「正義」の警鐘は鳴りやまない。 この世界には「ピョコルン」という高級ペットが登場する。あらゆる人間の庇護欲を掻き立てる、強制的に可愛い生き物としてのそれは、さまざまな「機能」を身につけ、さまざまな「役割」を引き受ける。ピョコルンは結局人間の代わりにはなれない。人間が変わるしか、あらゆる差別がなくなる方法はないのに、今日も人間は増える。 希望のないディストピアを覗いてしまったので、半日経ってもまだ混乱している。
5投稿日: 2025.03.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
此の世に存在する偏見と差別、執着、迫害、憎悪、搾取や虐待、あらゆる加害を大きな鍋で煮込んでかき混ぜ、それを「正義」というフィルターにかけた一冊。 何度もページをめくる手を止め、自分の周りを確認する、知らず知らず浅くなっていた呼吸を深くし、「大丈夫、ここいいる」と言い聞かせる。 村田沙耶香小説に振り落とされないように、タコ殴りされながらも必死で付いていく。 頭と心が疲弊し、満身創痍で読み終える。そこまでして読まなきゃならないのか、と問われたら、それでも読むべきと答えるだろう。 二度、三度と繰り返し読んでも、すべてを理解したとは思えない。この世界を自分の中に取り込めるとは思えない。それなのにとらわれてしまっている。 自分の中の何かが世界99と結びついてしまっている。 愛玩用に作り出されたピョコルンという動物。次第に人間のためにいろんな役割を持ち始める。掃除、洗濯などの簡単な家事から、性欲処理、そして出産。 ピョコルンによって人間の世界も変化していく。人間の中にも存在するラロロリン人という特殊な人種。ラロロリン人以外の多数派の彼らへの態度とその変化。 他者をトレースし、その時その時で「正しい言動」を作り出していく「自分自身」を持たない空子。彼女の人生をたどりながら、世界の変化に目を凝らす。 ピョコルンの出産によって「家族」という結びつきに「恋愛」が不要な世界。愛情も性欲も全てピョコルンが請け負う。家族の結びつきは性差なく「友愛」によるもの。ピョコルンに委託された出産によって、家族の血縁というのは重視されなくなる。いやでもそれは今でも家族の形として存在している。じゃなぜこんなにも違和感があるのだろうか。ピョコルンを省いたとして今のこの世界と何が違うのだろうか。 ウエガイコク、シタガイコク。恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人。呼び名は違っても自分のすぐそばに当たり前のようにある「差別」たち。 人間のエゴで生み出された動物ピョコルンの、その正体。 理解不能なカオスだと思っていた村田沙耶香世界が、本当は今ここで起こっている普通の日常をトレースした地獄だと思えてくる。 私たちと、いや、私とピョコルンの違いとは、私と空子の違いとは。 見つけなければ飲み込まれる。 そう思っていること自体が、すでに飲み込まれている証拠なのだろう。
10投稿日: 2025.03.12
powered by ブクログ下巻の感想です。 このストーリーには、ピョコルンという架空の生き物が登場します。空子が10代の頃、ピョコルンは犬や猫のようにペットとして可愛がられる生き物でしたが、段々進化し、人間の役割を担うようになります。人間が面倒に思うことや大変なことをピョコルンが担う。一見、とても良いことのように思えますが、"人間らしさ"が損なわれていく感覚と、自分自身の倫理観がズタズタにされるようでとても嫌な気持ちになりました。ピョコルンが人間の犠牲になること、それを見て見ぬフリをする人間の残酷さがこれでもかと描かれています。 結局、人間は普通の顔をして社会に存在しているのに、一番残酷で容赦がない。 世界99を読み終えた今は、世界の見え方が本当に変わってしまいました。
26投稿日: 2025.03.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ピョコルンに性欲を捨てられるようになった世界で、メディアに性欲をトレーニングされた結果ピョコルンに対して性欲を抱くようになる、というのが面白かった。 どうせ人間なんてこんな簡単に情報によって認知を変えられてしまうんだよという皮肉を感じた。 「汚い感情」を持たない波ちゃんが痴漢をされると上手く「怒る」ことができなかったの、なるほどこういう弊害があるのか……と思った。使えないピョコルンに対してどんどん「明人」の感情が呼応しているのが、うわわかるな……と思ったし、自分にその感情の素養がなかったとしても、環境によっていかようにもそれらの傲慢さは生み出されてしまうのだろうなと思った。 人間同士の恋愛は流行らなくなり、性愛の対象がピョコルンに向いたことにより痴漢が減ったかと思いきや「ピョコルンでもないのにお前なんかに触るわけないだろ」と痴漢を見えないものにしようとするのとかめちゃくちゃ「人間社会」って感じがした。性愛の対象が変わったところで人間の思考が変わるわけではないの、めちゃくちゃ「だろうな」という納得があった。 ピョコルンが性愛の対象になっていく世界で子供の性教育がどのように発展しているのかが面白かった。子供のうちに子宮をとるのが「普通」になってるのも、眉や鼻の穴を白くするのが歯列矯正レベルの「普通」なのも、いつかそういう時代が来てもおかしくないだろうなと思わされた。人間は「みんながそうしてるから」で簡単に流されてしまう生き物なんだよ、と言われているようで、それは本当にそうだなと思った。 友愛婚が主流となっても「友情婚してないと周りからいい友達いないのって思われるから」みたいなことを言ってる人がいて、社会の本質は変わっていないところに「ああたしかにそうだな」と思った。たとえ「人間同士の恋愛」がなくなったとしても、それに代わるものでなんらかの差別意識が発生するのだろうな、と思った。 だから最後に人間の記憶ワクチンを作って記憶を画一化させて「クリーンな感情のみを持つ人達」を作り上げた社会は、純粋にいいなと思った。生きるのがとにかく楽になりそうだなと思う。
8投稿日: 2025.03.09
