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総合評価

391件)
3.9
122
113
100
20
5
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    最後までずっと胸の奥が痛かった 色んなことを考えさせられて、読み見終えて1日中世界99のこと考えてた とにかくピョコルンがほんとにほんっとに気持ち悪い、、、、家事して性処理してるピョコルンが夢にまででてきた でもピョコルンに子ども産んでもらえたら楽だなぁとは思った しばらく余韻に浸ります

    27
    投稿日: 2025.09.16
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    個人的には主題はピョコルンなのだと思い、そこが知りたくて読み進めたのだが、結局最期まではっきりしなくてがっかりした。 超高齢化社会の弊害を防ぐため、分断された社会の懐柔策、単純に安楽死、などいろんな意味が含蓄されていると思うのだが… 連載ものなので仕方ないかもしれないが、物語は冗長過ぎる。 登場人物は身内だけなのに、彼らが皆世界的に有名になっているのも不可思議。 とにかくプロットは面白いのだが、その過程が私のツボとは全然違う形で残念

    4
    投稿日: 2025.09.16
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    上下合わせて800ページを超える超大作。 上巻は呼応や世界①など、相手やグループによって自分のキャラを変えたりする話がメインでかって自分も呼応や世界を変えてたなぁと感じた。 下巻は一変して、世界のすべてが世界99に統一されてしまう… 読みながら話についていくのが大変でした。過去作のコンビニ人間も地球星人もそうだけど、著者の不思議な世界観が展開された。この世界は、なかなか描けないと思う…好き嫌い分かれる作品だが、新作が出たら読もうかな

    8
    投稿日: 2025.09.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上巻よりも速いペースで読めた。「クリーンな人達は、悪い感情を持つべきでないし強い言葉を使うべきでない」という規範が下巻から発生したし、あと何より明人がいなくなったので、ストレスを感じるセリフが格段に減って読みやすくなった。 でもなぜか、上巻の方が印象に残っている。下巻になってテーマがいきなり難しくなったというか、ちょっと置いてけぼりになった感があった。 下巻では、ピョコルンの存在感が大きくなる。上巻まではピョコルンがどんな存在なのかまだ分かりやすかったのが、下巻では色々な機能や役割を負わされ過ぎて、どんどんよく分からない存在になっていった。空子の「生きているうちに手術をしてピョコルンになる」という選択が、良いのか悪いのかどう思うのが正解なのか全然分からない。分からなくてもいいのか?下巻はピョコルンを始めとして、「どんな感想を抱けばいいのか分からない」存在や事象が多かった。 特にラストシーンの公開手術は……うん、カオス過ぎてもう、「どう思えばいいんだろう」みたいな(笑)。上巻までは、「これめっちゃ誇張してあるけど、似たような現象を見たことあるかも」と思えるような「現代社会にある元ネタ」を見つけやすかったのに対して、このシーンは……まあ、「世界に媚びるための祭り」の集大成ってこと?村田沙耶香にとっては現代社会にこの光景の元ネタが存在するんだろうか?(笑)だとしたら失礼だけどちょっと心配になるレベル。 白藤さんは最後まで分かりやすい存在だった。好きではないしめちゃくちゃ鬱陶しいけど、どんどん「どんな感想を抱けばいいのか分からないもの」が増えていく中で、白藤さんの苦しみや苦しい生き方には最後まで既視感を持てたのが、まだ読みやすさを保っていられた一因だと思う。

    12
    投稿日: 2025.09.15
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     感想の結論から書くと、自分の物の見方が揺らぐ経験を得られて良かった、となります。  また、本作全体を把握して感じたことは、世界99のことを描いた作品であることはもちろんですが、(当たり前のことかもしれませんが)主人公 如月空子の人生を綴った作品でもあったなぁ、ということでした。  皆様が、もし世界99に生きなければならないとしたら、どんな人生を選択したいと思うか、が気になりました。  ではまず下巻について書く前に、おさらいとして「ピョコルン」と「ラロロリン人」について書きますね。  「ピョコルン」は、ふわふわとした毛でおおわれた、羊をもっともこもこにした大きな綿毛のような「生き物」で、当初は動物園でしか見られませんでしたが、しだいにペットとなり裕福な家庭で飼われるようになりました。そして人間生活にかかわる諸機能を持つように改良されていきます。毛の色は薄青色や白、茶色がかった色などがあり、見た目の美しさによって大きく価格が異なり、数十万円から一千万円台、さらにその上といった価格で売買されます。  「ラロロリン人」とは、ある特異なDNAを持つ人のことで、ラロロリンキャリアとも言われます。血統ではなく、突発的に生まれます。検査をすることにより分かります。ラロロリン人は優秀であるとされ、就職・就業に優遇されることにより経済的・社会的に高い地位になる人が多いです。  そして、物語の主人公は、如月空子(きさらぎ そらこ)さんです。  下巻の物語の冒頭 第三章では、空子さんは49歳になって登場します。  上巻末の或る出来事以降、世界は再構築され、10%ぐらいの「恵まれた人」、80%ぐらいの「クリーンな人」、10%ぐらいの「かわいそうな人」で構成される世界となっていました。そして「怒り」や「憎しみ」といった「汚い感情」を持つことは恥ずかしいことだとされていました。  物語は49歳の空子さんの生活と世界99を描いて進みますが、ある日、ラロロリン人女性の提案(依頼)を受け、空子さんがある決断をしてから物語の結末に向かってカウントダウンをするかのように話のタッチが変わります。  そして、決断したことが行われる日がだんだん近づいていくのです。。。 以下、感想の続きです。  この物語の架空世界には、「社会的分断」「コンプライアンス」「性的搾取」「ジェンダーギャップ」「世代間ギャップ」「各国間格差」などといった現代社会を(デフォルメして)暗示するような設定が出てきて、陽炎の向こう側にユラユラと曲がった現実を見ているような落ち着かない気持ちにさせられました。  わたしにとっては、本文中の以下の表現が印象的でした。 「世界は粒子だと思う。いつのまにか吸い込んで、身体の一部になっている。」  暗示していると思われる各テーマの何を主眼として読むか、「ピョコルン」や「ラロロリン人」の存在は現代社会でなぞらえるとしたら何に当たると考えるか、など幅のある読み方ができそうな作品で、読み方によって異なる解釈が成り立つようにも思いました。皆様なら、どうお読みになるでしょうか?  分量も質も重たい作品ですが、ぜひご一読いただけましたら、レビューを共有したいと願っています♡ 蛇足  村田紗耶香さんの作品は翻訳されて、諸外国でも多く読まれているそうです。この物語も翻訳されて各国で出版されることでしょう。長編であることもあり、かなりの衝撃を以って受け入れられるのではないでしょうか。現代社会を揶揄し、世界観を根幹から揺るがされるような作品だと思いますので。。  村田沙耶香さんが、今後も独自の作品を発表し続けて、その翻訳が世界中に波及したら、、、もしかするといずれはノーベル文学賞受賞ということも。。。? 〔下巻目次〕 第三章 49歳 * * * * 40歳 49歳 * * 50歳 * * * * 第四章 89歳

    201
    投稿日: 2025.09.14
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    面白かったぁ 村田沙耶香”全部のせ”って感じの上巻は、これまでの作品で作者がこだわってきた数々のテーマが次から次へと提示され、息をつく間もないほどの疾走感でした。世界と「呼応」と「トレース」を繰り返し、次々と「キャラ」を切り替えて複数の世界を行き来する空子の6歳からの35歳までの30年間が、圧倒的なスピード感を持って描かれていました。 打って変わって静けささえ感じさせる下巻は、420ページ強の大半が49歳から50歳の記述に当てられています。腰を据えてじっくりと描かれる濃厚な2年間。前巻で分裂しまくった「キャラ」は緩やかに統合されはじめました。空子の人生の一大イベントが始まります。 自分のことを意思のない空虚な人間ロボットと揶揄する空子ですが、周りを模倣し、流されていく様は、典型的日本人のようにも見えます。空子の「キャラ」のいくつかは確実に僕の中にも存在します。そして僕自身も空子を模倣しはじめます。ラストは村田沙耶香が指し示す未来を思考を停止してただ眺めていました。 没入感が半端ない、今年最高の一冊です。 「ウエガイコク」「シタガイコク」「恵まれた人」「クリーンな人」「かわいそうな人」「アップデートされた人間」「世界①」「ピョコルン」「母ルン」。これらの露悪的な言葉が、しばらくは頭から離れそうにありません。

    30
    投稿日: 2025.09.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

     私たちが普段生きている世界について考えさせられた。私たち人間は、他人に「呼応」して生きているだけで自分というものは存在しないのではないか。たしかに、私は日常、友人や好きな配信者の口癖や口調が移っていると感じることが多々ある。この本を読んで、村田沙耶香ワールドを通して、私はそういったことについて深く考えさせられた。

    5
    投稿日: 2025.09.14
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    『殺人出産』を読んだ時から、村田沙耶香には、それまで“当たり前”と思ってきた常識や倫理観、価値観を、根底から揺さぶられ続けている。本書でも主人公をはじめ、登場人物(ピョコルン含めて)には嫌悪感を覚えつつもどこかに共感できるところや可愛げも有り、読んでるうちにこれまでの人生で出会ってきた“あの人”や“あの子”、それに自分自身の姿も見え隠れして‥。懐かしさと悔しさ、居た堪れなさと、ただ黙って抱きしめてあげたいような‥混乱した感情が更に複雑に絡み合ってなんとも言えない‥独特の空気感。またまた、村田沙耶香にしてやられました。降参。

    16
    投稿日: 2025.09.14
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    図書館の本108 個人的に上巻に比べると衝撃は少なかったが、いい意味で気持ち悪くて独特の世界観であるという点は同様だった。 なんでそのような結末に、、カオスな空間が一貫していてずっと不穏なのに気になってしまう、そんな本だった。

    12
    投稿日: 2025.09.14
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    上巻よりも更にグロテスク。更に皮肉だらけ。 時代が変わっても世界には階層があり、皆其々の階層の世界で生きている。差別も蔑みもなくすことはできなくて、誰もが苦しく、正義を全うしようとするほど生きづらくなる。 深く考えず、自分の意見を持たず、何かに怒ることもなく達観したように生きる。女性は子宮や出産から解放されて、性的な視線を浴びせられることも、それを武器にすることもない世界……あれ?これって「おばさん」じゃん。 私が最近感じている気楽で楽しい世界の事だ。 ピョコルンはいなくても誰もが行き着く場所だ。 どうしてもピョコルンの姿形がイメージできなくて、AIに聞いてみたりしたけれど、どう見てもかけ離れた画像を返してきた。まだまだ世界99は遠い。 『そうですね。馬鹿でいるのは楽ですから。誰もが、疲れていて、自分が綺麗でいられる言い訳さえあれば、いくらでも人に押し付けて楽に生きたいと思っていますから』 『そうか、「恵まれた人」、「クリーンな人」、「かわいそうな人」、のもっと下に、「見えない人」がいたんだな。 びっと脳に引っ掻かれたような傷がつき、今そのことが刻まれたような気がしたし、そんなことはとっくに知っていたようにも思う。』

    5
    投稿日: 2025.09.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み始めたからには読み終えねばという使命感だけで読了。気持ち悪さが増す中で人間の本質とは、生命とは 意義とは 価値とは SFホラーとでも思って肩に力を得れずに読んだらスルスルと読めました。 命が繋がることって怖いことなんです…

    13
    投稿日: 2025.09.11
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    某BSの番組で紹介されていて、手に取りました。なかなか気持ち悪かったです。 私がわりと読書に求めている、女性の気持ち。「呼応」と「トレース」に関しては、共感はできないまでも、理解はできるような気持ちになって読みました。

    3
    投稿日: 2025.09.11
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    長編作品読みきれるか不安でしたが、あっという間でした。特に物語の終盤は、全く想像できなかった世界に突き進んでいき、圧倒されました。この本に出会えて良かった。

    3
    投稿日: 2025.09.10
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    とてつもない物語だった。 疲労が激しいけれど清々しい気持ちもある。 下巻は完全に「世界」に浸れた。世界99体験というアトラクションのようだった。それは現実世界にあるアトラクションなのでときどき現実の絶望がいちいちおしよせてくるのも禍々しくてよかった。 考えさせられたらきりがないのであまり考えず、エンタメとして読んだ。世界99を通じて現実の汚い世界を愛しくも思える。空子も世界を愛してる気がする。また上巻の始めから読み直して空子の世界に浸りたい。

    3
    投稿日: 2025.09.09
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    ピョコルンになんてなりたくないと、上巻の時は思っていました。 その気持ちがゆるやかに変わっていく感覚、これは文字だけで受ける感覚なのか?とても不思議な体験でした。 読了した今、ピョコルンになってもいいかもなと思っている自分が恐ろしいです(笑) 村田沙耶香先生の、この社会に蔓延る様々な出来事、日常、視点、それ全てを怖いほど生々しい表現をされるところが刺さるのですが、思う存分体験できて清々しい気持ちです! 長編を読むことが出来て幸せでした!

    5
    投稿日: 2025.09.09
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    下巻はより未来の話になって上巻ほど集中して読めなかった。たぶんどんどん今と違う世界観になっていったから、上巻ほどイメージが湧きにくかったんだと思う。でもすごかったー! 友情婚が一般的になった世界はめっちゃいいな、と思うけど、ピョコルンの存在が何だかゾワゾワする。 音ちゃんは儀式の後どうなったのかちょっと気になる。

    6
    投稿日: 2025.09.08
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    上巻以上にディストピア感が強い下巻。 汚いものは弱いものに押し付け、綺麗なものだけ残して均一化していく世界に、心がざわついて落ち着かない。 音ちゃんの「人間、自分の中でうまいこと理屈さえつけば、便利で、楽で、気持ちが良くて生きやすいのが一番ですもんね」というセリフにすべてが集約されていると思う。 人間の都合に合わせて変わっていく「正しい倫理」に合わせて変わっていく奏さんと、抵抗し続ける白藤さんの対比も面白い。 命のリサイクル、記憶の調合、こんな発想が出てくる村田さんの脳内はどうなっているんだろう? 圧倒的な村田紗耶香ワールドでした。

    3
    投稿日: 2025.09.08
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    読書備忘録941号(下)。 ★★★。 村田教信者として彼女の作品で読めない本は無いと信じてた! これ読んだけど、読めない! 村田さんの脳みそは私を置き去りにしてバージョンアップされてしまったようだ。 この作品、粗筋備忘は意味をなさない。 なのでキーワード備忘を。 ★ちょっとだけネタバレ含む★ 主人公だけはご紹介。 如月空子。名前の如く空っぽなんですね。結局。 それが楽なんです。 彼女の10歳、14歳、20歳、35歳、49歳(途中に40歳)、50歳、89歳を描く。 人間として50歳まで。その先は・・・。 物語は、彼女の生活圏(クリーン・タウン!これって、しろいろの街・・・だよね!まさに!)において、日々女性は男に搾取されている、蔑まされているということから始まる。 そして彼女のアイデンティティがテーマの重要なポイント。 乱暴に言えば、彼女にはアイデンティティが無い。「呼応」という特技。 接する相手やコミュニティの特質に応じて「呼応」する。相手に合わせて虚構の性格を作る訳だ。 それを空子は、世界①、世界②、世界③・・・、と名付け使い分ける。 そして気付いた。自分には何もないと。 それが世界99(○99という文字コードがない!)だと。世界①②③・・・を外から眺めている空子。ただそこは伽藍! そして作者がこの作品にメッセージを込める為に作った設定が3つ。 ①ラロロリンDNAを持つ人々。優生遺伝子であり彼らは能力が高い。 ②ピョコルンなる動物。パンダ、イルカ、ウサギ、アルパカの遺伝子が偶然合わさって生まれたとか。結局、人為的にヒトのパーツから作った人間のリサイクル生物だったことが明かされる。性処理、妊娠、子育て、家事を担うようにバージョンアップされていく。 ③ウエガイコク、シタガイコクと差別化された諸外国。 そして社会は、 ①10%の恵まれた人達。ラロロリンキャリアの人たち。 ②80%のクリーンな人達。怒り、悲しみ、妬み、嫉みなどを持たない層。 ③10%のかわいそうな人達。社会の底辺。 の3階層に分離。 そして物語の最後には④見えない人達がいることが分かる。 そして作者のメッセージ。あくまで「わたくし」はそう感じた。 ヒトは、誰もが性別・年齢に関係なく攻撃する。 暴力、性暴力、権力による上からの攻撃。 かわいい、かわいそう!という存在からの庇護を強制的に求める下からの攻撃。 お前ら恵まれているんだから俺らを守れ!という下からの攻撃。 それは男から女へ。女から男へ。男から男へ。女から女へ。 社会的強者から弱者へ。弱者から強者へ。 物語の冒頭、ラロロリンキャリアの人たちは、持たない層からとんでもないいじめを受ける。そりゃ酷くて表現できないいじめ。これ下から上への攻撃。 ピョコルンが登場し、いわゆる昭和の専業主婦のような役割を担う。弱い弱いピョコルンを虐める。男も女も。これ上から下への攻撃ですね。 ウエガイコクに対する下からの攻撃。シタガイコクに対する上からの攻撃。 そしてラロロリンキャリアの人たちは償いの為にピョコルンになって社会奉仕する道を選ぶ。なんか強制的に謝罪を求める今どきのSNS攻撃みたい。 更に、最後には記憶の調合というワクチンによる温和な性格への標準化が広がっていく。空子の世界99が現実社会として実現した!こわっ! 気持ち悪~い!

    62
    投稿日: 2025.09.07
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    今回もすごい村田ワールド!哲学の話は難しいけど、昔から好きで興味がある。 哲学的ゾンビや人間ロボットなど主人公が抱えている心の闇深さ。他人のキャラに合わせたり本当の自分は何?と誰でも一度は考えたことがあるんじゃないだろうか?私も人から影響受けやすいので(トレース)主人公の気持ちに共感する部分があった。 長編でなかなかの読み応えがあり、後半はトラウマになりそうな描写に今だに引きずっているけど、最後まで読んで良かった。

    20
    投稿日: 2025.09.07
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    上巻に続き、予想できない展開ではあるが、この世界観がエスカレートしたらこうなるのかというのが感想。汚い言葉を使わないクリーンな人、性欲を捨てる場所、人間リサイクル、記憶の統一ワクチン、怖い世界だが、全くあり得ない話でもないと思ってしまうのがディストピア小説なんだなと改めて実感した。

    2
    投稿日: 2025.09.06
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    この本がディストピア小説と評されているのを見たことがあるけど、むしろ、架空の話を使って、今のこの世界の息苦しさとかを表現している感じがした。 ピョコルンがいても、ラロロリン人がいても、世の中の嫌なことがなくなることはなく、「ああ、システムが変わっても世界って結局それほどには変わらないのだな、と思った。」という主人公の台詞がしっくりくる。

    12
    投稿日: 2025.09.06
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    面白くないわけでもないし、ピョコルンがいるいないだけで、現実とそう変わりはないのかとも思うけど、なんか読みづらい。なかなか進まなくて、読んでる間ずっと薄暗い世界に片足突っ込んでいるような、没入感とは違って引きずられているような。読み終わっても、ゔーん…感想って?ちょっとこの世界観は好きになれそうにない。

    40
    投稿日: 2025.09.04
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    BSテレ東「あの本読みました?」で著者が語ってたのは、透明な水槽に登場人物を入れてみて、何が起きるか実験して、それを書き留めている。事前にプロットは作らない」 だから自分は小説家というより実験家かも、と。 時代、技術が進むにつれてピョコルンの役割が変わる、それに適応する人間側の変化。恐ろしい。 ラストもエグい。「あの本」のMC鈴木保奈美は「ホラーです!」って。賛成。

    7
    投稿日: 2025.09.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という、哲学者ニーチェの有名な言葉があります。空子は主人公なのでのぞく立場として書かれていて、しかも会う人間たちほぼ全員の深淵をのぞこうとします。(主にトレースし、呼応する為)私のほうがうまくやれるのに というセリフがある程だから、彼女は自分がどれだけ暗闇で目が利く存在かを自信に思っていることも分かります。とはいえ、私たちだって処世術として相手の深淵をのぞいてトレースすることはありますし、うまいことできたなと思ったことだって何度もあって、していることは空子と同じです。そうすると空子が一気に普遍的な存在に見えるようになります。 この物語の刺激が強く感じるのは、私たちが普段絶対に口に出さないようにしていた生々しい心の声がなぜか書かれており、なんでバレてるの?とギクッとする衝撃があるからだと思いました。 そして、その衝撃は同時に私たちを安心もさせてくれます。私は村田沙耶香氏の著作を読むのは今回が初めてですが「こんなことを考えてしまうなんて自分はとんでもない差別者なのか?」や「私が感じた危険信号(男性に対する)はひょっとして過敏になりすぎていただけなのか?」などという、答え合わせが非常にしづらい思考に対して、欲しい解答をくれるのが上手いなと思いました。ただ、それに安心して視野/世界が狭まると他者や自身を傷つけていることに鈍感になるので注意は必要です。( 匠くんが良い例だと思います。彼は彼の理解者たちの世界だけで生きているので何年経ってもあのままですよね。) 個人的にこの小説は人間への皮肉と諦観の肖像のように感じました。人間に生まれてしまった以上人生において様々なことを甘受せざるを得ず、〝かわいそう〟が娯楽になって、消費され続け、...それだったら空子のように世界99を作って、本当の自分自身だけは守りたくなります。

    5
    投稿日: 2025.09.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    怖かった……。 結構、今の世界の行く末としては有り得るかも?とかも思ってしまって。 けどさすがにこんなに悲観して世界を見たことはない、私は…。 こんなグロい世界を描けるということは、今いる世界もそこそこグロいのかな、と、この作者さんの精神状態が少し不安になってしまった。笑 トレース、呼応、は私もしているなーと思うところがたくさんあって、 例えば「あ、この人今日は吐き出したい日ね」みたいなのは友達や同僚と話してても感じることがあって、そういう時に、相手の求めている反応を返したり。 あと、所属するコミュニティによってキャラが違うのは私も昔からで、自然とそうなってしまうので、読んでいて分かるな〜という部分もあった。 でも、空子のように「こうすべき」という最適解のキャラを演じられている感覚はないので、空子みたいにうまくトレースが出来たら楽なんだろうなぁとかも思った。 あと、白目に墨汁を入れるとか、鼻の穴を白くする手術とか、今の価値観では有り得ない!変なの!と思うけど、 よく考えたら今ですら、そこまでするか?みたいな整形手術ってあるし、 数十年後の価値観では人間が目に墨汁入れててもそんなにおかしくないかも。 平安?とかその頃のお歯黒とかまろ眉とかも今の価値観では変なの!ってなってるわけだし。 そして、友愛結婚、ピョコルンに子供を産ませて家事育児させて、っていうのは、一面だけ見たらかなり合理的なのでは?! 最初は私の道徳心がピョコルンを拒否してたけど、読み進めていくうちに、いいじゃん!と思うようになってしまった。 結婚しない人が増えている日本において、今後友愛結婚という形も流行りそうな気がしたし、 女性の社会参画、共働きが当たり前になる中で、出産を肩代わりしてくれる存在が現れるのも不自然な流れとはいえない…。 きっとそうなった社会で、私はそれなりに順応して、ピョコルンを受けいれて伸び伸びと生きていくんだろうなぁ、と、ちょっと怖くもある。 さすがに最後の、記憶の統一?は、無いでしょ〜と思ったけど、 ワクチンとして年に一度摂取して、みんなが同じ価値観で生きる世界も、たしかに無しじゃないかも…とまで思ってしまう。 もう村田さんの世界99に順応しまくっている…。 でも本当に壮大な世界史を読んだ感じで、 情報量がすごいし感情や思考がバンバン動かされてすっごく面白かった。 個人的には、これを映画やドラマで観てみたいなぁ。空子役の女優さんが、相手やコミュニティに呼応するだけの空っぽの空子をどう演じるのかがすごい見たい。

    11
    投稿日: 2025.09.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    慌ただしく読んだ。ピョコルンという生き物が、性欲処理の対象になったり、出産もしてくれたり、ある程度の家事をやってくれる世界観。女の人の大変さをなかなか理解されないと感じているので空子のそれぞれの年代での感情にいちいち賛同した。私も空子のようにあまり自分がないんだけどピョコルンを制制欲のの対象にするのが生理的に理解できなかった。

    4
    投稿日: 2025.08.31
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    マジョリティに支配されてる日本を強烈に表現した作品だと受け取った。マイノリティの生きづらさ。白藤さんでいることの生きづらさ。 1人で生きるはどうしても無理だから、必ず誰もが何かしらの世界に属している。生まれた瞬間を世界①とするならば、そのあと環境によって世界は派生し崩壊し循環していくのだろうけど、同じ世界にいながらもすべては主観で異なる世界になる。過去・記憶は都合の良いものになる。ストーリーはご都合主義で生まれる。 空子のように従順に柔軟に世界を持てたら、きっと上手に生きられる。だけど、それが出来なくて苦しい、白藤さんのようにこれまでの自分の世界を捨てられない、捨て方が分からない、生きづらい人間側で、どうか周りもそうであってほしいと思った。

    7
    投稿日: 2025.08.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    世界がリセットされ、それまでの価値観がごちゃごちゃになって、世界は恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人の三階層に分けられた。そんな中私は、かつての世界③をダウンロードし続けている白藤さんと、その娘の波と暮らしている。世間では出産と育児と家事はピョコルンが担うようになっており、結婚も友情婚が一般化し、人間を対象とした性犯罪は減った。そんな中、ラロロリンキャリアで恵まれた人の音ちゃんのプロデュースで、盛大な儀式が行われる。一万人を元新宿御苑で公開手術し、その脳から記憶を取り出してワクチンにし、体はピョコルンにしてリサイクルする。私もあまりに典型的な人間としてその手術に参加し、解体されていく。 結局ピョコルンというのは、現実の世界で搾取されている女性に他ならない。ウエガイコクとシタガイコクというのもまさに今高まっているヘイトスピーチやアメリカへの阿りに他ならない。人間は環境の中で性格を形作られていくし、結局本当の自分の本音なんて空っぽなんだ。それは本当にそうだと思うし、それを徹底的に描いていてかつ最後はやっぱりホラーで、でも究極的に現実なんだよなぁ。現実的ではないしデフォルメされてはいるけど現実そのものというか。結局人間は生成AIだよね、っていう、この作品ではまだGPT感全面推しではないけど、生成AIと村田沙耶香の描く人間像はかなり親和性高いと思う。アルゴリズムなんだよな。 自分の遺品整理をする中で、本当に自分がほしかったものはなくて、ただ周りの世界に適応するために手にしていたものばかり、っていうのは、欲望の三角形とか、ルネ・ジラールを思い出した。結局人間の欲望は自分のものではなくて、それを媒介する他者のものである。恋愛は究極のデータ交換だというのもそうで、恋愛してる時に相手の好みをインストールして自分もそれを好きになったりするのってすごくあるあるだと思うし、そういう人間の空っぽさとか呼応とトレースをなんて的確についてくるんだろう。 私は音ちゃんの言ってることがいつもしっくり来て、その語り口も含めて好きなんだけど、作中世界だけじゃなくて読者まで含めてみんなに「この人だけは私の理解者かもしれない」って思わせる音ちゃんがすごすぎるし、そのキャラ設定を読者にまで体感させる作者がすごすぎる。

    5
    投稿日: 2025.08.28
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    もりみーワールド的な、 村田ワールドがあるのならば、 私的には気持ち悪くて無理でした。 「コンビニ人間」も気持ち悪かったし。 感情がめんどくさい、というのが非常に伝わってきた

    5
    投稿日: 2025.08.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    どうやったらこんな物語を思いつくのか ··· 長年女性が背負ってきたものをピョコルンに丸投げ、批判も怒りも無く流されるように暮らし、リサイクルされる人間達 この新手のディストピアがしばらく頭から離れない

    2
    投稿日: 2025.08.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上下巻864ページの長編 人間、ラロロリン人、ピョコルンの生きる世界 自分を持たない主人公如月空子、接する相手に影響を受けて何重人格にもなれる彼女が飼ったペットのピョコルンの正体がリサイクル人間 人間の性処理に使われ、更にはピョコルンに出産・育児もさせていく世界になる 人種差別だったり人それぞれの価値観だったり人間の黒い部分がたくさん描写されていて、私はそんな人間や世界のままでいて欲しいと思う 空子の旦那さんの明人も空子も結局ピョコルンになるために自ら死を選んでしまう。 ピョコルンの性行為の描写やピョコルンの正体を突き止める場面の描写が上巻にありグロかったけど、下巻はそういったグロさがなかった中、結末の空子がピョコルンになるために受けてる手術の描写が最後の最後にまたグロかった 大作すぎて村田さんワールドの集大成な気がして、他の人では描けない唯一無二のすごい価値観の作品だなと思った

    5
    投稿日: 2025.08.26
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    むかーし、むかーし、『コンビニ人間』を読んで以来の村田さんでした なので、ほぼはじめましてです えーっと、今回の読書は大変でした 『世界99』上下巻合わせて長い長い! 仕事が忙しくて読書時間が確保しづらいので、なかなか読み進めれない その上、金原ひとみさんの『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』も図書館からまわってきた (こちらもそこそこ長い!)  最初は同時進行で『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』と『世界99』を読んでいましたが、これは無理だわ!ってことで返却日がきた『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』は諦めました 『世界99』は、なんとか読み切りましたが、なんでしょうかこれは… 気持ちの悪い世界です… だいぶ気持ちの悪い世界です… 特に、ピョコルンが気持ちが悪い! 物語序盤はかわいいキャラ的な立ち位置だったかもしれませんが、無理! 最初から生理的に無理! で、物語中盤でピョコルンの正体がわかると気持ち悪さ倍増! やっぱり無理を再確認 そのピョコルンが家事に妊娠、出産、そして性欲処理に使われる… あー、気持ち悪っ! もう、ぞっとします! けどある意味、ピョコルンの正体は現実の世界でもそーなのかもしれないとふと思ったりして…

    64
    投稿日: 2025.08.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なぜ「死」ではなく、再利用を選び「ピョコルン」になろうとするのか。 死んで終わりにしたいのではなく、汚い感情がない世界に生きたい、そこには心の平安がある(らしい)から。 死は終わりではなく生の続きとしてある。 記憶のワクチンを使うことで何が実現されるのか。 誰もが同じ記憶を持ち、同じ反応をするように調整され。 予定調和的な、世界の秩序もルールも全てがあらかじめ認識された。 思い通りの世界。 つまり個が人ではなく神として存在する世界ではないか。 …ピョコルンが再利用された人であることが判明したファーストインパクト(上巻) そしてリセットされ混沌が生まれ、指導者や正解者が不在となった世界99。 ここでは誰にでも好かれることが人間的な価値と捉えられていき、「クリーンな人」になる、汚い言葉や感情を生まないことが世界のバランスを崩さず、求められるようになっていく。 その為には「汚い」として捉えられることを受け入れる役割りとしてピョコルンがあり。(家事、性欲処理、出産…) ピョコルンがいる事で世界99は維持される。 また、ラロロリン人(恵まれてる人)は死後、ピョコルンとして再利用されるというのも世界を維持させる重要な仕組みとなる。 ピョコルンはあらゆるタブーの吐口となる。 それは見た目が人ではなく、圧倒的な「かわいさ」、元は恵まれた人である。という歪んだ正当化があるのでは。 また、ピョコルンを購入する、飼い主として育てている、所有者である、ということが、独占的支配的な立ち位置を容易に生み出す。 被害者が加害者になっただけでこのサイクルは終わらない。 その状況下において「人間として扱う」ことを謳い続ける人(白藤さん)が得られるものは何か。 少なくとも人として生きる、そういう思いや生き方の実現であったのでは。 人として生きることで何か得られることがあったのか。 具体的には書かれていない。 当然、あるべき姿としても推奨されていない。 汚く、辛く、苦悩に満ち、わがままで、嫌われる。 潔癖すぎる、世界に合わせ自分をバージョンアップできてないとも言えるんだろうけど。 そして、世界がよりクリーンであろうとする力が高まる中、感情のワクチンというセカンドインパクトを迎え、物語は終わりに向かう。 最後にピョコルンになった空子は白藤さんを見上げそこに誰とも違う「表情」を見る。 私はこの世界の新たな支配者の到来を見たような気になった。 読み終えて… 感情的な共感はほとんどなかった。 でも無意識な自分への理解(共感?)。 新な世界の捉え方の発見があった。 そしてこの世界は緩やかに終焉に向かっており、何かのきっかけ一つでリセットされる可能性がある。

    2
    投稿日: 2025.08.24
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    なんといえばいいのだろう... 人間の人間らしさを抽出した作品。 読む人によって感想はさまざまだと思います。 個人的には面白かったです‼︎

    3
    投稿日: 2025.08.24
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    「価値観を揺さぶられる」を体現させてくれるような大怪作。絶対に小説でしか表現できない、凄みのある描写に打ちのめされながらもページを捲る手は止められない。単なる会話シーンでも全く気が抜けないのが凄くて、過去の自分の心の内が晒されていく様が快楽的でもあった。

    2
    投稿日: 2025.08.24
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     上で見え隠れしていたディストピアが、どのような終末を迎えるのかドキドキした。歪みは予想以上に進行していて、人として好ましい感情だけをもつこと、道徳的価値観にとらわれることによる異常性が漂っていた。出産、育児、家事、介護などをピョコルンが代行してくれる社会、友情婚という新しい家族形態、人の生死をカスタマイズしクリーン再生、安全で楽ちんな世界のはずなのに、歪なのだ。  これまでにない読書体験だったし、面白かったことには間違えないのだが、モヤモヤが晴れない。

    12
    投稿日: 2025.08.24
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    記憶が統一されていく世界 汚い感情への耐性がなくなっていく社会 死ぬことがポジティブに思える社会 望ましくはないよね、、

    2
    投稿日: 2025.08.23
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    上下巻と共に辛いけどどんどん読み進めたくなる感じで面白かったが、『上』の衝撃が強すぎて、『下』は幾分スピードが少し緩やかになったか。

    3
    投稿日: 2025.08.23
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    上下読み終えての感想としては、男性と女性で読み終えた後の感想や、食らい方が違うのではないかと思います。 男の私は、自身が同じ男でも、現実世界で勘弁して欲しいと感じるタイプの人がいるのですが、その部類の人が主たる登場人物として出てくる時は、あまりによく描写されていて、読んでいて疲れました。 現実で起きていることを織り交ぜながら、SFな世界観で進む物語に、もしかして未来を見させられているのかもと思ってしまいました。 三宅香帆さんが言っていたように、読んだ後の感想次第では、友達止めるかもというのも納得のなんともいえない重さの読後感でした。 村田沙耶香さん、同い年だからかな。とんでもない世界観だけど、中に出てくるエピソードになんとなく既視感があり、あの時代を描写してるのかな?と各章ごとに元ネタになりそうな事を自分も体験した感じがするから余計に食らってしまった気もします。

    8
    投稿日: 2025.08.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読後感は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を観たあとに似てた。 衝撃的ではあるけどなんせ救いがなさすぎる。 閉塞感と絶望感がすごい。 登場人物が全員クソすぎてもう。とくに男性。揃いも揃ってまともな奴がおらん。気持ち悪すぎる。 各種のクソの描写がこまやかで見事なだけに、この世界にはマシな人間はいないんだな…というかこの世界はクソなんだな…って気がしてきてしんどい。 周囲にあわせて自分のキャラクターを作り、属する世界によってふるまいや思想まで変化させて使い分けている主人公。 たしかに誰でもそういうところはあると思うから、このあたりは共感しなくもない。 だけどこの主人公は感情がないっていいながら、たぶん無自覚に誰のことも嫌いで軽蔑してる。 唯一、自分と同じく周囲にあわせてキャラクターを使い分けていて、それをあっけらかんと語る音ちゃんっていう女性にだけは心惹かれる。 ここで愛を知って少しは救いが生まれるのか、または裏切られて傷つくことでなにか人間の本質的なものに気づくのか? って思ったけど、そんな甘い展開にはならなかった。 差別っていうのが大きなテーマになってるのはわかるんだけど、上巻の最後あたりの急展開以降はわけわからんすぎて(吐き気するくらい気持ち悪い)、そこからはずっと「な、何を見せられてるんだこれは…」って感じが続いてしまった。 あえてなんだろうけど、一番肝心のピョコルンの造形が想像しにくいってのもある。 ふわふわのかわいい生き物、ってなってて、なんとなくアルパカっぽいのを思い浮かべるんだけど、まあとにかく存在自体はうっすら不気味でかわいいとは思えないし。 いつか希望みたいなものにたどり着くのかと思いながら(あとSF的な展開がどんだけ広がるのか見届けたい気持ちもあり)この分厚い上下巻をどんどん読み進めてしまうんだけどさ。 結局、人間ってのはみんなクソなので、残念ながらこの世界は生きるに値しないんだよ、って結論を叩きつけられてるような気がした。 どないせえゆうねん!!! って読み終わった瞬間に卓袱台ひっくり返して暴れたい気になりました。 だってあの主人公はなにかを間違ったわけでもないのに、周囲どっちを向いても嫌な奴ばっかりで、八方塞がりだったじゃん。 しあわせになるためには、どうすりゃ良かったんだよ。 いやどうすればよかったのかは自分で考えろ、ってことなんだろうな。 現実社会で起きてることと重ねながら考えないといけないんだろうとは思う。 差別はあちこちにある。自覚しておかなければ蝕まれる、ってことかもしれない。 はーーしんどかった……。 【追加】なんとなくアルパカをイメージして読んでたせいで、いまアルパカ見るとウッて拒否反応が出るようになってしまった、後遺症がのこる小説すごい…

    4
    投稿日: 2025.08.22
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    下巻も引き続きメンタルがやられました。読んでてキツいのに読むのがやめられない中毒性と依存性がありました。上巻ほど展開に驚きはなかったですが、最後まで読んで、人生の意味をあらためて考えさせられました。インパクトのある小説でした。 他人に配慮し真意ではない対応をすることを、世界に媚びるという表現で貶める著者は凄い。

    11
    投稿日: 2025.08.20
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     自分が自分でいるのが当たり前で、浮いてる人が放っておかれた時代に成長した私のような年代の人間にとって、キャラが衣服のように着脱可能だったり、相手に過剰に呼応しなければならない人付き合いというのが共感できないので、苦労しながら読んできた。  しかし、この世に存在しない世界を構築し、さらにその変遷を描き、ピョコルンとかラロロリン人のような存在を生み出し、矛盾や破綻がないストーリーやエピソードを繰り出し、あらゆる角度から現代社会を照射し続けるという離れ業をやってみせる、すごい力作だと思う。 「ほんと、他人事だとこういうの(自殺、虐め等)って娯楽ですよねー。」「結局、感動って安全な場所にいる人にとって娯楽なんだなーって思います」なんていうことを、どの人物に語らせるのか。性格工場、人工愛情自動販売機、人工感動製造機のような独特の言葉のセンス。こういうものは村田沙耶香にしか書けないものなのだろう。

    10
    投稿日: 2025.08.20
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    以下、上巻の感想と同文 こんなに好きな小説はない。 孵化の短編から出来た長編だろうか。 村田沙耶香さん自身も怒りの感情というものはないという。小説を書く為の道具として自分が存在している。とどこか俯瞰的な考えを持っているお方。 その辺にいる人には気軽に声を掛けたり、道を聞いたりは出来るけれど、 これからも関わると分かっている人や2回目に会う人の方が緊張しちゃう。 という方は割といるのではないだろうか。 私がそういう人間。 後は時間が経てば、どんなに親しかろうと、よそよそしくなる。 それはきっと、これからも関わるこの人はどこの世界に入れるのが、無理なく付き合えるだろうか?と 頭を回転させ、慎重になるからであり、 時間があくと、その人も変化するから 今でも前の世界の住人なのか?と探るからよそよそしくなる。 という事だろう。 上巻、下巻共に本当に素晴らしかった。 ピョコルンがなんとなく、メイドインアビスの成れ果てを想像してしまっていて、 まぁ、上巻の最後に あっ… と思いました。 本当はどんな姿をしているのだろう? 上巻8/12-8/14読了 下巻8/17読了

    16
    投稿日: 2025.08.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    子どもの頃 夢や希望は絶対だった 同じように正義や善も絶対だった 大人になると それが揺らぎ始め 昔は悪と思えたことの中にも 善が混じっていたり 正義に見えているものが 偽善だったり 価値観がどんどん変わっていった 上巻の空子は前者であり 下巻の大人になった空子は後者なのだ 自分のしたいようにキャラ変して どんどん膨れていった「世界」に疲れ なにが自分かなど最初から分からなかったが 考えることもやめ でも ピョコルンとかラロロリンとか かわいい語感だったり おもしろおかしい雰囲気で おぞましいあれやこれを詰め込んだ造形がヤバい 正しくありたい 善行をしたい 良い人でありたい 差別は良くない などの自分の信条や倫理観が 薄っぺらく感じるようになってしまう そして最後には みんな均一のただただ優しい世界が待っている 「ミッドサマー」を観た時みたい 美しいのにグロテスク 明るい光の中のおぞましい世界 最後の手術の儀式のあたりは もう吐き気さえもよおした マジで村田沙耶香ヤバい

    5
    投稿日: 2025.08.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    世界99(下) 世界99の続き。 14年前「リセット」を経験した人類は混乱のさなかにあった。しかしラロロリン人の考えた「人間リサイクルシステム」が上手く機能し、やがて社会は再生を迎える。やがて49歳になった空子は「クリーンな人」として、美しく優しい世界を生きている。 「クリーンタウン」の実家に戻り、同級生の白藤遥とその娘、波とともに。ようやく訪れた穏やかな社会の中心には、さらなる変貌を遂げたピョコルンがいた。(帯書きより) 今まで、このような種類の小説を読んだことがないので、「驚き」です。上巻をさらに上回るグロテスクな世界観。死んだ人間をピョコルンというペット兼家政婦としてリサイクルする世界。ピョコルンは人間の性の捌け口としても利用される。そして人種差別、階級を容認をする世界、最後は均一な性格に人類が統一され、争いのない平和を目指すのである。 なんて言うか、エログロな小説なのです。 だけど、読み進まずにはいられない。なんか不思議な本。 吐き気がするような、グロい世界を描いてるんだけど、ある種の共感を誘うところが、そこここに感じさせられる。 「人間って、大体「感情のお手本」を見ながら、自分の感情を作ってませんか?なんかもっと大きなお手本みたいな人がいません?」 「私は服装や身の回りの小物を「キャラ」を作り上げるための部品であり、身にまとう情報だとしか思っていなかった」 この小説の世界の人間たちは、みんな本当の自分の感情を殺して他人の感情を「トレース」して生きている。 架空の世界のことでありながら、現代社会の人間の有り様を本質的に抉っているようで、モヤッとするような、共感するような感じを抱かせる。 あまりにもグロテスクな世界観でありながら、身につまされる感じがあり、どういう感情でこの本を読んだらいいのか、よく分からない。 そのまま読んでいったら、最終的には人は誰かを差別し、自分のカテゴリー違いを認識して安心することで生きている、だとかどんなに言葉を美しくしても、女性は結局、死ぬまで家政婦であると同時に性的対象であり、搾取される人種である、ということを風刺した物語であるように感じた。 村田沙耶香さんの本ははじめて読むので、よく分からないが、恐るべし作家だと思いました。 でも、続けて読むのはちょっとパス。 しんどくなるから。

    4
    投稿日: 2025.08.18
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    下巻になり人間の本質をさらに深掘りした世界に不気味さを覚えました。謎めいた話に読む手は進む。 結末は自分では到底理解できず難しく感じたが端々にある言葉は見透かされているような気分になった。

    2
    投稿日: 2025.08.18
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    上巻の方がおもしろかったが、下巻も上巻に劣らずぶっ飛んだ内容だった。ぶっ飛んではいるけど、いつか世界はこんな感じになるのかなとも思った。

    8
    投稿日: 2025.08.17
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    三宅香帆さんと竹下隆一郎さんの対談をYouTubeで観て、この本を知りました。 様々なインタビューもあるので合わせて観るのがお勧め。 村田沙耶香さんや王谷晶さん、柚木麻子さんなど、最近海外での文学賞の受賞で知ることになった作品が多い。一つずつ読み進めて行こうと思う。

    5
    投稿日: 2025.08.17
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    この作品を読んでいると、SFやホラーといった類の言葉が頭を過ぎる。 架空の人種や生物が出現し、社会構造は現代と剥離している。 そして、常にドライアイスの白煙が足元を漂っているかの如く、 冷気を纏った緊張感が張り巡らされているから。 でも、本質はそこでは無いだろう。 今作で描かれている事は誇大な空想などでは無く、 今の人類が0.1歩ほど倫理の境界線を踏み越えて、 徐々に歯車が狂った先にある世界かもしれない。 なぜなら、もし作品の中の世界に放り込まれたとしても、 生きていけなくは無い...と思ってしまったからである。 特に人間関係や潜在的ヒエラルキーを取り巻く描写については、 現代と擦り合わせても何ら違和感が無い。 むしろ「あるある」の連続だろう。 作者の村田沙耶香氏は、明らかに地球の外から現世を眺めている。 地球を手のひらで丁寧に掬い出し、正当な目線で見つめ、 真を暴き出しそうとしている。 今作は実験作などでは無い。 どこまでいっても『普遍的』な物語である。

    3
    投稿日: 2025.08.17
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    いやーーーーーーわからん。 なんとか下巻最後まで読み終わったけど、世界観、文章の感じ、登場人物のこじれ具合、全体的にお手上げでした。 わたし自身もこじれにこじれまくってた20年前くらいに読んでたら、もっとダイレクトに感銘を受けたり心に響いたりしたのかもしれない。 このフェーズはたぶんもう終わったな、という感覚。

    2
    投稿日: 2025.08.17
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    上巻は様々な世界での主人公に興味津々で読みおえたが、下巻になるとピョコルンがとても不気味な存在で、みんなが何を考えどこに向かっていくのか皆目わからなくなり、ラストまで堂々巡りだったように感じた。ただただ長すぎるお話をここまで読んだことで、途中でやめてしまう勇気もなく、気持ちの悪いお話を追いかけ続けただけだった。 風刺なのか、警鐘なのか、ピョコルンと人間の関係が怖すぎた。

    14
    投稿日: 2025.08.15
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    読み終えてあまりの凄さに茫然。上巻における衝撃のあの日、「リセット」後の世界・空子の人生が語られる。三種類に分けられた人間達の社会、「クリーンな人」の価値観のまま思考し言動する人々の気持ち悪さ。進化(進歩?)したピョコルン、ピョコルンが普及した生活の(登場人物達は感じていない)異常さ気持ち悪さおぞましさ。人と人の分かり合えなさ。過去とは? 記憶とは? 読んでいくのが気持ち悪い、でもやめられない。これぞ純文学! しかし男性である自分には本当には作者の突きつけたテーマ、掴み取れていないのではないかとも思う。

    6
    投稿日: 2025.08.15
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    かわいそうな女性による かわいそうな女性の物語 男性ほとんど 型にはまった 書かれ方で アララ SF小説ではなく 神話とよばれるのが ふさわしい

    9
    投稿日: 2025.08.15
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    村田沙耶香さんの物語って、不思議な世界だけど、どうしても非現実的だとは思えない。実は日常をのぞかれているようで、ふと怖くなる。何が幸せか、何が正しいか、何が美しいのか、の価値観は、簡単に変わる。SNSが発達した頃によってその移り変わりの速度は急速に早くなっているようにも感じる。 ウエガイコク、シタガイコク、恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人、…物語の中だけの話ではないような気がする。自分の中に理想のクリーンな人像があって、理想通りになれなくてもがいて、時々恵まれた人に憧れる生活をしている気がする。クリーンでありたいのに、溜め込んで疲れてかわいそうな人になって、後悔する。ウエガイコク/シタガイコクという表現が正しいかはわからないけれど、世界の流行に憧れ、見たくないものに背を向けている。背を向けないと正気を保てないという理由もあるけど。 綺麗な記憶だけにして、汚い記憶を忘れたくなるときもあるし、忘れたふりをしていることもある。改竄されていることもたくさんあると思う。 読めば読むほど現実的に感じてしまう、不思議な小説だった。

    7
    投稿日: 2025.08.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    こんなにも読み終わった後、考えたことや感じたことがありすぎて、ブレインファックされすぎて、感想をどうまとめたらいいのか分からない本もない! 今回はネタバレなしで書くのは到底無理そうなので、ネタバレを求めていない方はスルーしてください。 話したいことは無限にあるし、この本の読書会をめちゃくちゃやりたいけど、とりあえずは下記の3点に絞って語りたい。 1人間の本質は空虚なのか 2ウエガイコク 3人間の求める感動 1人間の本質は空虚なのか 「私が人間ロボットではなく人間であるとしたら、自分の本質を証明するものが、自分の内側に結晶のように存在するのだろうと、どこかで考えていた。けれど空虚こそ本質なのだった。私の中の空洞にこそ、私が人間であることの証明が、核心が、はっきりと宿っているのだった。」 とあるように、この物語の主人公(語り手)の空子(そらこ)は自分自身を空洞だと考えいる。でも、でも、読んだ方々どう思いましたか??空子は本当の本当に「空っぽ」なのか?? 空っぽなら、どうして下巻で、40代になった空子はあそこまでして10代の女の子たちを守ろうとしているのか?? 守ることで、自分のインナーチャイルドが満たされるからというようなことを言っていたと思うけど、本当にただそれだけなのか? 空子にはずっと自分の感情やぶれない軸が本当はあり、上巻で何度も言っていた「私は馬鹿だから」という言葉の真逆で、この世の中で生きるためには賢すぎたのではないか? だから上手く生き延びる手段として、中身を空っぽにしようとしていたのかなと。 う〜ん、でもこんなことを書くと陳腐な感じ。 外からの影響を受けずに自分をもっている人なんてそもそも絶対いないし、みんながみんな、外見も中身も何かしら、他の人からのトレースで出来上がってる。 だからやっぱり永遠に空虚なのか? 人間であることの核心が空虚にあるのか? ものすごい哲学だよね、これ。 そして、空虚な人間だからこそ「人工愛情自動販売機」になれる。この言葉を音ちゃんが言っていたけど、私もこれかもしれないって時、沢山ある。 安っぽい愛情、共感、振りまいてるかも。私の自販機のボタンを押した人には振りまいてるかも。 2ウエガイコクについて 「ウエガイコクだもんね。いいなあ。素敵ね。日本をどう思う?どうして日本に来たの?日本のどこが好き?すごいね、日本語を喋ることができて。彼女は日本に来てからどれほどこの手の言葉を浴びたのだろうか?」 これ、多分この小説でいわれるウエガイコクとのハーフ(最近はダブルとかミックスって言わないといけない??)として日本に生まれ育った私が、物心着いたときから言われまくってきた言葉!だからもう村田沙耶香さんに感謝の気持ちを伝えたい!取り上げてくれてありがとうございますと。 「正直、この島国の中だと、空子さんや私みたいなアジア人の容姿で日本語を喋ることができたら、特権の中で透明な存在でいられるじゃないですか?」 それ!!私は本当に30代になるくらいまで、日本では透明になれない存在としてかなりのコンプレックスがあった。なんで?作家さん、ハーフとかじゃないのに、この気持ちを取り上げてくれるの?本当に嬉しい。読んだ人みんなにこの気持ち届いて!と思いながら読んでいた。 そして日本人からしたら良い意味でのウエガイコク人差別を受けてきた私は、以下の文のように考えていたところがありショック。 「それにしても、差別されるのって、いいですよね。一種類の差別をされているだけで、まるで自分が他の種類の差別をまったくしていないような気持ちになれませんか?そんなわけないのに」 外見と話す言語がマッチしないので、マイノリティとして生きた私は、「私は差別してない」と思い込んでる節があった。でも絶対そんな訳ない。 そしてそして最後に、日本とウエガイコクに半々くらいで住んだ私は、まさしく以下の文の通り。 「私も他の国に行ったらそこの文化に合わせて性格が変わるだろうなと想像します。環境って性格工場みたいな感じがします。」 私は何者? 日本人?ウエガイコク人? 国によって、ころころ性格変えてるだけの人間。でもそれってスキルにもなるし、あえてこの本の否定的な要素に抵抗したいと思ったけど、そもそも別にこの本ではそれを否定的に描かれているのか? でもどっちの要素も、どっちの国でも性格から染み出している時があるし、その時は相手に「面白い人」と捉えてもらえたら嬉しい。 3人間の求める感動 「『感動しないと冷たい人間になってしまう感動』って、娯楽であると同時にほぼ脅迫ですから」 「私も趣味で感動することってけっこうあって。楽でいいですよね。あと、感動って、一時的にめちゃくちゃ視野狭くなりません?結局、感動って安全な場所にいる人間の娯楽なんだなーって思います。すごい盛り上がって一瞬、エネルギーっぽくて、中毒性ありますよね」 私がどうして、他者の苦しみを薄っぺらく取り上げて感動ものの作品になってる本や映画に対して嫌悪感を抱くかが、ここに集約されてる感じ。でも自分自信、それを娯楽や趣味にしている時が絶対あるだろうし。それが最悪だと思う。 そういう意味ではこの「世界99」を読み終わった時、「感動した」という言葉が全く合わない気がする。一度も涙は溢れていないし。 それなのに、こんなにも、こんなにも、強い印象をもたらすなんて。 作家さんが天才としか言えない。

    6
    投稿日: 2025.08.14
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    世界や性差、社会、欲求という全てのものを丁寧に描いた未来のような物語。 いつか誰しもが99になるのかと思うと、そんな世界も来ることはあるんだろうなと。 村田さんの発想、着眼点に尊敬します。

    5
    投稿日: 2025.08.13
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    上巻が面白かっただけに、個人的には下巻は正直鬱々とした雰囲気だけ残り、共感できる部分がかなり減ってしまったので残念でしたが、突き抜けた世界観と鋭い洞察力でとても考えさせられるのは良かったです。

    9
    投稿日: 2025.08.12
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    ちょっと圧倒的にえぐい。迂闊に同僚とかに勧められないくらいには、えぐい。 これはなんてジャンルなんだろう。SFじゃないよね。 コンビニ人間の作者と知って納得。身近に潜む狂気・悪意を超絶俯瞰的に描写しては嫌悪感を的確にくすぐってくる。 それでも主人公だけが特異だった前半はまだ良かった。後半になるにつれ、世界そのものが主人公と同化してきて、本当に気持ち悪いしぞわぞわする。 やや感想から逸れるかもだけど、人間はロボットであり環境が性格を形造る、という話。 最近の生成AIの進化をみてると、本当にその通りと思ってしまう。わたしたちは様々な情報のインプットを受け、様々に反応を返しているだけで、自分の意思と思っているものも、ただの適応と経験からの予測なのかも、と。 この小説ほど自覚的・典型的じゃなく、世界①②③の分断とそれを渡り歩くような瞬間、誰にでもあるんじゃないかな。

    15
    投稿日: 2025.08.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    すごく奇妙でグロテスクだったけれど久しぶりに深い作品だと感じた。 中盤までは呑気に「私もピョコルンになりたいなー」なんて思っていたけれど、ピョコルンに意識と感情があると知って恐ろしくなった。 物語の舞台となる世界線自体が荒んでるからもういっそのこと全員ピョコルンになった方が平和なんじゃないかと思った。

    6
    投稿日: 2025.08.11
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    下巻もよりパワーアップして気持ち悪い。 上巻に示される世界99の概念は空子の思考だが、下巻では、世界は単純化された明確な区分がなされている。正体が明かされたピョコルンは、さらに進化して、性欲と出産と家事を担う存在となることで、社会の一員となっている。その世界では感情を均質化し穏やかに暮らすことが善とされる。考えるのは一部の恵まれた人の仕事。そして恵まれた人は恵まれているので、死んだら還元する義務がある。 儀式はスプラッタで意味がわからない。そして最後まで可愛いピョコルンの姿形のイメージはできず。 終始気持ちが悪かった(悪口じゃないです) 鼻の穴のホワイトニング‥こんなところにも登場。村田ワールドでは流行っているらしい。 上下巻ともに表紙の絵がとても気持ちが悪い。グロテスクで、申し訳ないが意味もわからない。

    11
    投稿日: 2025.08.10
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    ピョコルン…みんなみんな、ピョコルンになってしまえば、世界は穏やかに、安全に、合理的になるのだろうか。 狂った思考を持つのは人間か、世界なのか…。 絶望と失望と虚無感がこれでもかこれでもかとしみ込んだボロ雑巾を無理やり口の中に詰め込まれて窒息死させられるみてえな有害図書といっても過言ではないかもしれない。 どいつもこいつもおかしいし、何よりも自分自身の気持ち悪さをまざまざと自覚させられる…。 世界よ、これが村田沙耶香だ。

    5
    投稿日: 2025.08.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    はぁー疲れた、と思ってしまう圧巻の下巻。 40代に入った空子が明人と離婚して白藤さんと白藤さんと奏さんの間にできた娘さんの波と3人でシェアハウス状態で同棲している。 上巻の終わりでピョコルンは死んだ人を再利用して作られていることが発覚して世の中は「リセット」を経て世界①②③…という概念が崩れていった。今まではラロロリン人はイジメの対象となっていたけどリセット後の世界では「恵まれた人」という立ち位置に変わっていた。 ピョコルンを飼い始めて本来料理や家事などを任せて便利というふれこみだったけど、全く役に立たず逆に重荷になって空子はどんどん搾取されていく感覚に陥る。 最終的に一斉にピョコルンになる手術を公開イベントで受けることを決意するというエンディング。 目に墨を入れて黒くしたり、鼻の穴を白くしたり「美しい」と思われるスタンダードが変わっていることや子宮を取り除いて生理などが来ない世界線、恋愛婚よりも友情婚が普通になっていることである意味女性は平等な世界だけど相変わらず身に危険を感じるモヤモヤする場面などはあって結局搾取するかされるかの関係性しかない世の中へ対してメッセージだったのかなと思った。 ストーリー的な読みやすさや主人公の考え方に着いていけるのは上巻だったのでそちらの方が好きだった。

    3
    投稿日: 2025.08.10
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    ※「世界99 上」を読み終わった人に対するコメントです。微妙にネタバレがあるためご注意ください。 [こんな人におすすめ] *下巻を読むべきか真剣に悩んでいる人  私は上巻を読み終わった瞬間、文字通り天を仰ぎました。上巻で十分満足して、下巻は読まなくてもいいかな(むしろ読みたくないかも)と思っていたので下巻に進めない人の気持ちもわかります。  ただ、上下巻で「世界に媚びるための祭り」が完成します。おぞましくて、気持ち悪くて、しかし中毒を起こしそうになるくらい面白い。ダメージを受けると分かっていても、最後まで読むと上巻を読み返したくなるので気力を振り絞って下巻に挑戦することをおすすめします。 [こんな人は次の機会に] *上巻を読んで頭がくらくらした人  上巻のラストのような衝撃的な展開は少ないですが、下巻は現実世界とリンクする場面が増えて深めの刺し傷が増えます。特に、上巻で「使われる、消費される」女性の書き方に共感を覚えた場合、下巻で「使う、消費する」側に立つことであらゆる方向からボディーブローを受けます。ご注意ください。

    6
    投稿日: 2025.08.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    圧巻。自分の嫌なところだったり、どうしようもない世の中の構造を目の当たりにして、苦しくなりながらも面白くて夢中になって読みました。搾取する側とされる側。上巻から下巻の中で、ピョコルンの登場によって、立場が変わっていく空子の心理変化が恐ろしかった。人ってこんな簡単に過去の自分の苦しみを置いて、過去を改竄して「今」を生きるんだよなぁ。自分も含めて。

    3
    投稿日: 2025.08.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人間の記憶、人間の知性、人間の弱さ、人間の最低さ、人間の感情、など様々な良くもあり、悪くもある部分が無くなってしまうと、こういう世界になっていくのだろうと思った。 今の世の中を彷彿とさせる描写がたくさんあって、記憶ワクチンを打つ時代も来るかもしれないなと思った。 鼻の穴のホワイトニングと目の墨汁と、クリーンな人間の感情のない世界の描写は常にゾッとしながら読み進めた。 私が気に入ったところは、死にたいから自殺をするのではない、生きていくために自殺をする。というところである。哲学的で難しいところだけど、理解したいと思った。 やっぱり、空子はレナと結構仲良かったんだなと思った。

    3
    投稿日: 2025.08.06
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    記憶のワクチン、、人の感動娯楽 人間が感情を持たなくなったらどうなるのか 怒りの感情が汚いものだったら 何もかも倫理的にあり得ない世界だけど、どこか今の世界と同じ香りが漂ってきてやるせない

    3
    投稿日: 2025.08.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上巻では、空子の子ども時代〜結婚生活まで。 下巻では、中年期。独身に戻った生活とその後。 構築された世界がリアルで『リセット』され、世界の人の価値観がガラリと変わった。 中年になった空子は、世の中の3つの分類のひとつに馴染むよう生きていた。 クリーンな人。 怒りや激しさというような汚い感情はもたず、おだやかにくらす、いさかいのない人間関係。 時代が変わり、その環境に慣れて生活する人、変化を良しとせず怒りを持ちつづている人。 世代が変わっていき、望まない社会になっていっても、生きていれば迎合せざるを得ないこともある。 やはり空子は空子のままで、虚無。 下巻でずっと子どもたちに振り回されていた空子。人間ロボットであっても少女を守る意識は人生に刻まれており、そこだけは消えなかった。 虚無であっても自分の人生に線引きをすることはでき、淡々と進めていく作業は計画的。これほど感情がないままなのは、まさに人間ロボットだと言えるかもしれない。 感情がなく、記憶が一律にされた世界。 そこは何番目の世界になっているのだろう…… ーー 独特の世界観。 なんともいえない感情、読後どっと疲れた、、

    14
    投稿日: 2025.08.06
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    上の最後の方の大展開からの盛り上がりに欠ける。エンディングもこれでいいのか?という感じでカタルシスがない。ちょっと残念な印象。村田沙耶香はキャラとか人格とかと性欲というのがテーマな気がする。性欲がない人物を描くことが多いけど,本人は別の場所で自慰についてあけすけに語っている。それは性欲とは別物なのかもしれないけれど。

    2
    投稿日: 2025.08.06
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    この作品は自分の視野を広げてくれるような作品。ではなく、今自分が生きるこの世界を再認識させてくれる。嫌な意味で解像度を上げてくれるような作品でした。面白かったで括り上げるにはあまりにも壮大な話で、自分の感想としてはおもしろいよりも、解像度が高すぎる少しだけズレた現実世界をこの作品の言葉を使うとするなら世界99から観ているような感覚でした。空子の中身が何もない性格の視点から書かれているため、残酷で痛烈なほどに客観的に描かれた世界はとても痛々しくて目を背けたくなるようなものでした。ですがこの世界は今生きている現実世界で起きている事象を分かりやすく読者に伝える為だけの別世界なのだと感じました。 この作品での表現全てに共感できる自分に嫌気がさしながらも実際はこんなもんだよなとひしひしと思いました。 この本を読んでつくづく世界は大量の人間で形作られているものだと感じました。社会も世界も全て人間で形作られ、人は人に縛られ続け、みんなが右を向けば右を向くのが最適解となる。流れに身を任せるのが1番傷を負わない手段なのかなーと思いました。 登場人物全てが愚かな人間でそれが人間本来の味でとても興味深い体験でした

    3
    投稿日: 2025.08.05
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    上巻を勢いよく読み下巻もそうなるかと思ったけど失速した。時々村田さんの作品で理解の範疇を越える時があって(想像しづらい)今回も部分的にあった。 どんな世界観なんだろうと興味深く読み進み、分かったぞ〜と思うとまた新しい波が来て。それがとてもよかった。レベル100くらいのミソジニーがいっぱい出てきてここまでくると不快感が緩和された。

    2
    投稿日: 2025.08.04
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    下巻も独特な世界観で進んだ。上巻に引き続き、やっぱり疲れてしまった。苦手な作品だが、確かに惹きつけられる何かがあった。

    129
    投稿日: 2025.08.03
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    上巻があまりに面白すぎて、これは下巻もこのまま突っ走るんだろうなと期待してたんだけど、思ったよりも失速。物語の舞台が、今自分たちが生きてる世界の文化や常識から完全に離れちゃって、理解が一気に難しくなる。展開もスローで、途中ちょっと退屈だった。 でも、ピョコルンの存在によって人間が本来担うはずだった役割が不要になる、つまり「欲求」が意味を持たなくなるっていう発想や、「みんなが幸福になると、“かわいそう”が娯楽になる」っていう考え方は、普通に生きてたらまず思いつかない。だからこそ新鮮で、引っかかるものは確かにあった。

    4
    投稿日: 2025.08.02
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    上巻はかなり面白く、自分にもどこか通じる部分と 相反する部分とを感じながら、どんどん読み進めたものの、下巻に行くと自分の理解の範疇を超えて行き、私は一体何を読まされているのか…と感じる方が多くなった。 とりあえず読了しなければという義務感で読み終えた。 下巻にのみ言及すれば、とにかく冗長で、私の理解をはるかに超える会話が繰り広げられていて、とにかくわけがわからなくてしんどかったという感想がいちばん。 異世界ながら、どこか現代に通じる部分もあり、ほの怖さを感じるところはいくつかあって、再読すればもう少しは理解が及ぶかな?と思うものの、たぶんもう読めないだろう。 村田さんの本はコンビニ人間しか読んでないけど、 根底に巡るものは同じなのかな。 このわけのわからない世界を構築したことは、すごいと思う。 空子がキャラを超えて、心の中でツッコむところが好き。 追記 一気に読んだせいか、頭の中からピョコルンやら人間家電やらが離れない。 家事をしてると一生搾取されるのかと虚しくなる。 その点では私にかなりの衝撃を与えた作品である。 理解できないなりに、脳みそに爪痕を残されたので 評価を1上げます。

    7
    投稿日: 2025.08.01
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    如月空子(きさらぎ そらこ)は、多面性ペルソナ。 相手に合わせてキャラ変する〈呼応〉と相手のキャラを真似る〈トレース〉を駆使して、危険を回避して安全に生きていく。誰とも摩擦を起こさず、ただただ楽に生き延びる。意志なんてない。それぞれの世界に適応して、その価値観に応じた台詞を吐き出し続け、空っぽのまま生き続ける。 また、この世界には「ピョコルン」がいる。「ピョコルン」は家事すべてと性欲処理、望めば妊娠と出産をして育児をする生き物だ。嫌なことを全部「ピョコルン」に押し付けることもできるこの世界の行く末は… 「コンビニ人間」を読んで以来の村田沙耶香さん。 なんとまあ奇妙な世界を描かれる方だろうか。 ちょっと私はこの世界観に脳みそが追いつかなかった。果たしてこの世界は、ユートピアかディストピアか?本書を読んだ皆さんのイメージする「ピョコルン」像をすり合わせしたい。 全体的に冗長で、上下巻に分冊する程ひっぱる内容でもなかったように思う。上巻の「世界99」の意味がわかるところまでは圧倒されたが、下巻はほぼ斜め読み。 一方、共感ポイントはあった。空子ほどではないにしても、〈呼応〉と〈トレース〉は誰しも少なからずやってるのではなかろうか。私自身、対家族、対友人、対会社同僚で〈呼応〉してるし、“たくさんの世界で生きている無数の自分をその世界の自分がぼーっと見てる感じ“もよくわかる。 ただ、私は摩擦を恐れず、軸と意志を持ってこれからも生きていこうと思った。 野間文芸賞 受賞(2025年)

    42
    投稿日: 2025.07.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ピョルコンになれる世界が怖く感じた。今まで人が持っていた欲などが一切無くなると感情まで支配されるのか。この世界感がすごくて楽になるのは無になることなのか?辛い方が生きてる感がある。考えされる世界だった

    60
    投稿日: 2025.07.31
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    上下巻ともに終始ページを捲る手が止まらないほど村田さんが描く世界にどっぷり沼った。SF要素もありながら現代にも起こり得ることも描かれててずっと頭ぐるぐるさせながら読んでた。 でも読者によって好き嫌い分かれると思う。

    5
    投稿日: 2025.07.30
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    読みながら自分と重なる部分が多くて読んでいて憂鬱になるのに読む手を辞められない感覚でした。 上よりは気持ちが沈むことはなかったですが下もなかなか強烈でした。 読む前の自分には戻れないと他の本の帯で見たことがありましたがこの本は本当にそんな感覚でした。

    4
    投稿日: 2025.07.27
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    上巻で強烈なパンチを受けたので、下巻の展開を期待しましたが、終わり方が見えてきたのと、言っていることがトレースと、それに合わせることの表現が多くて、ちょっと退屈して読みました。

    7
    投稿日: 2025.07.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    図書館にて借りる、第757弾。 (京都市図書館にて借りる、第221弾。) で、下巻。 ネタバレする。 ピョコルンに支配される展開かと思いきや、違う。 最終的に人間の記憶が均一化(標準化?)される展開に。 脳のメモリーワクチンという何だかよく分からないものの、ピョコルンの世界ならそんな技術もあるのかも、と思いながら、おお、そういう展開ですかと。 個人的には下巻より上巻の方が良かったし、この感じが更に加速することを期待したが、下巻は加速というより、方向転換したような印象だ。 とは言え、下巻も気持ち悪くて面白い(褒めています)、ディストピア小説であることに疑う余地はなく、夢中で読んだ。 ピョコルンに人間が支配される展開も読んでみたかったが(ある意味で人間はピョコルンに支配されてはいるが)、小説の面白味を味わった作品だった。 下巻も人間が嫌いになる、けど面白い。 星は4つ。夢中で読んだから4つだ。 あと、ピョコルンは、栃木のモケケ(アルパカ)のイメージでずっと読んでいた。

    2
    投稿日: 2025.07.27
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    個人的には上巻の方がインパクトがありましたが、下巻は下巻で雰囲気が変わりうまくまとまっていました。 下巻を読み終えた後に村田さんの作品をたくさん買ってしまいました。

    4
    投稿日: 2025.07.27
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    上巻からするとすこし展開がゆっくりになり、 読み進めるペースが下がってしまいました。 しかしながら沙耶香さんのストーリーは弾けていて、この世界感は癖になります。 生や死に対する思考が異質で沙耶香ワールドを堪能出来ますよ。

    4
    投稿日: 2025.07.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    異次元すぎて、理解が追いつかない感じだった。 ワクチンを打ってみんな同じになったら、幸せに暮らせるのだろうか。 ピョコルンになったら、意識はあるが感情もなくただ雑用を行い寿命がくるまで過ごすのか。。。

    4
    投稿日: 2025.07.23
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    下巻では上巻の終わりから14年後過ぎていて、価値観が変わっています。 「恵まれた人」(お金持ち・頭が良い人)、「かわいそうな人」(貧乏な人)、「クリーンな人」に分けられ、「汚い感情」は持ってはいけない、と考えている。 なんだかSNSの世界みたいだ、など他にも例えられるのがこの物語の恐ろしさ。上巻は人付き合いの対処の仕方が中心となっているのに対して、下巻では社会性や人間性を問うています。 そしてピョコルンはさらに多機能に。上巻よりもさらにピョコルンへの依存度が増え、混沌としています。 「恵まれた人」であるからには、社会で役に立たなければならない、とか、「クリーンな人」であり続けるのが当然の世の中で、空子の選んだ生き方は…。 上巻の方がが強烈だったけれど、再読したら下巻の方が面白いかもしれません。 上巻から登場しているアミちゃんが一番普通に近く、出てくるとホッとします。 昨日、おなかの調子が悪くて、仕事を休んだ私に「え?晩御飯ないの?」と言った夫。私は母ルンか!と心から抗議したくなりました。 私の世界は、①裏表のない私の世界 ②夫に対する冷たい私、の2つだけです。

    53
    投稿日: 2025.07.22
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    著者は『コンビニ人間』で一躍有名になり、あちこちで評判になっているので一度は何か読もうと思っていた。『コンビニ人間』は読んでなくて、ただ本作が出た時に結構話題になっていたので、読んでみるか、と借りたのがきっかけ。 予備知識はほぼなく手にしたのだけれど。 これはSFですね。 SF好きじゃないし、本の紹介にはディストピア小説とあったけど、まあそうなんだろうけど、サイバーパンクっぽいところもある。もう少し詳しく知っていたら、多分私は読まなかった類の作品。 上巻は、過剰適応してカムフラージュして生きてきたASD傾向の主人公の青年期までが描かれている。 そしてひたすら胸糞悪いエピソードばかり。主人公はただ周囲に「呼応」させているだけなのだけれど、それがさらに胸糞悪さを増幅させている気がする。どこもかしこも気味が悪い。 ただすごくASD的だし、これだけASDらしいことがきっちり書け、カムフラージュ女子についてもこれだけ詳細に書けるというのはやはり、著者もそうなのだろうな、そうやってカムフラージュして必死に生きてきたのだろうなと思える。 作中でも、許されて生きる、と書かれている箇所がある。そういう表現をする当事者に時々出会うが、ASDの人が、この社会で生活するとそういう感覚に陥りやすいのかもしれない。 最近の若者はキャラを作り場面や相手に合わせてキャラを分けると聞くから、そういう意味ではデフォルメされただけの現代にも見える。平野啓一郎の言う「分人」説が、今や彼方此方で説得力を持つ感じ。 下巻は、だいぶ主人公のカムフラージュぶりが落ち着いて、この社会での振る舞いに馴染み、若かりし頃の苦労が半減しているように描かれていて、そのあたりも、現実の当事者たちのあり方を忠実に再現しているように思えた。 より一層ディストピアぶりが発揮されるというか、サイバーパンクっぽさが強くなり、正直荒唐無稽ですらある。 胸糞悪さはかなり減ったけれど、上巻よりますます私の好みからどんどん外れ、あああ、こういう話だとわかっていたら読まなかったなあ、とつくづく思いながら読み進んだ。SF好きじゃないのよ。 それでも、結構なページ数の上下巻を、それほど時間かからずに読み切ることができたのは、著者の筆力なんだろうなとも思う。 評価がまあまあ良いようだけど、個人的には全く好きではなく、読まなくても良かったなというのが本音。それでも読み切れたってことでの☆3つです。

    6
    投稿日: 2025.07.20
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    今回もとてもクレイジーさやかだった あっという間に読めちゃった 恋愛よりも友愛が重視される友情家族 性欲処理にもされ出産もして家事料理もして子育てもするピョコルン でもピョコルンにも得意不得意がある ピョコルン手術をしてまでピョコルンになりたくないけどな でも、いつかこんな未来がくるのかもしれないな 世の中の当たり前ってどんどん変わっていくから 切断されていく儀式怖かった 誰得なんだあれ けど主人公は楽しんでいたのが救いだった 牛丼とんかつカレー 母ルン

    5
    投稿日: 2025.07.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人。 恩恵を受けているんだから、ある程度の奉仕は必要だし許さないという、変に平等を掲げているのが怖いが、その世界で慣れるとそれが普通の感覚となる。 ピョコルンの存在がただ気持ち悪く感じた。搾取する、される存在が社会の基盤にあるというのは、現実世界でもあるかもだけど、この世界は強烈に表現してある。 この結末はただしんどい。

    3
    投稿日: 2025.07.17
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    やっと読み終わった! 目まぐるしく世界が変わる上巻と打って変わって、ある意味成熟した世界。 そんな世界で空子の立ち回りというか行動原理がだんだんよく分からなくなってくる。 上巻の世界と下巻の世界はどちらが幸せなんだろう。

    3
    投稿日: 2025.07.16
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    49歳 洗脳の過渡期には適合能力や柔軟性の個体差があるため、以前の価値観にしがみつき洗脳のラグでしかないものに意味があるかのように拘泥し、声高に新規の矛盾(矛盾はいつの時代も存在しているが、矛盾を孕んだご当地ルールがあまりに浸透しすぎて、それを絶対的なものと勘違いしている)に対して「おかしさ」を主張する(=「汚い感情」を持つ)ものがいるのはごく自然。 新世代であるはずの波にも、性的搾取をされているかもしれない、という恐怖感(言葉にするほどにはそういった現象の存在すら信じられないが肌感覚で無視できない違和感)が生じるのは、まだ再生宣言前の価値観が薄く世界全体に尾を引いていて(p223「この乱暴な上辺だけの「安全な世界」」)、ピョコルンを性対象とする強固な価値観パッケージが導入されており、そのパケに矛盾しない言語しか手元にないはずなのに、パッケージの内部は完全には整いきっていないから。 言葉にならないレベルでの感覚としての異質さは絶対に存在するのに、それを表すための言語ゲームが先に削除されてしまった、「正常」の過渡期にある代償だと思う。 物語全体を通じて、何かのラベルが貼られたり、どこかの世界に位置したりすると、そのラベルに相応しいか?その世界にふさわしい振る舞いをしているか?と監視が常に付きまとう描写が多い。被害者になったら被害者として相応しいか?恵まれた人は恵まれた人てして相応しい行為をしているか?何か居場所のようなものを確保したその恩恵に自分を見張る数多もの目線が無条件についてくる。 リセットで世界が書き換えられた時、世界3から世界3'のように同方向かつ新たなルールに順応した世界に移動できる世界99の玄人、奏さんのような人もいれば、世界3に深く根を張っていて、3を離れられず、そこが汚い地域として暗い色に塗り替えられていくのを一生懸命抗議しつづける白藤さんのような人もいる。奏を見ているとあまりに世界に順応するのが得意でピッタリハマれる人は、整合性のある気持ちよいストーリーを鑑賞するような形で逆に周りの人に消費されている、という見方もあるのか?(実際物語後半ちょっと疲れてきてるしね) この世は便利の食物連鎖の網が張り巡らされていて、使用され人生を食い潰され続けている人は必ず存在してきた(母ルンが好例)のに、それに対してはさほど声を上げず、ピョコルンが死者の冒涜という批判は努力せずとも自然と浮かび上がるのは、きっとピョコルンが新規の生物で性欲処理や介護、妊娠などの機能を上乗せされた時に、便利な道具としての姿が見えやすいからかな、実態は皮を剥いだら人間の臓器の詰め合わせだったように、人間が今まで背負っていた労働(愛くるしさなどの感情的サービスも含めて)の詰め合わせに過ぎないのに(ピョコルンがどのようにして発情以外の「汚い感情」まで引き受けている設定なのかはいまいちわからなかった、負の感情が立ち上るような業務を代わりにやっても全てのマイナス感情が消えるわけではない、特に恐怖や嫉妬なんてものは)。 平等を主張するのなら、存在を把握しにくいもの、言語化しにくいもの、背景に馴染んでその輪郭が浮かび上がりにくいもの、そういう捉えどころないもの全てを等価に扱うべきだ ただ自分の手の届く範囲で扱いやすいものだけを取り上げてそれについてどうのこうの述べても平等からは程遠い。解釈可能な範囲での手遊びをするくらいなら、何も弄らなければいいと思ってしまうが、そもそもこの世の常識や正しさは平等や均質からは程遠いものだったので、それも流れに任せてただ眺め、勢力を増した意見に適応するだけ。 使用の食物連鎖は一方向のものだと思っていたが、養ってもらうために自分を切り売りする存在は常に養う側に養う義務を突きつけ、その構造は支配される存在が支配者に支配することを強要するのに似ている。家畜や奴隷の存在が、家畜や奴隷としてそれらを扱う義務を否応なく発生させ、その義務に行動を誘導されているという意味で養い手もまた家畜であり奴隷であるかもしれない 本来の家畜側に選り好みをできるような「選ぶ側」としての風格がある場合(コントロール困難な性欲や恋情を惹起するスペックを持つなど)や、機能不備(ピョールの家事が壊滅的だったように)がある場合、支配する側のポジションに支配されていくその不自由さが一層助長される そのポジションに見合わない不当な不自由さから逃れるかのように、もともとの家畜側の立場を弁えさせようと虐げ、詰る図式が、匠くんの「いくら払ったと思ってるんだよ。自分の方が偉いと思ってるのか?これから私たちが働いてお前を養うのに?綺麗だからと思ってお高くとまりやがって」という暴言に如実に現れている。 発情、恋心すらも自分の意思ではなくて粒子が身体の中に吸い込まれて培養されたものというのは巧みな表現。本能的なものすらもデータが心身に組み込まれたものでしか無くて、ソフトウェアのアップデートに過ぎないのか、ウイルスと忌避されるものなのか評価され方はそれぞれだが、ただ意思と無関係にダウンロードがなされていく。粒子をばら撒き始める大元の存在ですら確固たる発信元ではなく、p141感情のお手本が集団幻覚の実体化とあるように、何となく生存に都合のいい空気感があってそれに背かないように空気感を受け取りやすい形に成形するお手本が存在して、そこから粒子が広がっていく。責められず楽に生きたい、エビデンスがあるように思えるくらい自分のストーリーを都合よく整えてほしい、という根源的な欲求が本能の母体となっている。そして有形にするのが得意な人に形を整えてもらって、あとは思考しているようで思考せず吸い込むままに身を任せる。(自分自身で自己の生存のために卑怯とも思える記憶改竄、ストーリー捏造もよくやるしね) 粒子を吸い込むように形成された本能や感情、価値観とはまた異なり、最初からそこに存在していたかのように思えるような独創性を持つ(意識的に創作したわけではない)快不快、好き嫌いはどこから発生するのか(アブノーマルな性的嗜好など)→chatgptにきいた答えの中で「たまたま視界に入ったある感触、音、匂い、言葉……それらが脳内で他の体験と重なり、「快」のネットワークに接続されると、それが好きになる。そのプロセスに「本質的な理由」はなく、ただそうなった――という偶然の積み重ね。だがその偶然は本人にとって「宿命的」に感じられる」が1番しっくりくるな。 性欲すら生存に都合のいいように調節された本能だとしたら、その形にバリエーションが生来あるのはなぜなのか。統一すれば変な混乱も生まれず楽なのに、多様性が生存戦略ならばせめて均等に分布していればいいのに。 粒子がどんどん染み込んで自分の中の感情/価値観/本能が変容していく際に、違う粒子同士が親和性高く混じり合い体に染み込んでいく体質の人と、一旦中で充満すると他を弾くように疎水期が繋ぎ合わさり壁を作るタイプの人がいる気がする。 p111「そうした行動をおぞましいと思いながら生きてきたプライドが、自分にはあるのかもしれない。誰かをおぞましく思うことが、私の輪郭だったのかもしれない」このおぞましさすらも吸い取った粒子が発芽したものをただ愛でてできただけに過ぎないかもしれないのに。負の感情を孕むもの、時系列で後に来るもの、解釈/分析後のもの、これらはどことなく本物っぽさを帯びている。 媚びに全力で空っぽと自覚する主人公と、強く自分の意思があるように見える白藤さん もともとの器の充填率の違いではなく、吸い込んだ粒子の複数の発芽、成長を見届けるか、萌芽したものを自身の一部として慈しむか、の違い。どれだけ世界に没入して世界99がバックグラウンドで起動していることを忘れられるかどうか、の違いでしかない。 40歳 白藤さんが世界3に安住していた自己を保つためにリセット後も世界3の断片たちを自らに吸収させ続けていたという設定は驚き。記憶は所詮多数決だから、白藤さんの中の記憶も捏造されているかもしれないけど、恵まれている/クリーン/可哀想のたった三層で出来た統一化が以前より進んだ世界での多数派は圧倒的で、圧倒的な多数決で決定された記憶(p237正確かつ公平で、平均的で総合的な記憶)の前で、白藤さんのような適応不能者は改竄されている!と無力感に打ちひしがれるしかない。白藤さんを見ていると過去の自分をトレースすることでしか一貫性を保てないのに、早く自分本来のものと執着するのをやめて盲信する「正しさ」など存在しない、浮遊する99に戻って仕舞えばいいのにと感じる。どれだけ粒子が体内に染み込み馴染みやすい体質か、どれだけ一貫性を好む性質が強いか(所有欲とも言えるか)によって白藤さんのようになるか否かを決定するのだろうか。 仮面、キャラ、ストーリー先に概念が存在してそこにぴったりとハマるような物が形成されていく(もしくは意識的に作り出しその妥当性、整合性を賞賛され、さらにその作業に勤しむ=媚び)作業ゲーが連綿と続いていく。そしてあてはめ作業から漏れたものははは失敗作として排除される。(かわいそうに。「ピョコルン」の人格になれなかったら、あなたは処分されるのに。「人間」の典型例になれなかった失敗作が静かに排除されるように。)名付けもそうだし、言葉に限らず表情なども含めて、表出することができ、さらにそれとみんなが共通認識として指し示せるような枠組みの存在は強大すぎて、それが特定された瞬間に、それの中身として納得のいく語りをするゲームが始まってしまう。 49歳 ピョールのように支配される側として存在してきた側面と、支配する立場なのに逆に自由を狭められ苛立つ(明人的)側面が同時に自覚されるピョールとの同居生活。この両者はトレースに過ぎず世界まるいくつが中途半端に自己の中で癒合しているだけなのか、それとも世界99の要素なのか。媚びて演技しているうちに、世界99が空っぽであることで保っていた「自分が人間である」という認識も、様々なトレースの余韻で染められてて混ざり合い、空っぽに戻せなくなった時点で崩れ、そうしてロボットに変容していくのだろうか 媚びが無意識なまでに染みついた、もしくは、ダウンロードが完璧なまでに滞りなく完了した音の兄のような個体は優秀な人間ロボット。音と睦月の違いは空っぽの99をベースとしていろんな世界に出かけているか、世界99に世界を詰め込み空白を埋めたかのちがいなのか? そういうのも全てひっくるめて典型像としてカウントしてサンプルに名前をつけていくと、ラベルをつける前にはそういうものとして存在するのか、とフラットな目線で見れたものが、またラベルに沿った何かに整列させられていく。 自分があとから中身と合うよう調整していくようなラベルやストーリー、粒子として吸い込まれ当たり前のようにダウンロードされる本能、価値観。そうしたものが人によって異なり、それゆえに軋轢が生まれたり、世界の棲み分けが必要になったりするのだったら、睦月が提案したように外れ値を取り除いた正確かつ公平で、平均的で総合的な記憶を導入or個々の典型例に宿る記憶を一つずつ導入してしまえばいい。兄妹間で発想はほとんど同じで、平均のワクチンを導入するか、細分類した典型を全てワクチン化するかの違い、いわば平均×nと積分の違いではっていう。 何でもかんでも細分化して典型ラベルを貼ると便利なようで窮屈というか、もともとはどうだったか(それを把握する必要すらないかもしれないが)曖昧になっていく。格言を知れば知るほど、もともとの思考と重なる一部からどんどん格言に吸い寄せられて、思考が狭まり、本来どうだったかが曖昧に溶けていく感覚に似ている。脳死で誘導されていく。まあ便利っちゃ便利なんだけど、本来性とか原始のものに執着する時期にはロボット感の自覚が増して、そんなものならもう流れるままに生きようと過度に無気力になる。 被害者というポジションを徹底的にはなそうとせず、加害者に今更なる方が辛いかもしれない母と、負担をピョコルンに肩代わりさせてはいるが自身の被害者としての日々がピョコルンに対して徹底的に加害することを抑える主人公の姿が重なる 各世界のストーリーで学習され自然発生的なものになるまで体得された痛みは世界間で混じり合い99に滲み込んでいく。人格は比較的容易に世界ごとに仕分けして扱うことができるが、一次感情については、無意識下で惹起されるまで、細胞内に組み込まれるから、バックグラウンドにいつも開かれている99にその所在があるとも言える。後から世界ごとに異なる解釈をすることはできるかもしれないが。 50歳 会話も人間関係もパターンをなぞるという要素の強さを感じる。感動しないと冷たい人間になる感動話には感動を強いられ、辛いことの告白には理解を強いられ、養うべき者がいるものは支配を強いられ、お決まりのルールが強制力を行使している。自由に感じている、感じて良い、と見せかけて、ルールが張り巡らされている。 搾取構造が象徴的だからか女性の搾取が多く提示されているが、性に関係なく、この世は支配に満ちている。自分の本能や価値観、感情の萌芽も予定調和で、典型像と透明なルールで満ちた箱庭の中で リモコン操作されているという意味で、私たちは労働をせっせと続けているに過ぎないのではないかという気持ちにさせられた。ピョコルンのお産シーンでは暴力的なまでに感動の圧力があり、賞味期限が存在する倫理に感情すら強要されることが虚しい。 世界99が世界99として、それが空っぽだとしても独立した確固たるものとして存在していれば、人間と勘違いしている人間ロボットではなく人間としてお互いに関わりあえる、そんな期待すら打ち砕かれていく(「そうか、奏さんも、自分の言葉じゃなくて、世界に喋らされている言葉を吐き出す装置になったんだ」なったんだ、というのは自分がそういう装置であると言う事実を諦めて受容したという意味か?) 最後、儀式の際に、記憶ワクチンとなって「」という安心して存在できる住処を欲している人がこんなにも膨大にいるのは驚き。世の中に蔓延している粒子を吸収して、流行している「」に入り込み、生き延びるためにどこまでも卑怯にストーリーを改竄していくことで、少しずつ各世界からバッグラウンドにその成分が染み込んでいく。そして空っぽなものとして確かに存在していたかもしれない世界99も、中身がパンパンに詰め込まれ、虚構性を増していく。ただ、ラベルに嵌まり込む能力や粒子の浸透率などの順応適性に個体差があり(一貫性を好み最初ダウンロードされた内容から更新されない白藤さんのような個体もいれば、「クリーンな人」に染まり過ぎてラベルの存在すら気づかない個体もいる)、世界99の姿にバリエーションがあるから混沌が生まれる。みんなが均質な記憶、典型像、「」をインプリティングされていたら、皆が見守り人であれば、苦しむことはないのに。これはずっと均質性を好んで憧れてきた私にとっても理想像。 p421入れ子構造、マトリョーシカ!!!!!! 感動が何かしらの強い情動を指すのであれば、何かを「」で囲み感動が否応なく付随するものとする、その様子をさらに「」にいれて感動の枠に入れる、さらにその行為を「」にいれて…。この場面と若干ズレるかもしれないが、ずっとずっと思っていた。シルバニアの家の外に出ようとして、その意思すらもシルバニアファミリーの人形として操作されているだけなのかもしれないと。中でリモコン操作がされるような作りものの家を出ようとしても、解釈しようとする自分がいる限り家の外にずっと家が続いている。マトリョーシカ。この箱庭から出られないのなら完璧に人形化してしまえたらよかったと。 89歳 白藤さんが、「健診にちゃんと行っていない」と病気扱いをされている。やっぱり均質から外れた不運な異分子は病という形で存在するのね、知っていたけども。ワクチンなんて実際にはないから表情を真似る努力を結局続けていくしかないんだよなという結論に落ち着く 本当にこの本に出会えてよかった これまで感じてきた悩みをここまでドンピシャで表現してくれるものがあるとは。

    5
    投稿日: 2025.07.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上下巻 分厚い本だったが一気に読めた 読み終えて1ヶ月程経ってから感想を書いているがまだ咀嚼できない 幼い頃から主人公の世界は地獄だった 女という性に生まれたことでこんなにも生き辛いということがまざまざと描かれている 実在しない街、実在しないピョコルンという存在 現実ではないはずが、これが私達の生きる世の中だということを突きつけられた気がしてひどく絶望した 自分を守るためにいくつもの世界を生み出す主人公の気持ちが理解できてしまう ピョコルンという生き物が人間によって生み出され、女性が担ってきた役割をどんどん押し付けられていく 男性の生活は変わらない 女性はピョコルンという存在によって、楽になるはずだった しかし結局のところピョコルンのフォロー、ケア労働を担い生活というサイクルを回しているのは女性だ その場の対人関係、時代の移り変わり、これらに対応して変化していく主人公は特別などではなく、至って普通の感覚なのではと思う だってそれが一番安全で、何も考えずに済む方法だから 倫理観というのも世の中の大多数の人々が受け入れてしまえば移り変わっていくものなのかもしれない これが現実に起こるかもしれないと思わせる生々しさは現代社会の地獄の側面を書いているからこそだと思う 読了後も胸につっかえる様なしこりが残り、延々とこの物語について考えさせられる物凄い本だった 悲しみ、寂しさ、恐ろしさ、辛さ、様々な感情が無いまぜになった読書体験はしばらく忘れられない 私的、今年のベスト本

    2
    投稿日: 2025.07.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上巻に引き続き、どうなっちゃうの?と思いながら400ページ越えの下巻も読み終えました。 上巻の最初では憧れのペットであるピョコルンだったけど、下巻に入りピョコルンの異質さが際立ってた。この本では、まだ人間が主であったけど時代が進んでいったらピョコルン中心の世界になっていきそう。 この本、いろいろなテーマが入り組んでいて読んでいて色々なことを感じるんだけど、テーマがどれも重いから、さーっと読んじゃうと全てが心に残りにくかった。少女の賞味期限とか、母親を使う、とか何だか嫌だなぁと感じる言葉もたくさんあって最後は幸せに終われるのかと、はやく、はやく幸せになれと思いながら読み進めてしまった。結論から言うと、最後は幸せでなかった。いや、主人公の空子からしたら幸せなんだろうか。幸せの基準は人それぞれだからわからないけど。 性、家族、コミュニティ、呼応、ウエガイコク、使役…本当にたくさんのことを考えさせられる本だった。だけど評価がやや低めなのは後味がよくないのと、これは人を選びそうだなと思ったから。

    10
    投稿日: 2025.07.15
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    上巻で男の醜悪さを描き、下巻ではその醜悪さを内包してしまう空子とそれに共感してしまう自分のおぞましさを自覚しながら読むことになったのでしんどかった 空子もそうだったのに、頭の悪い人としての波を見る描写がキツイ 最後までなんの変化もなく描かれる匠の気持ち悪さもすごい 匠は暴力性だけど、その妹の白藤さんも変わることなく生きてるのは兄妹だからってことなのかな 対比されるような音と睦月兄妹の進化したように見える人間性はクリーンで清潔 でも彼らの行き着くところはきっとみんながピョコルンになって誰も何も産み出さない世界だと思う

    4
    投稿日: 2025.07.12
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    恐ろしい世界。マジョリティに迎合し、風潮に流され続ける世界って、とてもありそうで、あっちゃいけないものなのだと全力で語り書けてくる一冊。 これはあまり人には勧められない。笑 実際これを読んでる間中ふわふわした気持ちが続き、なーんか居心地悪い状態だったな。

    3
    投稿日: 2025.07.10
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     サラッと読みたい自分にはかなり難しかった。  上巻は世界観が面白くてすらすら読めたけど、下巻は間延びして何が言いたいのかわからなくなることが多かった。これは歳を重ねていく主人公の時間の流れを意識しわざとそうしてるのかな?  心に残る文章は沢山あったけど、主人公はなぜ音の提案に乗ったのか、私にはきちんと理解できなかった。最後の強烈なシーンは何を伝えたかったんだろう。あの儀式は何のために行われたの?とにかく難しい小説だった。

    6
    投稿日: 2025.07.10
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    私自身も「世界99」の住民と生きている感覚が近いので、主人公のラストは良い終わりではないのかと感じた。 皆同じ記憶で調整された「見守り人」は、過去に同じことを考えたことがあった。平等な記憶を持っていたら、皆「今」に集中して、過去に執着したり、境遇を妬んだりせずに済む気がする。この本を読んで嫌悪感を覚えた人も、この世の中みんな理想存在(ピョコルン)に憧れて、無意識にそれに近づいていってるんだろうに。

    2
    投稿日: 2025.07.09
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    ピョコルンに転生するのは、いわゆる自分の人生に対する責任の回避なのだと思った。感情を平坦にし、皆と同じでなければ「かわいそうな人」という世界に吐き気がした。なかなかの地獄絵図やね。

    2
    投稿日: 2025.07.09
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    小早川さんと通じ合えた時の喜び、私も味わったことがあるなと思った。 人を救うことで救われる人のために救わせてあげると言う感覚も、身に覚えがある。 世界99に誰もがみんないて、割り切れているか、いないかの違いに見える。

    2
    投稿日: 2025.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ようやく読み終わった…。上巻はすらすら読めたけど、下巻はけっこう読むのがキツくて時間かかってしまった。 あまりにもリアルに書かれすぎてて、本当にこんな世界もあるのかもしれないと思わせてしまう村田さん、すごい。 白目を墨汁で染めるとか、口の中を真っ白にするとか…ピョコルンに子ども産ませるとか、一斉にピョコルンになるとか…記憶を統一するとか…なんなんだよもう…こわいよ… これは何を描いた作品なんだろう?現代の風刺?問題提起?色々と疑問が残るストーリーだったけど、最後はハッピーエンドなのかな?

    1
    投稿日: 2025.07.06
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    クリーンでいるために、汚いことを押し付ける役目をつくる。 ぶっとんだストーリーなのに、リアリティがあるのが怖い。

    1
    投稿日: 2025.07.06
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    なかなか難しい話で、理解できなかった。 ピョコルンが気持ち悪くて、ピョコルンを作り出した人間はもっと気持ち悪い。 近未来の人類の問題点を洗い出そうということなのかどうか分からなかったが、気が滅入ってしまった。 人間ってこんなもんじゃないと信じたい!

    30
    投稿日: 2025.07.05
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    近未来の架空の世界を描いている作品だが、リアリティが凄くあった 生殖、記憶、人間関係など、今後人間にとって必要で無くなる可能性を示唆していると考える 人間はどこに向かうのだろう

    1
    投稿日: 2025.07.04