
総合評価
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powered by ブクログ『平成最後の少年死刑囚』が脱走して全国民がその動向に注目している中、自分の近くにその死刑囚が居て、「信じてくれ」と言われたら信じられるだろうか。 そして何の罪のない人が殺されて、その後冤罪だと解った時、喜べるだろうか。 18歳であらぬ罪を着せられ、死刑判決を言い渡され、全国民からバッシングを受けられ…言いようの無い悲しさと苦しさだったと思う。 現実にもきっとそういう事がきっとある。あるのだけどやっぱり鏑木には生きていて欲しかった。
0投稿日: 2025.01.06
powered by ブクログ読み進めるたびに心が痛くなった。その人の「本当」を見破るのは容易くないけど、その人が与えてくれた優しさは「本当」のものとして受け止めたい。多くの人に読んで欲しい作品。
2投稿日: 2025.01.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
理不尽さと、やるせなさと、虚しさと、切なさと。 報われてほしい気持ちで最後まで読んだけど、あまりにも救いのない生涯だった。 題材として冤罪を扱っている以上、気持ちの良い結末はあり得ないとは思うけど。 結局人は、都合の良いことしか聞かないし話さない。 裁判官、検察官、弁護士、警察官、被告人、証人、マスコミ、大衆。 あらゆる立場の人間にとって、人が人を裁くことの不確実さ、罪を認めることの重大さを考えさせられる。
6投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログ登場人物の多さと話のつながりの無さに読みづらいと感じたが、最後の伏線回収で全ての話がつながり夢中で読んでしまった。 人を信じてあげることの大切さ、もし自分があらぬ疑いをかけられた時どうするか?そんななかでも人を信じてあげられるか
0投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
映画を見てから本を読んだので、最後が大ショック。救われないのね… 映画で一番違和感を感じたのが、警察はあんな形で再捜査しないんじゃないかな…というところだったので、納得。また、映画で周囲が皆蕪木を信用する点も現実的ではないと感じていた違ので、周りの感情が一様でない点は小説の方がリアルだった。 なお映画もすごい面白かったです!面白かったから小説も読みました。
3投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログ2022年ドラマ化 2024年映画化 若い夫婦と2歳の子供家族三人を殺害したとして 18歳の少年が現行犯逮捕される 容疑を否認しながらも死刑判決を受ける 少年は、19歳で脱走し 名前を代え仕事を替え 顔を変えて社会に紛れて 潜伏生活を続ける 各々の潜伏先に労働問題を抱えた職場を描き 少年の正体を見極めるミステリーと共に 社会派小説の読み応えを作る その職場を渡る事で 長編を飽きさせず 少年の正義を読むことができます 新刊時より 今読まれているように思うのは 映画の影響が大きいのでしょうか 流星くんが良かったのかな
118投稿日: 2025.01.05
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前代未聞の未成年死刑囚が脱獄し、そのニュースは日本中を騒がせた。 各章の登場人物たち、それぞれ違う場所で違う境遇で違う生活。そこで犯人に出会い、同じ時を過ごした人たちは言う。「彼は犯罪なんて犯す人ではない」と。彼の言動そのどれを見ても思いやりがあるお人好しの好青年。この事件の行き着く先を見届けたくて、そして見届けた瞬間の苦しさは、言葉にならない感情を生みました。 悲しいとも嬉しいとも違う。だけど報われなかったかと言われればそうではないが無念である結末に、このような冤罪が現実的にこの先起きないことを願うばかりである。2025年読了2冊目!
0投稿日: 2025.01.05
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映画が良かったので原作も読んでみた 映画より登場人物がより細分化されてて、映画より感情移入し易かった ジャンプとかね 映画版はハッピーエンドやったけどこっちは報われない終わり方で辛かった。作者があとがきで謝るくらいには、報われない。
0投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログ日本を震撼させた凶悪な殺人事件を起こし、死刑囚となった鏑木が脱走した。姿を変え逃げ続けるが…。 映画の予告を観て先に原作を手に取った。コレを映像で観たら絶対泣くわ。 あらゆる潜伏先で、前に出会った人のことを話す鏑木が切なかった。いたたまれない気持ちで読み進めた。 鏑木がいい子すぎて。いい人と描かれるほどラストが効いてくるのはわかるけど。尊い!尊すぎる!
5投稿日: 2025.01.04
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ドラマ版を先に視聴していたので、結末は分かっていましたが、やはり原作は描写が細やかで、かつドラマに無いエピソードもあり、面白かったです。 悲しい結末ではありますが、最後に無罪を勝ち取って(ですよね?)濡衣を晴らせたのが、唯一の救いです。
1投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログ考えさせられる内容でしたが、報われない終わり方で気分が沈みました。 冤罪をかけられた立場でも優しさを持ち続けた主人公だったから余計に。 ただ唯一の証人になりえた井尾由子に対して嫌悪感を持ってしまった。 事情は分かるんだけど、いくらなんでも卑怯すぎる。
1投稿日: 2025.01.04
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小説の「正体」読み終えた。映画はまだ観てないけど、どのように鏑木が各地に現れてくるのかが分かんなくて、身体的特徴や言動からこれが鏑木だよな?と疑いながら読んでいく感じがおもしろかった。目を背けたくなる残酷な結末だが、個人的にはこの形で納得だった #映画正体
0投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
映画化のタイミングでKindleアンリミテッドになっていたので読みました。 脱獄した死刑囚の少年の逃走先での出会いと別れを描いた作品です。一家3人を殺害した凶悪殺人犯の素顔は「お人好しで爽やかな青年」。逃走中の犯人に関わった人たちはみんな言う「人を殺したなんて信じられない」と。 読んでいくと割と早い段階で、この物語は殺人犯・鏑木慶一が逃走中の物語だと分かるわけですが、鏑木慶一の人柄に魅せられ、どんどん続きが読みたくなり、あっという間に読了。慶一が逃走先で友達とお酒を飲んだり、スポーツをしたり、ささやかな恋をしたり。そんな小さな幸せを逃げた先で語るのがなんとも切ない... 杜撰すぎる捜査の末の冤罪、理不尽すぎる最後。「あれ?鏑木慶一の両親とか親戚は?」というツッコミどころはありつつも、お釣りがくる面白さです。最近も袴田事件が冤罪だったというニュースがありましたが、本当にこのような冤罪が発生しているということに、ゾッとします。 本書では泣かなかったけど、映画の予告編観たら泣けました。
4投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
一家殺人事件を起こして、一度は逮捕されるが脱獄し未成年の日本全国指名手配犯として追われる身となった鏑木慶一。 逃亡劇を繰り返す中、その所々で鏑木慶一の素顔が炙り出されていく。その人物像が明らかになるにつれ、本当にこの人物がそんな残虐な事件を起こすことが出来るのか、、と読者は疑問を抱いていく。 物語の終盤では、冤罪であることを確信し、自らの潔白を証明するために残された命を削って生き抜いていくことが分かる。 あとがきにもあったが、鏑木慶一には生きていてほしかった。そして、冤罪の判決をその目で受けてほしかった。 がしかし、警察という日本の正の象徴を覆すことがどれほど困難であるのか、知識もコネクションもない未成年が冤罪を証明する事は皆無に等しいのではないか。 本人が出来なかったその冤罪の証明を、鏑木慶一という人間性を知る者たちが立ち上がり、尽力していく様に少し気持ちが救われた。 真相が知りたいのとドキドキハラハラ感に読み進める手が止まらなかった。読了後も鏑木慶一がしばらく頭から離れなかった。
13投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログ悪い夏、黒い糸、滅茶苦茶、正義の申し子… と染井さんの作品を何冊か読んできましたが、個人的には1番心に残る作品でした。 読みながら主人公鏑木を応援し、読了後はいい意味でなんとも言えない切ない、儚い感情になりました。 あとがきを読んで、この物語への理解が深まりました。これからも染井さんの作品を楽しみにしています!
9投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ逃亡劇。潜伏先それぞれでのエピソードが本の分厚さに繋がっている。ページ分の旅の先に待つものとその真相に心を貫かれて欲しい。あとがきグッと来た。
0投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ原作があると知らずにドラマを観てしまったけれど、結末がわかってもなお面白く、より考えさせられる小説でした。
0投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ死刑囚の逃亡生活を各章に記してあり、読み進めると各章が少しずつリンクしていることがわかります。彼の人となりを思うと本当に殺人犯?と感じました。それくらい思いやりがあって面倒みの良い青年という印象です。 終盤、死刑囚であった鏑木慶一は警察官に撃たれて命を奪われますが、逃亡生活の中で付き合いがあった人達の応援があって無罪だということが証明されました。 なんとも残酷な人生、心が痛くなると同時に しっかりしろよ、警察と叫びたくなった。
0投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ横浜流星主演の映画「正体」を観て、原作も読んでみたいと思い、数年ぶりに小説を読みました。 600ページ越えの分厚さにビビりながらも読み始めると、びっくりするほど入り込んでいき、あっという間に読み終わりました。 原作は細かいところまで書いてあって、 映画と照らし合わせながら楽しめた。 映画は原作の取捨選択が上手だったんだなと思った。 無駄がなく、コンパクトになってました。 その分、登場人物の心情がわかりやすかったです。 最後の展開は映画と違ったので少しびっくり。 あとがきを読んで納得しましたが。 また時間をおいて読みたい、そう思いました!
0投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ読み終わった今、率直に儚いという言葉が思い浮かびます。主人公の存在も、彼と関わる人間関係も、命も。そして司法の存在も。 彼の強さと優しさが柱にあって、それでこそ儚いと感じるんだと思います。 分厚い小説ですが、ストーリーに引き込まれてあっという間に読み終わりました。 関わる人達の目線からそれぞれ描かれてるのが良かったです。
4投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ死刑判決を受けている少年死刑囚「鏑木慶一」の人となりが、逃亡中に関わる人達によって、パズルのピースを合わせるように、読み手に少しずつ明らかになってゆきます。 こんな人がいたら、好きになっちゃいます‼️ 「正体」の題名の意味が後からじわっときます。
93投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ結構胸糞展開。 最後に法廷で勝ったのはいいが、当人が救われてなさすぎる泣 冤罪のあまりの理不尽さにムカムカしてしまいました。
2投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログボリュームのせいで後回しにしてたけどあっという間に読み終えました。もっと早く読めばよかったです。読み進めるほど主人公の人柄の良さが分かって、何事もなく生きていればどんな幸せな人生になるんだろうと思うと悲しくなりました。現実でも冤罪で苦しんでいる人がいるんだと思うと考えさせられました。
1投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ良かった。読み終わった後に実写映画も見たけど、小説が良い深みを出してくれてる。映画見るなら先に小説読むのがおすすめ。
3投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログこれは、、深い。 染井作品は悪い夏以来の2冊目。 悪い夏と同じくとんでもない悪さだけど、この作品は深淵が見える深さだった。。 冤罪の重みを感じるし、一気読み不可避。 読み終わった後もずーーんと考えられる作品。 読み応えしかないし袴田さんの冤罪事件と被ってしまった。 あとがきを読んで冤罪事件の重みを知って欲しいが為の結末だったと書いてあり、確かにと納得もできた。 でもハッピーエンドではないこの結末はとても考えさせられるし多くの人の感想を知りたい。
2投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ面白かったけど同じパターンの連続で少し物足りなさがあったかな…大きなどんでん返しあるかな?と変に期待してしまった。 ただ小説としては読みやすく、映画も機会があれば見てみたいと思った。 冤罪について考えさせられる作品。
0投稿日: 2025.01.01
powered by ブクログ冤罪。 最後の判決で少し救われるところはありますが、そこに主人公がいないことを想うとこの結末は理不尽さが際立ちなんとも言えない感じが残ります。 著者もあとがきで主人公に詫びたいと書いていたのも印象に残りました。
14投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ冤罪で無実を証明しようと脱獄し逃亡中に出会う人たちの視点から犯人にされた主人公を観て進むストーリー。各章ごとに人の温かさや冷たさ色んな感情と犯人かも知れないとわかってからの人々の心情変化は読んでいてわかりやすかった。最後久しぶりに小説で涙してしまった。ハッピーエンドではなくて冤罪をテーマにした作品だから仕方ないかも知れない。
5投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ600ページのボリュームでしたが、展開が気になって仕方なくあっという間に読み終わりました。 映画も観たいな。
1投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログハッピーエンド好きな自分にとって、うーんと思える内容だったけど、その感情の揺さぶり含めエンターテイメントとしては良かったと思う。ただ、逃亡先で出会った人たちの心を動かす、または問題を解決する。のような毎回同じような展開で先が読めてしまい、ページ数からして途中でだれてしまった。冤罪がテーマなのでしょうがないのかもしれないが、終盤までは登場人物の心情にうまく描写していたのに、終盤の権力不信を全面に押し出し、早々に幕を下ろした感があり、そこは残念だった。
0投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ同じようなパターンの繰り返しで、最後の展開も想像の域を超えず期待値は超えてこなかった。 それぞれの場面でサイドストーリーも展開されるのだが、そこも浅くて中途半端な印象。 600ページを越える分量であれば、さらに期待を裏切るような展開が欲しかった。 映画は見ていないが、本よりもそちらでサクッと楽しむ方が良いかもしれない。
6投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
これは、おすすめしたい本! ハッピーエンドではない! 主人公が最後死んでしまったのは残念だけど あとがきを読むと、冤罪がどれほど理不尽か 伝えたかったと書いてあって納得した。
0投稿日: 2024.12.30
powered by ブクログ映画もドラマ化もされて期待してたから、正直がっかり、 うん、で?て感じるところが多くて、読み終わったときえ、、、 残念でした
0投稿日: 2024.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
泣きました。 鏑木が使っていた偽名 遠藤、那須、袴田、久間、そして桜井 あぁ、そういうことだったのね。
2投稿日: 2024.12.28
powered by ブクログ小説にドラマ、そして映画と面白くないはずがない。 ストーリーとしては単調だが、結末が気になる。 そして、小説を読んでいる間なのに、映画やドラマが観たくなる。 横浜流星が主役とのことだが、小説を読んでも納得のキャスト。
0投稿日: 2024.12.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ほんとになんと言うか… 心が痛む。どうにか幸せに出来ないものか…って 悩んでしまうほど。それはきっと読み進める中で 鏑木さんの人柄に触れたからこそ。 鏑木さんが犯人に間違われてしまう状況は 私にもありえそうなほどごく普通の行動で。 バス乗り遅れるのも。知らない家だとしても 悲鳴が聞こえたら私だって助けてしまう。 だからこそ、疑われ何も悪くないのに 死刑判決されたり…殺される場面なんて 警察になんで?どうして…だってその人は 普通の高校生で…って説明したくなるほど いたたまれない気持ちになりました。 鏑木さんという人柄があったからこそ 各場面で出会うキャラクターは彼を助けようと 最後まで足掻いたんだと思います。 彼に生きて無罪になって普通に過ごして 逃亡する中で出逢った愛する人と結ばれて 生き続けて欲しかった。そう思うのは、まだ 彼が未来ある高校生だったからかもしれない。 だけどそう思わせてくれるほど、 死んで欲しくない。お願いだから無罪に。と 願うほど物語に入り込めたのは 染井先生の物語の作り方 終盤の鏑木さんが 居なくなった世界を書いてくれたからだと 私は、思います。 生きていくとは何か。人を疑うことを 間違えるとどうなるかを学んだ作品でした。 あと最後の最後で刑事さんたちに …おい、、、最低だな。ほんとに。 なんで己守るために無実の人殺してんだ… 鏑木さんは…ってなりました。ほんとに苦しい… あと井尾さん、自分責めないで欲しい…。 あんな愛する家族目の前で殺された上に 警察から圧かけられたら、そりゃ 自分の意見信じてられないよ…難しいよ。 というかあの話だと結局、無罪だと わかっていても鏑木さん殺してそうだし警察… むしろ井尾さんがほんとうの事、口にしても あの警察動いてくれなくて井尾さん傷つきそう。。 そんなことを今考えてしまいます。 あと、あとがき絶対、読むべき作品。 先生が思っていた冤罪の恐ろしさ。悲しさ。 やるせなさ。虚しくて理不尽か。 ちゃんと鏑木さんの死を持って 感じれました。そう思うと鏑木さんの死が あったからこそ刻まれたと思います。
2投稿日: 2024.12.25
powered by ブクログオーディブルで視聴 2作品目 めっちゃ良かった 映画は救われる世界で、良かったな 原作の雪山の世界好きやったな 主文〜震える
1投稿日: 2024.12.25
powered by ブクログ2024/12/24/Tue.(通販購入して届いた日) 2025/07/08/Tue.〜07/22/Tue.
0投稿日: 2024.12.25
powered by ブクログ500ページ超えの大作だが最後まで読み易かった。一家惨殺の犯人とされている鏑木が脱獄、それぞれ主人公の異なる4つの物語で構成され、どの主人公の職場にも脱獄して名前を変えた鏑木がいる。そしてどの物語でも鏑木は正義感の強い好青年として描かれ、読者は「あ、今回はこの人が鏑木だな」と気付くが、彼の人物像は脱獄犯のそれとは結び付かないものだ。どの物語でも彼が職場で受け入れられ、新しい人生が始まるのでは、という瞬間に脱獄犯とバレてしまい新たな居場所へ移っていく展開になっているところが悲しいところ。彼が犯人なら処刑されること、そうでないなら冤罪を勝ち取ることがハッピーエンドだが、結末はどちらでもありどちらでもないようなもので警察による検挙や法廷の効力を改めて考えさせられる内容だった。
1投稿日: 2024.12.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2024/12/24 読了 「主文──」 からの描写は、すごいと感じました。 鏑木慶一は無罪であることが、「無罪」という単語を使用していないのに読みとることができました。 立てこもり事件からどれぐらい経過しているのか、調査中に妨害されなかったのか、浩子と節枝の関係は修復してるのか、などなど本線以外の人物のその後はどうなっているのかも気になりました。 読んでいる最中、ベンゾーは、那須隆士は、袴田勲は、久間道慧は、桜井翔司は、困っている人に手を差し伸べていたのが、印象に残っています。 楽しく読み進めることができました!
0投稿日: 2024.12.24
powered by ブクログ4.8 脱走劇の中どんどん舞台が変わって行くのに慣れるまではちょっと我慢が必要だった。けどとても読みやすい文体で、特に後半は頭にスッと入ってきた。 何もしていない、むしろ勇敢で心優しい少年がこんなふうな結末を迎えたことが本当に悲しくて仕方がない。無実の罪、冤罪は実際この世に存在しているらしい。そしてその罪によって人が亡くなってしまうということの恐ろしさ。この本を読む前は死刑制度はあって当然だと思っていた。でも読後は、こんな悲しい死が生まれる可能性があるなら、人の判断ミスの重なりで尊い命が奪われることがあるのなら、考えなくてはならない制度だと思った。警察組織や裁判の実態をこの目で見ていないから想像の範囲になってしまうが、もしこんな押しつけや誘導で無実を死刑にしてしまうことがあるのなら、あまりに恐ろしすぎる。こういう物語を読むと、困ってる人が目の前にいても行動を躊躇してしまうかもしれない。現代でもそういうことがありふれている中で、鏑木慶一は困っている人を決して放って置かず勇気ある行動をし続けていた。かっこよすぎるよ。そして井尾さんの気持ちを浮かべたらどれだけ辛く自分を責めてきたか、苦しすぎる。自分のあやふやな記憶が一人の優しい少年を死に追いやってしまったかもしれない、そんなことを抱えながら生きて行くのはつらすぎる。救われてほしい。救われてほしい。だからこそ最後の法廷シーンは少し救われた気がした。 Audible
0投稿日: 2024.12.23
powered by ブクログ内容よりも、構成が個人的に凄く読み進めづらかった。登場人物の関係性が分かってきたところでバッサリ全然別の場所の別の人たちの話が始まるのは、集中力も読む気力もガッツリ削がれた。
0投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
電子で読んだのでそんなにボリュームのある本だとは知らなかったが、続きが気になって仕方なくてあっという間に読んでしまった。普段本をあまり読まないがそんな私でも好きなドラマより優先して仕事を放置してまで読みたいと思わせられた。それくらい本の構成、ストーリー、登場人物のキャラクター全てに惹かれた。 個人的にはハッピーエンド主義なので、最後の結末は悲しかったが、後書を読むとなるほど、納得した。確かにこの物語はこの終わり方であることによって世の中はそう甘くない、本当に無実の人が有罪になってしまうという現実があることを深く考えさせられた。 テンポ良く読めたのに実はちゃんと世の中の現実問題にフォーカスをあてて気づけばメッセージ性のあるストーリーにまんまと吸い込まれていた。脱帽です。 そういえばさいごにマイが桜井と鏑木が同一人物であることは夢の中で重なったのはちょっと不思議だったが、好意を寄せていたからよく観察していたことからなのか、、?あと物語の冒頭でマイが登場していたからキーパーソンということだったのか
0投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
凄く読みやすかった。もしこの小説が現実で、自分が登場人物の誰かであったら、間違いなく「鏑木慶一」という人物に惹かれていたと思うし、でも通報もしていたと思う。
0投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
殺人容疑で逮捕された死刑囚が脱獄して、潜伏先で色々な人と出会い、目撃者に辿り着き無実の証言をしてもらうための長い戦い。最後は銃殺されてしまう絶望的な終わり方で悲しかった。でもあとがきでの筆者の思いもわかった。
1投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログ電子で読んだのでボリュームには気づかず着手。だが紙媒体で読んでいたとしても、一気に読み終えただろう。幼い子どもを含む一家惨殺事件を起こした少年死刑囚・鏑木が脱獄し、それぞれの潜伏先で出会った人達を軸に鏑木の人格が浮き彫りにされていく。都合の良い証言は採用され、その逆は若年性アルツハイマーだからと軽視される。警察が間違えるなんてあってはならないので、結論ありきで進められる捜査に一般市民はどう抗えば良いのか途方に暮れる。児童養護施設の施設長の毅然とした態度が印象的。外野の声に惑わされず、自分が見聞きした物事からその人物を判断し、鏑木を信頼する施設長のように私もなりたい。
1投稿日: 2024.12.21
powered by ブクログこういう夢、見るわぁ、、、 この本には現世という名の地獄がパンパンに詰まっている。 クソ重い。なんてことだよ。まったく。 人間、一人一人に正体があって その正体って、追求、探求し続ける人ががいて初めて その正体に辿り着くのではないかなと思った。 見たい部分しか見えなくなりがちだし 自分で考えることを放棄しがちだけど やっぱ、話し合わないとね。 まぁ、そういう話でもないんだけど。本筋は。 世の中で、身の回りで、起こること全てを多角的に見れる様になれれば良いけど、そんな人間疲れちゃうもんね。 もしかしたら、この本には人間という生き物の正体が書かれてるのかもね。 はぁ、、本当に辛い本だ。 こんな本もあるんだね。
0投稿日: 2024.12.20
powered by ブクログ鏑木慶一が逃走中にどれだけ苦しく、恐怖の毎日を過ごしたのか、想像し辛くなった。 その状況下でも周りへの優しさを持ち続けた彼の生き方が、更に彼への感情移入を強めさせられた。 物語が伝えたいメッセージを考えるとラストはあれしかないのかも知れないが、やはり、ねえ、、 すごく良い小説です。でも鏑木君の人生を思うとやっぱり辛いです。 この作家の作品はとてもいいですね。
1投稿日: 2024.12.19
powered by ブクログ一家殺害事件の犯人である少年死刑囚が脱獄した。その逃亡生活がそこで青年と関わった人達の目線で語られていく。青年が何のために脱獄して逃亡生活を送っているのかはわからないまま物語は進んでいく。最後に青年が語る真実、警察と検察の傲慢さに憤りを感じた。3.8
2投稿日: 2024.12.19
powered by ブクログ読み終わった後、ふかーーーい溜め息。虚脱感。無力感。 全知全能の神が裁きをくだしているのではなく、人が人を裁いているという現実をまざまざ見せつけされた。そして、その不完全さに愕然とした。 容疑者はあくまで容疑がかかっている人、なのだけど、報道された時点で犯人とほぼイコールととらえられてしまう。私も頭ではわかっていても「この人が悪いことをしたんだろう」と決めつけてかかってる。そうやって失われた時間が、命が、たしかに存在するんだ。 読み進めているうちに彼が本当に罪を犯したのか、疑わしく思う自分がいた。各章で彼と関わり合う人が必ず現れる。その人の目線からだんだん彼の解像度が上がっていく感覚が新鮮だった。 物語が終盤に近づくにつれ「間違いであってほしい」という祈りに近い感情がわきあがってきた。逃げてほしい、というよりも「時間を巻き戻してあげたい」とその不条理さを嘆いていた。 この結末はやるせない。だからこそ、冤罪の惨さが伝わってくるのかもしれない。
1投稿日: 2024.12.19
powered by ブクログ理不尽すぎていたたまれない!あんなにいい青年が殺人犯と間違われるなんて。司法の過ち。捜査の過ち。実際に冤罪で人生を狂わされた人がいる。その人たちを想うと辛すぎる。 鏑木は逃亡中、後に無罪を勝ち取ってくれる友人や恋人たちに出会い、いい人間関係を築き上げたのは唯一の救いだったと思う。欲を言えば死んで欲しくなかった。生きていて欲しかった。
1投稿日: 2024.12.19
powered by ブクログオーディオブックで。 聴きやすく、誰がどのように何をしているか、イメージしやすくストレスなく物語に没頭できた。 後書きまで聞いて、悲しいと感じた部分を受け入れることができた。後書きまで含めてこの作品なのだと感じた。 残酷な物語であるけれど、同時に善の行いを誰かが見ていて、信じてくれる、受け止めてくれる。善の行いが繋がっていく。人の弱さと強さ、尊さが全編に染み込んだ作品だった。 「正義」のほうがふさわしいのかもしれないけど、「善」を感じた。良い作品だった。 映画化もドラマ化もしているみたいなので、おそらく原作とは異なる結末になっているのではと思っている。観てみたいな。良い作品だったと思うだけでなく、良かったねと涙したい。
0投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログ冤罪もだけど、なにより主人公が高校生だったこと、最後殺されてしまうことが1番切なかった。映画も良かった。裁判官、警察は自分の家族がもし無実の罪を着せられたらと一瞬一瞬考えながら仕事して欲しい。
1投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
原作を読む前にドラマと映画を見たので、どうしても読んでいて亀梨和也と横浜流星が脳裏に浮かんでしまう。やはり原作を読んでから映像を見ればよかったと思った。原作と映像化ではラストが違うけれど、作者も書かれているように、原作の方が冤罪の残酷さや悲しみがよりリアルに伝わってきた。
1投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログ映画化されると知り、とりあえずドラマを観て そして、原作を手にした。 鏑木慶一の人物像が活字からはなかなか読み取れなかった。 関わりのあった人たちを深掘りして 鏑木を浮かび上がらせるとしたら少し長いかな、と思う。 素の鏑木が伺えるのは やはり被害者の姉の井尾由子と接している時だろうか。 グループホーム『アオバ』で介護士として働く姿は いちばん鏑木慶一らしさが出ている気がした。 ラストはドラマ、映画とも違う。 作者の染井さんが描きたかった形なのだろうが ここでも、鏑木慶一の像が薄まってしまった。 少し残念。
0投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読んでいる最中に、映画化されていることを知った。染井さんの悪い夏が面白かっため読んでみたが、日本の冤罪事件関連のことも含めて色々考えてしまった。 私も鏑木という人物に惹かれた一人で、感情移入し、最期は胸が熱くなってしまった。生きて無罪を勝ち取る瞬間を見たかったが、筆者のあとがきを読むと納得。彼を巡って時間軸が行ったり来たりするが最終的に全て繋がるという構成も上手いと思った。
2投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログ佐久間宣行さんがラジオで本作の映画を紹介。 文量があるので自分の好きなシーンが省かれそうだが映画を観たいと思う本でした。
7投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログ何この結末... 作者のいうように『ただの娯楽本』にすぎないのだろうけど、胸が締め付けられるように苦しく、色々なことを考えさせられるお話。 鏑木慶一視点での作品を読んでみたい。 私の中で2024年No. 1の作品。
14投稿日: 2024.12.17
powered by ブクログ読み終わったあとに何とも言えない気持ちになる。 あとがきに作者よりの謝罪に涙した。 短い人生の中で主人公がひと時でも幸せな時間があった事を願います…
1投稿日: 2024.12.16
powered by ブクログある日突然、事実無根、やってもない冤罪で殺人犯としてのレッテルを貼られる人生 想像しただけで恐ろしい。 今までなら自分にはかけ離れてると思ってフィクションとして見ていたと思う。 しかし、袴田事件での無罪判決が出た後に読んだので、この日本でもこんなに人生を狂わされる現実が身近にあることを知ると、他人事としてではなく社会問題として捉えなければいけないなと思いました ハッピーエンドではなかった終わり方だったこそ、「死刑判決」「冤罪」について深く考える機会を与えられたのだと思います。
1投稿日: 2024.12.16
powered by ブクログ映画の宣伝を見ていて興味が湧き、とりあえず小説を手に取りました。 初めて、読んだ作家さんでしたが、読む手が止まらなくなりました。 すごく読みやすく、ひさびさに読書に没頭した日々でした。 この流れで映画も観に行こうとおもいます。
2投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログ☆4.8 なんというか、こんなに救いのないものかたり。 この年末に来て、今年一番のものかたりに巡り会えた。 モデルの事件があるのか、ないのか、あるいは今までの冤罪事件の犯人に仕立て上げられた人々の、救われない気持ちというのは、痛いくらいに感じるものかたりだった。無念。残念。というところか。 正体。 冤罪。 色々、考えさせられたものかたりである。 ただ、私は死刑は必要であると思っている。 これがあるから、被害者は僅かでも救われると信じたい。 凄まじいものかたりだった。
21投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログそれぞれの心のひだを細かく丁寧に描かれていて、面白い。どんどん読み進めて、読むために早く電車乗りたい!お昼休み一人になりたい!という日々を過ごしました。最後は賛否両論あると思います。この終わり方の意味も心から納得しています。出てきたキャラクター全てが印象的で愛着が湧いてしまっていたので、他のエンディングも見たかったので、ドラマ版はそこはありがたかったです。原作の面白さにはかなわないけれど。
0投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
袴田事件は生きているうちに、無罪判決が出て良かった。この本のように、死後に判明するケースも今まであったのでは?表に出ていなくても。
11投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログ人から信じてもらったことがない人間は、「信じる」の一言でこうも救われるものなのか。 身勝手な理由から真実が捻じ曲げられる。知らず知らずのうちに印象は植え付けられ、穿った見方をするようになってしまう。これは小説の中の世界だけではない。 今、自分が見ている他人の姿ってほんの側面に過ぎないのだな、と。物理的に対峙したところで、その人の正体はわからない。 600ページを超える文庫本を読むことに抵抗はあったが、読みやすく、どんどんとのめり込み、あっという間に読破した。 読み終えた数分後に映画を鑑賞した。物語への理解、そして感動が倍になった。 ぜひ小説、映画ともに楽しむべき作品である。出会えてよかった。
1投稿日: 2024.12.15
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映画鑑賞後に読了 鏑木の幕引きがせつないのに突然すぎて苦しかった… 世界を信じた鏑木にとってあまりにも… 映画のハッピーエンドもいいけど、現実社会を思うと残酷で救いようのない世界っていうのも分からなくもないなぁ 登場人物の中で、和也と初めに出会ったからこそ鏑木は希望を持てたのもあったのかなって感じた
0投稿日: 2024.12.14
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18歳の時、2歳の子供を含む家族3人を惨殺した死刑囚が脱獄した。 様々な場所で働きつつ、逃亡を続ける鏑木とそこで出会う人々との交流がラストに繋がっていく。 警察は逃亡されただけでも失態なのに、その人物が冤罪かもしれないと恐れるあまり、鏑木を黙らせるしかなかったのかもしれない。 裁判で無実が証明されても、何人かの警察官が処罰を受けるだけだろう。鏑木の人生が残念でならない。
0投稿日: 2024.12.14
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脱獄した少年死刑囚に翻弄される人々。テンポよく物語が進んでいき、興味深くラストまで読み進めることが出来た。ただ、徐々に明かされる真相にトーンダウン。警察、司法、刑務官があまりにも無能で、非現実的。冤罪はあるのだろうけど、少年の死刑という重大事案にあたるほぼ全ての機関がもれなく、重大な過失をおかしていることのほうが気になった。1000万を手にした四方田が、鏑木の無実をはらす活動費にあててくれることを願う。吉田修一の『怒り』のほうが好き。
0投稿日: 2024.12.13
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映画が公開されて話題になっているので、「こういうのって、原作の方がおもしろいはず!」と思って小説を先に読みました。映画も見る予定です。 結論から言うと、いやー、違うかも!?結末を知らないで先に映画を観た方が良かったかも!?←どっちやねん笑って感じです。もちろん、小説もすごく良かったです。結末が分からなくて、ドキドキして、入り込みました。 ↓以下、ネタバレ注意です。 映画の予告とかで、だいたい予測はつくけど、夫婦と幼い子供を刃物で刺し殺した少年死刑囚が脱獄し、正体を隠して全国を転々とし、その時々でいろいろな人と出会うストーリー。彼と関わった人物は、彼を「良い人」だと認識する。 彼が本当に罪を犯したのかどうかは、最後までなかなか分からない。 工事現場の日雇い労働者、フリーライターの女性、介護職員など、色々な立場の人が彼とひと時を共にするのだけど、どのキャラも魅力的。特に、傷心のフリーライターの女性は良かった。 夢をあきらめて田舎の実家に帰り、介護施設のパートで働き始めた少女が、彼に淡い恋心を抱くも、彼は「自分には好きな人がいる」と言う。おそらくフリーライターの女性のことなのね。彼女は、家に警察が踏み込んできたとき、彼が殺人犯かもしれないと心の中で思っていながらも、つい「逃げて!」と叫んでしまう。彼は4階のベランダから飛び降りて逃げおおせる。この後のことは小説には描かれていないのだけど、このあと彼女はどうなるのだろう?ただでさえ、色々なことに傷ついているのに、メディアで「あの殺人犯をかくまった女性!」とか取り上げられたり、SNSで実名をさらされたり、親や上司や友人から責められたりするのではないか?と想像をめぐらして悲しくなった。 その女性が、強い姿でもう一度描かれたので嬉しかった。 結末はあまりにも切なすぎる。 文庫本では「作者あとがき」に、著者がなぜこんな切ない幕切れにしたのかが書いてあって心打たれた。 世の中に実際に「冤罪」があるということ。確定死刑囚がその後冤罪を証明できた事案もある。検察が有罪と決めつけて捜査する実態。そして日本では、死刑制度の是非についてほとんど議論が進んでいないこと。 最近は被害者が裁判に参加できる制度も進み、これ自体は良いことなのだが、刑は厳罰化が進む傾向にある。裁判員裁判でも、加害者よりは被害者に同調してしまう傾向にあり、量刑は重くなりがちである。 冤罪で、印象だけで重い刑が科せられ、それが冤罪だったら?誰一人信じてくれる人がいない中で、闘い続けることなんてできる? 他の多くの読者同様、私も、もう少しハッピーエンドにしてほしかった。映画楽しみ。
11投稿日: 2024.12.13
powered by ブクログちょうど映画化された同作品が宣伝されているのでなおさら興味をもって読んだ。 ミステリー要素はさほどないが主人公である鏑木慶一にとってのハッピーエンドを望んだがなかなかそうはならないのが切ない。 今年は袴田事件を担当した裁判官を取材したルポルタージュを読んだり、他の冤罪の小説を読んだりして、冤罪について考えさせられた1年の締めくくりとして没入した作品だった。
0投稿日: 2024.12.12
powered by ブクログ約600ページもあるストーリーを飽きずに読めるかな?と最初読み始める前は思いましたが、臨場感のある展開で、どうなるの?あなたは犯人なの?と登場人物たちと同じ気持ちで最後まで一気に読み切りました。 彼の正体が気になるのはもちろんのこと、さまざまな事情を抱えている登場人物たちの生きている環境は現代抱えている問題や課題に直面しており、考えさせられました。
0投稿日: 2024.12.12
powered by ブクログ映画を観る前に原作をと思い読みました。 めちゃくちゃ深かった。とにかく感情を大きく揺さぶられました。読み終わってもう1日たつけど、余韻から抜け出せないでいます。 考えさせられるし、涙が出てしまう。 ただの逃亡劇ではなく、人の心に訴えかける作品で、かなりよかったです。 一家3人を殺害した犯人として18歳の鏑木慶一が逮捕される。そして、死刑判決を言い渡される。そして、脱獄。 脱獄後、5ヵ所で全く別の人間として、暮らしていく。しかし、指名手配犯である鏑木は、徐々に追い詰められていく。 彼の主張とは?それを誰かきちんと聞いてくれたのか?そして、行き着く先とは。 映画観たいけど、泣きそうで悩みます… 追記→映画見てきました!見てよかったです。原作読まれた方は、映画を見れるとより深い感動を味わえると思います。
37投稿日: 2024.12.11
powered by ブクログだいたい想像がつく展開なんだけれども、面白い! 真相の意外性ではなく、出会った人たちの気持ちの揺れがきちんと描けていて、狙い通りに感動してしまった。 映画化されたので、せっかく映画を観る前に読んだのだが、肝心の映画は、映画版のネタバレをもろに読んでしまいショックを受ける。楽しみが少し減ってしまった…。
6投稿日: 2024.12.10
powered by ブクログ介護のアルバイトの桜井、工事現場で働くベンゾーなど、この物語には5人の異なる、彼ら自身の職業に決して相応しいとは言えない男達が出てくる。 彼らは皆、最初は周囲の反感を買ったり、疑いの目を向けられたりするけれど、実際には優しく他人思いの人物でどこか憎めない男である。彼らは、最終的には周囲や一部の人からの絶大な信頼を受けるのである。しかし、彼らは全員ある時にふっと姿を消すのだ。 彼らの第三者からの紹介とともに、脱走犯・鏑木のニュースが国民の心を揺さぶる様子が描かれている。 この本は司法の重要性や、死刑制度の見直しを読者に対して物語を通して訴えていた。今まで死刑制度に対して賛成だったが、この物語の鏑木の優しさに触れ、考え直すようになった。 終わり方がもやっとする感じだったので、星を一つ減らした次第である。
2投稿日: 2024.12.10
powered by ブクログ原作を読まずに映画から観たので、 原作のラストは胸が苦しかった。 だけど原作ではより一層、 "鏑木慶一"の魅力が存分にわかった。 逃亡中に出逢った鏑木の周りの人の温かさも。 一気に読んでしまいました。 何度でも読みたい。 原作が好きな人は映画もぜひ観てほしいです! 原作も映画も含めて わたしはこの作品が大好きです( ᎔ᴛ ⩊ ᴛ᎔ )
1投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログ久しぶりにどっぷりハマりました。映画もぜひ観てみたい。(この内容,2時間に収まってるのかな?) 日本の死刑制度について、考えさせられました。
3投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログ映画の公開日が決まったタイミングぐらいで読み、劇場でも公開され始めた今読み終わりました。素晴らしい小説でした。鏑木の現地での変装技術と賢さを遺憾無く発揮しており、魅了されます。 死刑制度を初めとした司法制度や政治に関しても訴えかけるような物語で関わった一人一人の心情と行動による最後の結末は素晴らしいものがあります。
0投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログ逃げるものを追ってしまうのは動物の習性なのか? 昔から逃走もののドラマなどは人気が出た 今作も一度捕まり、犯人が逃走するという話ではあるが、世の中の無情と矛盾を感じる作品だ 名前を変え、印象を変え、逃走する主人公 彼は本当に殺人犯なのか? 逃走先での彼はとても温厚で聡明で親切である ラストは冤罪について、警察と司法に意見しているが作中では警察、司法のシステムについて詳しく描かれている訳ではない 警察の威信にかけて…的なドラマの流れ上、軽く描かれているのみだ それでも読むうちに作品に入り込み、目が離せなくなる 一気読み必至の一冊なのは間違いない
2投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログ後味はなんとも切ないけれど、静かで控えめながら行く先々で信頼を得ていく鏑木の魅力。ただ確かに巧妙に私たちを騙して良心に漬け込んでくる知能犯もいるだろうし、手放しに信じることがなかなかできないでいた舞は1番若いのに1番賢いと思った。すぐに本の世界に引き込んでくれるナチュラルな文体、最後まで楽しく読ませていただきました!
0投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
脱獄した死刑囚の正体。 こんなこというとだしそもそも小説を読み進めば自然と「ああ真犯人ではないんだろうな」とは分かる。逃げ続ける理由と、そこで出会う人々との出来事。 著者があとがきで語っていたように、読者からは「そりゃないよ」と言われるも著者としては「あれしかなかった」という鏑木の最期。もちろん哀しかったけど、そのあとの喫茶店に集まったメンバーが胸アツだった。 こんな現実があるかもしれないことは、胸に刻んで。
1投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログただの逃亡劇ではない。 埼玉県の住宅地で惨殺された父母と2歳の子ども。死刑判決を受けた当時18歳の鏑木慶一(かぶらぎ)が1年半後に脱獄した! 名前を変え、転々と生活をする鏑木。建設現場、ネットニュース配信サービス、スキー場の旅館、パン工場、グループホーム。 そこで鏑木と出会った人たちのドラマが読みどころ! 鏑木から救われ、自分を立て直していくのだ。物語は終盤に向かい祈るような気持ちが募った。 どうか、どうか…。面白かった、夢中になった、祈った。
15投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログある目的を持って脱獄した犯人の生活が綴られる。彼の行動に、勘のいい読者なら早々分かる目的が、鈍くて疑り深い私には分からず、ドキドキしながら読み終えた。 この作品と主人公に寄せる強い思いを後書きで知り、より好きになった。
0投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
とても面白く、本が苦手な私でもサクサク読み進めることが出来た。 多くの読者が感じている事だとは思うが、死なせないでほしかった。ただそれだけ。
0投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログ鏑木圭一は、悲鳴を聞いて民家に入って救命措置をしただけの読書好きな優しい青年 工事現場 在宅ライター スキー場 新興宗教の秘密をあばく 介護施設の櫻井さん 無罪
0投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
結末があまりにも悲しくて泣きそうになった。 鏑木慶一があまりにも不運で可哀想すぎる。 冤罪って恐ろしい。 彼には生きて無罪を勝ち取って欲しかった。 だけど、残酷な結末だからこそ記憶に残るし読後の余韻がある。
1投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログ冤罪に立ち向かう脱獄犯、鏑木慶一。彼の潜伏する職場にも闇が覆っていた。パワハラ、モラハラ、冤罪、詐欺、社会問題はどんなところにも蔓延している。 目の届かない小さなコミュニティにははびこっており我慢を強いられている人らに共感する。 渡辺淳二 この人のエピソードが特に刺さった。冤罪とデジタルタトゥー。現実と隣り合わせで誰にでも襲ってくる新たな現代犯罪。 一生懸命生きている人間が面白半分でネットで吊り上げられ人生を狂わされる。どんなけ訴えかけても信じてもらえない悔しさが伝わるが、慶一の優しさに救われる。最後亜美にも信じてもらえたのも救い。 大きな体勢の面子を保つ為に、個を犠牲にしようとする警察体勢に憤る。今の世の中警察だけではないけど。そんな圧力の中、集まり戦うメンバーたち。裁判所での全員の咆哮が本当に響いてきそうだった。届け!
27投稿日: 2024.12.04
powered by ブクログ死刑判決を受けた少年・鏑木慶一が拘置所から脱走し、逃亡を続けるーというお話です。 物語は鏑木の視点で進むのではなく、逃亡先で彼と出会った人達の視点から語られています。 目の前にいる人物は少年死刑囚なのかー。彼は本当に人を殺したのかー。 鏑木と接する人達の困惑や葛藤がリアルに伝わり、こちらも手に汗握りながら読み進めました。 染井為人さんの作品はいくつか読んだことがありますが、本作が一番好きだと感じました。 Netflixでドラマが配信されたり、映画化もされたりと話題の作品です。 確かにこれはぜひ動く鏑木を観てみたい…! 実写版の方も楽しませてもらおうと思います。
28投稿日: 2024.12.04
powered by ブクログ実際の事件から得たであろう着想を軽やかにエンタメ小説に昇華させつつ、最後に読み手に突き付けられるのは紛れもなく目を背けてはならない現実で。あとがきの最後に著者はあのように書いているけど、自分はこれ以上なく誠実な結末だと感じました。映画も出来るだけ早く観よう。
1投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログ面白かった。 殺人を犯し、死刑を宣告された20歳そこそこの若者が脱獄し、逃亡し、名前や顔を変えて、潜伏生活を送る。 何度も正体がばれて、捕まりそうになるのが、非常にスリリングである。 そこまでして、逃亡する若者には、ひとつの目的があった! 潜伏生活で彼の身近にいることになった人は、一様に彼の人柄に惚れ込んでしまう。読んでいる方も、捕まらないでー!って思ってしまうのだ。 ありがちなあらすじではあるが、転々とする潜伏先ごとに、一つの完成された物語があり、そのいくつかの物語が、逃亡する彼によって繋がっていて、読み応えがあった。
6投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログこれ、横浜流星しかないやん! 映画化で話題の原作。 殺人犯が逃亡し、 すんでの所で警察から逃げ、 他人になりすまして生活し、 また、捕まりそうになり。 このあたりの設定は 実話にも映画にもある話だが、 主人公が、とにかく優しく賢い。 読んでいて、どんどん好きになっていく。 しかも、イメージは横浜流星だし。 染井さんと流星君は旧知の仲。 絶対イメージしながら書いてたに違いない。 なんとなくラストは よめてしまったけど、 それでも一気読みさせ、 最後泣かせてくれる、染井さんの力量よ! 普段、本を読まない方でも 600ページ、すんなり読めちゃうんじゃないかな? 読後感スッキリのエンタメ小説だが、 袴田さんのことが浮かんで、 社会的な意味合いや 染井さんの想いを強く感じることができた。
17投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読了してから映画版を観に行くはずが間に合わず、半分ほど読んだところで鑑賞しました。 620頁弱の本作の登場人物を上手く組み合わせた映画化でした。原作よりもさらに時代が新しく、映画版では動画の中継によって真相が明らかになります。 いとも簡単に冤罪を作る警察。面会に来た又貫から「なぜ逃げたか」と問われたときの鏑木の答え。涙がこぼれました。 原作では鏑木は殺されてしまうけれど、生きて戦う映画版のほうがより感動的ではあります。現実には前者になる可能性のほうが高いと思うと悲しい。 というわけでほぼ映画の感想ですみません。 映画の感想はこちら→https://yonayonacinema.xyz/eiga-sa-2024-12-09/
2投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログ624P 染井為人(そめい・ためひと) 1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。今作は単行本刊行時に読書メーター注目本ランキング1位を獲得し、映像化も決まっている。他の著書に『正義の申し子』『震える天秤』『海神』がある。 正体 (光文社文庫) by 染井 為人 「福澤諭吉ですか」 「人間はみんな平等なんだろ」 「大枠でいえば。厳密には少し意味合いが異なるようですが」 「そうなのか」 「ええ」 「ふうん」短くなった煙草を吸いつける。「ベンゾー。おまえは人が平等だと思うか」 「まったく思いません」 即答された。 そうした夜を過ごす中で、和也は自分の無知を痛感していた。また、不思議な話だが、知識を得ていくことに少しだけ喜びも覚えていた。知らないことだらけの世の中がぼんやりと見えてきた、と言っては大げさだが、自分は思っていたほど頭が悪くないんじゃないかという自尊心のようなものが芽生えてきたのである。知らなかったものを知ることは和也にとって楽しい作業だった。 たとえば、拘置所と刑務所の違いだ。死刑囚は拘置所の死刑囚房に収監されているのだが、和也は刑務所にいるとばかり思っていた。また、拘置所における死刑囚の生活があまりに自由であることには心底驚かされた。本や雑誌も読めるし、テレビもラジオも聴ける。買い物だってできるというのだから、これならよっぽどシャバにいるホームレスの方が悲惨な生活をしている。 その代償として、納得のいく高給を得ている。去年の年収は九百万だった。今年はさらに上振れるだろう。身近な友人たちに自分より稼いでいる者はいない。が、彼女たちは沙耶香の持たないものを持っていた。家庭。 沙耶香は今年で三十五歳になる。ここ数年は友人たちの結婚式に参列することも減ってきた。飲みに行くのは仕事の同僚ばかりだ。 わたしには仕事がある、と割り切れるほど、沙耶香はキャリアウーマン志向ではなかった。人並みの幸せを求める、平凡な女だった。 業務を管理するチャットワークアプリを覗くと、今月から入った新人の男性ライターから一件、原稿が届いていた。中身は新作コスメを使用した感想をブログ形式で 綴ったものだ。こんなものを男が書いていると誰が思うだろう。冷静に考えるとゾッとする話である。 記事自体は可もなく不可もなくの出来だった。ブログにしては文体が硬いし、言葉選びもちょっとダサい。だが男であることと、新人であることを思えば上出来だろう。マストワードも指定回数分使っているし、納期だってこうして守ってくれているのだから、褒めてやってもいい。 「ウッソ。もう別れたの?」 思いのほか大きい声が出てしまい、沙耶香はさっと周囲を見回した。会社からほど近い、このイタリアンレストランは騒々しい渋谷にあって店内がいつも静かなのだ。 対面の花凜は澄ました顔でワインを傾けている。 二十九歳のこの後輩から、美大講師の男と付き合うことになったと報告があったのはたしか先月末だったはずだ。 「あんた、さすがに見切りつけるの早過ぎない? 高校生じゃあるまいし」 花凜はその前の彼氏も三ヶ月を待たずして別れているのである。 「先輩、逆ですよ逆。この歳だからこそ、合わないと思ったらすぐ次いかないと」 「にしたって。で、なんで別れたの?」 「先週の休みに彼に誘われて映画を観に行ったんですよ。そしたらこれが超つまんなくて、なんていうか妙に観念的で、メッセージ性みたいなのが強過ぎたんですよね。でも彼は素晴らしい映画だって感動してて」 「ああ、そっか。でも別れて正解だったと思いますよ。借金を隠してたなんて許せないですよね」 半年前、八年付き合っていた男に多額の借金があることがわかり、別れる決断をした――という理由を花凜含め、周囲には話していた。実際はちがう。付き合っていた十歳年上の男には妻子があった。不倫だったのだ。 男が既婚者だと知ったのは交際を始めてから二年後のことだった。知ったときは愕然とした。怒り狂った。そんなにも長く気がつかなかった自分はあまりに愚か者だと思った。 だが、それからも男の「妻とは別れる」という言葉を信じ、その後六年、計八年間も交際を続けたのだから救いようがない。 「いいえ。そんなことは断じて」 沙耶香は腹から笑い声を上げた。このしゃべり口調が愉快で仕方ない。 こんな夜は酒が進む。ただし、腕時計には小まめに目を落としていた。大人として終電は気にかけてあげないとならない。相模大野なら零時に店を出れば帰れるだろう。 もっとも、この青年の住処が本当にそこにあるのか怪しいものだが。それも今なら訊けそうだった。 「ねえ那須くん。あなた本当はお家ないんじゃない」 布団の用意はあった。花凜がたまに泊まりに来るので以前彼女のために買ったものだ。あの布団を花凜以外に使用した人間はいない。不倫の男は今沙耶香が横たわっているこのダブルベッドで一緒に眠っていた。思い出が詰まったベッド。買い換えようかと考えたこともある。だが、できなかった。それどころか、この家には彼が残していったアメニティグッズや、下着類もまだ置いてある。 思えばこの賃貸マンションも、男との生活のために借りたものだった。家賃は共益費別の十八万。今は無理なく払えるが、当時の収入からすれば 贅沢 過ぎる1LDKだった。週に一度しかやってこない男のために、背伸びして借りたのだ。 そんな巣に、他の男がやってきた。 花凜はこう見えて、 玉の輿 狙いの女ではなかった。もちろん相手の年収が自分より下なのは嫌らしいが、それも男性側の立場を考え、気後れさせては 可哀想 だからと以前話していた。ふつうの仕事をしていて、ちゃんと自分を愛してくれる人ならそれでいいのだそうだ。 「別に白馬に乗った王子様を待ってるわけじゃないんだけどなあ」 そんなことをぼやき、光った唇で麺をツルツルと啜った。 白馬に乗った王子様、か――。 那須のイメージはそれに近い。若手のイケメン俳優と紹介されれば、素直に納得できる容姿だ。もっとも本当の那須は定職のない、ホームレスである。 それでもやっぱり、沙耶香にとっては那須は王子様かもしれない。 そして、昨夜は那須と初めて一緒に眠った。沙耶香からそう頼んだのだ。ベッドの中でふたりに何かがあったわけではない。手すら繫いでもいない。 ただ、彼のぬくもりを感じ取れるだけで沙耶香は眠りにつくことができた。最悪な一日に終わりを告げることができた。 「今週末、久しぶりに先輩の家に泊まりに行こうかなあ」 先に食べ終えた花凜がそんなことを言った。 「今週は……ダメ」 「どうして?」 焦った。その理由を持ち合わせていない。 「怪しい」花凜が懐疑的な目を寄越した。「最近やたら帰るのが早いし、あたしとの飲みも断るし、家にも来たらダメだという。これはどう考えても怪しいですな。お嬢さん」 「ただね、いくら便利になれど豊かさが比例するかといったらそうではないの。ここでいう豊かさとは心の話ね。目を見開いて世間をごらんなさい。いくつもの凄惨な事件が起きているでしょう。世界のあちこちで今も争いが起きているでしょう。こんなにも豊かで便利な世の中なのに不思議な話だよね。つまりね、真の豊かさや幸福といったものは経済を土台に考えていてはいつまで経っても手にできないわけ。それとは別の次元で考えられる人のみが幸せになれるの。それがいつも言っている解脱するということなんだけどね」 二人は紹介者として信代の名前を書かされていた。ちなみにこれはのちに知ったことだが、知り合いを二名入会させるとその紹介者は会費が一年間無料になるらしい。これで信代が勧誘に熱心な理由がわかった。 もっとも、悪いことではないだろう。救心会はいいところなのだから。 節枝は自分の偏見を恥じた。新興宗教というものはその名を借りたインチキビジネスだとばかり思っていた。それにのめり込む者は何かにすがりたいだけの弱者たちなのだと差別的な視点を持っていた。無知というのは愚かしい。 救心会はどの角度から見ても営利目的ではない。純粋に迷える人々を正しい仏道へと導きたいのだ。 けれど両親みたいな夫婦は理想的だ。将来、我が家のような家庭を舞も築きたい。まだまだ子供だけど、法的に結婚することはできるのだ。赤ちゃんだっていつか欲しいし、犬だって飼いたい。もっともそれはうんと遠い未来のことだろう。
4投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
冤罪の残酷さをひたすらに描写していた。ヒトは追い詰められた時、何かに責任を背負わせたい生き物だと思った。無罪にも関わらず誰も話を聞いてくれない鏑木の心情を想うと凄く苦しい。1年程に及ぶ脱獄期間において、出会った人々により鏑木が少しでも救われていたら良いなと只々想う。
1投稿日: 2024.11.30
powered by ブクログ何も聞こえなくなるほどに夢中になって読み切った。ため息と涙が出そうになる本でした。この本に出会えた事に感謝します。
2投稿日: 2024.11.30
powered by ブクログとても読みやすくて面白かった! サスペンスで途中に安っぽい話とか表現が出てくると一気に冷めてしまうことがあるんだけど、そういったことが全然なく読み終えられた! 解像度高く自然に想像できるリアルな人物描写も良かった。ヒラさんが特に好き
4投稿日: 2024.11.28
powered by ブクログ映画の予告をみて、おもしろそうなので本を買って読んでみました。 染井為人さんの作品を読むのは2作目。 以前読んだものもとても読みやすく没頭できて暇があれば手に取って読んでいました。 〖正体〗は600頁以上ある分厚い本でしたが、すらすらと読み進められて、気になるのでやめ時が分からなくなるほど夢中でした。(2日で読了) 死刑囚の鏑木慶一 視点ではなく 彼が逃亡生活を送っているときに関わってきた第三者視点でどんどん話が展開されていきます。 そして最後に彼視点になりますが、それは数ページで殆どが彼と関わってきた第三者からみた視点です。 600頁もあるのに、、、それがまた新鮮でした! ネタバレになるのであまりかけないですが、話の展開的に映画をみたい!とならなくなりました……。 重いです………。 フィクションですが、こういう事は現実には多々起きていると思うと色々考えさせられます。 けど明後日11月29日公開に合わせて読んだので観に行きます(いくんかーい)
6投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
袴田事件。やっと無罪を勝ち取った。でも、無罪判決まで要した時間は58年。その時間を誰が戻してくれるのだろうか。 今年、手賀沼の花火大会を見た。あの爆音の向こうで、発砲音が本当に紛れていたらと考えるとぞくっとする。 初めての染井為人さん。実は体調が悪かった時、さわりの部分しか読めずに苦しくなって、二度目のトライだった。 脱獄犯はどこに行っても、優しく誠実だった。逃げ切ってくれと応援したくなるほど。 結末は、救いがなかった。亡くなってから名誉が回復されたとしても、命あってのものだから。切なすぎる。 検察、司法の闇、冤罪の惨さが強調されたという点ではよかったかもしれない。 でも、彼を救いたかった。残念で残念でならない。彼とふれあった人の心にあったかいものが残ったことだけが救いだ。
122投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログ普段本を読まないのでボリューム的に最後まで読めるか心配でしたが、1日の読むペースを自ら抑えるほど、とても読みやすい作品でした。 文書が分かりやすく、それぞれのキャラクターが立っていて、頭の中でイメージしやすかったです。 あとがきがあって良かった。。 フィクションで良かった。。
7投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログ600ページ越えの作品でも 飽きずに夢中に読み終わりました! まるで短編集のようにシーンが移り変わるも 脱獄犯『鏑木』と関わった人達の変化が おもしろく、結末はとても印象的なものでした。 実際に起こったことではないけれど、同じような事は起きているかもしれない現実。 切なくやりきれない思いもあるが、目を背けてはいけないと思いました。
4投稿日: 2024.11.26
powered by ブクログこの厚みなのに一気に読了。 少年脱獄犯鏑木が関わる人から見た事件の真相とは。 鏑木の視点はほぼなく、彼がどういう人間かを関わる人と一緒に私も噛み締めるように読みました。 ラストの重み。自分の気持ち、信じるということ。軽い気持ちで手に取ったのに、胸が痛いほど心に残る。
21投稿日: 2024.11.25
