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海と毒薬(新潮文庫)
海と毒薬(新潮文庫)
遠藤周作/新潮社
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総合評価

577件)
3.9
148
217
141
13
5
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『人の心の弱さか、時代背景か、そうさせたものは…』 終戦間際、米軍捕虜の生体解剖事件を元にした作品。 なぜ、こんな事件が? 人の心と当時の雰囲気を丁寧に描き、問いかける。 何が正しいのかわからない、混沌とした今だからこそ読みたい一冊!ん〜、考えさせられる… ウクライナでの残虐行為。 決して許されるものではないが、似たような心理が働くのだろうか?

    0
    投稿日: 2022.10.26
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    海は自分の気持ち?世間の目?運命? 毒薬は医者?人間? 罪と罰。罪ってなんだろう。罰ってなんだろう。 ドストを読んだら、解決するのか。 「沈黙」がおもろしくて、読んでみました。

    1
    投稿日: 2022.08.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    想像力の旅に出たくて読んでみた! (新潮文庫の100冊参照) うん。普通にキュンタのしおりが欲しかった…笑! 遠藤周作、なんとなく名前は知ってて 以前、蚤と爆弾を読んだこともあって 戦争の小説に興味あったから読んでみることに。 なんだろう、このどろっとした感じ。 登場人物みんなどろっとしてる。 夏場に読んだからなのか、なんだか気持ち悪い。 グロいのかなって思ったけど、案外そうでもない。 戦争中の悪いところがしっかり描かれてた。 それにしても、戸田が本当に苦手で怖かった。 平気でそういうことができちゃう。 わたしにはまだ理解できない。 この小説だけじゃなくて実際にもいるんだよね、 こういう人。ちゃんと読んだことはないんだけど、彼女は頭が悪いからを思い出しちゃった。

    3
    投稿日: 2022.08.10
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    正直に言うと今年のキュンタしおりが欲しくて、「新潮文庫でまだ読んだことなくて持ってないやつ」と平積みされた中からとっさに買った1冊だった。これを読んだのは偶然だったけれど、この時代、この季節に読んで本当に良かったと思う。 第二次世界大戦末期の、実際に起こった事件を元にした小説。戦後のある街に越してきた「私」が日常をつむぐターンと、例の事件が起きた病棟でのシーンと、時の流れが逆転して描写される。だが、それによって、より仄暗い人間の動きに引き込まれた。 残虐な行いをした者が、当たり前のように日常を送る。平凡な毎日の隙間に潜む薄暗い気配。全編を通して、勝呂という人間はある意味、日本人の定形パターンとして表れていたのかもしれない。様々な表情を見せる、海鳴りがずっと心に残る。 この小説を再読するなら、またお盆前の時期にしたいと感じた。

    5
    投稿日: 2022.07.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    その事件に携わった人の一人一人の"今まで"が鮮明に描かれる。そしてそれを全て把握した上で事件が進む。 私たちはどの目線でこの作品を追うのか。一個人として教訓として追うのか。それとも感情を育む為に追うのか。 難題を押し掛けられる作品だった。

    0
    投稿日: 2022.07.27
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    他人の眼、社会の罰と対比するように神さまの罰が書かれているように見えるが、どちらも判断軸が外にあるという点では似ているのではないだろうか。良心の呵責とは、もっと内からくるものな気がする。しかし、その「内」にも社会=外は影響を及ぼしている。つまり、良心は個人ではなく集団が作っている面もある。どこまでが個人の罪でどこからが集団の罪なのかと考えた。

    1
    投稿日: 2022.07.25
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    純粋に患者に向き合う医者ほど常に 罪と罰の狭間に揺れうごめき、葛藤し 反面 功名心、出世欲の渦中に誘われるのだろう。戦争がそれを正当化し、擁護する。 倫理観などは、平和の時代だから問われるのかも知れない。

    0
    投稿日: 2022.07.12
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    遠藤周作の代表作として著名な作品。 太平洋戦争下で捕虜として捉えられた米国兵が、臨床実験の被験者として使用されるという、実在の事件が元となって書かれています。 遠藤周作らしい「人間の価値観、倫理観」に問いかける内容で、ショッキングな展開ですが、目をそらすことができないものがあります。 「あなたならどうするか」、倫理的には誤っていることはわかっていても拒否することができるのか、拒否できるなら根拠はどこにあるのか、考えさせる内容となっています。 実在の事件を題材にしていますが、ノンフィクション作品ではなく、題材となった事件と本書内の出来事に関連は無いです。 話は、西松原の住宅地に引っ越してきた男が語り部となって始まります。 持病の治療のため、近所の医師の元を訪れたその男性は、腕が非常に良い医師「勝呂」の指に恐怖感を覚える。 やがて男性は、勝呂がかつて、ある事件の関連人物であることを知ります。 以降は医師・勝呂が主人公となって、過去の事件について語ります。 その事件こそが、戦時中に行われた人を人として扱わない生体解剖事件で、彼はその手術に参加することとなってしまいます。 勝呂という人間は特殊な価値観を持っているわけではない一般的な人物で、その手術が非人道的であることを知っていながら参加してしまったのは"流れ"によるものでした。 彼の行動は、優柔不断と言えなくもないのですが、戦時中という特殊な状況下でそれが反道徳的であると断言する確固たる何かを持たない日本人は、その行動を批判することはできないのではないかと考えます。 遠藤周作氏が本作に込めたテーマはまさにそこで、宗教を持たない日本人は自責の念に駆られながらも、手術室に立つのではないかとしています。 キリスト教徒である遠藤周作の目線で、宗教を持たない国民性を見て感じた疑問がきっかけとなった作品で、鋭く心を射抜き、おぞましささえ感じる一作です。

    1
    投稿日: 2022.06.26
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    戦時中のアメリカ人捕虜の生体解剖というセンセーショナルな事件を背景に、良心の呵責を感じない戸田と極度に感じる勝呂が対比によって社会的な罰を恐ども内心の罪を感じることのない人間の心理が強調されて詳細に描かれていた。日本人の性質に近いのは戸田と勝呂どっちだろうか。 田部夫人やアメリカ人捕虜を死なせてしまう場面での臨場感と緊迫感は凄まじく、偏差値と安泰だけを求めて何となく医者をめざしている安易な医学部受験生は志望を辞めてしまうんじゃないの…とすら思った

    0
    投稿日: 2022.06.09
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    太平洋戦争の最中、米軍捕虜の臨床実験が日本の大学病院で行われた。それに関わってしまう事になった人々の是非を問おうとしている。戦後明らかにされた九州大学附属病院・生体解剖事件を題材にしています。 スキャンダラスな題材を当時の医療現場、医局の会話等、日常に重きを置いて描き出します。実験的な手術に関わる事になっていく、研究員や看護婦。彼らの人生の背景を生活感を持たせて、一般的日本人の実験参加の葛藤を観ます。 この小説は、作者の思想がそこまで踏み込んで書かれていないのではと思っています。読書への投げかけで終わってしまう感じです。日本人の良心の呵責、倫理観の未熟さ、組織への同調性などが織り込まれているかと思うのですが、戦時下という特殊な時代、生死の境が曖昧な状況での是非を個人に問うのは難しいのではと。 作者は、続編の執筆を希望していたようですが、批判があったりして出せなかったようです。「悲しみの歌」が、実質的続編と最近知り、予約できたので、先に再読してみました。

    43
    投稿日: 2022.05.01
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    文章も展開の構成もうま過ぎて圧倒された(うまいとか当たり前なんだけど) 作中で数人死にますが、人の命が途切れる瞬間の描写があっけなくてそれがさらに意味を重くしている 死ぬところをネチネチと書かないところがすごいし、それぞれの死に対して読者も思うことが全然違うようにできてる

    0
    投稿日: 2022.04.30
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    米軍捕虜に対する生体解剖事件をモデルにした小説。「私」が引っ越してきた地で知り合った人々は、戦時中に暗い過去を持っていたという導入部分の描写が、以降の陰惨なストーリーを予感させる。

    0
    投稿日: 2022.04.29
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    師走に流され駆け足で読んでしまったの後悔…たぶんもっとじっくり読むべきだったなと思います。彼らは同じあの海を見てどんな心を持つんだろう

    0
    投稿日: 2022.04.11
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    戦争時代のアメリカ人捕虜生体解剖実験の話。ただ、解剖部より、人間の心に視点を置いて書かれている物語だった。

    3
    投稿日: 2022.02.19
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    戦時中に医学の発展のためと敵国の俘虜を 生体実験する話し 私の受けた印象としては生体実験のショッキングさよりも実験に関わった数人のそれまでの体験、 関わった事への心のありように重きがある様に読めた もちろんどんな生き方をしていようが どんな立場であろうがあってはならない事ではあるけれど。 医学の為であるとか、確固とした信念があるとか 、そういうのも無く、なんとなく協力している感じが怖い。

    7
    投稿日: 2021.12.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    遠藤周作さんの文章は私にとってはテンポが読みやすい。考えさせられることも多いが読んだ後心が重くなることもある。 海と毒薬 当時の背景を考えると戦争での死、病気での死が多かったのかとても状況の想像がつかないが、実験のための人体解剖なのだがいつもの手術と同じ手順で進んでいるといつもの手術と思い込めるようなそんな感覚をもってしまった人。また、そうではなく健康で手術の必要のない人にメスを入れること、健康な肺を切り刻み二度と笑顔が見られない死のための手術と心痛む人。好きな人のために手が汚れても厭わない人。いろんな気持ちが交差している。倫理、良心、理性が勝るか道理、悪意、情念が勝るか。実験で解剖された人の気持ちを考えるとやるせなさが残ってしまう。

    0
    投稿日: 2021.10.23
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    おそらく35年ぶり位の再読。 NHKのドラマに感化されて、ブックオフで購入。 昔は、ともかく衝撃的だったことと、ミツ、という女性の存在。 再読してみて、ミツがこんな娘だったのか、という発見と、そして、メインの米軍捕虜の生体解剖。 こんな話だったっけかなぁ? 人の記憶とはあやふやなものだなぁ、と。 早く九大の資料館へ行けるようになりたい。

    1
    投稿日: 2021.09.07
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    考えさせられる作品。 起こった事は事実とは言え罪の意識を持つのか持たないのか、持とうと思っても持てない人あり、罪の意識しかない人あり。また、バレなければ、社会的に抹殺されなければ良しとする人あり。後の医学の為と言う人ありと様々。 自分ならどうする?どう感じるだろう?育ってきた過程によっても価値観は変わるのだろう。 作者としても重い作品だったろうと感じる。

    14
    投稿日: 2021.07.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    年2冊は読むと決めている戦争不条理の本。読友さんのお薦めで読んでみる。戦争末期、敗戦濃厚の気運の中、医師、看護師がそれぞれの人生の中で、この混乱期に巻き込まれる。医師は結核患者を助けられなかった自責感と無力、看護師は夫の不倫と自分の流産そして産めない身体となる。この背景もあって、大学病院で米兵への人体実験のオペ助手として指名され、無情にも承諾する。正常な判断をするべき医療者の弱さが、墜ちるところまで堕ちた。海に一滴だけ毒を入れても拡散し無毒化するように感じ得ても、こころの中の毒は生涯消えることはない。

    38
    投稿日: 2021.06.05
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    海のように冷たい手術室と世相。 出世や要望など真人間にとっての毒薬。 戦時下の彼らの真相は現代の人間にもきっと共通して伝わるのではないだろうか。

    1
    投稿日: 2021.05.13
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    自分にとって死なせたくなかった患者であったおばはんを失った勝呂はもうどうでもよくなりアメリカの捕虜を生体解剖する実験に誘われ参加することとになる。 いざ実験が始まると勝呂は激しく後悔する。もう後戻りはできないことはわかっていても。 実験が終わった後勝呂は俺が殺したことに苦しむ。 いや俺は殺していない、何もしなかったのだ。おばはんが死んだ時も今も。何もせず人が死ぬところをただただ見ていただけなのだと。 いつか罰を受けるだろうと思いながら生きていく半生。その後の勝呂はどうなったんだろうか。 いつか医学部に入りたいくせにやっぱ内臓怖くてこの前ホットゾーン読んだ時もキャタピラーっていう映画見た時も気持ち悪くなって泣いて海と毒薬すらもちゃんと読むと気持ち悪くてほんと怖がり直るのかな。 手先は器用だねって小さい頃から言われてるから多分大丈夫なんだろうけどほんっとに血とか内臓の描写がはっきりされると怖いしクラクラするの。 本当にみんなが死んでいく世の中だった。病院で息を引きとらぬ者は、夜ごとの空襲で死んでいく。 人間は自分を押しながすものからー運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。 人間の良心なんて、考えよう一つで、どうにも変るもんやわ

    1
    投稿日: 2021.02.22
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    無神国家故の国民性を伏線や素晴らしい表現とともに読者にある種の疑問のように投げかけているような作品と感じました。少し遠ざけたくなるような内容もありますが、それが自分の内にも潜むものか考えさせられます。

    7
    投稿日: 2021.02.05
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    とにかく凄い。これ書いた遠藤周作。フジテレビの社長のパパ。周作って名前だけでこの人はきっと凄い人に違いないと思わせるほど凄い本。たとえ、周作という名前のニートであっても。周作という名前の人が何人いるか知らんけど。たくさんいるかな。 冗談さておき、 医学かじってる人で読んでない人はマジで読んだ方がいい。そして、山崎豊子の『白い巨塔』を読むことも忘れてはいけないよ

    3
    投稿日: 2021.01.19
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    当時の米国人に対する激昂心や戦争がいかに人々の心を変えてしまったのか、さまざまな登場人物の視点から鮮明に描かれている。仁徳が荒み、個人の人命など何も尊重されなかった時代に置いて、医学部の教育は行き届いていなかったのではないかとも思う。誰もが背徳の意識を持っていたのにも関わらず、軍の命令に背けなかった、戦争が生んだ悲劇をこの小説により理解することが出来た。

    1
    投稿日: 2021.01.11
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    内心納得できないことを頼まれて断れなくて、あるいは断っても悩んで嫌な思いをした経験のある人は多いと思います。自分の行動を決める上で拠り所となる倫理、信念に耳を傾けず流されると一生苦しむことになるというメッセージ、また医学発展のため、戦争のため、出世のため、愛のためなど「理由」ができてしまうと、殺人という恐ろしい行為でさえ、人は正当化あるいは「仕方がない」と思うことができてしまうのだという認めたくない真実。こうした恐ろしいことが歴史の中で度々起きていること…思いめぐらせすぎて恐ろしくなった。またいつか読む。

    3
    投稿日: 2021.01.11
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    続編「悲しみの歌」を読もうと思う。 で、ないと医学生勝呂のその後が心配。 同じく、戸田も。 おそらく、日本人の本質に近いのは戸田だと思う。 しかし、遠藤周作の文体は粘っこい。

    1
    投稿日: 2020.10.24
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    空気を読み、断れず、なんとなく流され引き返せなくなり、心を失ってゆく。「他人の死」「他人の苦しみ」に無感動で、その無感動に苦しむ。洗脳されたように、集団の中にいて当たり前に過ごしてしまうと、善悪の判断は鈍ってしまうの? 贖罪。秘密の共有。 人にとっての毒薬とは? 対照的に登場するドイツ女性ヒルダの無心の愛と正義感が焼けつくように痛みとなる。 これほど衝撃的な小説は初めてで、なぜか己の罪悪感から逃れられない。

    1
    投稿日: 2020.09.20
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    人間がいかにして罪を犯すのかについて考えさせられた。主人公である勝呂は普通の人間であったが、米軍捕虜の生きたままの解剖という残虐な事件に参加した。海という自然には抗えない人々のように、彼は流されてその事件に関わることになった。 著者である遠藤周作は日本人のそういった性格について研究を重ね、本にしてきたそうだ。これはその代表作といえるだろう。その事件に関わった主人公以外の登場人物についても、一人一人の視点に立ってそこまでの経緯と心情の変化について書かれている。 解説を読んでより理解が深まったので、もう一度冒頭から読み直したい。

    0
    投稿日: 2020.08.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    実際にあった事件を題材に、日本人とは何か、良心とは何か、みたいなことを問うている。 印象的だったのが、捕虜を生体解剖している最中に、勝呂と言う医師が、手術室の壁に凭れかかり、ずっと「これはただの手術で、今に無事に終わって患者が助かる」と思い込もうとしているシーン。 やっぱり実験に関わらなければよかったと言う、後悔の念と焦燥感が、ひしひしと伝わってくる。 また、戸田と言う医師が実験が終わった後に1人手術室へ入り「良心の呵責」を求める場面があるのだが…そこも非常に印象的であった。 作中で"おやじ"の妻ヒルダが日本人の看護師に「神さまがこわくないのですか。あなたは神さまの罰を信じないのですか」と言う場面があるのだが……無宗教の人が多い日本で(しかも恐らく看護師もそうであろう)それを彼女に問う意味とは?と思った。 ヒルダ自身は発言からして恐らくキリスト教徒であり、だからそう言う発言に至ったのだろう。だが、看護師は上司の指示に従っただけで、神を信じてはいないと思う。正に本の裏に書いてある、神なき日本人の"罪の意識"の不在の不気味さ、と言うのが現れていると思う。 この、上司の指示に従っただけと言うのは、日本人とはを語る上でよく聞く、群衆心理が如実に現れていると感じた。その辺は、今も昔も変わらないのだな。 日本人論で有名なのは、ルース・ベネディクトの菊と刀だろう。いい機会なので、いずれ再読してみたいと思う。 かなり重いテーマだったが、読んでよかった。

    5
    投稿日: 2020.08.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    時勢に流され、自分たちを正当化する理由を作ってしまうと、人間はどんな悪事でも働きかねないのだと気付かされた作品でした。どこにでもいる、普通で善良なはずの若い医師が、とんでもない実験に参加してしまう。恐ろしい話だと思います。 事実を基に描かれている作品ですが、フィクションとして上手く再構築されています。特に、ラストの海のシーンが強く印象に残りました。 高校生〜大人向けの作品だと思います。

    0
    投稿日: 2020.07.28
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    戦争下の人の心は、平時のそれとは違うものらしい。戦争を経験した人には、共感できる何かがあるのだろう。実話であった話しをもとに作られていることは理解してるし、著者がキリシタンで登場人物に欧米の女性を使って日本人とあえて対比させているかのようで、何か違和感を感じた。

    4
    投稿日: 2020.07.15
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    「罪の意識」がテーマ。何気ない日常に潜む人間の狂気を、少しずつ明るみに出していく冒頭部分の不気味さがなかなか良かった。登場人物たちが"罪の意識無く"残虐な事件に自ら関与していく姿と、随所に散りばめられた宗教的モチーフが相まって一層不気味。佐伯氏の解説も読み応えあり。

    6
    投稿日: 2020.06.25
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    【新潮文庫2014夏の100冊21/100】嗚呼、これは難しい。難しい問いをドンッと叩きつけられた。。きっと百回読んだところで答えは見つからないだろう。戦中、敵国兵といえ人を殺した経験をした人が、戦後様々背負いつつ時に楽しみながら生きてたのも事実だけど、私はそれを善悪で判断できない。主題の捕虜の生体実験だって、善か悪か私にはやっぱりわからん。罪だから罰がくだるって言われれば、そうかもね。って思うけど、医療そのものがやっぱりそーゆー罪や悪の積み重ねで進歩してるってのもその通りだし。考えても答えは無い気が。。

    3
    投稿日: 2020.05.26
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    「自分の置かれた立場を考えると人体解剖に手を染めたことは避けられなかった。何が正解だったかは分からない」

    0
    投稿日: 2020.05.10
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    ひたすら灰色のイメージ。ジメジメとしたこれからの梅雨にぴったりな作品。読んでいて身体にまとわりついくる様な不気味な印象でした。

    0
    投稿日: 2020.05.06
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    諦めや忖度の中で行動しないといけないがゆえに戦争とコロナウィルスは似ている。街にいても空襲で亡くなる。入院患者は衛生面が保証され十分な手当が受けられることもなく亡くなる。疲れたお医者さんは治る見込みのない患者と過ごす日々が救いだったりする。

    0
    投稿日: 2020.04.07
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    捕虜米兵の生態解剖という行為がなぜ行われたのか。勝呂医師に関しては挫折による一時的な判断力の低下かと思ったけど、イントロではまた同じことをやってしまうと言ってる。。、誰も反発していなかったことを考慮すると、結局は多数に巻かれて流されただけなのでしょうか。。

    0
    投稿日: 2020.04.04
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    史実を取り扱っているから、とドキュメンタリーのような内容を想像していたので、手記のような形式にまずびっくり。文体もとても読みやすく、登場人物の事件前の行動が描かれているからこそ、感情移入しやすく特に勝呂さんの心を抉られるような感覚が伝わってきました..。 事件、と言われてるけどそこの描写自体は少なく、そこに至るまでの人間の弱さや脆さが上手く描かれているな..と思いました。遠藤さんって私の想像と違った!『悲しみの歌』も読みます!!

    0
    投稿日: 2020.03.30
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    1945年の実際の事件「九州大学生体解剖事件」がモデル。日本人の罪の意識と、意志の弱さを問う問題作。 はっきりしない日本人と対象的な白人ヒルダの存在も印象的。 黒い海に澱み流される様な当事者達の無気力に幻滅しつつ、自分ならば果たしてどうか、と。。。

    3
    投稿日: 2020.03.28
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    戦争末期の米国人捕虜解剖事件を題材に、医師や看護師の心の動きを通して、人間の良心について問いかける。ドイツ人夫人の揺るぎのない良心的な行動と、社会や組織の大きな流れに流されていく日本人たちを対比させており、神なき日本人の良心がテーマであるのは解説などに書かれたいる通り。自分の知る範囲においても、見られていないところでは「少しの」悪事は許されるとか、真面目に行動するのは馬鹿だいうような価値観が、欧米に比べて日本社会で強く感じられる。このような社会的価値観が本当に宗教的なものに根差しているのか、大変興味深い。

    2
    投稿日: 2020.02.09
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    世間や社会の罰をしか知らぬ不気味な心がひそんでいる。良心とはなにか。 人間を倫理的、宗教的な責任でしばると同時に、自由を与えてくれる神不在の異教的な風土

    0
    投稿日: 2020.01.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    勝呂医師(すぐろ)は、謎の医者だ。なんだか気味は悪いが腕は確か。ひょんなことから彼が九州の病院で、米軍捕虜の生態解剖実験に立ち会ったことがわかる。そこからはその頃の勝呂視点や、まわりの人物の視点で描かれる心情状況描写。 内容的にはグロくて恐ろしいが、真実としてあったことと感じさせられた。いかにもありうることというか、どこかでこうした犠牲もありつつ現代の医療が成立してる部分はあるんだろうなと思う。 動物実験だけでは測れないものが絶対にある。その動物実験に関してももちろん問題点など出てくることだろうが。。 という医者の恐ろしさを感じつつもやはり、医療関係者という仕事の素晴らしさ、尊さも感じさせられる気がした。 特に患者のおばあちゃん、阿部ミツが隣の患者の急な病状悪化を見にきた勝呂医師に向けて言った言葉が、解剖実験に立ち会った後のこの場面だからこそ心に響いた。 先生、助けてやってつかあさい、助けてやってつかあさい。 医者は、このために、人を救うために緊張した雰囲気の中手術を行う。人を救うために働きたいと思っているもの、そうであるべきものなんだとは思う。けれどこの話では、勝呂の先輩の戸田や、院長的な存在?おやじや、浅井助手にとってはそうではない場面も多々あった。 倫理的な問題をつきつけてくることはもちろん、仕事への崇高な願いや目的を改めて考えさせられる一冊だと思う。

    1
    投稿日: 2019.12.08
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    【出してください。この部屋から。】 悲しみの歌を先に読んでいたので、勝呂が主人公かと思っていたが、いくつかの登場人物の視点でえがかれていたのは知らなかった。 じめじめする厭らしさに加え、なんとも言えない気持ちを感じた。 捕虜の実験の前の田部夫人の手術。看護婦上田の動機。戸田の独白。燃えるF市と海の音。勝呂の葛藤。 きっと、これは悔しさだ。 どうしようもできないもどかしさ。 どうしようともしないあきらめ。自分ならどうしたか? 銀色の皿に骨が落ちるカランとした音を、迫り来るような波の音を、手術台の足下を流れる水の音を、読めばあなたも感じとる。

    0
    投稿日: 2019.10.14
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    とある大学病院で戦時中に捕虜の人体実験が行われた話。 人体実験が良いことか悪いことかの前に、良心とは何か?を投げかけている。

    2
    投稿日: 2019.08.16
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    医師 勝呂(すぐろ)の心の葛藤と、「海」に飲まれていく残酷な世の中。冒頭の1章で日常にありふれた、「海」の存在をチラつかせる。 遠藤周作の小説はあっという間に読めてしまう。

    0
    投稿日: 2019.06.15
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    するするするすると読めてしまった。食わず嫌いしてた。 登場人物を類型化しすぎなきらいがなくもないけど、この小説で探りたいことはこうじゃなきゃ見えてこないんだろう。

    2
    投稿日: 2019.05.11
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    文章的には読みづらくなかなかページが進まなかった。しかし、内容はリアリティを帯びており、残虐な医療行為にもかかわらず、集団の空気により背徳感もなくそのような行為が行われていたことに非常に恐怖を抱いた。この話はフィクションだが、このようなことが実際あったと思うと恐ろしく、歴史の闇を知れたという意味では有意義だった

    0
    投稿日: 2019.05.04
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    祖母はこの本を「こんなもの、読まなくたっていい」と苦い顔で放った。そうした読後になってしまう人がいるのも致し方ない。この本はそれだけ真摯に、目を背けてしまいがちな人間の内側に向き合っている。初めて手にした高校生の頃から何度も読み返しているが、この先も読み返し続けて、考え続けることと思う。こちらを読んだら、悲しみの歌もぜひ。

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    投稿日: 2019.04.10
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    読みながら、人間とは弱いものだなぁと思って辛かった。 彼らはたしかに人ならざることをしているのであるが、その実望んでいるのは「ごく当たり前の幸せ」のはずなのだ。<本当なら>こうなるはずだと思っていることがそういかないばかりに、ずるずると低い方へ低い方へと流れていく。 「神様が見ているとは思わないのですか」というヒルダさんの言葉が痛切である。たとえ、世の中の流れがおかしな方向へ向かっているとしても、周りがろくでもない人間ばかりでも、自分の良心に頼ること、せめて一言でも「No」と言うことは、彼らにはできたはずなのだ。 それさえ言わなかったのはなぜなのか? 物語はあくまで淡々と進むが、「その行為」へと導いて行った彼らの心理は非常に納得できて、それだけに悲しかった。特に上田看護婦の描写には、非常に共感するものがあり、遠藤周作は女性の心にもとても寄り添っているなと感じた。 解剖される捕虜の描かれ方も、ごくごく普通の人間らしさにあふれており胸が痛むが、病院の貧しい患者たちの描かれ方にこそ、遠藤周作の本音が描かれているような気がする。汚く卑しく頭の弱い彼らの姿にこそ、遠藤周作は救いを求めているように思う。 あの病院の患者たち(社会的弱者たち)も、あれからみんなみんな死ぬのだろう。なぜなのか? みんなが死んでいく時代だからだろうか。違うだろう。彼らは貧しいから、あるいは身寄りがないから、どうでもいいと人に思われているから、死んでしまうのだろう。 同じ理由で、敵国の捕虜だから、生体解剖をしたっていい、というはずがない。捕虜だからどうせ殺されるというのは、なんの正当な理由にもならない。 彼らは私たちが、いや、この本を読んでいるまさに「私」が、助けないから死んでしまうのだと、そう思った。この本の登場人物は、当時の時代の犠牲者であり作者であり、そして読者であると私は思った。

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    投稿日: 2019.02.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終わってから、すぐもう一度冒頭を読み直した。勝呂の今の診察は「実験の物体でも取り扱っているような」とある。事件から何年過ぎたのか知らないが、施療患者を診ていた頃とは明らかに違っていて、勝呂なりに苦しみ人が変わったようになってしまったことが分かる。 一方戸田は良心の呵責か、社会の罰に対しての恐れか、どちらを思うのか自分を試していた。国民性みたいなものが関与して、根本的にそれが分かるのは多くの日本人にとって難しいかもしれない。 戦争中や後は殺人を経験した人が大勢いて、何食わぬ顔で暮らしているしそうやって暮らしていくしかないという、なんとも言えない虚しさを強く感じる。

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    投稿日: 2019.02.07
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    ブンガク かかった時間110分くらい 何度目かの再読。星4つなのは、まだ自分が読み切れていないと思うから。 さて、今回浮かんだ疑問と感想を述べる。 疑問。曲がりなりにも多少のまともさを持っていたと思われる勝呂医師は、いつの間に、冒頭のような人間に変容したのか?もしくは、していないのか。少なくとも小説の結末では、勝呂は、巻き込まれた諦念よりはずっと自責やいろいろなものへの憤り(表出はしないが)が強かったように思うが。 また、戸田は本当に良心のない人間なのだろうか。私は、どちらかといえばこの人物に同調してこの作品を読むことが多いが、「自分には良心がない」とあまりにも強調する姿は、逆に良心の存在を肯定した時に自分が耐えられないことを恐れたからではないか?というようにも見える。 さらに、上田看護師。この人をあまり意識して読んだことがなかったが、なかなかのクソ人間だ。というか、女性であることの醜さのようなものが強調されているような気がするが、これはアダムとイブのイブ的なことか? さて、あとがきでは、この作品が、「日本人とはいかなる人間か?」という作者の問いに基づいて書かれたものだとある。 しかし、この前読んだ「悪と全体主義」と関連させて読めば、なんというかもう少し普遍的な形で「(悪、じゃないかな?)罪」を考えられるような気がする。また、何度か作中で繰り返される「考えない」ことについては、ちょっと「動物農場」的なものも感じる。 あー、あと、冒頭の一本道と、手術室につながる一本道とか、体格とか、勝呂の権威主義(崇拝傾向)とか、そのあたりも気になる。 また読もうっと。

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    投稿日: 2019.01.03
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    平沢さんが苦手だ。嫌いの婉曲表現としての「苦手」でなく、彼女を直視することができないのだ。なぜなら彼女のぎょっとした目が、私たちが殺した牛の目に似ているからだ。 あの日、牛を殺したあの日、わたしは罪の意識を感じなかった。牛の胃袋には咀嚼された緑の草がぎっしりと詰まっていることを冷静に観察していた。彼女の目を見ると、自分の不気味な心を思い出してしまうのだ。 首を切り裂くと、声が出せなくなった牛は、代わりに鼻息をたてた。吠えるような鼻息が私達を恐れさせた。しかし、それは恨みではなかった。孤独だったのだ。ビー玉のような硬くごろっとした目は、最後まで私たちを見つめ、私たちはその視線から目を背けた。私たちは目をそらすことを許されていないにもかかわらず。いつかこの報いを受け、罰せられる日が来るのだと直感した。 今後彼女に会ったとしても、わたしはまた目をそらしてしまうだろう。何か別のところで罪を償う必要があるからだ。これがわたしの罪の告白である。

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    投稿日: 2018.12.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦前の内容ですね。捕虜が解剖される事件を題材にしているようです。とても重い内容で、後味が悪いですね。

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    投稿日: 2018.12.15
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    この作品、読んだ事ありました… でもだいぶ内容も忘れてしまってたので、再読です。 やはりこのお話も周作さんらしい作品でした。 形のない物や出来事、気持ちや自分の心などの選択についてや、現代ではあまり考えられないような逆らえない時代の流れなど… そう言う時代を生きた方々と共存しているという事を阿呆なりに考えてみたくなる作品でした。 戸田に関しては、心の呵責が無いこと自体が呵責なのかな?なんて…

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    投稿日: 2018.11.17
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    戦中において、人命の価値がどのように扱われ得るかを描いたホラーとして読めた。倫理感を獲得出来なかった人物、あるいは捨てざるを得なかった人物を、鬼畜なだけでなく憐れな存在にまで昇華させる描写力には感嘆するしかない。これが実話を基にしているという事実。サイコパスという名称が市民権を得た現在であっても十分に衝撃を受ける一冊。

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    投稿日: 2018.10.29
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    平凡な暮らしを、出来たら人よりちょっと良い暮らしを望む、ごく普通の医学生が、戦争末期の海にのまれて、米軍捕虜の生体解剖に参加する。 良心とは。 罪とは。 罰とは。 生体解剖は、戦争という「異常」な状態だったから起きたのか? 参加者は「異常者」だったのか? きっとそうではないんだろうな。 異常と正常の境目は常に曖昧で、日常の延長線上にそれはあって、 誰もがどこかで踏み越える可能性を抱えている。 そのラインを前に、私たちを踏み止まらせるのが良心であり、神なのかなと思った。

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    投稿日: 2018.09.01
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    読みやすい! けど、各章を個人個人の視点で描くのはいいのだが、初めの登場人物たちの関係性が少し謎。。終わりがおわりではない感がいいのかもしれない

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    投稿日: 2018.08.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    権力って何のために作って何のために存在し続けてるのか。無いと上手くいかないけど、無くなって欲しいものの1つが権力だと思った 人間にとってはなにが苦しみでなにを恐れて生きているのか 良心の呵責よりも自分の身の保身 遠藤周作の考えがすごい好きです

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    投稿日: 2018.05.26
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    "神なき"日本人は、罪を犯しても、内側から罰せられることがない。心で神の存在を信じ、罪に対する神からの罰を恐れる者は、内側から自分を律するが、日本人には、そのような神の存在は無く己を律するものはない。日本人を律しまた罰するものは、神ではなく、ソトの人様なのである。確かに、どんな人であっても、罪に対して良心の呵責に苛まれることはある。ただ、戦時中などの異常時にその良心が尽き果てると、内側から日本人を責めるものはなくなってしまう。 日本人の宗教性・道徳性を考えさせられる小説でした。

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    投稿日: 2018.01.06
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    遠藤周作の中で初めて読んだ1冊。捕虜の生体解剖を巡り、登場人物それぞれを使って「日本人の嫌なところ」を徹底的にあぶりだした作品。権力、出世、情欲、嫉妬が細かく交錯し、登場人物それぞれの人生を生体解剖に導いてゆく。 遠藤周作は生い立ちもあり、宗教的観点からさまざまなリアルをあぶり出すことに長けた作家だそうなので、代表作を読み進めて行きたい。

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    投稿日: 2017.12.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    良心というのは一体何か。それを突いてくる話。登場人物の内の一人である戸田の言うように、世間からの非難に対する恐怖心を単に良心と思っているだけではないか。とはいえ普通に生活するには、またこのような社会で出世するにはそれで何の支障もないはずだ。だがそうではない人、ここでは勝呂だろう、に会うとそれでいいのかと不安を感じる。しかしやはり良心の呵責など何も感じないので馬鹿馬鹿しいと打ち消そうとする。行為の良し悪しは置いておいて、そのような感情は珍しくないのではないだろうか。 保健体育の授業が耐えられない私には厳しい描写があったものの、するすると読めた。そのテンポ感と内容の重さのギャップもまたいい。 しかしどうも女の登場人物にどこも感情移入できないのは私の女子力が足りないせいだろうか…(笑)まぁそんなところで感情移入できなくてもこの世界で生きていくには何の支障もないが、ただ実生活でこういう人に会うとこれでいいのかと❨以下略

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    投稿日: 2017.10.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    中学二年生の時に読書感想文の課題図書であった。 その時は夏休み終了直前に一日で急いで読んでため、内容はよくわからず読書感想文も酷い出来であった。 ただ、その時感じたのは、 人は如何に犯罪に手を染めてしまうのか(大きな組織の中にいると徐々にその組織の毒に侵されていく)、ということだった。 で、今回読んでみての感想だが、第一にすごく疲れる。 少しずつ読んでみたが、とにかく疲れる小説だと思う。 この小説における主題として、 日本人が如何に犯罪、というより悪いと思っていることに手を染めてしまうのかについて、 キリスト教的な神という規範がないためというのがよく言われている。 しかし、ナチスのアイヒマンやヨーゼフ・メンゲレの行動を考えるに、 悪に手を染めてしまうかどうかは行動規範のあるなしは関係なく、 集団心理的なものが大きいと思う。 つまり、神という規範があっても、 一定条件下の中では、人は残虐行為に手を染めてしまうのだ。 これはミルグラム実験の結果を見てもそう思う。 どちらかというと、日本人の心理として不気味に感じられるのは、 悪事だと知っていながら、その行動に手を染めてしまい、 かつ自責の念がないことではないだろうか。 作中の戸田の言葉を借りるのであれば、 彼は自分の行動の醜悪さは感じている、 しか、自責の念を持つことはない。 アイヒマンやヨーゼフ・メンゲレの心理は知りようがないが、 彼らはもしかしたら自分の行動が正しいこと、 神の名のもとに行われていると思っていたのかもしれない。 反面、この小説の登場人物は(少なくとも戸田と勝呂は) 自分たちの行動が醜悪だと知っている。 それなのに自責の念を持てず(特に戸田は)、 かつ自分たちの行動を止めることが出来ない。 そこが不気味に感じる。 なぜなのか? やはり神という規範がない故なのか? だが、日本人として、逆説的に考えるのであれば、 キリスト教徒の人々がなぜ神を信じることができるのだろうかとも思う。 彼らは神の裁きも奇跡も目の当たりにしたわけではない。 なのに神を信じることができる。 そこが日本人としては不思議に感じる点ではある。 逆に、作中における愛ある人物として象徴的なのはヒルダであろう。 その献身的な行動は、確かにキリスト教圏の人の行動だという気がしてくる。 しかし、彼女の行動も安全圏にいるからこそできるのだと上田からは看過され、 むしろ疎ましいとすら感じられている。 ヒルダも状況が変われば生体解剖に手を貸すことがあるのだろうか。 仮に手を貸したとして、彼女は自責の念に苦しめられるのか、 それとも自分をうまく正当化させるのか。 分からない。 分からないが、戸田や上田が感じたこととは別のことを感じそうだとは思う。 結局日本人であるが故に、その行動原理を客観的に論じることが難しく感じてしまう。 最後に、すごくベタな結論になってしまうが、日本人らしさというのは 「愛」を知らないことではないかと思う。 人の愛し方、そして愛され方を知らない。 それは作中の日本人、あるいは全ての日本人共通ではないだろうか。 そしてそれは現代日本においても変わっていないことだと思う。 ここで云う「愛」とはキリスト教的「愛」ではあるが。。。 日本人は「愛」を知ることができるのか。 神はいるのか。 神がいたとして、我々のような日本人にも救いはあるのか。 「沈黙」における神のように、我々日本人相手にも共に耐え忍んでくれるのか。 これらの問いにはもちろん答えはないが、この小説を読んで多くのことが考えさせられる。 そして、これらの問いに対して一番日本人らしい回答は 「周りのみんなが救われたいと思うのであればそのように行動する。そうでなければそうしない」 次に読む時はもう少し「愛」について知っている人間でありたい。

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    投稿日: 2017.09.20
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    高校生の頃に読みました。少々刺激が強いですが、過去に行われてきた惨事を知っておくためにも歴史を学ぶ高校生か大学生のうちに読むのがよいかと思います。

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    投稿日: 2017.08.08
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    良心の呵責なのではなく社会の罰への恐れである、というのはすごく腑に落ちる感じがした。重いテーマだが淡々とした日常の中で描き出しているところも良い。

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    投稿日: 2017.07.30
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    先生に勧められて読了。 ずっと、周りの人達は皆自分と同じように物事を思考し、感じているんだろうと、心のどこかで思っていました。そんな無意識の傲慢さを自覚させられたような気持ちです。 人間が信じられなくなりました。自分を含めて、人という生物が不気味に感じられました。 それでもというか、だからこそというか、読むと人に優しくなれるよ、といった先生の言葉が分かった気がしました。

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    投稿日: 2017.06.26
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    「海と毒薬」1957年発表。遠藤周作さん。 「いつかは読もうと何十年も思っていて読んでなかった本」シリーズ。 # 戦後わずか12年目の発表です。 不勉強で良く知りませんが、実際に戦中末期に、九州の医大で「米軍の捕虜を生体実験解剖をして、殺した」という事件があったそうなんです。 その事件を素にして書かれた小説だそう。 # 1945年です。戦争末期です。 主人公は九州の医大に勤務する青年医師の「勝呂」。同じく青年医師の「戸田」。そしてその病院で看護婦をしている「上田」。 今と変わらぬ「白い巨塔」。医大の人間模様がまず描かれる。勢力争い。政治。そのためのオペ。 「白い巨塔」に精神的に疲弊している、純粋な勝呂医師。 ニヒルで虚無的でしたたかに見える戸田医師。 黙々と働いている上田看護婦。 軍部から降って湧いた「米軍捕虜の生体解剖実験」。それに下っ端として参加することになる勝呂と戸田。そして上田。 それぞれに、気が重く、罪悪感がありながら、当日の現場を迎える。 戸田は気持ちがダウンしてしまって、見ているだけになる。 そして、無事に解剖実験は終わる。 # それだけの話なんです。「何が起こるか」で言うと。 章ごとに、「勝呂⇒上田⇒戸田」と視点を変えながら、ひとりひとりがどういう育ちをした人で、どういう過去を背負っていて、どういう気持ちで参加したのか、ということをとてもグリグリと描いています。そこンところが実に面白い。 事件そのものではなくて、そこに巻き込まれた「ひと」と「心理」を描きます。実に小説らしい小説です。 (熊井啓監督、渡辺謙、奥田瑛二主演で映画化されました。遠い昔に観た記憶がありますが、今回読んでみて、「原作の方が圧倒的に面白かった」という感想。) 気が弱く、良心の咎めを受けながらも、流されて行く勝呂医師。 結婚に失敗し、子供と死別して、虚無的に、自暴自棄に、そして僻みに生きる中で参加する上田看護婦。 子供の頃から優等で特別扱いで、大人の要求を満たして自己実現するズルイ男、戸田。 この中で、印象に残ったのは、家族も子供も失って、淋しい極北に孤独に生きる上田看護婦。 ゆきずりに癒しを求めてくる上司に体を許してしまう。もはや、守るべきものがないのだ。 そして、自分の中にモラルが無いことを自覚している戸田医師。 どこまで、自分はずるいことをして、ひどいことをして、許されてしまうのか? このふたりの有りようを見つめていくことで、「心の中に、何かしらかの神を持っていない人間の、きしみ、というか。辛さというか。寂しさというか」 そういう風景が実に鮮やかに広がって行きます。 何も断罪することもなく、弁護も非難もせずに。実に小説らしい小説。名作だと思いました。 # ちなみに。 「海と毒薬」が1957年発表だそうで。 そして、山崎豊子さんの「白い巨塔」が1965年だそう。 大学病院の、権威、競争、組織、みたいな力学については、遠藤周作さんが一歩早く、小説化していたんですね。 (ふと思ったのですが、「白い巨塔」も未読でした。 唐沢寿明さん主演のテレビドラマで見ただけで。 あれはテレビドラマとして大変に傑作だったのですが、原作もこれを機会に読んでみようかなと思いました)

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    投稿日: 2017.04.30
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    30年前に読んでさっぱり面白くなかったこれを再読したら、今なら結構、何を書いてるかわかってきた不思議。  日本人の罪の意識は神に対する罪でなく世間に対する罪(だから周りに流されやすい)ということが理解できる1冊

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    投稿日: 2017.04.17
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    有名すぎて話の内容を知っていたことが残念でした。 「私」が勝呂医師に出会ってからその過去を知る部分なんて特に。 この中で描かれている「良心の不在」を肯定しかけている自分がいました。 怖い話でした。

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    投稿日: 2017.03.20
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    第二次世界大戦下現実に行われた、捕虜の生態解剖。その事件を元にしたフィクション。 事実だけでも大変ショッキングな内容ではあるが、人間が何に罪と罰を感じるのか、仄暗い心情を通じて描く。重く痛々しく非人間的。しかし彼らと同じような非情さ、残酷さが自分には全く無いのか、と問われれば… 遠藤周作はこのような、事実を基にした話がとても上手くて大好き。近々(2017年)「沈黙」が映画化されるので、そちらも楽しみ。

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    投稿日: 2017.03.05
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    医者が絶対的な権力をかざし、患者を実験材料にしたり、技量向上のための練習材料にしてはならないと思います。また、医療行為が「商売の一分野」で、患者がお客さんというのもおかしいと思います。遠藤周作 著「海と毒薬」1958.4発行、1960.7文庫化です。戦争末期、大学病院での米軍捕虜の生体解剖事件を小説化したものです。海と毒薬、裁かれる人々、夜のあけるまで、の3つの章で構成されています。

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    投稿日: 2017.02.18
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    ずっと気になっていた「遠藤周作」さんの本。 「日本人とかいかなる人間か」を改めて考えさせられる。 無宗教ゆえに、社会、世間からの目を基準に物事を判断してしまう心理。 そこを基準にするからこそ、周りに流されて正しい判断ができなくなる。 それぞれの人物が人体実験に手を出していってしまう様子。 読みながら怖いと思う一方、その心理状況も分からなくはないと感じた。 自分達がそういった思考になりやすいという事実を肝に銘じ、誤った判断をしないようにしなければならないと思う。 <印象に残った言葉> ・ それならば、なぜこんな手記を今日、ぼくは書いたのだろう。不気味だからだ。他人の眼や社会の罰だけにしか恐れを感ぜず、それが除かれれば恐れも消える自分が不気味になってきたからだ。不気味といえば誇張がある。ふしぎのほうがピッタリとする。ぼくはあなた達にもききたい。あなた達もやはり、ぼくは同じように一皮むけば、他人の死、他人の苦しみにも無感動なのだろうか。多少のアクならば、社会から罰せられない以上はそれほどの後ろめたさ、恥ずかしさもなく今日まで通してきたのだろうか。そしてある日、そんな自分がふしぎだと感じたことがあるだろうか。(P145) ・ 今、戸田がほしいものは苛責だった。胸の烈しい痛みだった。心を引き裂くような後悔の念だった。だが、この手術室に戻ってきても、そうした感情はやっぱり起きてこなかった。普通の人とちがって、医学生である彼はむかしからひとりで手術後、手術室にはいることにはなれていた。そういう場合と今、どこがちがうのか、彼にはよく摑めなかった。(P182)

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    投稿日: 2017.01.29
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    第二次世界大戦末期、九州の付属大学病院で起こった米軍捕虜の生体解剖事件を小説化した話(いわゆる“九州大学生体解剖事件”)。 本作はフィクションで、その善悪や事件の責任を社会に問うものではない。 作品の冒頭は、何気ない戦後間もない、とある夫婦の日常から始まるが、何気なく暮らしている住民も、ほんの少し前までは、戦場で非人道的なことをしていたことを口にする。 その対比。 そして、本作の中心となっていく、九州の付属病院での話に移っていく。 ほぼ良心の呵責を感じない戸田医学生や橋本教授などの医師達。 一報で、良心の呵責に苦しみ、傍観者となる勝呂医学生。 その対極にあるそれぞれの人物の姿を描き、社会的な罰と罪の意識、良心の呵責に対して考えさせられる内容。 先の“生体解剖事件”だけでなく、田部婦人の手術を失敗したことを隠蔽しようとする保身、その背景にある医学部のおける権力欲や嫉妬心に駆られた人たちのエピソードもある。 それらを積み重ねつつ、人間の罪の意識や残虐性について筆者である遠藤氏は、人間の内面を描いている。 以下、余談。 出版当時は、ひどい批判もあったそうで、その後の遠藤氏の執筆にも影響を与えたとか。 しかし、その後『留学』『沈黙』と見事な作品を世に出していく。 自分は、『留学』は未読なので、是非読みたいと思った。

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    投稿日: 2017.01.27
  • 追従してしまう弱さ・・・

    「夜と霧」を読んだ時に戦争が人を狂わせてしまう怖さと同時に間違っていると感じながら権力者に追従してしまう弱さを色々考えてまたこの本に辿りついた。研究生の戸田の子供時代から良心の呵責を余り感じない人間だったことの告白が実際の手術シーンよりも強く印象に残った。他人からの罰を恐れることと良心の呵責とは違う。その違いが勝呂と戸田という2人の研究生のやり取りで上手く書かれている。

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    投稿日: 2017.01.25
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    同じ立場に立った時に、その人と違わない行動をとるならそれは同じ罪を抱えることになるのか 戸田の心理に深く共感した。 何かに自分が導かれることがどれだけ心強いことか、神がいない、国が導く世の中だった頃から、この頃の国家の衰退、不信感が今のこの国の不透明さを表しているのではないかなと思った。 登場人物で唯一の外人の行動がとても美しくみえた、反対に登場する日本人がとても醜かった。無宗教であるこの国の弱さをみた気がする。 決して読みやすい本とは思いませんでしたが、物語に入り込んで読むことができて楽しかったです。 初めて著者の作品を読みましたがファンになりそうです!

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    投稿日: 2017.01.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

     B29に搭乗していた米軍兵士の捕虜生体解剖殺人事件を素材に、戦争時の人間としての感覚の麻痺を醒めた筆致で解剖していく。  姦通。あるいは私生児を生ませる等「他人の目や社会からの罰しか恐れを感じなくなっていた」青年医師戸田。彼は、戦争末期、米軍による空襲の下の人々の怨嗟、呪詛、悲嘆の声にすら無感情なままになっていた。  一方、同じ大学に勤務する青年医師勝呂はそこまで悪達観はできない。  タイプの違う二人は、米軍捕虜の生体解剖事件に等しく関わってしまうが、二人が術後に漏らした述懐は対照的だ。  そもそも、戸田に生まれた奇怪な感情は、戦争に由来するのか。医師という職業体験に由来するのか?。  それとも戸田個人の性格に依拠?。  もし最後のそれだとすれば、生体解剖事件を主導した教授らの決断や行動、そしてそれらを生んだ心境と、戸田の感情との間で違いはあるのか。違いあるなら教授らをいかに解釈すべきか。  他方、生体解剖事件に対する感情は明らかに違う勝呂は、その問題を十分把握していたにも拘らず、生体解剖に関わってしまう。  心の奥底の模様については勝呂と戸田は対照的なのに、その戸田と外形的な行動においては何らの違いはないのだ。  勝呂を、主観と異なる行動に走らせた原因は何なのか?。  解読できない人間の不可思議、行動と認識の乖離に震える。人間性と感情の深奥に触れることのできる、そんな作品かな。  少なくとも、米軍捕虜生体解剖事件の社会的告発の書でないことだけは明らかか。

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    投稿日: 2016.12.18
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    人間の道徳心に訴えかける作品でした。 なにが善でなにが悪なのか。 改めて現代に生きる私達が考えるべきことの1つだなと思いました。

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    投稿日: 2016.12.10
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     戦時下の狂乱の世界の一部を切り取った作品。そしてその後、追った罪と罰の重さ。ただし、その罪と罰をどう感じればよいのか。  命の価値は変わらないはずであるが、実際にあった戦時下の人体実験を元に作られた作品。実験に参加した人間は狂人だったのか、狂人でなければ、誰が罪を負わせ、どう罰を受ければいいのか。  今なおその倫理を説明できる人はきっとおらず、また日本人だからこその不気味さを感じる作品。罪と罰はどこにあるのか、誰がもたらすのか。神のいない日本人が包括している救われない問題作。

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    投稿日: 2016.10.24
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    小説にしては劇的な場面がないように思い、すこしつまらないと感じてしまった。しかし、解説を読んで、それこそが作者の狙いであったと知った。歴史的な罪である人体実験、そういったことも、自分たちの日常と切り離されたところにあるのではなく、ふとした瞬間に起きることだということ。異常な人間がやったことではなく、自分と似たような人間がやったことであるということ。とても恐ろしいことだと思った。

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    投稿日: 2016.10.06
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    戦時中に実際にあった人体実験事件をもとにした作品。集団での罪は、集団の中にいるとかえって自覚しないんだなと考えさせられる。ハンナアーレントの「悪の凡庸さ」に通じるものがあります。

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    投稿日: 2016.09.26
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    3.5 戦中末期の九州の付属大学病院で起こった米軍捕虜の生体解剖事件を小説化した話。フィクションだが、実験内容や目的、肝臓の人肉食事件(自白捏造かも)等は実際に近い。戦中背景として中国等で酷い仕打ちをしてきた人が普通に暮らしている状況が描写。ほぼ良心の呵責を感じない戸田医学生や橋本教授などの医師達や良心の呵責で傍観者の勝呂医学生から、社会的な罰と罪の意識、良心の呵責に対して考えさせられる内容。敵国は人にあらずという状況と戦中の人道的ルールの考え方も重要だが、基本的には後者でありたいところ。なかなか面白い。

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    投稿日: 2016.08.28
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    神の視点ではなく、第一人称で、勝呂の視点で切り取ってほしかった世界観。いや、戸田の世界観でも面白そう。罪と罰を二者の視点から読めたなら、どんなに興味深いか。看護師の視点は本当にいらないと思った。非人間の代表のような助教授、助手の世界にも興味がある。グレーの二人の世界観を中心に描いたところに、遠藤周作っぽさを感じた。でも覗きたいのは振り切られた、異常なまでの欲望。薄味では満足できなくなった、バカ舌の味覚と同じだな。

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    投稿日: 2016.08.17
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    人生の師に勧められて5年ほど前に出会った作品。 何年たっても色褪せないかんじ。 トップ3入りレベルで好き。

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    投稿日: 2016.08.08
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     遠藤周作氏の作品の魅力は、人間の本質を深く掘り下げていることに加えて、物語の構造が頑丈で劇的で推進力に富むことにあると思います。その魅力に読者はぐいぐいと引き込まれてしまいます。  この作品でも、外国人捕虜の生体解剖という戦時下での異常な事件を中心素材にして、権力欲や嫉妬心に駆られた人たちのエピソードを積み重ねつつ、人間の罪の意識や残虐性について氏は深く掘り下げていきます。「私」が気胸の治療を受ける町医者の日常の話で始まり、そこから町医者の過去をさかのぼり複数の視点を移動して広がっていく物語の劇的な展開も見事です。  暗く重苦しいテーマのこの作品を一気に読ませてしまう手腕はさすがとしかいいようがありません。

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    投稿日: 2016.06.14
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    なぜ、断れなかったのか。著者はすべての読者に問いかけている。 小説は何気ない日常から始まる。ふつうのまちでの、何気ない一日。我々読者が住んでいる世界と何ら変わらない。しかしこの日常は紙一重で地獄のような戦争体験とつながっている。まちの住人は戦争体験者で、人を殺した経験があるという。そして勝呂医師の過去。地獄絵図と日常は対比されながら、一方でつながり合っている。病院での登場人物もいたってふつうの感覚の持ち主である。僕は戸田の少年期の回想に共感してしまった部分もあった。(程度差はあれ、共感した人は多いのではないか)この残酷な事件を、我々読者の感覚から切り離さず、「同じ立場だったら」と考えさせる展開になっている。そして断れなかった理由を、著者は「運命」、人間の意思を超えて人間を飲み込もうとするどす黒い流れ、と呼んでいる。 ひとつは、戦時中の異常さは抜きにはできないということだ。まわりでは無数の人間が何の意味もなく死んでいく。このようななかで、多くの人の間で無気力さ、虚脱感、自分の人生を大事にできない感覚、が共有されていたのではないか。これが流れをつくっていたのではないか。しかし「戦争」という日常の対立概念をもちだして彼らの心理を説明することは著者の本意ではない。戦争下ではなくとも、このような悪い流れが存在することも、ある。

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    投稿日: 2016.06.09
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    戦中に発生した米軍捕虜に対する生体解剖を題材にした問題作。ある事件を題材に深層心理を深く考察する作品としては『金閣寺』が有名だが、本作品の特徴は遠藤周作が得意とする日本人ならではの特性と心理描写であろう。ある者は栄達から、ある者は色情から、ある者は無策から、運命の日のオペに立ち会う。 遠藤周作は、人道的や倫理観からの勧善懲悪の二元論ではなく、日本人の持つ複雑な心理を熟知し、人間が本質的に具える残虐性が戦争というトリガーによって引き起こされ、背徳を抱きつつも生体解剖に至るまでを重層的に描き出す。冒頭の日常感が、その異常性を際立たせる。 『沈黙』同様、全体に漂う陰鬱な雰囲気はあるが、読み応えのある名作だ。

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    投稿日: 2016.05.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    テーマがテーマだけに、読もうか読まずにいようかずっと迷っていた本。 実際に読んでみたわけですが、何が恐ろしいかって、戸田という、罪の意識が著しく欠如した医師。 人体実験への参加に際して、はっきりnoと言えずにぐだぐだ巻き込まれていく勝呂医師はまだわかる。けれど戸田の心理はただただ恐ろしい。

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    投稿日: 2016.05.26
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    凄くグロテスクでリアルな話、気に入った。 人間同士のドラマはあんまり好きじゃなかったけど、実験のテーマがすごく好き。

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    投稿日: 2016.05.23
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    違う時代、違う環境。それなのに、共通した罰の意識と良心の不足を己の中に感じさせてしまうあたり、普遍だな〜とおもう。

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    投稿日: 2016.04.16
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    中学3年の夏休み、塾のテキストに載っていたこの小説の一部が頭から離れず、すぐ本屋でこの本を買って帰って読んだ、という思い出の本。想像以上に重たく、深い物語で中学生のワタシには衝撃的だった。でも忘れられない小説。

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    投稿日: 2016.04.04
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    西松原の「私」が語るあいだ、ぞわぞわと落ち着かない恐怖に身を凍らせていた。勝呂と戸田の会話を読みすすめるうち、戸田の気取った態度におかしみを感じた。一度目の手術の段階ではもう、この先の展開を予想して当たる当たらぬの賭けに興じていた。そして戸田は問う、戸田に問われる、良心の呵責とは何ぞやと。 淡々と筆は進められていくので、読んでいる間はどうということもないのだ。読了えたあと、どうということもなく読み進めていた己を振り返らなければ。

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    投稿日: 2016.03.21
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     題名も、その主題も作者も表紙の様子も、前から気になって仕方がない作品でした、古本屋で手にいれ、自宅の未読古本置き場に置こうとすると、そこにはもうすでに同じ本が入っていました。あらら~近頃こういうことが少なくありません。ただ、表紙の様子は少し違うものでした。  人の心の中にデンと存在する「悪さ」をこれでもか!と描き続ける稀有な作家です。面白いかそうでないかと問われたら、たぶんこの作品は面白くないほうでしょう。でもこういうタイプの作品、私には絶対必要です。

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    投稿日: 2016.03.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    初めて読んだのは高校生のときだった気がする…。 なんとも言えないどんよりした印象だった。 生体解剖事件について多少なりとも知り、改めて読んだ。 日常の延長で起こりえる出来事というのがとても怖ろしい。 何度も断る機会はあったのに、結局、身を投じてしまう。

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    投稿日: 2016.03.08
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    良心とは何なのか。罪悪感とは何なのか。信念とは何なのか。どうせ死んでしまうならばどんな死に方をしてもいいのか。動物、ヒト以外の霊長類の実験はいいのに、ヒトに実験してはいけないのか。ヒトだけが特別なのか。生物学を専攻する私はそんな疑問が湧いては消えて、消えては湧いていました。私なら勝呂のように良心の呵責に苦しみ、腰が抜けるでしょう。しかしながら、戸田の「醜悪だと思うことと苦しむことは別の問題だ」という一文も印象的でした。戦争が本当の意味で人を殺すのは、このようにして心が破滅することとだと思いました。

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    投稿日: 2016.01.13
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    初周作。勝呂、戸田両医師、看護婦上田らは戦時中と言う特殊な状況下だからこそ、敵国アメリカの捕虜の生体解剖と言う極めて残忍な行為に傾倒してしまったのだと思った。最後は唐突に終わっており、勝呂医師"のみ"その後については第一章にて先に描かれている。それ以外の関係者は想像するしかない...が自分が思うに、勝呂医師よりかはまともな生活をしているだろう。何故なら、解剖に立ち会った、本当にただ観ていた"だけ"の勝呂医師はこの時まさに良心の呵責に苛まれており、今現在もその真っ只中にいる様子が窺えるからだ。

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    投稿日: 2016.01.02
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    日本人にとっての罪と罰は何を意味するのか?民衆の戦争責任を違う側面から描いたものとしても読む事が出来ると思う。

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    投稿日: 2015.12.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    九州大学附属病院で戦争末期に行われた、米軍捕虜の生体解剖実験。 自分の出身地であることから興味がわいて読みました。 実験の詳細ももちろん描かれているが、それよりも関係者がその実験に関与するに至った心理に妙に説得力があった。勝呂の気持ちも戸田の気持ちもわかる気がして怖くなる。 日本人的な心の動きを描いているので、途中で西洋人の女が言う「神が怖くないのか」というセリフがやけに浮いていた。 あんまり気持ちのいい話ではないけど、嫌いじゃないです。 解説も面白くて、「留学」「沈黙」と合わせて読むといいらしい。

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    投稿日: 2015.10.14
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    初めて読んだのは、10代の初めのことだったと思う。 その頃私は、人体実験という行いの醜悪さや畏ろしさに対してもっと敏感だったのではないだろうか。 ところが、今回感じたのは人間の愚かしさや残虐さがまるで薄い羅紗布一枚隔てただけの間近にあるという感覚だった。 それどころか、医師や看護師がなぜこの行為に及んでしまったのかという心理に、共感すら覚えたのだ。 諦念や、自分の心身のバランスを保とうとするが故の破壊衝動が人間の感覚を鈍麻させ得るということを、この10年で理解したということになろうか。 "この人たちも結局、俺と同じやな。やがて罰せられる日が来ても、彼らの恐怖は世間や社会の罰にたいしてだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ"

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    投稿日: 2015.09.23
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    ずっと読みたかった。ようやく読んだ。確かにとても日本人的な小説。流されて「罪」を犯すから、ではなく、うじうじと迷うしやってもやらなくても後悔するから。これが欧米人なら雲ひとつない空の下、まったく完璧に正当化するだろう。それが「神」なんですかね。その対比を明確にする意味で冒頭の、勝呂医師が寂れた医院を開業している東京郊外の街の垢っぽく埃っぽい描写の効果は抜群。これがなければ一本調子になっていただろう。凄い。

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    投稿日: 2015.09.07
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    実際行われたという生体実験にまつわるストーリー。息苦しかった。 文章の構成は面白くて、かならず誰かの視点に共感できることと思う。私は戸田…かなぁ。 いまってなんて平和だろう。とぽつんと思った。

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    投稿日: 2015.08.26
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    何も感じないことが一番怖い。その恐怖がなんとなく想像できた。 医学のことはよくわからない。何を進歩と呼び何を過ちと呼ぶのか、判断なんてつきそうもない。 ただそういう事実があることを重く受け止めたい。

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    投稿日: 2015.08.08