
総合評価
(1125件)| 426 | ||
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powered by ブクログ言語や進化、自由という核となるテーマについてはピンカーやデネット、ドーキンスといった一流の学説を引用することによって思考をビルドさせ、箸休めにカフカやモンティ・パイソン辺りをスパイスとしてまぶすことで感性を刺激する。メタルギア的世界観やガジェットのディティールを突き詰めることでエンタテイメント性を確立させながらも戦争とテロに塗れたディストピア的世界を描きつつ、それをゴシップとピザと娯楽映画に首まで浸かった僕らの「日常」へ着地させる。徹底的に洗練されながらも、高度に構築された物語はまさにゼロ年代そのものだ。
0投稿日: 2012.09.24
powered by ブクログスペクタクルに展開したがっつりSFなのに哲学的で、 読んでいて飽きない面白さ。 主人公の淡々とした語りと、 抱える感情へのもどかしさが合わさって、 全体的に憂いを帯びた雰囲気。 「ジョン・ポール」って、名前だけだとビートルズを思い浮かべるけど、 ……皮肉ですね。 第一部を読んでいる途中で、先に巻末の解説を読んでしまったので、 作中の「死生観」を強く意識せざるをえませんでした。
1投稿日: 2012.09.24
powered by ブクログジェノサイドの後にこの小説を読んだという間抜けというか不可思議現象というか・・・。 すべてがおさまるべきところにおさまり、知らなかった世界の光で輝いている。なんというか、それは「見知らぬ他人」の中。 この「見知らぬ他人」の中でずっと培われ育てられた世界がとつぜん私たちの目の前にあらわれた、そういう、絶対感。 光臨、とはこういう感覚だろうか。伊藤計劃とは私の中でまさに光臨、した人。 ラストのB級映画っぽい展開が、いっとう気に入った。もちろん最初からここに向かってすすんでいるのだけれども、なんという違和感!多面的だと思う。それもまた魅力。で、深層心理のやさしい描かれ方や深い探求、冷酷、残酷な冷たいものとないまぜ。 もっともっとこの世界の中をいきたいと思いました。
1投稿日: 2012.09.18
powered by ブクログ若くして没された鬼才 伊藤計劃氏の名高い処女作ということで読んでみました。 アメリカ人の特殊部隊員の主人公が、各地で虐殺行為を誘発させているある人物を暗殺するという任務を基軸とするストーリーであるが、読み所は、それらのストーリーや登場人物を通して、 人間が持ちうる思考や感情(特に良心)を哲学的に解読し人間心理を深く追求しているところでしょう。 とても斬新な切り口で読ませる作品ではあるが、 なんというか、小説全体が浮いた感じを受ける。 話し手(作者であり登場人物)と、テーマ、ストーリーが融和しきれていない為、どこかフワッとした軽さが感じられる。要はSFにも成りきれず、サスペンスにも成りきれず、文学にも成りきれずといった感。 そして、アメリカ人の描き方や、その他設定含め、「日本人が描いたアメリカ人」という臭いが鼻をかすめ、個人的な情緒も一因でしょうが、どこかずっと入り込めませんでした。
0投稿日: 2012.09.18
powered by ブクログハーモニーを先に読んでしまったので。。。 自分を罰してくれる人を追い求めたい。 母性か、マザコンか。
0投稿日: 2012.09.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
世界中の発展途上地域で内戦が頻発している近未来。先進諸国は個人情報を徹底的に管理することでテロを未然に防いでいたが、発展途上地域の混迷の度合いは日増しに深まり、かつ激しくなっていた。米国の特殊部隊に属する軍人クラヴィス・シェパードは、頻発する大虐殺の影にあるひとりの男が存在することを知り、その男を追う作戦に参加する。男は、人を虐殺に誘う「器官」を発見し、実用化したらしい。常に死の影がつきまとう戦乱の地を駈けるクラヴィスが見たものは?そして「虐殺の器官」が意味するモノとは? 「ゼロ年代最高のSF作家」と呼ばれる伊藤計劃氏の代表作です。あまりにも評価が高いので、2作目の「ハーモニー」に続いてこちらも読みました。読み物としては、すごく面白かったです。ページを繰る手が止まらない感じ、極上のエンターテインメントですね。 <以下、ネタバレ注意!> が。 うーん、何と言ったら良いんだろう・・・センスはスゴく良いと思うんですよ。現代社会と地続きの生々しい問題をテーマとしたリアリティ然り、イントルード・ポッドやシーウィードといったメカ系のカッコ良さ(メカのカッコ良さを文章1本で表現できる筆力もまた実に素晴らしい)、痛覚マスキング等の先進的ガジェットのクールさ然り。 でも、ここまでリアルにクールに進めておきながら、肝心要の「虐殺器官」たる文法のリアリティが、鴨には全く感じられなかったんですよね。長々とした説明はされているんですが、それがどういうものなのか、読者の想像力を喚起しないんです。「そういうもんだからヨロシク!」って感じでヽ( ´ー`)ノせっかく「言語」というチャレンジングなテーマに挑んだSFなんだから、せめてディレイニー「バベル17」ぐらいのネタ的リアリティは持たせて欲しかったです。SFたるもの、「現実」である必要はないけれど、「それ、あるかもしれないな」ぐらいのリアリティがないと、ただのファンタジーに堕してしまいますからね。 このレビューをつらつら書いていて、先に読んだ「ハーモニー」に感じた違和感も何となくわかったような気がします。「ハーモニー」の核心キャラである御冷ミァハにリアリティがないんですよね。それ以外の舞台設定はとても重みを感じるにも関わらず、ですよ。要するに、この人の作品には「中心にリアリティがない」のではないかと。 伊藤計劃氏が既に亡き今、新作は望むべくもありませんが、もっと人生経験を積んだ後ならきっと素晴らしいSFを世に送り出せた人なのだろうと、鴨は思います。
0投稿日: 2012.09.17
powered by ブクログゼロ年代ベストSFとか言われていたので、積読してたのを引っ張り出して読了。結構おもしろかったけど、小ネタがモンティパイソンとかなので、若い人にはわからないかも。個人的にはベストってほどでもなかった。
0投稿日: 2012.09.16
powered by ブクログ登場人物の一人がモンティ・パイソン好きという設定で、いくつかネタが出てくる。初めが「殺人ジョーク」。中盤以降、立て続けに「スペイン宗教裁判」「シリーウォーク」と出てきて、「ホーリー・グレイル」を見るシーンが出てくる。しかし、「スペイン宗教裁判」の直後にさらっと書いてある「悪魔的笑い」も「スペイン宗教裁判」のスケッチに出てくるネタですね。こういうところが細かい。
0投稿日: 2012.09.13
powered by ブクログ9.11以降、テロ対策として徹底的に管理されるようになった世界。人々は何をするにも認証が必要で、いつどこで何をして何を買ったかといった情報が国家によって管理される代わりに日々の安全を得ている。暗殺部隊の主人公は、そんな管理された世界においても何故か捉えきれない謎の人物を追う。そのターゲットの周りでは必ず大量虐殺が起こるのだが・・・。 まず何より筆力が素晴らしい。SF要素もそうだけど、単純な物語力?というか読ませる力と文章の繊細さがすごいですね。グロテスクな表現もところどころあるのに。現代の罪と罰とは良く言ったものです。 僕は個人的にこういった考えさせられる内容のSFが一番好きです。
1投稿日: 2012.09.13
powered by ブクログ感想を書けるほど自分はこの小説を理解していないかもしれないけれど、とりあえずは一通り読んだとゆうことで感想を書く。 人によって読み方が違うという前提はもちろんあるが、私はルツィアがこの物語りにおける重要人物に思えてならない。 何故なら、ルツィアが唯一絶対的に正しいんじゃないかという軸を持っているからである。 クラヴィスやジョン・ポールの考えていること、主張することは理解できる。 だけど共感するとか反対するだとかそんなことを語るほど、私はそれを知らない。 もしこの二人だけが主な登場人物であったら、多分私はこの小説を頭で消化することが少しもできなかったんじゃないかと思う。
0投稿日: 2012.09.12
powered by ブクログ凄く面白かった。 時代は、テロを防止する為に日常生活では常に認証が必要となった近未来。 暗殺部隊にいる主人公は、虐殺が発生する国に常にいるジョンポールなる人物を追うが逃げられてばかりいた。そこで彼の恋人に接触するが逆に捕えられてしまう。ジョンポールから聞いた虐殺の真相は驚愕の内容だった。 あらすじを書くと陳腐な内容になるが、人物やストーリーがとても良く書かれていてリアルに感じられ面白かった。登場人物は主人公、同僚のウィリアムズ、ジョンポール、彼の恋人ぐらいと少ない。ただ彼らと主人公の会話等がとても興味深い。中でもこの言葉が印象に残った。「自由はバランスの問題だ。純粋な、それ自体独立して存在する自由などありはしない。」 作者が亡くなってしまったのが残念。
2投稿日: 2012.09.10
powered by ブクログこんなに重い小説はじめてだ。 もしかしたら読むのに10時間かかったかもしれない。 はたからみると、不可解理不尽な行為も、完全なる選択の自由に基づき、完璧に合理的だ、と言ってもいい。 罪と罰と覚悟。 それらを超越するのは愛のみか。 終盤、恨むべきジョン・ポールに同意してしまった。 pp.202~208の主人公とルツィアのやりとりは圧巻。 言葉で表せないほど体の中から震える小説にはじめて出会った。 このレビューみた方は是非生きているうちに読んでほしい。 後悔は、しない。
0投稿日: 2012.09.10
powered by ブクログ★あらすじ 近未来軍事SF。 9.11後、米軍はテロ撲滅のため情報軍に特殊部隊……暗殺部隊を設け、テロリストの親玉や内戦の悪質な首謀者を直接倒す作戦を幾つも実行していた。 主人公はその部隊の一員。 彼らが出動する先は、ここのところテロリストの潜伏地よりも、内戦国が多くなっていた。 内戦が激化し、一般人を巻き込んだ大虐殺が起こることが増えていたのだ。 そしてここ数年、それらの国の中枢部にはジョン・ポールというアメリカ人の存在が見え隠れしていた。 ★感想 ベストSF2007 1位、ゼロ年代SFベスト1位、PBミステリ大賞。 9.11後の世界が大テーマであるわけなんだけれども、むしろ内戦→大虐殺ってあたり、シリアとかリビアとかの状況を予言したかのようで(・Д・;))))ガクブル もしかして、ジョン・ポールみたいな輩がアラブ諸国を巡ってるんじゃなかろうな…… 惜しまれつつ30代で夭折なさった作家さんの初長編です。 もったいないよう・゚・(ノД`;)・゚・ 上記した先見性ももちろんなんだけど、軍事物的な力強さとかマッチョ感満載でありながら、主人公の本質が、実はセンシティヴな文学青年だったりするあたりで、ナチュラルに純文的でもあり。 この人が長生きしたら、どんだけすごいもの書いたんだろう。 もう1作だけオリジナル長編を残してらっしゃるので、そちらも読んでみたいです。
0投稿日: 2012.09.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
非常に深刻な「原罪」を描いている小説である。内容は軍事小説だが、語り口はティーンエイジャーのように繊細である。概要を書くと、アメリカ情報軍暗殺部隊に所属するシェパード大尉は、中央アジアで、ある男を取り逃がす。その男が入った国ではなぜか内戦による大量の虐殺が起こる。その男、ジョン・ポールを追ってシェパードはプラハへ行き、ポールの愛人だったルツィアをスパイすることになるが、シェパードはルツィアを愛してしまう。スパイ行動は露見し、ポール一派に捕らわれるが、仲間に救出される。ポールは逃亡、その後、インドで逮捕するも、また逃げられ、最後にアフリカで対決する。ポールは言語学者で、ホロコーストの研究から、ヒトが進化の過程で得た食糧不足時に同胞を殺すしくみ、「虐殺器官」を発見し、これに働きかける「虐殺文法」を使っていた。彼は貧困国のPRを行う文化宣伝官に就任し、一見害のないメッセージのなかに、秘かに「虐殺文法」をしこんでいた。そのメッセージが一定の閾値を超えると、ある言語共同体のなかでは、良心がねじ曲げられ、殺し合いが始まる。彼が「虐殺文法」をつかう理由は、貧困国が先進国へのテロに向かう前に、内戦によって互いに殺し合ってもらうこと、つまり、先進国が安全に暮らせるためであった。ポール自身は自らが密通している間に、サラエボでムスリム原理主義による核攻撃が起こり妻子をなくしている。こうした個々の登場人物がもつ「罪」も大きなテーマであるが、先進国の快適な暮らしが貧困国の悲惨な犠牲の上になりたっているという「罪」がストーリーの展開とともに浮き上がってくる。豆腐屋の名前が書かれた中古車が中央アジアの内戦地で機関銃を積んでいたり、大阪でつくられた量産品のICチップを埋め込まれ、表計算ソフトで生死を管理される少年兵が登場したりと、「チープ」なものが残虐な用途をもつ世界が淡々と語られていく。また、宅配ピザを受け取るにも「生体認証」が必要な先進諸国の「監視社会」や、鯨の筋肉が産業用に転化され、飛行機や軍需品が生体部品でできている「自然の収奪」も描かれている。シェパードと母との関係では、安楽死や意識の問題を考えさせられる。ネットワーク理論や、ピンカーなどの言語理論などもでてくる。憂鬱な小説だが、考えさせられる点は多い。
1投稿日: 2012.09.05
powered by ブクログ「夢中になり、嫉妬して、ファンになりました」(伊坂幸太郎)、「私には、3回生まれ変わってもこんなすごいものは書けない」(宮部みゆき)=帯より。売れっ子のベテラン作家をこう言わしめるのは、故・伊藤計劃氏(享年34歳)のデビュー作だ。 舞台は9・11後、テロとの闘いが新たなステージを迎えた2020年頃(劇中にははっきりとした年代記述はない)。後進諸国では、内戦や虐殺が急激に増えていた。そんな中、クラヴィス・シェパード米軍大尉は、その虐殺の陰に必ずいる謎の男、ジョン・ポールの暗殺を命じられる…。主人公は暗殺者ながら、植物状態にある母の延命をしなかったことで悩む青年。物語は一人称で語られる。 SF版「地獄の黙示録」といった内容だが、充分に意識しているのだろう。主人公「ぼく」はマーティン・シーン演じるウィラード大尉であり、ジョン・ポールはマーロン・ブランド演じるカーツ大佐だ。 このオデッセイの中に、軍事、世界紛争、宗教、文学、言語学、科学、医学、生態学…あらゆるものが盛り込まれ、作者の知識が総動員されている。ジョン・ポールは何者か? 自分の手を汚さず、どんな方法で大量虐殺を生み出したのか、なぜ? というミステリーとしての読みどころもある。 11年、伊藤氏の3作目「ハーモニー」がフィリップ・K ・ディック記念賞を受賞したとのニュースを知り、こちらから読み始めたのだが、完成度はこのデビュー作が上。しかも、「ハーモニー」は「虐殺器官」の世界を引き継いでいるそうなので、未読のかたは「虐殺器官」から読むことを薦めたい。 半年後か1年後にまた読み返したい傑作である。
0投稿日: 2012.09.04
powered by ブクログとにかくすごい。科学技術のリアリティがありすぎて、当初SFということを忘れて現実でありうることなのではないかと思ってしまった。終盤は怒涛の展開、面白かった。
0投稿日: 2012.09.03
powered by ブクログ高度なラノベ。独りよがりでものすごく衒学的。薄っぺらい。とりあえず固有名や用語を出しておけばいいだろう、という感じ。つめこみすぎなのかも。 話の流れとしては超単純だが、舞台設定だけは用意周到に作られているように思う。しかし、こうも哲学的・科学的概念を小説にうまくあてはめて、いかにもそれっぽく語ることは許されるのだろうか。 あまりSFを読んだことがないからわからないが、SF小説はみんなこんな感じになるのだろうか。「もしもこうだったら」という世界を楽しむものであって、やはりそこで使われているアイデアに説得力があったり、正しく使われているか、という観点は必要ないのだろうか。自分の意見は的外れなものかもしれないが、それとは関係なくあまり面白く感じなかったのはたしか。 現象ゾンビが現実に存在するとしたらどのような形になるのか、という点で「痛覚マスキング」を捉えてみると面白いのかもしれない。 消費社会とセキュリティ、情報社会をめぐる設定は面白いと感じた。 良心、自由、進化、あと言語について主人公と悪役、脇役たちが論じている箇所がかなりあったが、不要なのではと思うくらい全く面白くなかった。また、正しいとも思われない。
0投稿日: 2012.09.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
チョムスキーの生成文法をベースに展開する衒学的な和製SF. 文章の密度が高くて中盤眩暈すらしてくる。主人公が怠惰な日常に埋没しつつ虐殺を選び取るラストシーンは気が抜けつつも、妙なリアリティーがあって、それが怠惰な日常と虐殺が地続きであることを証明しているようで居心地が悪くなる。 良いSF作品は日常の異化に成功している作品だと思っている。そういう意味で久々に和製SFの傑作。 夭折が惜しまれる。。。
0投稿日: 2012.09.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み始めたころ、あまりこういった類の作品は読まないため、「ジェノサイド」のようなエンタメ的要素が強いのこと思った。 ところがどっこい、物凄い純文学よりな重たさ。 良い意味で期待を裏切られた。 こんな作品を日本人が書いていたとは。 10日前後でこの作品を書きあげたそうだが、読み手も少しずつダラダラではなく、一気に読み終えてしまうことをお勧めする。 作者が生きていたら…これからどんな作品を産み落としてくれたのだろう、誰しもがと思ってしまうだろう。 その才能がどこかの有名作家だけでなく、神にも嫉妬されたのかもしれませぬね。
0投稿日: 2012.08.30
powered by ブクログSFでありながら、平和、貧困、戦争を啓蒙する内容。 「ハーモニー」もよかったが、「虐殺器官」のインパクトはもっと強烈だ。 伊藤計劃の若き死は、悔やまれる。
0投稿日: 2012.08.26
powered by ブクログ福井晴敏が言語学者っぽく語るとこんな感じなのでしょうか。後半のジョンポールの捕獲・奪還シーンは最高。最初に藤原豆腐店の車が出てきたところから面白そうと思ったのですが、ややとっつきにくくて時間がかかりました。
0投稿日: 2012.08.22
powered by ブクログ2012年8月現在、個人的にSFがブームとなっているが、そのきっかけとなった作品がこれ。 人間の脳には虐殺を起こすスイッチ(虐殺器官)が備わっているという話が出てくるのだが、実際そうなのかもしれないと思うと本当に恐ろしい。 本作は日本における2000年代最高のSF作品として評価が高い。 作者の伊藤計劃は09年に34歳で亡くなっているが、多くの人が口にするように、もし彼が生きていればこの先素晴らしい作品を多く残したであろう。それだけに早逝したことが残念で仕方ない。
0投稿日: 2012.08.19
powered by ブクログ初めて読んだ伊藤さんの本。それまであまり体験したことの無かった乾いた世界に、色々感じるものがあった。 「虐殺器官」がどういうものなのかがいまいちはっきりせずもやもやするところは「ハーモニー」の結末や「from nothing ,with love」なんかにも共通するのだけれど、これからもっともっとテーマを深めていかれたんだろうなあと思うと、早逝が惜しまれます。 「indifference engine」がいちばん好きな作品かも。 「屍者の帝国」が円城塔氏によって書き継がれ、近日刊行とか。興味深いです。
0投稿日: 2012.08.17
powered by ブクログ東南アジア旅行の旅のお供に読んでいた。丸善で特に買うつもりもなかったのだけど、帯に惹かれて。で、読んだら、面白かった、という。スケールで言ったら、これは普通にハリウッドで映画化されて然るべきレベルにあると思う。他の作品も読みたい。というか、もう亡くなってしまっているというのは非常に残念だな、と素直に思う。(10/10/23)
2投稿日: 2012.08.17
powered by ブクログ以前読んだ『ハーモニー』よりこちらを評価する。第一稿を10日で書き上げたそうだが、才気あふれる作品というのはそういうものかもしれないと納得した。 以上で発言を終わろうと一旦思っていた。が、チラシ裏程度のことでも、自分のための読書メモだと考えて、自分が思った通りのことを書いておくことにする。 この作品には大きな欠点がある。 最初の賞の受賞を逃したのは、この作品を真に偉大な作品にするには物足りないその欠点が原因ではないかと推測する。 まず・・・・最後まで物語を引っ張る原動力となるジョン・ポールが、あまりにも欧米の知識人「らしくない」こと。 欧米の知識人は自己について言及する能力が豊かだ。言い換えれば「物語形成能力がある」。 日本人よりはるかに抽象的な思索に富むし、自分の考えを語ることに慣れている。別の言い方をすれば言い訳がましい。それも立て板に水の名調子で語る。語る。紙面を埋め尽くすように語りまくる。ロシア文学の名作ならその本の三分の一くらいといっても大げさではない。 この本の主人公は無神論者だが、無神論者であるならあるで、自分がなぜ無神論者であるか、欧米のフィクションに登場する「インテリ」なら聞かれてもないのに長広舌を奮うだろう。主人公より知的なジョン・ポールなら尚更。 この作品はリアリティを無視してでも、物語を着地させるため、ジョン・ポールに数ページにわたって雄弁に語らせるべきだったのだ。 さらに言うなら主人公も、最後の母親のエピソード・・・・主人公に「回心」とも言うべき衝撃を与えたに違いないエピソードで、もう少し慎み深さを捨て去るべきだった。 終盤の主人公は、ある意味外国人が「理解できない」と困惑する日本人の典型を見ているよう。当然悪い意味でだ。 どうも白人の、それもエリートという設定にしては、最重要人物が二人とも「らしく」なさすぎる。読んでいる最中に耐え難いと感じるほど。(彼らの行動に説明がない) この作品はプロットもアイデアも申し分なく素晴らしい。 けれど人間をその人のプロフィール「らしく」描けていない。 ほんのちょっとでもこの作品を強化するには、せめて主人公は日系アメリカ人でなくてはならなかったと思う。 が、それは些末事だ。 読者の関心は何よりジョン・ポールにあるのだから。 ジョン・ポールが語るべきことを語っていないこと。これがこの作品の見過ごせない重大な瑕疵である。 けれど逆にそのことによって、この本は違う重大な問題を照らし出してる。 死の淵に立っても自分を語る言葉を持たない日本人という問題を。 言葉が過ぎかもしれないが、今はそう思う。
3投稿日: 2012.08.17
powered by ブクログ久しぶりに読み応えがあった。 熱中できる本でした。 生き死にについて、自分とは、その意思とは何か考えてしまった。
0投稿日: 2012.08.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
≪内容覚書≫ 核爆発によるサラエボでのテロ。 先進諸国は徹底した管理態勢でテロを一掃。 しかし、後進諸国では、内戦・民族衝突、そして虐殺が急激に増加。 そして、その背景には、 「ジョン・ポール」という男の名前が見え隠れする。 アメリカ軍大尉クラヴィスは、ジョン・ポールを追いかける。 果たして、ジョンの目的は? クラヴィスは、ジョンを捕まえられるのか? ≪感想≫ 現実になりそうな非現実の世界が、想像力を刺激してくれる。 夢が溢れる楽しい世界観ではないので、心はときめかないが、 こういう殺伐とした世界に、 いつか本当になってしまうのではないかと思える恐怖感がよい。 表現が少し堅苦しく、専門用語が多いので、 読みやすさには欠ける。 おまけにテーマが重いので、多少読むのがしんどい。 じっくり読んで楽しむ本。 ただ、結末は、十分に予想できてしまうのが残念。 ジョンの背景はもちろん、クラヴィスの結末まで、 ある意味パターン通り。 安心の結末、と言えなくもないが…。 薄っぺらい中身を、世界観と文学的表現でゴテゴテ装飾して ごまかした感じがしてしまわなくもない。 逆に、パターン通りの展開を、 独特の世界観と、難しく装飾した一文一文で、 最後まで飽きさせずに読ませてくれた一冊、と考えることも可能。 面白くなくはないが、手放しで褒めにくかった作品。
0投稿日: 2012.08.14
powered by ブクログSF好きの人には最高の作品なんじゃないでしょうか。現実からかけ離れ過ぎておらず、過去も絡めた内容でありイメージしやすいものでした。ただ組織名や専門用語はややこしいな〜と感じることがしばしば…でも内容は間違いなく面白い。
0投稿日: 2012.08.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「ハーモニー」と言い「虐殺器官」と言い主人公が人間でなく、世界観だという思い込みから逃れられない。主人公の苦悩も気になるが、世界がどう動くか興味が尽きない。虐殺の器官はどうやって世界はに支配し尽くすのか、というその興味が最後まで読み終えさせる。 「ハーモニー」世界の過去を描く。ただ直接的な関連性はない。 生体認証ICを解し、プライバシーを犠牲にテロの抑制をなしとげた世界は「ハーモニー」を予感させ、ぞくりと悪寒が這い上がった。 繰り返し繰り返し描写される、母と死の世界。 兵器に使われる人工筋肉の原料が養殖イルカであること。 「意識」や「わたし」がどこで区切られるか。 痛みを感じず知覚する兵士がゾンビのように戦うこと。 すべてが監視されること。 ふと、考えさせられる気がした。 -------------- あらすじ(詳細) 暗殺を主とする特殊任務に就くアメリカ軍情報軍大尉を主人公に据えて。 世界がジョン・ポールの発する虐殺の文法に侵され、内戦と紛争に支配されるまで。 内戦・紛争が勃発する地域で必ず姿を現す男がいる。ジョン・ポールあるところに内戦有り、と彼の逮捕・暗殺命令が下ったクラヴィス・シェパードが彼を追う。 1度目は逃し、2度目にはジョンの恋人に近づいたがために捕まったシェパードはそこで虐殺の文法を教授される。すなわち、虐殺の文法が浸透させることで、殺し合いを始めさせるのだと。 仲間に救い出されて後の3度目、ジョンを捕まえるが彼を支持する者の攻撃により逃し、多くの仲間を失う。 4度目、終にジョンへたどり着くが、心を移していたジョンの恋人が殺され、ジョンを連れて逃亡するがジョンは射殺される。そして、逃亡時仲違いし置き去りにした、最も親しい仲間を失う。 4度目にジョンが虐殺の文法を歌う目的がテロを起こしそうな国を内戦で惑わせ外に向ける目を失わせ、それにより国を守ることだと聞き、また虐殺の文法を手に入れたシェパードは、アメリカで虐殺の文法を繰り返し歌い、アメリカを内戦に叩き落す。 ──というのは本書の本質ではない気がするが。
0投稿日: 2012.08.10
powered by ブクログ監視・認証社会が本当の暴力からは身を守ってくれないことを痛感させられる一冊。この小説が描くせかいは今のゆるく幸せな生活の裏側を暴くもので、エンディングではそれがいとも簡単に引っくり返される可能性も示唆している。心に残る一冊になつた。
0投稿日: 2012.08.06
powered by ブクログ登場人物がアメリカ人ということをさしおいても、日本人が書いた小説には思えなかった。スケールが大きすぎて、私の好みにはあんまり合わなかった。
0投稿日: 2012.08.02
powered by ブクログちょっとグロくて、ミリタリーでARな世界観が良い。 文学的な台詞は少し疲れるが、描写が細かくて、独特の世界観に浸れる。
0投稿日: 2012.08.01
powered by ブクログプロットがいい。読みやすい。デティールがいい。登場人物の気持ちがよくトレースできる。キャラクターが魅力的。 私にはこれで十分。 悲惨な現場がたくさんでてきて、それは十分にわかるのに、全体としては、この本の表紙のように静寂と落ち着きがある。不思議な本。 映画とかゲームをやっているようにするするとはいってくるのに、「ほらー!!こわかっただろー!!!」とか「ほらー!!このキャラクタおもしろいだろー!!!」ってドヤ顔で迫ってくる最近流行ってる小説群のいやらしさがさっぱりない。 作者は病床で何十年も小説をかいていたい、と言っていたそうだけど、それは本当にこの本を読んだ人たちみんなの願いじゃないだろうか。 この人が小説を書く人で本当によかった。 死んでしまった後も、こうやって、彼の書いた本を見れて本当によかった。 そう思った1冊でした。
0投稿日: 2012.07.29
powered by ブクログストーリーは規模が大きくて、ミステリー要素もあって想像力がかきたてられ、テンポもいいので、どんどんその世界観に入り込んで行けますが、とにかく言葉が難しい。考え考えしながら読み進めるのにひと苦労でした。 ストーリーがとても面白いので、何も考えずに読めば良かったけど、気になってしまったものはどうしようもないです。これがキーかな?と思う言葉をメモしながら読んでいきました。これもこの作品の意図かもしれないと考えましたね。。。 グロテスクだったけど面白かった。でも、どこかひっかかっている変な気分というか…結局、これはあわないということですね。
0投稿日: 2012.07.27
powered by ブクログクラヴィス・シェパードの視点からみた国際軍事策略サスペンス。と一括りにするにはあまりにも刺激に満ちた作品。とても日本人が書いたと思えない内容に、数多の賞を受賞したというのも納得。 貧困国にて虐殺の言葉を紡ぎ続けるジョン・ポール。ジョン・レノンとポール・マッカートニーの両人(+リンゴ、ジョージ)で世界を席巻したビートルズの歌にかけているのだろうか。
0投稿日: 2012.07.25
powered by ブクログあーおもしろかった! まるで本当に現代の延長線上にあるかのような、舞台設定の奥行きある作り込みにわくわくする。 そして何より、この作品を仕上げた作者の情熱に気圧される。 それと、豊富な知識を上手に理性のブレーキを踏みながら説得力を持たせて語る力量にも。 作者の早逝がただ惜しい。
0投稿日: 2012.07.23
powered by ブクログ1ページ目からエグい残酷な描写が多いですが、SFサスペンス小説としてかなり楽しめます。 また、社会状況を咀嚼し、世間に隠れた価値観に対する違和感を後味に残していきますが、それがまたよかった。 読んでいる最中から、これはいい作者見つけたと、思いながらニヤニヤ読んでました。すでに鬼籍に入られていたようですので、惜しい限りです。
0投稿日: 2012.07.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なれない世界過ぎて、たまに文章につかえたけど それを差し引いても★5つの面白さ。 図書館で借りたんだけど、そのうち所有したい1冊。 是非是非映画化してほしい。 地球上で考えられる中の最高のスタッフとかで。 クラヴィスは男前君で! 伊藤計劃氏の、残り少ない作品も近いうちに読む。
0投稿日: 2012.07.18
powered by ブクログ★★★★☆ 4 とてもおもしろかったよ〜! 人が実際に考えるのと同じように思える感覚で、繰り返し象徴的なモチーフが主人公によって思い出されている。この点が特に繊細で、読者のことをとても考えて書いていると思ったよ。 押井守作品に触れたときのような、緻密さと鮮やかさが少しあって、感心して読みながらニヤケてしまうよ。 テーマ、ラスト、謎解き、そういうエンターテイメント的な要素を超えたところにある、ただ文章から伝わる何とも言えない面白さを感じられた気がするよ。 ただ、逆に言うとラストや謎解き要素には物足りなさを感じるかな…
1投稿日: 2012.07.16
powered by ブクログストーリ展開は、普通な感じでしたが、読んでいる間は結構楽しめました。随所に出てくるSFを背景にした哲学的な問い(脳のどこまで残っていれば、その人であるか?等)も、良いスパイスとして効いていて楽しめました!
0投稿日: 2012.07.14
powered by ブクログ参りました! 文句なく面白い! いろんなとこから高評価得てたのは知ってたけど、作者が亡くなったんで贔屓目入ってんじゃないのー?なんて思ってました。 すいませんっした! 「私」とは何か、「死」とは何か、なんて話に南北問題も絡んできたりといろんな問題提起がありながら、エンタメとしてSFとしておもしろい。 いやー、小川一水といい、日本SF舐めてましたわ。 謝ります。 SF好きもそうじゃない方も一読の価値あり!
0投稿日: 2012.07.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『虐殺器官』の主人公はアメリカの暗殺専門部隊に所属する暗殺の駅図パートであり、彼が数人の仲間とともにこなすミッションが物語の骨格を為す。そのミッションの多くは紛争当事国となっている発展途上国で行われ、そうした発展途上国では決まって虐殺事件が頻発している。その虐殺の原因は様々だが、そこには決まってある一人の人物の影がちらついている。その人物が、本作において敵役として描かれることになる、天才的な言語学者のジョン・ポールだ。そして、ジョン・ポールは、独自に発見したある法則によって、世界の虐殺を引き起こしていく…。 今は亡き作家・伊藤計劃による長編SFであり、すでに単行本の発売から5年が経過しようとしている今、その文体や構成の巧みさについて付加することは何もない。しかし、この作品中で重要な位置を占める2001年のアメリカ同時多発テロから10年以上が経過した今、日本人の政治意識においてこの作品がどのような位置を占めうるのか、ということは考察するに値する。 本作において重要なモチーフとなっているのは、「殺人の動機の感染」というものだ。 一般的なものの見方では、虐殺というのは頭がイカれたり、「崇高な」政治思想に狂った政治指導者が引き起こすものだとされている。そして、後世の研究者や歴史家によって幾ばくかの理由付けがなされ、虐殺には政治的合理性や宗教的合理性があったのだと説明される。 なぜこのような合理化が行われるのかといえば、それは、大抵の場合、人は虐殺がまったく無意味に行われるものなのだと思いたくないからだ。虐殺に類いする残虐行為についても同様だ。原爆投下や大空襲にしても、それがまったく無意味な行為であるよりは、戦略的行為であったほうがまだ救われるのだ。 しかし、それでもこの世界で頻発する虐殺(あるいは残虐行為)には、人の合理的思考のキャパシティを超えるような(あるいはそのように映る)ものも存在する。というよりも、どれだけ合理的説明を聞かされても釈然としないものが残る、といったほうがいいのかもしれない。たとえばオウム真理教事件。それが教祖の洗脳や誘導の結果だったのだとしても、それだけであのテロ事件をすべて説明しつくすことができるとは誰も思っていないだろう。 そうした虐殺や残虐行為の奥底に潜む不可解さとは何なのか。このテーマは、創作において度々取り上げられてきたテーマであった。たとえば黒沢清の『CURE』。たとえば大塚英志/田島昭宇の『多重人格探偵サイコ』。これらの創作の中では、残虐行為は感染によって引き起こされるとされる。残虐行為が人にとって不可解なのは、それが特定の個人や組織といったものに限定されるのではなく、何らかの形で感染力を持ち、広がりを持つからだ。その感染力は、ある場合には催眠術という形をとり、またあるときは他者へと転移可能なカリスマ的人格という形をとる。そして、本作『虐殺器官』においては「虐殺の文法」がそれにあたる。ジョン・ポールが「虐殺の文法」に則って起草した原稿が公共放送で読み上げられ、それが人々の間に浸透していく中で虐殺が引き起こされる…。 ある種の残虐な事件が起こったのちにこのような物語が書かれることには必然性がある。つまり、このような物語は、残虐行為にまつわる不可解さを「感染」の問題へと移行させることによって、その不可解さを理解可能な形に処理しようとしているのだ。 しかし、それは妥当な処理方法と言えるだろうか。「感染」の物語においては、多くの場合、主人公もまた感染の主体となる。ここではその「感染」を免れる超越的な存在はおらず、すべての主体が平等に「感染」する。そして『虐殺器官』においてもご多分に漏れずこの形式は繰り返されるわけだが、さて、これによって何か新しい発見はあっただろうか。9.11テロを中継地点とするテロの連鎖についての不可解さは解決しただろうか。 当然ながら、そんなことはない。 この種の「感染」の物語は、残虐行為の不可解さを謎解きする過程において、かえって残虐行為を平板に理解させてしまう枠組みを提供してしまうのだ。そしてその一方で、実際の「不可解さ」は、その物語の脇をするりと逃げ延び、さらなる暗闇の中へと姿をくらましてしまう。 2001年から10年経った現在、同時多発テロの現場にはモニュメントが完成し、光のタワーが犠牲者を追悼している。その一方で、アフガニスタンでは相変わらず米軍がタリバンの掃討作戦を展開しており、その過程のなかで多くのアフガニスタンの民衆が犠牲となっており、しかしその騒乱のなかで自治を築いている人々もいる。そして世界は、回復不可能なまでにディストピアな状況にあるわけではない。 私たちが本作のような「感染」の物語から学ぶべきことは、世界の「真実」などではない。つまり、世界や残虐行為の「不可解さ」の答えを本作に求めてはならないし、本作はまたそれを提供するつもりもないだろう。不可解さは、本作の主人公が決して罪の意識を手放さないように、私たち自身が抱え込むしかないものなのだ。
0投稿日: 2012.07.09
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「ハーモニー」読破後の、「虐殺器官」です。 書店で並ぶと対照的な白と黒の表紙。 内容に特につながりがあるというわけではないのですが、白と黒はよく似合った作品だなーと思いました。 著者はメタルギアソリッドオタクだと聞いていて、ゲームの内容は「隠密行動しながら標的を早く的確に殺すゲーム、…なのか?」位の知識の中で読む。 そういった武装や戦術の表現や知識は豊富で、姿形を文章だけで想像することは難しかったが、何となくカッコいいなーと思いながら読み進める。 ハーモニーのように刻々と時を重ねて進んでいく話ではなく、途中途中で主人公・米人のクラヴィスの心象風景でどっぷりの場面が出てくる。 そこで少し意識がぶつぎりにされてしまうのだが、そういう読み方でいいのかも知れないなと読後の感想。 クラヴィスは常々戦場にいて生き残る側ではなく、命令を受けて掃討しに行く側だから、訓練もしつつ何もないときはピザを食べながら映画を見て、日常を過ごしているのだろう。同じくぶつぎりの日常を過ごしているのかも、とか勝手に思って。 虐殺器官・虐殺の文法とは結局具体的にはどういうものだったのか、ちょっと分からず、これだと手渡されれば誰にでも扱えるもの…なんでしたっけ?学術用語満載で文学に精通していたクラヴィスだから扱えたのだとは思うけど。 世界には戦争が必要である、自分でないところに目を向けさせるために。だから起きてしまった物を収めるのでなく大義名分が成立し次第、起こしている。自分達に直接害を受けない場所、遠くで、大虐殺を起こす。それが世界の守り方なんだという。 うーん。最後は虐殺の文法を用いて、憎まれるアメリカを戦場に落とし込むことにしたクラヴィスは、他の国が今幸せであることに安堵する、といった、若干飛んじゃった様な境地に達する。 クラヴィスの場合はジョンのように冷静なのだろうか、いやジョンは冷静だったのだろうか…。 クラヴィスの心情一つ想像するのも、遠い。 SFだからとか戦場がモチーフだからといのもあるかもしれないが、近作も次作も現代の社会的問題点・人々の不穏な心情の延長上に作られたものだから、理解叶うと思ったが、ちょっと難しかったのかもしれない。 これも映像化しないかなと思う。
0投稿日: 2012.07.08
powered by ブクログ血の臭いがするSF。 近未来という設定で、人工筋肉やらオルタナやら未来っぽいツールが山ほど登場するけど、その世界の中で登場人物らがやっていることはただの殺戮。 どんなに科学が進歩しても戦争と切り離せない人類の歴史は永遠のメビウスの輪のようだと 思った。 「虐殺の文法」というアイディアが浮いてしまってるのがちょっと残念。
0投稿日: 2012.07.06
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かぎりなく☆3に近い☆4という評価。 どういうわけかな、何かを伝えるための与太話という感じがしなくなった、途中から。与太のための与太。嘘のための嘘をついている感じ。だけどこんな風に世界を意識した作品を書ける日本人作家がどれほどいるのか、あとこんな風に活き活きと嘘をつける作家も。というわけで作品自体の評価はそうでもないけれど、作者の他の作品も読んでみようと思った。 以下ネタバレ。 主人公シェパードは脳死の判定を受けた母の生命維持装置を取り払うことを医師に了解した。シェパードは母を殺した。言葉で。 米軍大尉シェパードは内戦から内戦を渡り歩くジョン・ポールという謎の人物を追い、そのたびに彼を逃がしていた。彼の女ルツィアを張り込んでいると、そこにジョンが現れる。 (シェパードがルツィアに恋愛感情を抱く場面がちっとも腑におちない。というか登場人物が皆おなじというか、話し方からしてそうなのだけれど、ここらへんは特にご都合だーと思ってしまう) 人々を憎しみあわせ殺しあわせる死のことば=「虐殺器官」。そのイメージは面白いのだけれど。主人公は「成熟してない」っていうより、途中からただのアホに見えてきてしまった。
0投稿日: 2012.07.05
powered by ブクログ【読了】伊藤計劃「虐殺器官」 7月2冊目 もともと書店で「ハーモニー」のハードカバーが目に止まっていて気になっていたんだけど、買わない状態が続いていた。そんな中、友人がTwitterで「ハーモニー」が面白かったとつぶやいていたので聞いてみたら、「虐殺器官からどうぞ」と言われたので、購入したしだい。 読んでいて、小説、物語を読んでいるというよりは、作者の脳内を覗き見ているかのような印象をもった。SFなんだけれども、現代の現実世界との違いをうまく文章に載せていて、見たことは無いのだけども、イメージが想像できるというか。いかにも説明パート始まりますよという感じでなく、自然な流れなのが上手いと思う。 さて、この「虐殺器官」というアイディアは本当に秀逸だと思う。もともと普段から「ことば」について、いろいろと思ってたり考えていたりしているからかもしれないけど、このアイディアは本当に素晴らしい。 少しばかり野崎まど「[映]アムリタ」にも似たようなアイディアを感じ取れるんだけども、映像にしろ、ことばにしろ、脳をコントロールするというアイディアは、無さそうで、有りそうで、とても面白い。 ただアイディア、文章、描写力はとても素晴らしいと思ったのだけども、全体的な感想としては、あとがきでも紹介される小松左京の選評と同じような感想を持った。特に終盤の展開、もう少し煮詰められれば・・・と思うのだけれども、執筆時におかれていた作者の状況を考えると、まずは書き上げたことが驚異的というしかない。 あとがき、最後のご母堂のことばがとても印象的。さぞや無念だっただろうに、素敵な言葉です。
0投稿日: 2012.07.04
powered by ブクログ核戦争が起こった後の近未来小説 主人公がアメリカの特殊部隊の一員という設定なので、生々しい描写が多いが、言語学が好きな人にはいいと思う。 曰く、「虐殺には文法がある」そうな。
0投稿日: 2012.06.30
powered by ブクログこれほど素晴らしい死体の描写を見たことがない 何度でも胸をぶん殴られる、殴られるたびに虹色の光がたわむ
0投稿日: 2012.06.29
powered by ブクログただならぬタイトル。そして、読めない作者の名前(笑) 評判を聞いて、気になっていた一冊。 冒頭から、そのタイトルを掲げたようなシーンが広がっている。 舞台は、あらゆる情報が管理され、人間の感情までも制御してしまおうかという世界。 淡々と冷静に人を殺すのが任務であり、そうしている自分を自覚してもいる。 それでいて突き当たる、どこまでが自分の意志なのか。 罰せられないことの苦しみ。 殺すことの正当性。 超ハイテク化された小道具が次々と出てくるけれど、そういったものよりむしろ、主人公の心の動きの方に強く惹かれました。 早くに亡くなったのがとても残念。
1投稿日: 2012.06.27
powered by ブクログ内容(「BOOK」データベースより) 9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
0投稿日: 2012.06.22
powered by ブクログこりゃたいしたもんだ。 久方ぶりにSF読んだという気になった。 ハードすぎず柔らかすぎず。 映画、アニメ、ゲーム、コミックスのどれかでもう一度味わいたい。
0投稿日: 2012.06.18
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9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。 若くしてこの世を去ってしまった伊藤計劃さんの処女作。 近代SF小説の部類だと思う物語ですが、奥行きがあって凄く面白いです。途中グロテスクな表現がありますが、話の本筋は実に深いものです。 技術の発達によって様々な道具や機関が出来ています。 それらは現代とかけ離れているような代物ではなく現実にも大いにありうる話だと思います。 主人公のクラヴィス、同僚の地獄は頭の中にあると言い自殺をしてしまったアレックス、科学の進歩によって悲壮の死を遂げるリーランド、ユーモアあふれるウィリアムズ。 正直ウィリアムズは死んでほしくなかった。 向かう所で虐殺が起こるジョンポール。 虐殺器官は人間に備わっているもの。 本当に深い内容の物語だと思いました。 言葉には非常に強い力を秘めていると再度思いました。
0投稿日: 2012.06.18
powered by ブクログタイトルが凄まじいのだが、知人から「面白い」と紹介されたこともあって購入。兎に角、文章が読みにくい。冒頭は2回読んで初めて理解できた。途中、読むだけで頭がパニックになりそうな部分も何カ所かある。でも、読み終えてみて、とても面白い本だと思う。タイトルから、どんどん人が殺戮していくグロテスクな物語なんだろうと思っていた。確かにグロテスクだし、たくさんの人が殺される。エンディングはもう少し長くても良いと思う。若くしてなくなったとの事だが、本当に惜しまれる。
0投稿日: 2012.06.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ジャケ買い。 装丁がシンプルで美しい。 帯が伊坂幸太郎、小島秀夫、宮部みゆきによる宣伝。 ひとまず、現代における「罪と罰」は言いすぎかと。 同じ作者の「ハーモニー」でもそうだが、ダーウィンの進化論やら、ナチスやらアルマダやらと色んなものを引き合いに出されてくるが、使い方・理解の深さが物足りない感じがした。 作者が少しずつかじって、自分の作ったロジックを補強するために散らばされているような。主人公の行動原理も今ひとつ腑に落ちない。特に後半からラストに至ってはショートショートの落ちみたいなくくられ方をしている。それでいいのかシェパード大尉。 抽象的な説明も多い。帯にもある小島秀夫監督のメタルギア4を思い起こさせる。 SFには免疫がないのでSFとしてどうかは分からないが、タイトルにも関連あるアイディアは物珍しいので今後に期待…したかったが作者は若くして病死されたそうで非常に残念。 伊坂、小島の作品が好きな人に向いてるかもしれないが宮部を好きでもあまり関係ない気がした。
0投稿日: 2012.06.17
powered by ブクログ9.11の大混乱から暫くし、テクノロジーの発展から人間は高度な技術により安全を確立していた。個人IDから特定される足跡と、それによって減少する犯罪。ただ、突発的なテロは増加の一途を辿る。 アメリカ軍の特殊部隊のシェパード・クラヴィス大尉は暗殺を生業としている。後進国で不自然に増えていく虐殺の背景にいる、ジョン・ポールを殺すべく、特殊部隊は動く。 再読。作者が亡くなってから改めて読んだ。 「安心して生きることができる」自由と引き換えに、「監視されない」自由を奪われる。自由は交換制で、完全な自由など無い。ただ何かほかと比べて経済の安定した国の住人が自由であるとすれば、それは「選択する」自由があるということ。 殺す、犯す、その他あらゆる犯罪は人間の本能的なもので、例えば食糧に全員がありつけるわけではない。誰かが居なくなれば、全員生き延びることができる。その為突発的なテロは、殺人は、後をたたないし、虐殺もそういうことだ。 虐殺は遥か昔から繰り返されてきた。それは遺伝子に組み込まれたものである。しかし遺伝子やミームが人間を支配するかといえばそうではない。それでも自分の意思で行動しているのか、それとも遺伝子の生存に対する欲求から生まれる信号なのか、はっきりとした自信は持てない。 しかし人間は進化していくにつれ確実に利他的になっているといえる。 虐殺に用いられる言葉の文法。言葉が人間を形成するわけではなく、言葉が生まれる遥か昔から人間は生存していた。それは武器にも成りうる。頭のなかに、地獄はある。 何処かで虐殺が起こっているからこそ、世界の均衡は保つことができる。誰かが死ぬから生きていることを実感できるように、嫌いなものがあるからすきなものをより強く愛すことができるように。 溢れる繊細さは、あらゆる登場人物の人間らしさのせい。アレックスは神を、ウィリアムズは妻子を、ジョン・ポールは人々を、それぞれ愛し信じていた。そのなかで何処か浮いたシェパードの際立った性格、そこから感じたのは解説にあった、冷静さ、よりも人間らしさだった。 生きることの曖昧さ、自由。そして転がる骸、腸の溢れでる、脳味噌のぶちまけられた、その骸たち。既に物質と化した死体。生きること、すべてが呆気なく消え、ただそれらが生きる者たちを生かしていることを忘れてはならない。数え切れない骸の上に、生きる者たちは立っている。 終わり方がとてもすき。
0投稿日: 2012.06.16
powered by ブクログ言葉がキーワードになり、テーマが興味深かった。興味深い兵器や、見えかくれする黒い部分。日常に見える非日常が良い感じのSFでした。
0投稿日: 2012.06.12
powered by ブクログ世界観がおもしろい。気持ちや行為が先にあるのか、それとも言葉に規定されているのか。そういう少し哲学的な思考が登場人物の口を通して語られる。そのひとつひとつがおもしろかった。 ただ、物語としてはよい!とは言えないかもしれない。SFミステリのわりにはあまり謎にひきこまれないし、長いわりには起伏がない。 この際、ストーリーテリングは置いておいて、もっと思考やことばに焦点をあてて、物語を組み立てたらどんなに素晴らしい文学作品を彼は残したことだろう。ちょっとジョイスに似ている気がする(ちょっとしか読んだことないのですが…)。夭折されたのが本当に残念だと思う。
0投稿日: 2012.06.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
銃の型がどうとか軍関連の話にはまったくもって興味がなく、読んでてつらいまたは気分が悪くなる部分多数。それでもそれ以上に深く掘り下げた、人への鋭く厳しい言及が多くて舌を巻いた。そして今現在の世界に当てはめて考えてはぞっとする。未来でテクノロジーの進歩が顕在化させた問題をSFで読むことで、その問題につながる現在の状態に強くリアリティを感じるなんて皮肉。進行中なのは今現在なのに。 終わり方がやっぱり腑に落ちないけどまったく共感できないわけではない。
0投稿日: 2012.06.10
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言葉と思考と外世界。神林長平の流れを彷彿とさせる。今、目の前で起こっている現実が非常に私的な内世界とリンクし、普遍性を持つ物語。ラストは予想通りであるが、物語の求める流れから行って其処へ行きつくしかないだろうと納得せざるを得ないので、違和感なく受け入れられた。からからに乾いた戦争描写と世界の在りようがナイーブな感性で翻訳され綴られる。最初の10ページあたりまではとっつきにくさを感じるが、その後はどんどんと引きこまれる。見えないものはないのと同じ。けれど見えなくても確かにある。意識しないところで進行していく問題と終らない地獄の在り処。SFという分野で綴られたからこそ、ここまで繊細な物語として完成したのではないかと思う。傑作。
1投稿日: 2012.06.10
powered by ブクログ近未来の一部を描いた作品。 実際に起きると非常に怖いと感じさせるが、どこか、実際に起こっているのではないかと思わせる。我々の生活とは別次元のような気がするものの、実際に起こっているように錯覚させる。読者のどこかしらに眠っている危惧を現実に掘り出す作品であった。 一気に読み切ってしまえるほど面白い作品。 是非おすすめ。
0投稿日: 2012.06.09
powered by ブクログクールな小説でした。 近未来を舞台にした戦争もの(正確には内戦)です。 ハードボイルドタッチでかつ文学的な文章でした。 戦闘シーンはもちろんあり、人は多く死にグロテスクな死体描写はありますが、不快感はまったくありませんでした。 初めの50ページ位は読み難いと感じましたが、それ以降は夢中で読むことができました。 終わり方が少し予想通りだったのと、印象的なラストではなかったので一つ星を減らしました。
0投稿日: 2012.06.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんとも言えない圧倒的な読後感。前に読んだ『ジェノサイド』がまだ平和な物語に感じてしまう。 内紛や民族紛争の陰に潜む虐殺器官という謎の存在。話の早い段階でその正体は分かりが、その実態、目的が分からない。その目的が分からないままに、分かっていくのはその虐殺器官とそれを追い詰めるアメリカ側のやり方に相違はあるのだろうかという点。平和のために人を殺すこと、多くの命を救うために一人の命を奪うこと。それが許されるのであれば、一人の命のために多くを殺すことも同じではないのか。 上手くは書けないが、読みながらこれからの未来のことを考えた。倫理観や、道徳だけで戦争や人殺しをやめられる時代はもう終わったのかもしれない。
0投稿日: 2012.06.08
powered by ブクログタイトルから、相当にエグぃ作品なのか? 表紙から、バトルロワイヤルみたいな殺戮シーンのオンパレードなのか? と勝手に連想してしまい、買うかどうか書店の中でかなり迷った作品w 結果は、買って良かった♪ でした ^^ 人間の歴史の中で、過去何度となく繰り返されてきた、絶対的為政者(独裁者=かつては民衆が憧れ慕う英雄)による、民衆への一方的無慈悲な虐殺行為… 残念ながら、それは現代に至っても、そして今後もなくなる気配はなく、世界のどこかで同じような惨劇が今も繰り返されている。文明国だか先進国だか世界のリーダーとか言われている、世界の経済を動かす巨大国家群は、エネルギー資源や稀少鉱物等を得る為に、それらを黙認したり、裏で扇動したり、都合が悪くなると制裁や軍事攻撃を加えたりして優位性を保つことに執心し続けてきた。資源を持っているが国力の弱い国家で、そうした軍事独裁政権の横暴が止むことはないし、それをなくそうという本気の働きかけというのも、先進国家が自国の利益を優先させるのが正義とされる現状においては起こり得ない。 まずこの現実を認識し、そこから目を背けることなくそれを題材にした小説を書こうとして、なおかつ受け入れられる可能性が極めて低いタイトル(“虐殺”ですからね~w 出版社は相当反対したんじゃなかろうかw)を堂々と掲げ、重厚なストーリーを書き上げた、もう執念だけで完成させたんじゃないだろうか?と思ってしまうようなスゴイ設定でありストーリーであり、考えさせられることも多く、小説として読み応えのある作品。 黒幕である謎の人物をひたすら追い続ける主人公が、全然主人公らしい活躍をしないけれど、徐々にその人物に迫っていくサスペンスもあり。 難解になりがちな話を、読みやすくまとめている点にも好感。 短命だったことが残念でならない。
1投稿日: 2012.06.05
powered by ブクログ9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。 (BOOKデータベースより) *** ハーモニー→虐殺器官という邪道な読み順。 恵まれた環境にいて文句を言い、限られてる資源や食物を残し、“世界”から目を背けて生きている。 今の幸せは他人の不幸の上に在るのか。 でも“他人の不幸”と言ってしまうことさえ自分勝手な押し付けな気もする。 難しい。 読むと脱力感が。 クラヴィスの心理が興味深い。 特殊部隊の人間として弱いのか、でも普通の人間なら普通に想定しうる考えや行動のような気も。
0投稿日: 2012.06.01
powered by ブクログ物語は9.11後の世界。対テロ対策のためにどこにいっても徹底的な生体(バイオメトリクス)認証を求められる管理社会に移行した先進国世界と、虐殺や紛争が多発する発展途上国、この二つの世界が併存する近未来世界をアメリカ軍の特殊検索群の一兵士の視点から描いたものである。そして、物語が進んで行くに連れて発展途上国で多発するすべての虐殺の裏にジョン=ポールという一人の男が絡んでいることがだんだんと明らかになってくる。虐殺はどのようにして始まったのか、彼の目的は何なのか。筆者はこの物語を生物学的、言語学的、人類学的考察の観点から描かれていてとても興味深い。
0投稿日: 2012.06.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
正直、ラストがなぜこうなったのかはよく分からなかったが、面白かった。 これがハーモニーに繋がっていくのか、と思うともっとこの人が生きて作品を作っていって欲しかった、と思う。 イルカや鯨の人工栽培のようなものは、今でいえばコーヒーだとかそういった類のものに当て嵌まるような気がした。 採取の現場を知らずに飲んでいるのは先進国。 ダイヤモンドも同じか。 最近はSFにのめり込んでいる感が凄い
0投稿日: 2012.05.26
powered by ブクログ初めて読んだSF小説。 好きな本屋で何となくジャケットに惹かれて購入。 大当たりだった。 シリーウォークという単語を出してくるところに個人的にシビれた。
0投稿日: 2012.05.24
powered by ブクログすごい本読んじゃったなー。 初のSFだったけど、スゲー好き。どんどん読み進めれた。分からん語句が山ほどあったけど。 ぼくが生きてる世界は誰かの不幸、骸の上にある。ウィリアムズの最後らへんの言葉がすごく印象的。ウィリアムズは人間臭くて好きだな。読み終わりは頭ん中にドス黒いものが淀んでる感じ…。頭が痛かった(風邪のせいだったのかもしれん)。すごい小説だと思う、最後走ったかなーとか思ったけど。著者がもういないの惜しい。この著者の本はコンプリートしたい。
1投稿日: 2012.05.22
powered by ブクログやばい。面白い。いわゆる未来SF的な内容で最初はなかなか読み進めなかったのですが読むほどにどんどんとのめり込む。これがデビュー作なんてすごいですね。この作家さんはデビュー後2年ほどで早逝されたとのこと。残念。
1投稿日: 2012.05.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
聴きなれない、読み慣れない言葉が多く一度挫折したが読み返してみた。 近未来の技術にわくわくさせられる反面、すべてが情報化された社会への恐怖も感じた。また言語が虐殺を作る(虐殺器官)と言われても自分にははっきり言って意味が分からないのが残念だった。自分たちもこの社会で何か目的を持たされた言語によって煽られながら生きてるのだろうか?私にはあれを買えこれがいいですよと購買心を煽るウェブ広告くらいしか思いつかない。感受性の低い自分の脳みそが残念である。
0投稿日: 2012.05.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
さすが、ゼロ年代最高のフィクション、と思った。 母親の安楽死に同意したことによる「罪」と、自身が暗殺部隊として殺しいるにもかかわらず感じない「罪」のジレンマに悩み続ける主人公が魅力的だった。また、9.11以降の世界という世界観もよかった。パラレルワールドなのではないか、と思わせるくらいしっかりとした世界観が構成されていた。 敵(?)方のジョン・ポールも純粋な「愛する人を守りたい」という動機から、虐殺の文法なるものを「発見」し、実践してきた。彼と、主人公の対談が大きな読みどころであった。虐殺器官の設定もしっかりしており、本当によくできたSFだった。 伊藤計劃さんの短編集も読み、これの草稿版も読んだが、主人公の一人称が「僕」に変わっており、この幼稚な一人称が残酷な物語に一層の残酷さを加えており、さらに良い出来になった、と思う。
2投稿日: 2012.05.14
powered by ブクログ面白い。けど、個人的にはハーモニー(著者が本書の後に書いた本)の方が好きだった。 ハーモニーよりも物語要素が強いと思う。 本書の中で議論されている内容は、どことなくハーモニーに通じるところがあるような気がする。
0投稿日: 2012.05.12
powered by ブクログサラエボが第三の核によって消滅し、戦争がアウトソーシングされるような時代。先進国では最先端技術を駆使した対テロ管理体制が整備される中、後進諸国では次々と内争が勃発し、民族虐殺が繰り広げられていた。その背後で暗躍する一人の男、ジョン・ポール。アメリカ情報軍特殊検索郡i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は彼の暗殺を命じられるが――やがて明らかになる“罪と罰”。果たして大量殺戮の目的とは。 自らの正義を疑わず、“罰”を執行する一人の男と、自らの正義を見いだせず、“罪”に苦悩する一人の男との戦い。MGSを彷彿とさせる世界観だなあと思っていたら、作者さんが大のMGSファンらしい。納得。 作品自体はどこまでも色のない世界。それはまるで葬儀のような静けさ。あとで調べてみたらこの作者さん、肺ガンを患って闘病しながら執筆をしていたらしい。そして本作でデビューしてから2年後に亡くなられたとのこと。ご冥福をお祈りします。
0投稿日: 2012.05.11
powered by ブクログ圧倒的な迫力の物語であっという間に読まされてしまった。人物の描写や近未来のテクノロジの描写、物語の奥深さ、時代背景の緻密さ、どれをとっても「こりゃすげぇわ〜」と感嘆するばかり。著者はこの本の原文を病床の中10日で書いたと聞いてまたまた驚愕。残念ながら著者は若くして亡くなってるらしいが病魔と闘いながら長編を三作遺したらしい。残りの二作品もじっくり読んでみたい。
0投稿日: 2012.05.08
powered by ブクログおもしろかった。 テロを排除するために完全に情報化された近未来アメリカで、暗殺専門の特殊部隊に所属する主人公が、後進国で虐殺を伴う内戦を引き起こすために世界中を飛び回る元言語学者を追う。 SFはほとんど読んだことないからそういう観点では全然分からないけど、ストーリーのダイナミズムと世界観作りの繊細さのバランスに、ただただ感動しながら読んだ。 だいたい、タイトルがカッコいい。そして、近未来の戦争周りの小道具のイメージがとても細かい。ミニマルなデザインに、肉体感覚に富んだ機能と構造が埋まっている。一番好きなのは、インドに侵入するときに乗っていた「空飛ぶシーウィード」。ホワイトベースを極限までミニマル化してマットブラックで塗るイメージ(笑)。かっこいい〜! 「自らの住む世界」と「それ以外の世界」、「モラル、良心」と「罪」、「愛すること」と「無関心」。それらの対比の境目が、物理的、精神的の2つの観点で濃くなったり薄くなったりを繰り返しながらラストに向かっていく。結局、主人公が与えられた「今」の中で、選択する自由を行使するラストシーンは本当に素晴らしい。
0投稿日: 2012.05.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人は見たいものだけしか見ない なんだ、宗教の最低の利用法じゃないか。p206 ぼくはルツィアに赦すと言ってもらいたい。 神は死んだ。神は死んだ。大いに結構。 ぼくはルツィアに赦してもらえれば、それでいい。p280 後半一気に面白くなった。 「虐殺器官」というキャッチーな表題、虐殺「器官」というユニークなSF設定は置いといて、 それぞれにとっての死者の国と、エピローグでシェパードがとった行動がよかった。 あと痛覚マスキング、カウンセリング絡みのはなし。 しかしいまいち咀嚼不足な気もする。知識不足か能力不足か知らないけど、ちょっと難しかったあうう。
0投稿日: 2012.05.06
powered by ブクログ凄まじい小説。なんだか他に説明しようもない・・ これがデビュー作とは・・著者自身の死の数年前に病床で書かれた小説とのこと。まさに命を賭けた一冊なんだと思うと、恐怖感すらでてくる。 読んでよかった。
1投稿日: 2012.05.05
powered by ブクログ読み手を選ぶ本です。虐殺を主題におく著作ですので、想像力が強く多感な人には著者の文章が描き出す描写はかなりグロテスクなものとして刻み込まれると思います。私自身は、著者が心酔していた小島秀夫氏が制作したメタル・ギア・ソリッドシリーズ(http://www.konami.jp/kojima_pro/index.html)をテレビゲームでやっていた経験もあり、導入部ではパクリではないか?と思いながらそのあまりの世界観の類似に驚いたのでした。その類似性は最後まで引きずることになりますが、小島作品とは違った側面から世界の危うさや人間性の恐ろしさを抉り出しているように思います。 これをSFというジャンルに区切って良いのかどうか少し不可思議に感じるところもありますが、近未来を舞台にした戦争に対する視座や人間の神経や感覚をいともたやすく分断し、人間を非人間化できる技術が汎用されている状況などは確かにSFと言えるかもしれません。それをSFそのものにおさまりきらない何かを感じさせるところに著者の凄さがあるのかもしれません(その潜在的能力を開花しきることなく早逝されたのを、文庫の帯に名前を寄せた3名をはじめ多くの人が感じているところでしょう)。 国際政治を勉強していたものとしては、空想の世界の話といえども、この小説の核となるロジックには手段の実現性や、採用の可能性などは一切度外視すれば、構造的にありえる世界体制にも見えるようで、その想像力の空恐ろしさ、想像力と実現可能性の近さに背筋がヒヤリとする一瞬がありました。テロリズムを予防するために用いられる大量虐殺を契機とする地域紛争や内戦の勃発というある一定地域と一定程度の安全保障を確立するための手段として利用されるなんていうことは、現在の国際情勢が抱える事象をある切り口から見ればそのように捉えることも可能なのではないかと思えるからです。 戦争の民営化は、ここ数年の間に国際政治の舞台でも注目を浴びてきている主題です。そして、その行き着く先を、小島秀夫氏はゲームで、本書の著者:伊藤計劃は小説という形で示しました。思い描くのは簡単ではあっても、それに生々しさを感じるのは現実に近しいものとして感じる何か理由が読者側にあるからでしょう。小松左京氏(http://www.nacos.com/komatsu/)がこの作品を小松左京賞の受賞作品にしなかった理由として上げているように、世界を大混乱に陥れた『虐殺の文法』とはいかなるものだったかは明示されませんし、最後の数ページで訪れる結末も意見はわかれるかもしれません(個人的には以前読んだ服部真澄著『エル・ドラド』(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=129381447&owner_id=320755)と同じ展開も予想出来ていたので意外性はありませんでした。)。 いずれにせよ、作品執筆時点で癌をわずらい、それが徐々に体中に転移していくという人生の限りが近づきつつある中でわずか10日でこれほどの作品を書き上げたという著者(逝去前まで更新されていたブログ:http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/)の筆力はものすごいと思います。そうした経緯もあって、あとがきの最後に寄せられている著者のご母堂様のコメントは心温まり、涙そそられます。昨年3月にわずか34歳で世をさったこの方の限られた作品(と言っても限りがあるので『ハーモニー』の文庫化を待つことになるのでしょうが…)を、また何か機会で手に取りたいと思います。
0投稿日: 2012.05.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
間違いなく問題なく面白く素晴らしい。一人称とSF/戦闘物の親和性は悪いと思っていたが、本書を読了後、誤りだと気づいた。非常にバランスよく、構成の妙だろうか、伏線や展開に疑問点が残らず解決されている。しかしながら、面白いだけに不満が残った。虐殺器官の本質が不明確だったからだ。それに、ラストも主人公の行動は日本人としているならば納得できるが、アメリカ人っぽい行動方針、メンタルとは感じられなかった。ルツィアへの想いもウィリアムズを撃つほどのことかと疑念がある(ルツィアを護るためだけならまだしもだ!)。これら、若干の納得できなさ物足りなさは残るが、それは無い物ねだりであろう。そんなことを考えさせられた。
0投稿日: 2012.05.03
powered by ブクログ日本人作家が描いた、9.11以降の世界(しかもSF!)という何とも魅かれる作品でした。そして単なるSFだけでなく、この世界に生きる一人として、ぐっと考えさせられる物語でした。 主人公のシェパードは米軍特殊部隊の暗殺のエキスパート。次なるターゲットはジョン・ポールという男だが、なかなか仕留めることが出来ない。そして何故か、ジョンが現れた国では必ず大量虐殺が起こる。というミステリー的な筋書き。 平和な日常が保障された先進国と、子どもたちが銃を手にし争いの終わらない途上国。殺されていく人間と、それを見て見ぬふりをする人間。 この世界の階層構造を突きつけられるような読後感。「人は見たいものしか見ない」という作中の言葉は、そのまま作者の心の声を表しているように思えた。 若くしてこの世を去られた、作者伊藤計劃氏のご冥福をお祈りします。
0投稿日: 2012.04.22
powered by ブクログ今まで読まなかったのを後悔。 これは凄い! ハードボイルドで繊細でロマンチック。 細かい部分で、もっと詳しく書いてよと思わせられるが、 そんなことを吹っ飛ばす面白さ。 文庫版の帯に大御所のコメントが並んでいるが、本当的を射ている。 ゲームのメタルギアや(著者がファンというだけある) マスターキートンのような雰囲気が好きなら気にいるはず。
0投稿日: 2012.04.22
powered by ブクログ最初に始めた時は正直、面白くないなあと思っていた。しかし読み進めるうちに、どんどんひきこまれていった。気付いた時には、ハマっていた。小説の中に登場する、気付かぬ内に虐殺へと追い立てられるように、私も知らぬ間にハメられていたのだ。この作者が既に他界されていることが非常に悔やまれる
0投稿日: 2012.04.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
日本のゼロ年代最高のSF作家と言われてる伊藤計劃の最初の長編。 知人に勧められて読んでみたが、驚愕の一作だった。 世界各地で起きる残忍な紛争にはいつもジョンポールがいた… 「虐殺の文法」というネタは脱帽。 ―卵が先か、鶏が先か。 虐殺の起こった地域の新聞やラジオやテレビでは、予兆として共通する深層文法が語られる。 では逆に、争いの予兆のない場所で、その文法で会話する機会が増えたら。人々が虐殺の文法で会話するようになったら、その地域はどうなるのだろうか。 そしてラストは、世界から紛争をなくすために、その忌まわしき虐殺の文法をシェパード自ら用いて、アメリカを内紛状態へ導く… 近未来的な設定がすごく作り込まれてて、引き込まれた。 サスペンスとしても面白いし、アクション映画のような面白さもある。 さらには哲学的に考えさせられる部分もあり…。 漢字の固有名詞にカタカナで読み仮名を振るやり方は、やはり『ニューロマンサー』の影響だろうか。 他にも物語の中で『1984』や『2001年宇宙の旅』が触れられていたりと、まさにSFの王道をゆく作家であるという感じがした。 とてもカッコ良い作品だった。 -- MEMO: p42 意識したことはなかったけど、たしかにぼくはことばが好きだった。ことばが持つ力が好きだった。ことばが人を変化させるのが、不気味で面白くてしょうがなかった。 p120,123 ルツィア・シュクロウプ 言語が人間の行動にいかに影響を及ぼす可能性 ことばは器官 p126 とはいえ、言語が進化の適応によって発生した『器官』にすぎないとしても、自分自身の『器官』によって滅びた生物もいるじゃないか p187 殺人が最も忌まわしい罪であるのは、償うことができないからだ。 p216 「虐殺には、文法があるということだ」 p234 オーウェルは「動物農場」でこう書いた。すべての動物は平等である、一部の動物はさらに平等である。自由をもつ者が、その自由を守るために人々を監視する。
0投稿日: 2012.04.16
powered by ブクログ膨大な知識(それは文学哲学映画音楽エトセトラ込み)。それが邪魔になることなく、物語として機能している。冒頭の子供の死体の描写から脳ミソを鷲づかみされること間違いなし。話のスケールがでかい割に、ジョン・ポールを追跡する展開になると、普通のサスペンスみたいな展開が残念。そして、一体、虐殺器官となる言葉は、一体なんなのか?書き込みがもっとあっても良かった気がするが、この物語を10日間で仕上げた伊藤計劃の才能は別格。夭折が惜しまれる。あと10年生きることが出来たらとんでもない傑作を仕上げたに違いない。
0投稿日: 2012.04.14
powered by ブクログ***** 自由とは、主観的なものである。 それゆえに、外部の環境にはいっさい影響され得ない。 どこまで行っても、主観的な選択の産物でしかないから。 仕事として、心も身体も不快にならない環境を与えられて、 淡々と人を殺し続けていたこと。 自らの意志で、初めて、人を殺したこと。 虐殺の文法を使って、ジェノサイドを引き起こしたこと。 最も自由だったのは3つ目。 主体的に、その環境を選び取ったから。 ***** 器官、である。 言葉にはならない。 表現も出来ない。 うちにある薄ぼんやりとした確信。 そのど真ん中に素直にしたがって生きられること。 それが自由である、ということ、なのかもしれない。 *****
0投稿日: 2012.04.14
powered by ブクログ難しかった。でも、面白かった。 アメリカが舞台の話なのでわからないことや、軍事用語など聞き慣れない言葉がたくさんで、辞書を片手になんとか理解しながら最後まで読みました。 まず、すごいと感じたのが描写力。 とくに人の死の瞬間などの描写が生々しくリアルです。 ぜろ年代最高のSFと言われるだけあるなと思いました。 SFはどちらかというと苦手な部類なのですが、虐殺器官はどんどん物語に入り込んでいける魅力がありました。 想像力を物凄く掻き立てられるというか。 9.11以降、テロから国を守るため、アメリカ国民の安全を守るために科学技術が過剰に発展された近未来を描いている作品なんですが、その内容が、はっとさせられるものばかりです。 本編ももちろん良かったのですが、解説の筆者の 闘病記録には思わず涙が出てしまいました。 もう彼の新しい作品を読むことができないというのが非常に残念です。
0投稿日: 2012.04.13
powered by ブクログ遅ればせながら読んでみたが、いや、もっと早く読むべきだった。硬質な文体は好みが分かれそうだけど、ストーリーは文句なく凄い!こんな凄い作品を書ける作家が既に逝ってしまっているってのが切ないなぁ。
0投稿日: 2012.04.13
powered by ブクログ読んでる間中、気持ち目が大きくなる。身体全身の細胞がこの本を読むことに集中する。 てのは言いすぎかな。でもずっと読んでいたいと思わせる話。 冒頭グロくてびっくりするけどそれで毛嫌いでするのは絶対にもったいない!!
0投稿日: 2012.04.12
powered by ブクログ何が面白いのかよくわからない。あと映画「エンゼル・ハート」の血を拭く女性は、映画の中で自殺した人の奥さんだって言っている。
0投稿日: 2012.04.04
powered by ブクログ題名がとてもインパクトの強い本。 SFだけれども、遠くない未来といった時代背景で、謎の人物ジョン・ポールを追跡していく物語です。 ストーリーにも引き込まれましたが、何よりも文章がとても丁寧だと感じました。登場人物の心情がセリフ以外のいたるところに描写されていて、読んでいるうちに主人公の世界に引き込まれていく感じです。世界観に浸れるというか、思考を乗っ取られる感じがして心地よい読み心地でした。 肝心な部分のネタについては、SFなのに飛びぬけて荒唐無稽なネタではないところが、とても上手いなと感じました。 伊藤さんという方の本にここで出会えて良かった。伊藤さんの他の本も読んでみたくなる作品でした。
0投稿日: 2012.04.02
powered by ブクログ意外だな、と思う事が多かった作品でした。 主人公は米軍人と聞いて想像するようなマッチョさとはほど遠い一人称が「僕」の文学に造詣の深い人物である事、虐殺器官の正体、言葉や平和について問いかける内容、ジョン・ポールが虐殺を引き起こす理由…。 近未来SF、戦場が舞台であるという事で「戦闘描写が多く派手に国家の陰謀に巻き込まれたりするのかな」と事前に想像していたのですが、そんなイメージを飛び越えもっと壮大、かつ人や社会や命のあり方についても色々と考えさせられる作品でした。 読み終わった後は何とも言えない悲しい気持ちでいっぱいになりました。 とても面白かったです。
0投稿日: 2012.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
近未来のお話. SFはあんまり読まないがこれは読んでいておもしろかった. トビトビではなく,書いて欲しい部分が多々あったがそこは作者の選択なのだろう. ありそうな未来は恐怖を感じさせる部分がある.
0投稿日: 2012.03.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
つまりこれは、愛する人が死んだことの喪失感や自責の念などを否認し、もう一度他の誰かを愛し、また失うことで死を受け入れ、人としてのありのままの感覚を取り戻す物語。 こう言ってはなんだが、死生学の教祖アルフォンス・デーケン氏よりはるかに気が効いている。 不倫の最中に妻子が死んだことで自分を責め続けるジョン・ポール。父を自死で失い、母を安楽死させたことに罪悪感を持ち続けるシェパード。 ジョン・ポールは虐殺を生じさせる深層文法を操り虐殺を仕掛ける。 シェパードはその虐殺の世界に身を投じ殺人マシンとして命令を遂行する。 どちらも大切な人を失った悲しみと罪の意識から目を逸らすためなのだろう。 ついに二人は対峙する。 しかし、そのとき二人は同じ女性ルツィア・シュクロウブを愛していた。 そしてルツィアは無残な死を遂げる。 愛する人を守るという大義名分の下でなら虐殺もよしとしていたジョン・ポールも、どんな残酷な死体も物としてだけ考え、自分が傷めつけられたことは自覚しても、その傷の痛みは感じないようコントロールされていたシェパードも、ルツィアを単なる死体とは思うことが出来なかった。 「ルツィアのために…泣いているのか」「ぼくは彼女を置いてきてしまった…彼女の骸を」~これまで死体は物だと思ってきた。人間は死んだら、どこまでも物だと。~にもかかわらず、それは物ではなかった。それはルツィア・シュクロウブだった。~「うん、わかっているよ…勝手なものだ、大切な人の死体は物に見えないなんて」(379p) 二人は初めて、人として人を悼むことへの抵抗を手放し、悲しみを吐露する。 そうやってついに、普通の人間としての再生が始まる。 ジョン・ポールは最後射殺されるが、加工された死体とならず、悲しみを悲しみと感じることができた人間となって土に還る。 最後に人としてありのままであることを選んだ二人にカタルシスを禁じ得ない。 ふだん私たちは、感情を、特に悲しみ、怒り、罪悪感といったネガティブな感情にフタをすることを選択するよう要求されがちだから。 『エピローグ』はやや安易な終わり方で肩透かしをくらう印象があるが、それでも伊藤計劃氏がこの物語を病魔と闘いながら書いたとあれば、私たち読者は頭を下げざるを得ない。 さぞかしもっと生きて書きたいことがあっただろう、どれほど無念だっただろうと思うと、胸がいっぱいになってしまう。 今でも地上で増え続ける読者とレビューを喜んで頂ければ、せめてもの幸いである。 (文字数1,024) -------------------------------------------------------------------------------------- 以下、円城塔氏の「道化師の蝶」と似ている(とわたしが勝手に思っている)部分 「カフカはユダヤ人でもあったわ。ただ、ユダヤ人社会にも溶け込みきれなかったし、チェコ人でありながらドイツ語でしゃべるしかなかった。そのドイツ語にしても『借り物の言葉』だと感じていたようね」 ~「じぶんはいずこにも所属しない者であり、使う言葉は借り物の音の連なりである。そうカフカは思っていたかもしれないわね。~」 「それこそ、ことばは思考をフレーミングしない、ということの証明なのかも。ナボコフも『ロリータ』を母国で書かなかったわけだし。」(137p) 後から手探りで学んだ言語だから、オリジナルに比べて文法的にはめちゃくちゃだし、規則性も固定していて、語順を入れ替えたりといった文学的技巧を凝らして自由に話すことはできない。その第一世代の言語はピジン英語と呼ばれる。(218p) 「それは脳がその内部にあらかじめ、手持ちの要素を組み合わせて文を生成するしくみをもっていたからに他ならない。」 「その生得的な文生成機能が、深層文法だということか」 「遺伝子に刻まれた脳の機能だ。言語を生み出す器官だよ」 脳のなかにあらかじめ備わった、言語を生み出す器官。(219p) そのとき、ぼくの目の前を一匹の蛾が飛んでいった。死を前にしたこんな状況で、それは奇妙に幻想的な光景に見える。羽をばたつかせながら、それはぼくの開かれた中指に停まった。(237p) ビリティは詐欺師の言葉だ。ビリティは道化師の言葉だ。(245p) 虐殺の深層文法の構造自体は明らかだが、それぞれの地域に合わせて翻訳(コンパイル)しなければならない。(373p)
0投稿日: 2012.03.22
powered by ブクログ普段SFを読まないので、この作品のSF要素にどれだけの オリジナリティがあるのかはわかりません。 ただ筆力は凄まじい。 SFであり、ホラーのようであり、純文学の趣もある。 伊藤氏独自の世界観があって奥深かった。 僕は怖い。彼の文章が。 僕は怖い。この才能がこの世にもう存在しないことが。 もちろんあらを探せば、甘いと思われる部分はいくらでも出てくるが、 それ以上にこの文章は、誰でもかける類いのものではない いわば天賦の才を醸し出す。 書き出しの衝撃から中盤以降は徐々に尻つぼみな印象になってくるのは テーマである虐殺器官について詳細な説明がないせいだろうか。 それでも、この作品が非常に力を持っていることには違いがない。 あと知ったが、読了日がちょうど命日だった。 偶然ではあるけれど、より感慨深くなった。
0投稿日: 2012.03.21
powered by ブクログ近未来を舞台に、 戦争と死をモチーフとした思想的な小説。 世界観といい文章力といい構成といい、 物語にグイグイと引っ張られるこの感じは、 一言で表すならば圧巻。 秀逸な作品は出だしからして凄いと言うが、 まさにその通りだと思わされる。 一つだけ難を上げるのならば、 タイトルを他人に言いにくい点。
1投稿日: 2012.03.20
powered by ブクログ設定や世界観は凄いと思ったが、主人公のナイーヴさにはついていけず感情移入できなかった。敵役(?)の大量虐殺の理由も微妙だったなぁ、短絡すぎるんじゃない!?
0投稿日: 2012.03.20
powered by ブクログタイトルの「虐殺」というのはどうなんだろうなあ、それで損してる気がする。まあ、虐殺の話ではあるんだが。脳の能力について、今までそんな視点で思ったこともなかったが凄い発想だなあと思った。凄いのは凄いがそれ以前にそもそもおもしろい。ぐいぐい読んでしまった。一度読み終わって、間髪入れずもう一度読み返す本は滅多にないが、この本を読んだ後、何日も余韻に浸ったというか、他の本を読む気持ちが湧かなかった。
0投稿日: 2012.03.17
powered by ブクログ日本人がこういう作品を書いていたことに 驚くと同時に、作者が既に他界されていることを残念に思いました。 残された作品は、全て読みたいと思います。
0投稿日: 2012.03.14
powered by ブクログ日本人でも海外作品に十分負けない筆力を感じさせる作家。若くして亡くなられたのが惜しまれる。個人的には同作家の「はーもにー」の方が更に面白かった。
0投稿日: 2012.03.11
powered by ブクログ一般ジャンルはSFなのだそうですが、確かに背景とかアイテムはSFなのですが、内容は・・・なんか素直にSFではない。 う~ん、うまいこといえません、あとがきに書いてある感じ。 文章は、まぁ読みやすい。ただ場景描写がちょっとくどいかな~と私は感じました。(本内でも一瞬話題に出てますけど、「プライベートライアン」の冒頭の長い戦闘シーンは必要なのか、っていうのと同じような話ですね)
0投稿日: 2012.03.09
