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虐殺器官
虐殺器官
伊藤計劃/早川書房
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総合評価

1125件)
4.2
426
386
162
32
9
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    近未来SF 戦争・特殊部隊・諜報・ミステリ。作家 伊藤計劃氏 デビュー長編。 「ベストSF2007国内編」第1位、「ゼロ年代ベストSF」第1位、第1回PLAYBOYミステリ大賞受賞。 テロリストによる手製核爆弾でサラエボが消滅、世界各地で内戦・紛争による虐殺が繰り返されている近未来が舞台。 地域紛争の中で行われている虐殺を止めるため現地に潜入した特殊部隊員のシェパード(主人公)は虐殺の影に見え隠れする謎の男を追う。 本屋で平積みになっていた本書を手に取り、帯の「宮部みゆき」の文字を見て購入。「・・・こんなにすごいものは書けない(宮部みゆき)」 確かに宮部みゆき氏は書かないジャンルだよね・・。宮部ファンは面食らうかも? テクノロジーによって戦闘用に最適化された精神状態を保っている主人公だけど、様々な死に直面し、徐々に苦悩していく様子。そして最後に取った行動・・。恐ろしいですね。 その他、緻密に描かれた戦闘シーン、人工筋肉を用いた兵器等の近未来のテクノロジーがとても印象に残ります。 2007年に本書でデビューした伊藤計劃氏は、癌による闘病生活の末、2009年3月に亡くなられました。ご冥福をお祈り申し上げます。

    0
    投稿日: 2010.09.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦争と良心と言語、僕自身の関心に深くつきささる深刻な問題を提起された。 管理社会を描きながら、オーウェル『1984』よりもはるかに生々しい。「もしかしたらそうなるかも」という空気をまとっている。残虐さと繊細さを兼ね備えた文体が素晴らしく、一気に読み進めることができた。序盤から一貫した筋を保ち、結末も申し分ない。思わず背筋がふるえた。 これはすごい。本当にすごい。

    0
    投稿日: 2010.09.24
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    最初はなかなか入り込めなかったけれど、いつのまにか夢中になってた。 新しいSF、ミステリ?イイ!別に宇宙にいくわけじゃないけど。

    0
    投稿日: 2010.09.23
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    どこかで見てきたかのように架空の風景を文化を理論を平然と語る。馬鹿げた話にも思えるが、それは実は未だ発見されていないだけで現実にもありえてしまうのではないか。そんなことを思わせてしまうSFこそがいいSFだとぼくは思っている。そういう意味ではもう少し"文法"にディティールがあったら説得力が増すのではと思ってしまうが、これから、を期待できないのが非常に残念である…。良いSF小説だった。

    0
    投稿日: 2010.09.23
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    本書はサイバーパンク的な流れを汲む近未来の戦争を描いたSF小説といえるが、テーマには深く考えさせられるものがある。なぜ人類はその歴史において「虐殺」を繰り返してきたのか。人類の遺伝子に刻まれたコードには、「虐殺」を発動するきっかけとなる「言葉」が存在するという仮説を実証すべく、世界各地の紛争において「虐殺」を生み出してきた人物を追う主人公。その戦いの中で正義とは何かが次第に揺らいでゆく。その結末はあまりに悲しく、やるせないものになっていく。 作者のこの独特の世界観に興味を持ったが、なんと昨年肺がんで若くして亡くなったとか。残念だ。

    0
    投稿日: 2010.09.20
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    9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?

    0
    投稿日: 2010.09.19
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    宮部みゆきと伊坂幸太郎他による賛辞が帯に書かれている。宮部みゆきが帯で賛辞する小説は、やっぱり面白い。もっと早く読んでおけばよかった、この才能を早く知りたかったと後悔することができた小説。 『虐殺器官』は、9.11以後のテロと紛争溢れる世界情勢というテーマに真正面から取り組んでいる。小説にするには難しいテーマだが、消化できている。小説の語り手は、アメリカ人のアメリカ軍特殊部隊隊員だ。小説の登場人物もほとんど外国人。メインの登場人物に日本人はいない。日本人の作家なら、日本人以外の語り手を使うことは、禁じ手ではないかと思っていたけど、違和感はなかった。 軍事小説の人気作家トム・クランシーの小説は、アメリカ軍の世界戦略に協力的だと思える。対して、伊藤計劃は、戦争を必要悪として認めつつ、軍事活動に批判的なまなざしを向けている。 「自由はバランスの問題であり、絶対的な自由は存在しない。」「自由とは、できることの可能性を捨てて、何か一つの選択をすることである。」「戦争は啓蒙活動である。」「全ての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在する。」「人々は、自分たちが見たいものしか見ない。セキュリティ技術のアップ、管理社会化は、平和を全く保障しない。」など、現代社会と現代的戦争に関する警句が多いのも魅力的だ。 作者の伊藤計劃は、このデビュー作他わずかな作品を残しただけで、亡くなった。伊藤計劃が残してくれた作品は、全て読みたい。小説が持つ言葉のパワーに圧倒された。小説はまだまだ世界に立ち向かえると思えた。

    0
    投稿日: 2010.09.19
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    すごくおもしろい近未来SF小説。タイトルや表紙で敬遠してしまうかもしれないけど、読んで損は無いと思う。素直に頭に入ってこないで何回か読み直したりする所もあった。ただ、情景の描写、気持ちの動きの表現とかとにかくすごい。引き込まれるってこういうことかって感じでどんどん読めた。残念なのはもう新しい作品を読むことができないということ・・・。近い内にハーモニーも読みたい。

    0
    投稿日: 2010.09.17
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    まずタイトルがいい。 虐殺する「器官」ってなに?って気になる。 中身を読んだあともこれ以上のタイトルって無いなと関心した。 内容はほんとに圧巻。 これを書くバックグラウンドにこの人はどれだけの知性と感性をもっていたんだろう。 印象的だった部分↓ 「仕事だから。19世紀の夜明けからこのかた、仕事だから仕方がないという言葉が虫も殺さぬ凡庸な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出すことに成功したか、きみは知っているかね。仕事だからナチはユダヤ人をガス室に送れた。仕事だから東ドイツの国境警備隊は西への脱走者を射殺することができた。仕事だから、仕事だから。兵士や親衛隊である必要はない。すべての仕事は人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのは、仕事に打ち込み貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのだよ。信仰の度合いにおいて、そこに明確な違いはない。そのことにみんな薄々気がついてはいるようだがね。誰もそれを直視したくはない」 この引用した部分以外にも戦争や宗教や言葉に関して、なるほどと思う部分がたくさんあっておもしろかった。 そしてそのすべてが独特のやわらかい文章で紡がれているのもまたいい。残虐なんだけどゆるいというか。 ほんと不思議で天才的な作家です。

    1
    投稿日: 2010.09.12
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    狙った訳じゃないけど、9.11に読了。9.11以後の近未来を描いた濃厚な物語。この才能が既にして喪われている事に悲しみを覚えた。

    0
    投稿日: 2010.09.12
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    評判を聞いて衝動買い。タイトルと装丁でうわーと思って、本格SFか読み切れるかなと不安だったけれどもそこはそれ、意外にすらすらいけました。タイトルに負けず劣らず内容もぐじゃぐじゃしているし、決して気持ちの良いものではないけれど、気持ちの悪い気持の悪さではなく、そこそこ飲みこめる気持ち悪さなので、租借して、飲みこんで、反芻して、気持ち悪くなりながら、考える。考えられる。いい小説でした。お悔やみ申し上げます。

    0
    投稿日: 2010.09.11
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    近未来SF特殊部隊モノ… そんなカテゴリーはないですかw なかなか設定が細かくて骨太感があり 読んでて「なるほどー!」が多くて面白かった♪ まぁ、中に出てくる思想やらは抵抗あるものの 「物語」だしまぁいーか。 って、著者亡くなってるんですね。残念。

    0
    投稿日: 2010.09.10
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    最後まで読み切りましたが、核心の設定にリアリティーを感じられなくなると、細部の描写のリアリティーがかえって鼻についてきて、あまり自分には合いませんでした。リアルに描写されたアニメーションやゲーム程度の読後感。

    0
    投稿日: 2010.09.10
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    とてもグロいシーンを変わった表現の仕方で表してるから受け入れやすく美しさすら感じた 発想の転換が深く多様なので内容が濃い印象

    0
    投稿日: 2010.09.10
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    確かにこれは面白いな。山本弘の傑作短編「メデューサの呪文」的な仕掛けだけれども、その仕掛けを使って「ジョン・ポールの虐殺の動機」というラストに持っていったのがなんとも。短編を読んで「皮肉な文章を書く人だな」と思ったが、この作品はより皮肉が酷い。 そのストーリーはもちろんのこと、SF的なディテールも分かりやすく面白かった。脳を様々なモジュールでできたものとして見る考え方は、納得出来るし、だからこそ「虐殺器官」という設定がでてくる。おもしろいなぁ。 そして、SFではお馴染み(?)の、ミームの競争やら、繰り返しによる利他的行為のゲーム理論の話がでてきてニヤリ。こういう話を読んでいると、ああSF読んでいるなって気になりますね。

    0
    投稿日: 2010.09.08
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    9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。

    0
    投稿日: 2010.09.03
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    面白い!少しとっつきにくい文体(翻訳書のような)なのだが、慣れれば問題ないし、内容で読ませる。映画化してほしい!とかシリーズ化してほしい!SFというジャンルを超えていろんなものを書いてほしい!(翻訳書っぽい文体も手伝って)団塊Jr.の村上春樹か?!などとワクワクしていたのだが、なんと2009年に逝去。早すぎる…。残念…。

    0
    投稿日: 2010.09.03
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    『SF』というジャンルに違和感。あまりにも現実に近い様な気がしたので。 話の中心である虐殺の言語・文法についての記載は曖昧であるが、私はそれで良いと感じた。 それよりも虐殺の上にある平和の現実性を否定できない現実が恐い。

    0
    投稿日: 2010.08.25
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    人間の心の奥がよく書かれていました。世界情勢についても深く考えてみたくなった。ただ専門用語でたまに分からなくなってしまった。

    0
    投稿日: 2010.08.22
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    すごい。 虐殺の文法と、それが使用された理由。 まさに罪と罰。 戦争が商売となり(これは実際も、かも)、 痛覚マスキングや感情調整といった処置を兵士に施し戦わせ、 便利な人工筋肉が実はクジラやイルカから作られているが、 そのことは一般には知らされていないこと、など 主人公の感情を含め、全てが淡々と描かれているので 余計に刺さる。 サラエボが蒸発した時、世界の指導者は知ってしまった。 「核は使える。ヒロシマ・ナガサキはもう特別なものではない」 この一文が怖かった。 今の世界情勢を考えると、SFなんだし、絵空事だよね~、なんて 思えないので。 この作家さん、2009年に病気で死去されているとのことで、 もう新作が読めないと思うととても残念。

    0
    投稿日: 2010.08.21
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    伊藤計劃のデビュー作 乙一といい日日日といいデビュー作なのにデビュー作な気がしないぐらいすごい作品を書けるのだろうか?

    0
    投稿日: 2010.08.20
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    最初はSF?と思ってたが、 途中で読みにくいSF・・・・って思って 最後には感動・感心した。 虐殺は遺伝子に組み込まれているって話がぞっとした・・・・。

    0
    投稿日: 2010.08.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    テロ対策に徹底した管理を行い始めた近未来。後進国では虐殺が横行し始める。その陰にジョン・ポールといわれる男の存在が。 主人公である米軍大尉クラヴィス・シェパードはジョンを追う任務を与えられ、、、

    0
    投稿日: 2010.08.17
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    盛り上がったけど、結局どうやったのかが描かれてないからスッキリしない感じ。背景もちゃんと書かれていないから把握しにくかったな。

    0
    投稿日: 2010.08.15
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    近未来を舞台にしながらも、まさに今の世界の現実と緻密にシンクロして強烈な現実感が迫ってくる。日本語の枠を越えて世界中のあらゆる人々と共感できうる作品ではないかと思う。

    0
    投稿日: 2010.08.15
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    非常におもしろかったです。 虐殺を実行している地域紛争の首謀者と介入する米軍の特殊部隊という構図の小説。現代でも十分にありえる構図の上ですが、しっかりとSFとなっています。 子供が殺害される描写が多いので賛否両論あると思いますが、SF読みとしては必読ではないでしょうか。

    0
    投稿日: 2010.08.15
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    「虐殺」・・・なんていう題名に最初はひいてしまいましたが、文庫本の帯に「伊坂幸太郎」さんや「宮部みゆき」さんのメッセージがあったのでちょっと立ち読みしてみました。 ・・・ヤバい!!なんだこの文章は・・・ 生々しくて残酷なのに、サラリと読めてしまう・・・不思議な感覚です。 でも、基本的にはテーマはそこじゃありません。 これはSF小説です。 9.11以降の世界(アメリカ)はテロ対策として人間にIDをつけて管理し始めた。そしてテロは無くなったが同時に世界中の発展途上国で大規模な内戦や虐殺が起こり始めた・・・。その原因を探るべく特殊部隊のシェパード大尉は戦地に赴く。 そしてそれらの戦地には、必ず1人の男が関わっていた・・・ ・・・とまぁ、こんな内容のいかにも男性向けな作品です。 これ、映画化してもいいんじゃないかなぁ~って思えるスケールです。 ただ、、、伊藤計劃さんは昨年、亡くなってしまったんです。 本当にもったいない・・・まだ若いのに・・・。 アクション系、SF系が好きな方は是非一度☆

    0
    投稿日: 2010.08.15
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    SFというジャンルをあまり小説で読んだことがないので、そういう設定考証のようなものはできませんし、するつもりもありません。 ですが、そういう枠組みを抜きにして、あらすじがきちんとしているのに繊細な語り口は私小説っぽくて、そのギャップが魅力だと思いました。 端々に垣間見える”アメリカ風”な表現がちょっとわざとらしい気がしました……翻訳物っぽくしているというか…。単に私の好みの問題かもしれませんが…。 『ハーモニー』も読み始めていますが、もっといろいろな作品を読んでみたいなと思って調べたら、作者の伊藤計劃さんはすでに亡くなられてしまっているということで、とても残念です。 【2010.08.12】

    0
    投稿日: 2010.08.13
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    読了と共に打ち震えた。造形的に完成された作品ではないと思うし、そのブログ的文体が凄いわけではない。瞠目すべきは文体ではなく、そのバックボーン、ディテールの繊細さなのだ。ところで、「どこがSFなんだ」という批判をときどき見るが、そんなくだらない理由で、その繊細さが読み落とされるならば、ジャンルという牢なんぞ、頼むから、即、解体されてくれ。ポスト9.11を迎える現代人が読むべき、SFというジャンルを超えた大傑作。とてつもない才能が失われてしまったのだ。★6

    0
    投稿日: 2010.08.12
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    ホントに30代前半でこれを?2009年没ってどういうこと? 主人公ぼく(クラビス・シェパード大尉)のナイーブな語り口調と 残酷さが共存する文体。登場人物たちの会話が知的でスタイリッシュです。 こんな作家が出てくるようになったんだ…。 マルドゥック…の人を押さえて、ゼロ年代SFベスト1になるのもうなずける。 もう一回読んでからレビュー書きます。

    0
    投稿日: 2010.08.09
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    購入したこと自体は後悔していないけれど、読み終えた結果、後悔よりもっと質の悪い疲労感と苛立ちと無力感に歯噛みする羽目に陥るとは正直思わなかった。 作り話と一蹴するには、この「世界」はリアルよりも「リアルな嘘」が多すぎる。 膿んだ沼地の「底」で待っているは絶望的に近い結末だったが、泣きたくなるような終わり方ではなかった。救いもなかったが。 ただ、それでも、余程のことがないかぎり、きっとこの本は本棚の一角を占拠しつづけるんだろう。

    0
    投稿日: 2010.08.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表紙に惹かれて買ってしまった。 ジャケ買い(?)なんですが、これが大当たり。 0年代ベストSFのランキングは伊達じゃないです。 舞台は近未来、アメリカ軍の暗殺部隊の隊員が主人公。 描写がそこそこグロいですが、繊細。 心情描写も秀逸。 追い詰められていく感じとか。 うん、やばいなあ、言い当てられている感じがあります。 伊藤氏のご冥福をお祈りします。

    0
    投稿日: 2010.08.04
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    『好きだの嫌いだの、最初にそう言い出したのは誰なんだろうね』 (本文より) 色々と身につまされる小説。 →2011.02.10 再読

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    投稿日: 2010.08.02
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    ・感情を戦闘に最適化された兵士というアイディアが新しいと思った。 ・ジョン・ポールの動機は極端なだけで、低賃金の移民の労働力の元で豊かな生活を享受している先進国という状況は同じベクトルにあるような。

    0
    投稿日: 2010.08.02
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    自分はもうSFを読めない、面白いと思えないかと思っていました。違いました。 エピローグの主人公の行動に説得力があるかどうかは別としてメインアイデアのこの機能があるのであれば、最終的にはこの結果に帰結していたでしょう。 著者の早世が本書にいっそうの迫力を与えているのは確かですが、もし、その著者プロフィールが無くとも時代を代表する作品となりえたことには間違いありません。

    0
    投稿日: 2010.07.31
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    SFなのにリアリティがすごい。文系学部授業のおさらいをしてるような気分になった。解説の中に書かれてる小松左京の評価はちょっと無いんじゃないか・・・

    0
    投稿日: 2010.07.31
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    途中棄権。なんだかカタく、重かった。帯も含めた装丁がとにかくイイ。有無を言わさぬ迫力がある。手元にあるもので、6刷。こういう作品がそこそこ売れてるってすごい。おそらく、ハマる人にはたまらない作品。

    0
    投稿日: 2010.07.30
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    なんかすごそうで、何となく手に取ってみた。どんなものかなと…読み終えてみて、これはとてつもない物語だと…いっちゃってたね。近未来がこんなに手に取るように、そしてグロテスクに、あるいはソリッドに描かれている小説は他に類を見ないなぁと。

    0
    投稿日: 2010.07.30
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    素晴らしく面白い。9.11後の世界を舞台に、アクションから哲学的内容までみごとに描き出している。読んだ感覚としては、作者の想像力や考えを駆け抜けるように感じた。 特にSF的な技術や設定が登場人物の心情と絡み合い、大きな深みを出している。また、登場人物同士の会話が非常に面白い。

    0
    投稿日: 2010.07.30
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    読了して真っ先に思ったのは、面白かったとか、どきどきしたということよりも、しっくりきた、という感じ。 頭の中でもやもや抱いていた気持ちが、ぴたりとパズルにはまったような。 読める作品が少ないのは残念ですが、これはかなり洗脳される(私的に)ので、逆に良かったのかも…。

    0
    投稿日: 2010.07.26
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    SFだが、がなり哲学的な部分が入っている。現代版の罪と罰という宣伝文句もあながち間違っていない。もう少しエンターテイメント的なものかと思っていたが、全然違った。ただ、小難しい割には小説として楽しめたし、また、考えさせられる事はいっぱいあり、特に今、自分達が経済的に裕福な状況が誰によってもたらされているかという事には心が痛むものだった。

    0
    投稿日: 2010.07.23
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    シブヤパブリッシングアンドブックセラーズで出会った一冊。 目をそむけたくなるタイトルだなと思っていたら、中身もまた直視しがたい内容。でも単なるSFでもグロテスク小説でもなく、いま自分たちが生きている時代に確かな批判を投げかけている。 平和が繁栄が、それ自体美しいものとして成り立ちえないことを、この小説は暴きだしている。

    0
    投稿日: 2010.07.21
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    9.11以降の世界。 主人公はアメリカ軍暗殺部隊の軍人。 舞台はさまざまな紛争地域。 緻密に、リアルに描かれたSF。 SFってわかっているけど、もしかして10年後くらいに これがリアルになってるんじゃないか、と背筋がぞっとするくらいリアル。 人工筋肉をそなえたロボットたち。 その”人工”筋肉は、養殖クジラやイルカの筋肉からできている。 脳の特定部分をマスキングすることで 感情や痛みをコントロールする軍の”カウンセリング”。 痛いのはわかるけれど、痛みは感じない兵士たち。 腕がちぎれても、痛くない。意識がなくなるまで、冷静に銃を撃つ。 暗殺をくりかえす主人公の頭の中に ときおり見える「死者の国」。 焼け焦げたりちぎれたり内臓がはみだしたりしている死者たちとの 驚くほど穏やかな会話。 人はがんがん死ぬし殺すし グロテスクな場面もいっぱいあるんだけど なぜかバイオレンスという感じではなく。 繊細な描写で、 いつのまにか主人公たちに共感していた。 また、「敵」にも全く嫌悪感を抱かなかった。 不思議な読後感。 こんなことを想像して書いてしまうこの作者のひとは たった数作、こんなSF作品を遺して若くして死んでしまった。 助からない病気が進行していく病床で、 どんな気持ちでこの虐殺を書いていたのか。 自分にはかなり刺激の強い衝撃作だった。 この内容、どうか10年後もフィクションであってほしい。 そしてもし映画化されても絶対見たくない(笑) 小説だから、この作品にふれることができました。 伊藤計劃が、映画監督やアニメーターじゃなく 小説家であったことに、感謝。

    0
    投稿日: 2010.07.19
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    テーマやガジェットの選択がどうにも古臭いうえ、関連書籍を一生懸命読んで描写している感じがしてしまいます。そのため、世界観が平板で厚みがない。そこにナイーブすぎる語り口が加わることで、90年代の作品のような雰囲気があります。 種明かし部分はさらに陳腐なため、ここまで読んでそれかぁ、という徒労感さえ感じてしまいます。「ハーモニー」もやはり最後の種明かしで説得力を失ってしまっているので、作者の傾向なのかもしれない。 伊藤計劃はとても評判がいいのですが、どうにも僕には合わない作家だったようです。

    0
    投稿日: 2010.07.18
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    いや国産でここまでのモノに巡り会えるとはご褒美以外の何者でもないですね。これ程までに「死」を真っ向から描いた作品は初めて読みます。夭折されているのが惜しすぎる才能ですが、死にかけじゃなかったら書けない作品であるような気もしています。 この表紙と派手な煽りで中身も面白いんだもんなぁ。ずるい。 ハーモニーも早く読んでみたい今日この頃。

    0
    投稿日: 2010.07.18
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    この小説は凄い。テロ、監視社会、新自由主義経済、戦争の民営化、核、進化論、バイオテクノロジー、脳と「わたし」、生物と無生物、etc。よくこれだけのテーマを詰め込めたものだ。とても1回読んだきりではこれら著者のメッセージを受け止めることはできない。

    0
    投稿日: 2010.07.17
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    黒沢清『キュア』なラストにニヤリとした。これだけの筆力の人をなくしたというのは不運かもしれないが、このような作品を残しただけでも伊藤計劃は素晴らしい作家だ。

    0
    投稿日: 2010.07.14
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    あの宮部みゆきが3回生まれ変わってもこんな作品は書けないと評していた理由がわかる気がする。 読み終わったころには、人間って何なのだろう?存在していいのだろうか?そんな思いに駆られるほど、人間のどす黒さをドライに書き記した作品だった。 もちろんフィクションなのでこれが真実とは思ってはいけない、思うべきではないのだけど、こんな見方もできるということだ。何より説得力があったので納得してしまった自分が悔しくもある。 遺伝子レベルで良心も虐殺も同等に書き込まれているという点にゾクッとした。

    0
    投稿日: 2010.07.14
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    著者のパワーが感じられる作品でした。 評価は高いようだけど、個人的には絶賛する程ではなかったな。 あまりSF読まないから、違和感を感じているだけかもしれないけど。

    0
    投稿日: 2010.07.13
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    筆力に圧倒された。 ミリタリSFの形を取っているが、 様々な分野の話題が登場し、 広い範囲にアンテナを張っていた 人だったのだなと感心した。 勿論、物語としても重厚で 謎に満ち、面白さも抜群。 普段読み慣れない本格SFに これ程夢中になれるとは。 衝撃的な一冊。

    0
    投稿日: 2010.07.08
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    舞台は9.11のWTCの悲劇から何年か後の未来。真珠湾以降、攻撃を受けた事のなかったアメリカの神話を尽く打ち砕いたあのテロ事件は、アメリカ国民だけでなく、世界を震撼した。貿易センタービルが崩れ落ちる映像を見ながら、誰もが思っただろう。「何かよくない時代がくる」、と。  物語の冒頭は、主人公である米軍大尉クラヴィス・シェパード大尉の夢から始まる。「ぼく」が語るグロテスクで生々しい戦場や死の描写とは対照的に、「ぼく」自身はどこか子供で、あどけない印象を受ける。彼は苦しみ、恐怖する。己の母親の生命維持装置を止めてしまった事、つまり、自分の母親を「自分の意思」で殺したことを。「軍の命令」ではなく、「ぼく自身の判断」で手に掛けたことを。  軍の命令で人を殺さなくてはならない時、兵士は己に何と言って聞かせるのだろうか。カントの流れを汲む道義論的には「正しい事のみをすべきなのだから、人殺しをしてはならない」となるが、19世紀の功利主義的考えに則れば、「それで多くの同胞が救われるならば、殺してもいい」となる。恐らく彼らの精神衛生上は後者であろう。だが、引き金を引く自分自身の良心の呵責は、彼らが余程無神経、或いは感情を欠いていない限り一生ついて回る。実際、帰還兵にPTSDを発症する兵士が多いのもそのせいだろう。大義名分があるとは言え、人を殺す事に対するカント的な道徳観念がどこか頭の隅で居座っているからだ。だが、シェパード大尉にとってその他大勢の命よりも、母親の命の方が重かった。それがこの物語の軸だろう。  シェパード大尉はある男の暗殺を命じられることとなる。諸外国で頻発するテロや虐殺の陰に必ずつきまとう、「ジョン・ポール」という男だ。ジョン・ポールは「虐殺器官」を使って戦争を、虐殺を、混沌を扇動する。渡り鳥のようにあちらこちらの国を渡って、人々に戦争を刷り込む。争いを呼び起こす彼の目的は一体何だったのか。大量の屍を築き上げて、何をしたかったのか。その動機は、妻子をテロリズムで失った憎しみからくるものなのか。物語の終盤でシェパード大尉と対峙した彼は言う。「彼らの憎しみがこちらに向けられる前に、彼ら同士で憎しみあってもらおうと。彼らがわれわれを殺そうと考える前に、彼らの内輪で殺しあってもらおうと。そうすることで、彼らとわれわれの世界は切り離される。憎しみ合う世界と、平和な世界に」  愛する人々を守るために、途上国の不平不満が我々先進国に向けられる前に、途上国同士で潰し合って貰おう。  酷い発想だと言うかもしれない、けれど、きっと誰もが無意識に思っている事ではないだろうか。己の平穏のために他人を犠牲にする精神こそ、私達の意識下に染み着いている人間の本能なのかもしれない。だが私は、間違っていないと思う。幸福を求める権利はきっと誰の前にも平等だ。だが、それを実行出来る立場にあるのか、ないのかで不平等が起きる。「最大多数の最大幸福」を求める事が絶対的に正しいとは言えないが、少しでも多くの人々が少しでも幸せでいられるような世界であって欲しいと思う。「ぜんぶ」は無理でも、私の大切な「たくさん」の人達が幸せでいられる世界であるように。まあそこを追求し過ぎると、ジョン・ポールになってしまうのかもしれない。  昔、「誰ひとり余すことなく幸福になれるのなら何だってして見せる」と言った友人がいた。今、遠い海の向こうで頑張っている。ジョン・ポールのように殺す祈りではなく、彼の様に生かす祈りでありたいと思った。

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    投稿日: 2010.07.08
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    久しぶりに読んだSF小説。 久しぶりに読んだ日本語の外国人主人公小説。 どす黒いタイトルとは裏腹に、白い文体で生々しい描写がされていて、爽やかにグロテスク。 最近の著作だけど、2010年に読むとリアリティに多少の欠損があるのは非日常過ぎる設定だからかな。 何だかんだ言って軽々と重い文章運びが心地よかった。 作者がもうこの世にいないのが残念です。 宅配ピザの普遍性とか、面白かった。

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    投稿日: 2010.07.08
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    噂に違わぬ傑作。イヤ、大傑作。  SFではあるのだけど、僕はミステリと考えたいと思うのだ。そのほうが魅力を伝えやすい。  ミステリであれば、要するに「誰が」「どうやって」「なぜ」犯罪を犯したのかが謎になる(そのほかいろいろあるにせよ)。この小説の場合、「誰が」つまり犯人はほとんど最初からわかっている。そういう意味では、古典的なミステリとはちょっと違う印象だと思う。  「どうやって」の部分がSFである。もちろん、この小説の世界自体が近未来なのだけど、今僕らが生きている現実を、ほとんどそのまま10年間推し進めたような未来で、正直気持ちが悪い。でも、10年後確かに僕らはこういう世界に生きていそうな気がする。  それはともかく、犯人が犯罪に使った手段というのが、タイトルとも関係しているのだけど、ある意味虚を突かれて、そういう意味では面白い。だけど、まあまあってところである。  衝撃的なのは「なぜ」つまり動機である。衝撃で本を取り落としそうになった。エーと、あんまり書くとネタバレになるのだけど、なんというか、鏡をのぞき込むような怖さである。そしてその怖さは、あまりにも露骨な時代性に支えられているところから生まれている。この日本に生まれ育った僕らは、この小説を「ふーん」と無関心に流すことは許されないだと思ってしまった。  この小説を書く頃にはガンに冒され、すでに世にない作者。彼が今生きていたら、この小説のずっと先に希望を描き出すことが出来るのだろうか?

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    投稿日: 2010.07.06
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     読後のなんともいえない重苦しさ、寂寥感。評判に違わない傑作SFです。  特殊部隊隊員とは思えないほど線が細く未成熟なイメージのする主人公と、情景や情緒を繊細に書き出したSFというよりは現代犯罪ミステリーのような文章は、死と暴力の世界を扱っているにもかかわらず、どこか優しく感じられる弾力のある作品に仕上げている。  設定的にはギブソン以降のサイバー小説の影響を色濃くうけているが、高度に機械化されているだけでなく分業化と民間化された戦場の様相は筆者の現代的な感覚でうまくアレンジされている。分業によって細分化された作業と、民間化によってコストカットとリスクヘッジの進んだ戦場は、単純な作業の積み重ねを自動的に行う“工場”のようでしかない。心まで薬とカウンセリングでコントロールされた主人公たち兵士もまた、その工場から生み出される機械のひとつのようだ。極限までリスクを廃した戦場の姿は、生と死というものに漠然とした神聖さのイメージを持つ我々にとっては汚されたようであり堕落したようでもある。  その他、いくつもの示唆や、独特なインスピレーションを与えてくれる本作の素晴らしさは、しかし個人的には設定面やそういう繊細さよりも、それだけの舞台装置を揃えた上で、物語を描き切ったことにあると思う。  特に主人公であるシェパード大尉の心のあり方まで計算に入れた物語構成は素晴らしい。読後、ラストの主人公の決断の稚拙さに多少の不満が残ったが、あとがきを読み「テクノロジーによって成熟していない、成熟不可能だった主人公」という主人公のコンセプトとの合致で納得がいった。  兵士を守るためのテクノロジーは肉体的にはプロフェッショナルでも精神的には兵士として未成熟な精神をも戦場に送りこませることになり、そしてその精神が戦場で戦うのは、肉体的にも精神的にも未成熟な幼年兵…。この皮肉。  様々な示唆と対比に飛んだこの物語が処女作という著者の才能には目を見張るものがある。その才能が、すでに天に帰ったものだったとしても賞賛は惜しむべきではあるまい。  素晴らしい作品をありがとう。

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    投稿日: 2010.07.04
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    少々むつかしい文章だったけどおもしろかたです。意味を飲み込めない単語をいちいち調べるのは面倒でしたが。

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    投稿日: 2010.07.01
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    傑作。久しぶりに飲食も睡眠も放棄しちゃうぐらい、一気に読んでしまう本だった。読み出したらとまらない。この人の書く物語をもっと読みたかった。

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    投稿日: 2010.06.30
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    昨年亡くなった伊藤計劃氏の処女作。 カテゴライズするとテロや戦争行為を緻密に書き上げたSFミステリー。 表向きの内容としては主人公クラヴィス・シェパードは虐殺器官を使って世界中で内乱を起こしているジョン・ポールを追い詰め、そして最終的には……という感じの正統派SFミステリー。 それを情報化された社会、テロの頻発する発展途上国、アメリカの介入といったギミックを使って書いています。 しかし裏向きには「死者の国」を夢見る主人公が、追跡対象であるジョン・ポールとの邂逅と共感を経て、最終的には虐殺器官を手に入れる事でとうとうその悪夢を実現させてしまう、というある意味破滅的な話。 どういう視点で読むかで結末の印象がまったく変わる話でした。 死が付き纏うのに腐敗臭がしないのも特徴的。死というものを一歩引いて冷静に見ている印象。

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    投稿日: 2010.06.29
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    まず題名からかなりキレてるが、内容もタイトル負けしておらず、冒頭からショッキングな描写の連続。築かれる死体の山、山。 しかし、そんな折り重なる死体を踏み越えつつ描かれる物語は、単なるマニアックなSF戦争ものでも、ゼロ年代にありがちな空虚で破壊的な話でもなくて、一人称で描かれる内面描写はびっくりするぐらい純文学だし、怒涛の展開は王道の娯楽小説顔負けだし、明かされる真実は一流ミステリ以上だった。 そして恐ろしいことに、その上でちゃんとマニアックだし、空虚さが満ち満ちてた。この上なく。 丁寧に描かれた病んだ世界。肉ジェットとかの刺激強すぎる小道具。ちょっと他にないです。 あと特徴的なのは、そんなインパクト強い世界の中で、死体の山をガンガン築く人たちは、みんなひどく真面目でまともで未完成であるということ。だからこんなハードな世界観なのにちゃんと感情移入できてしまう不思議。そしてだからこそ文学と娯楽の要素がちゃんと溶け込んでいるんだと思う。 純文学と娯楽性とミステリを兼ね備えた完成度の高い小説は、今までいくつか出会うことができたけど、そこにさらに濃密なSFと、空虚さまで渾然一体となった小説は初めて。 そしてもう他に出会うこともないとも思う。それぐらいの完成度。ただただすごいです。

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    投稿日: 2010.06.29
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    久々にこんな上質なSFを読んだ。 本書は近未来を舞台としたSFで、主人公は暗殺部隊の一員としてどこかの国の戦場に潜入し、光学迷彩や脳操作ドーピングなどのハイテクを駆使してターゲットに近づいていく… こう書いてしまうと、まるでメタルギアソリッドのような世界観で主人公はスネークみたいな奴なんかじゃないかと思うかもしれないが、そんなことはない。むしろどちらかといえば未成熟な人間である。 どのくらい暗殺部隊らしからぬかというと、 休日にはピザとビールをムシャムシャやりつつ映画の予告編だけ延々と見る、さらには自分が殺した人間にも何となく責任を持てずにいる、 と枚挙に暇がない。社会と自分とを個人的に断絶しているところなんか、なんとなく村上春樹の小説の"僕"に近いものがある。 主人公がこんな具合なので、戦場の描写などはかなり淡々としていて、むしろ光学迷彩のようなハイテク兵器はテーマを浮き上がらせるための脇役に過ぎなかったりする。 「人々は自分が見たいものしか見ようとしない」 「人は自由だというのは、みずから選んで自由を捨てることができるから」 テクノロジーのおかげで表面上はより自由になったかに見える社会の人々が発する言葉が、なかなかに胸を抉ってくれる。 そして、ハイテク漬けでスネークにはなりきれなかった主人公が、テクノロジーでは覆しきれない現実を目の当たりにして取った決断とは…!! といった感じで、最後まで楽しく読ませていただいた。惜しむらくは筆者の伊藤計劃氏がすでに故人であること。こんなに物語に没頭したのは久しぶりなだけに残念だ…。

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    投稿日: 2010.06.27
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    核戦争やテロが頻発する黙示録的世界を舞台にした近未来SF。 痛みを感じず戦い続ける兵士、 虐殺を扇動する「虐殺の文法」など、 あながち遠い世界の話とは言い切れない内容に戦慄を覚えます。

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    投稿日: 2010.06.27
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    伊藤計劃のデビュー作。デビュー作にして、傑作です。 文庫版の帯には「現代における罪と罰」「ゼロ年代最高のフィクション」と、大仰な言葉が冠せられていますが、嘘偽りは全くありません。「物語」の解体と縮小再生産が溢れ返っていたゼロ年代の小説に、「物語」に真っ向から向き合ったこの作品が生まれたことは、何物にも替え難い僥倖でしょう。 この作品は、テロの脅威から管理(監視)社会化の進んだ世界で、後進諸国で急増する大量虐殺の陰に潜む謎の男と、それ(虐殺)を引き起こす"虐殺の器官"をめぐる物語です。 粗筋からもわかる通りSF色の強い作品で、「ベストSF2007」第一位、「ゼロ年代ベストSF」第一位に選ばれていることから、その設定や構成の質の高さが窺えます。それと同時に、(今はもうない)第一回PLAYBOYミステリー大賞を受賞しており、ミステリーとしても評価されうる作品となっています。 では、どの点がミステリーとして評価されうるかというと、大森望さん(SFを始め、ミステリ~純文学~ライトノベルなど、多ジャンルで活躍する評論家)が解説で触れている通り、「なぜ、虐殺が引き起こされるのか」というホワイダニット(犯行動機)としての意外性だと思います。 ミステリーにおいて、「動機」というのが一番取り扱い辛いテーマではあると思います。それは、論理的なトリックとは違った、文学的な「謎」だからです。 しかし、ミステリーを「罪(事件)と罰(解決)を描写した物語」と定義した場合、その一切は、ある人間の「動機の発生」から始まるわけです。なぜ、人は罪を犯すのか。この「謎」は、簡単に割り切れるものではないですし、一部のミステリにおいて散々用いられている「幼少時のトラウマ」という安直な(デリカシーに欠ける)動機の配置にも、正直うんざりします。作者と読者の間に、いつの間にか、ミステリを読む時には動機のみを切り離して、登場人物たちを紙の上の存在としてしか見ずに済ませる「暗黙の了解」が出来あがっていた気もします。その動機の不在が、いわゆる「人間が描けてない」という批判に繋がっているのでしょう。 …どうも話が逸れましたね。つまり、「動機」というものは、ミステリーにおいて(そして、すべての小説において)きわめて繊細なテーマであるわけです。 そして、この小説は、その「動機」というテーマに真摯に向き合える繊細さと、ポストモダン以降の解体/失効された「物語」を再構築させる強靭さを併せ持っている、ということが言いたかったのです。 (ウィークリィ洋子)

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    投稿日: 2010.06.27
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    日本人がこんな物語を書けるなんて思わなかった。すぐに英訳した方がいいんじゃないだろうか。「ニューロマンサー」を思い出した。

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    投稿日: 2010.06.23
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    単純にグロイだけのアクションと思ったらそうではない。 主題はもっと他のところにあった。 近未来の世界。 ある男が訪れる地域は必ず内戦が起こり混乱となった。 その男を暗殺するために送られた特殊部隊のお話。 いったい謎の男はどうやって?何のために内戦を起こしたのか? その答えは意外なものだった。 人の幸せはだれかの不幸によって成り立っているのか。 自分が幸せであれば他人が不幸になってもいいのか。 個人レベルであれば答えはノーと分かり切っている。 しかしそれが会社、国、世界レベルではどうなってしまうのか。 案外と難しい投げかけをこの小説はしているのかもしれない。 2010/6/21 すごいタイトルですが銀座三省堂さんイチオシ。

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    投稿日: 2010.06.21
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    SF好きなら絶対読むべきだと思う! 面白かった。 最初取っつき悪いんだけど、一旦この話の世界の枠組みが 掴めたら、一気に読める。 まぁだいたいSFってのは大体取っつき悪い物なのですが。 返す返すも、作者がもう亡くなってしまっていることが 惜しくて仕方ない。 もっと色々な作品を読んでみたかったなぁ。

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    投稿日: 2010.06.21
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    正直単行本を買うのには腰が引けていて文庫化されるのをまっていたのだけど、今は後悔している。もっと早く読むべきだった。 9.11のテロ後、世界ではテロによる核使用があり、先進国ではテロ防止を名目に生体認証を使った高度な監視社会を迎えていたが、世界各国では紛争、それも虐殺を伴う紛争が続きちっとも平和ではない近未来で、主人公は暗殺を主任務とする米軍特殊部隊の士官。 そうした紛争地に登場する謎の米国人ジョン・ポールを主人公が世界各国で暗殺対象として追っていくがそれが。。。というあらすじ。 主人公の心理描写や精神状態、薬剤やマインドコントロール、ナノマシンにより制御された精神と、古典的な言葉によるプロパガンダで紛争と虐殺を引き起こしていくジョン・ポールの対比。この小説は一見戦争サスペンスやスパイ小説の形をとりつつも、合理性の名の下に人が人の精神を支配していく恐怖、自分の過ちを精神的に背負い崩壊していく人間の弱さを上手く描いている。 この小説は近未来を舞台にしているが、テクノロジーを利用した個人のトラッキング、エグゼクティブ向けの自己啓発トレーニングや広告といった様々かたちでの「洗脳」は今も行われることであって、作品の近未来ではそれが過剰に過激に行われているに過ぎない。この個人への様々な干渉と洗脳への恐怖や人間性に対する攻撃は映画のボーンシリーズにおいてもシリーズを通して語られたテーマだと思う。 現実がSFを超えたようなことが言われて久しいが、SF本来の役割は未来という舞台装置を通して現代の問題に対し論じ、再考を促すことだ。そういった意味でSFの役割は終わっていないし、死んだジャンルでも何でもない。その点でも本書は優れたSF小説だし、著者が若く、多くの作品を残せずに他界したことは非常に残念だと思う。

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    投稿日: 2010.06.21
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    著者が夭折している場合、どうも過大評価されているんではないかという穿った見方をしてしまう。本作もそういう点で、なかなか手を出しにくかった小説。生得文法やタブラ・ラサなど、S・ピンカーの影響が色濃く感じられており、人工臓器やナイル・パーチの問題など、最近の話題も織り込まれている。劇画調の文章で、好きな人は好きなのかも。唐突なエンディングも悪くはないと思った。現代から少し先、世界の警察として各地での紛争解決に当たる米国軍暗殺部隊が主人公の小説。一見、無関係な各地の紛争の背後にジョン・ポールという人物の関与が見え隠れする。人には本来、虐殺の文法ともいうべき本能が備わっており、ジョン・ポールはそれを駆使して内紛を引き起こす。

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    投稿日: 2010.06.20
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    各国家の姿勢とか社会の状況とか趨勢とかがとってもコンテンポラリーで、ちょっと先を描いた小説として、とてもリアリティーがある。  数々の造語がSFマニア向けみたいで少々うるさいけれど、ストーリーの緻密な構成は素晴らしい。  主要国のテロを防ぐために、途上国で殺意のガス抜きをする。 これは、性犯罪を防ぐためにエロ漫画を禁止することとどこか似ている。

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    投稿日: 2010.06.19
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     読後、こみ上げてくる諦念と興奮が入り混じった感情に打ち震えた。『虐殺器官』は間違いなくゼロ年代を代表する最高の作品だが、本作品が描くはもう少し先の情景である。世界各地で多発するテロを抑止する名目で導入された高度な監視システムが、いわゆる先進国全てを覆いつくした近未来が舞台である。そうして得られた「自由」の裏では、アフリカや中央アジアでは内乱による大量虐殺が相次ぎ、その都度、主人公であるアメリカ特殊部隊のシェパード大尉は虐殺の現場へ派遣され、その虐殺を止めるために死ななければならない高官を消す任務を遂行するのだ。1ページ目から読者は最悪への想像力を掻き立てられる。目を閉じれば、灰色のクレーターのような核爆発の跡が、手や足を派手に吹き飛ばされた子供たちが、そして彼らの頭上の空を流れていく鞘の形をしたイントルード・ポッドが見える。地獄絵図そのものだ。やがて主人公は全ての黒幕を見つけた気になる。謎のアメリカ人ジョン・ポールだ。彼が訪れた地では必ず虐殺はもたらされた。しかしストーリーはここで陳腐な二項対立の決闘へと変わることはない。ジョン・ポールとの数回にわたる会話のやり取りを通して、シェパードの思想には明らかな変化が生じ、最終的にはジョン・ポールと同じ手段を使ってアメリカをもまた虐殺の渦へと陥れるのだった。  ところでジョン・ポールが用いたのは「大量破壊兵器」でも巧みな利害調整でもなく、言葉、それも特別な呪文ではなく、意識的にあるいは無意識的に、一定の文法に従って発話されるありふれた言葉たちだった。虐殺の地には必ず予兆としての虐殺の文法が頭をもたげる。ホラーやSF小説の永遠のテーマである行為遂行的発話の問題が、これほど身も蓋もなく提起される大胆さは、評価されるべきである。また、J.デリダを引くまでもなく、湾岸戦争から9.11、イラク戦争にかけてアメリカはいわば免疫機能の過剰を示してきた。ジョン・ポールの動機は、結局のところ自分を包んでくれる普遍性を、自分にとってのリアリティを守ることにあった。これは決して理解できないものではない。このことがわたしにとって一番恐ろしい。この異常な免疫の矛先がやがては自己の健康な細胞へと向けられる。今度は、最強の虐殺器官にして最強の免疫器官である言葉が自らの属する身体であるアメリカ自身を破壊しにかかるのだ。発動させるのにシェパードがたまたま選ばれただけだろう。実際、我々は誰でも、人を殺し、母の死に苦悩し、心打たれた女性をも失ってしまったシェパードのものとはほんの少し形が違うだけの、本質的には同じような地獄を抱えているものだから。ゼロ年代とは、そうした地獄の時代の始まりだったのかもしれない。自殺した同僚のアレックスの言葉が何度も繰り返されるように、本当の地獄は我々の頭の中にある。

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    投稿日: 2010.06.19
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    たまに読みたくなる「新聞書評」本。期待した通りには面白かったけど、期待以上ではなかったので★4つ。 日本人の書いた「外国人」主役の本がすごく苦手で、SF設定とか時代物設定だとまだ読めるけど、現代物だと違和感が凄すぎて読めない。これは、ギリギリでSF設定クリアだけど、やっぱりどうしても主人公が純粋にアメリカ人とは思えない。何となくメンタリティが日本人ぽくてダメだった。 特殊部隊物もスパイ物も好きなので、そのテの場面の緻密さが良かった。あと、読んだものがかなり視覚的にリアルに想像できてしまう方なので、肉系の描写の細密さは困った……当分、肉が食べたくない。 タイトルともなった『虐殺器官』という設定が面白く、終わり方もなんか虚無的で良かった。でもその虚無的なところが、やっぱりアメリカ人ぽくない…。

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    投稿日: 2010.06.19
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    9.11以降、世界は一変した。 世界は徹底的な管理体制のもとテロを一掃したが、後進国では内線や虐殺が後を絶たなかった。 混乱の中にささやかれる一人の男。 虐殺器官とはいったいなんなのか。

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    投稿日: 2010.06.19
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    梅田界隈では展開店増 新聞書評絡め実施 第1回PLAYBOYミステリー大賞【国内部門】第1位 大量虐殺を誘発する、謎の器官とはいったい? 米国情報軍大尉はその鍵を握ると目される謎の男を追って、チェコへと飛ぶが……。 現代における9・11における罪と罰を描破して大きな話題を読んだゼロ年代最高のフィクションが、満を持してついに文庫化を果たす! 推薦●小島秀夫(「METAL GEAR」シリーズ監督)・宮部みゆき

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    投稿日: 2010.06.18
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    「あれ? これSFだったんじゃなかったけ?」  読み始めて最初に感じる違和感はこれだった。  前情報によれば、これはSFの筈である。しかし、読んでいると現代のアメリカの物語のように感じられた。PTSDに悩みながらも生きている兵士の話。  しかし、ひそやかに舞台は、まだ現実に存在しないものたちを舞台に載せてゆき、続いての違和感は「あれ、核って日本以外にも落ちてたんだっけ?」と思わせる。(読んでいる途中でWikipediaで調べてしまった)  情報の扱い方、距離の取り方、命の価値。  現実からの延長線上に違和感なく配置して、読者に問題を突きつけてくる説得力がものすごい。  解説に10日あまりで初稿を書き上げたことがかかれているが、確かにこれは一気に書き上げるタイプの小説だ。  そして著者が亡くなっているということを知る。このまま書き続けて、10年後を読みたい作家だと思ったのでとても悲しい。

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    投稿日: 2010.06.17
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    近未来を舞台としたSF小説。1行目からすっと引き込まれ、最後まで止まりませんでした。細やかな設定と繊細な語り口。なのにあまりに生々しい戦闘シーン。最後まで途切れない緊張感と厚い世界観と深い死生観。ものすごい名作。とんでもなく切なくて素晴らしい物語。

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    投稿日: 2010.06.12
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    近未来SF小説。設定が非常に凝っていて将来の世界情勢が本当にこんな風になっているんじゃないかと思わせるほどの出来。

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    投稿日: 2010.06.10
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    これだけの長編だが非常に読みやすく一気に読めました。 解説等にあるように”虐殺の言語”についてはもう少し知りたかったような気もするし そうでない気もする。 ナノマシーンや環境追従迷彩服や痛覚のマスキング等々・・・ 現在の技術はどこまで来ているんだろうか?

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    投稿日: 2010.06.10
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    すっごい密度。息ができないくらい濃密な思考がある。物語は近未来を舞台にしているけど、それは、今の、このぼくたち、作中で何度となく語られる「自分が見たいものだけ見る」ぼくたちについての、沸騰する思考だ。

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    投稿日: 2010.06.09
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    9・11以降のテロに対する世界の意識を鋭い観点から一刀両断。SF小説だが、ミステリータッチでもあり、多くの人に読んでもらいたい一冊。あり得るかもしれない・・・と思わせる内容に、驚愕のラスト。今世紀に残る素晴らしい一冊!!

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    投稿日: 2010.06.07
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    近未来SFらしい細かな設定や造語が非常に多く、ちょっと時間があいてしまうと言葉の意味を忘れてしまって、読みづらかったが、ストーリーは意外性があり、なかなか面白かった。 ただ、解説を読んである程度は納得出来たが、主人公が米軍の特殊暗殺部隊のエリートなのに、性格がナイーヴ過ぎて、今ひとつしっくりこなかった。

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    投稿日: 2010.06.06
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    ずうっと気になっていたのを、ようやく買って読みはじめました。佐藤亜紀も絶賛しているし、期待大。しばらくいいSFに出会ってなかったからな〜。

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    投稿日: 2010.06.06
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    人は知りたいことしか知ろうとしないし、見たいものしか見ようとしない。 漠然とこんなことを思いつき、漠然と人と云う存在の幼稚さに、漠然と居直ろうとしていた矢先。 この物語に出会った。 私が朧げに感じていたことがそのものずばり書いてあって、びっくりした。 でも、私がそこで諦めて開き直ろうとし、思考停止しようとした地点よりも更に遠くに伊藤計劃は進んで行って、一つの答えを提示してくれた。 救われた気持ちになった。 いや違うのか。 私も、自分自身で引き受ける覚悟が漸くできそうだ、と云うことか。 学生時代以来、こんなに思い入れをする作家はとんといなかったのだけれども。 私の中で伊藤計劃は伝説になってしまった。

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    投稿日: 2010.06.03
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    脳のマッピングが今よりずっと進み、どのモジュールで何が行われているかが分析され、医学的にコントロールできるようになった近未来。 処置やカウンセリングで倫理や痛みをマスキングされ、戦うための道具となりながら、だからこそ死と生を問う作品。 読者の感覚もどこかマスキングされたようにすすむ中、同じ処置を受けた部隊との戦闘の異常さで現実に引き戻される感覚は衝撃でした。

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    投稿日: 2010.06.02
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    作者の死を知れば、この本は読める。 FPSゲームをストーリー化した作者の文の組立てを堪能すべし。

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    投稿日: 2010.05.30
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    アメリカ特殊部隊(暗殺部隊)が追う、各国で虐殺を巻き起こす1人の人物。 時代設定は、今よりちょっと進んだ未来の世界。 ハイテク機器がどんどん出てきて、 すごく便利な世の中にはなっているんだけど その分人々の閉塞感みたいなものもあって、 そういった点も考えさせられた小説。 (この小説のテーマから、もしかしたらずれてしまうのかもしれないけど…) テクノロジーが進化して、ハチャメチャな展開かと思いきや、 繊細な話で、個人的には難しいと感じた。 こんな未来は実際にありそうだと思ったし、 もしかしたら、自分が知らないだけでどこかでこういう世界が繰り広げられているのかも。

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    投稿日: 2010.05.29
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    この導入すごいな。だれもが知りたがる主人公のディテールが、小出しに出てきて、その断片がかろうじて形になったところで、すっかり物語の世界に取り込まれている。世界で通用するって説明もあったけど、まるで翻訳作品を読んでるような雰囲気も計算なんだろうな。この先、どこに連れてかれるのかこんな楽しみな作品はそうそうあるもんじゃない。繰り返すけどすごいよな。

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    投稿日: 2010.05.29
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     米国特殊部隊の軍人が追うのは、後進国での虐殺事件に絡んでいると疑われる男。  て聞いて、てっきりマッチョな軍事SFだと思いきや、読んでみると印象は全く異なりました。  とても繊細なタッチで、どんな残虐なシーンもあっさりと描かれる。しかしそれは「クール」なのではなく、ある種の諦念を湛えた穏やかな視線を感じます。  悪意なしに殺人を繰り返す日々に罰と許しを渇望する主人公と、愛のため虐殺を引き起こし続ける男。  善悪の彼岸に、主人公は混沌とした世界の中で静かに家に閉じこもり、そして米国の平和の象徴たるピザを食べる。  全編に漂う「死」の匂いには、なんというか、非常に切迫した「リアル」さが伝わってきます。  文章の技巧力がどうとかいう以前に、ストーリー・テラーとしての能力に溢れていますね。

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    投稿日: 2010.05.27
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    レーション。もしくはカロリーメイト。 ガラス細工のような、iPadで眺めているような感覚がした。 匂いがないというか。冷たいスープのような。 ミリタリーに留まらず、心理学、脳科学、生物学、チェコ語などの多彩な要素が煮込んである。 ビッグブラザーなサイバーパンクSFでもある。 テロ、内戦、監視社会などの現代社会がかかえる社会問題を取り扱った社会派小説でもあり、落合信彦の書きそうなミリタリー小説でもある。 言葉とは?宗教とは?倫理とは?生物とは? さまざまな問いかけをしているようにも思える。 残念なことに作者は早逝された。 早川書房から遺稿を集めた本が出ているのでそちらも読んでみたい。

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    投稿日: 2010.05.27
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    何というか・・・哲学書?? ハードコアなSFではあるものの 筆者の哲学・思想的な記述が盛りだくさん。 世界観や、背景描写とか、すごく凝った作りだけど こういった思想的な話は苦手なんで★3つ。 この世界観(近未来アーミー?)が好きな人は かなりハマると思う。

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    投稿日: 2010.05.11
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    予備知識もなく平積みになっている文庫を、手に取りました。 「内戦→虐殺を引き起こす仕掛け人がいる。」という始まりで、近未来を舞台にした「戦争経済」陰謀モノ?と思って読んでいると、「虐殺の文法」があるってことになって、おもしろくなってきた!ってところで第5部であっさりエンディング。おや?と思ったらエピローグがおもしろかった。もう1章あってもいいんじゃないかなと思うくらいに。 他の作品も読みたいなと、略歴を見て故人であることを知りました。

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    投稿日: 2010.05.09
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    もう、そもそも登場人物外人さんだし、SFだし、苦しむのは想定内だった。苦手なジャンルだったし。 それでもどうしても読んでみたかった。 案の定、話の8割くらいしか、理解できてないんじゃないだろうか。 ただ、そんなことはどうでもいいと思わせるような吸引力。奇抜な発想を裏付けるような繊細でリアリティのある描写。 こういった、苦しみながら夢中になって読む。そして読んでいないときにもそのことを考えるという感覚に久しぶりに出会った。良く考え、良く読めた作品だった。しかし、いろんなことを思い頷いた。 是非ハーモニーも読んでみたい。

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    投稿日: 2010.05.07
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    近未来を舞台にした細やかな設定が秀逸。 若干の甘さを感じた所もあるが、それを補って余りある力がある。 欲を言えば、さらなる補足をつけて出版してほしかった。

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    投稿日: 2010.05.07
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    久しぶりに日本のSFを読みました。 濃密ですね。 SFとしての設定にはアイディアを感じます。 押井守たちに共通する、重箱の隅をほじくる知性とでもいうのでしょうか? いわゆる「オタク」性というものを昇華させていくと、こうした凄い小説になるですねぇ。 形而下の物語の中に形而上の哲学を織り込ませる展開は、あまり日本の小説では読んだ記憶がありません。 この主人公のナイーブさには今時のSFなんだという時代性を感じます。

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    投稿日: 2010.05.03
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    救われる訳でもなく、絶望でもなく。 なんとも言えない感情が心にずしんときた。 通常の世界において、人を殺す事は絶対的な悪でありながら 戦場においては賞賛される行為であり かつ自分が生き延びるための手段でもある 兵士として戦場で人を殺すことは任務であるのか 自分自身の殺意であるのか 赦しを求め罰を望んでいた彼のラストでの行動は 果たして自への罰となりうるのだろうか。 任務という言い逃れの出来ない罪を 新たにひとつ背負っただけのように思えてしまう

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    投稿日: 2010.05.01
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    空想に近い近未来ではなく、現代の国際情勢の延長線上に透けて見える近々未来を舞台にしたハードコアSF。ディテールにこだわった描写は生々しく、それでいて知的。

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    投稿日: 2010.04.30
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    部屋に積み重ねられた今だ未読のSF書物の仲間入りしてしまうかと思っていたが、とんでもなかった。 興奮した。 暗殺部隊に所属する主人公の目線を通じて疑似体験する死のイメージはとてもドライで震えた。 古谷実の漫画に出てくる犯罪者が行動に出る時の空気感に似ている。

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    投稿日: 2010.04.28
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    装丁と帯に惹かれて購入。 読了後、「こんなん書いてたらそりゃ早死にするわ」なんて不謹慎なことを考えたが、失礼しました、癌でしたか。 ご冥福をお祈り致します。あんまり勿体なさすぎて信じがたいけれど。 屍の上に生きる我ら。 さてなんと罪深き存在か、と嘆くのは簡単だ。 屍は人間に限らないしね。 鬼束ちひろ並にどすんとくる作品。ルツィアに対する憧れとか欲望がもっと生々しいほうがよかったかなあ 凄いとしか言い様がないので星5つ。

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    投稿日: 2010.04.27
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    理由が秀逸。あの衝撃だけで星2つ分の価値があった。 ハーモニーも続けて読んでるけど2作とも人間ってすごくあやふやな生き物なんだよっと力説してる。よね?ダメだ、2作ともちゃんと買って本棚に置こう。読み返さないと消化しきれない

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    投稿日: 2010.04.27
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    繊細に描かれたハードSF。 社会への問題提起としても、エンターテイメントとしても非常に良くできている。 弱者が美しいものだというエゴ目線がないのもいいところだと思う。

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    投稿日: 2010.04.23
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    読みかけですが。ここ最近で一番面白い!!!言葉が凶器になるみたいな。でも残念なのは作者の方がもう亡くなられてるってことで。早すぎる死なわけで。 もうこの人が書く作品が読めないかと思うと残念でならない。

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    投稿日: 2010.04.23
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    人間の持つ虐殺的文法とその利用。 「自分の」世界の平穏を保つために、 ほかで残虐なことを起こす。 ぐさっときた。確かにそうだよなー。 これは重い。みんな読むべき。 ドミノ・ピザの世界は好きだけれど、 その世界なんて、ほとんど世界じゃないんだ。

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    投稿日: 2010.04.23
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    世界各地で内紛が勃発し、人は個人情報を極端にID管理されて、アメリカは「暗殺」を戦争解決の手段として容認した――そんな近未来の世界が舞台で、主人公はその暗殺のエキスパート、若い軍人。 宇宙船も未確認生物も出てこないし、血と荒廃と暴力の戦闘シーンなんて、たぶんリアルとそれほど変わらないと思う。 でもこれはSF。それも緻密な。 物語は、主人公のチームが取り逃がした暗殺のターゲットが、実は世界中の内紛の黒幕なのでは――、という感じで進んでいくんだけど、この敵を追いかけたり敵の手法が明らかになったりしていく過程は結構ミステリチック。それでいて、叙情的。一人称のおかげもあるけど、読みやすい文章だった。 村上春樹ががっちがちの国際謀略と軍事行動を書けばこうなるのかな、というような、淡々とした生と死の語り口であり、 有栖川有栖がミステリを捨てたらこうなるのかな、というような、派手じゃない叙情性。 一方で、高村薫が軍隊書いたらこうなるのかな、という緻密なリアリズムも全然損なわれてなくて、なんか、すごい。 今例に挙げた作家が偏ってて、そんな自分もなんかアレだw 閑話休題。 帯に「現代における罪と罰」とあるけど、そのとおりのナイーブな話だったと思う。罪と罰、赦すことと行動すること。人の背負う利己と利他。 正直なところ、タイトルでもある「虐殺器官」の説明は不明瞭。でもそれでも、「そういうものか」と受け止めて納得してしまえる、というか、その詳細は瑣末事として不明瞭でもいいや、と思えたのは、この「罪と罰」がしっかり物語の骨を作ってるからじゃないかなあ。 だからなのか、エピローグを読み終わった瞬間、「じゃあ今まで読んできたこの物語はすべてその文法で書かれていたってこと?」とぞっとした。普通に考えたらそんなことあるわけないのにw この、最後の最後でぞっとさせる、ある意味どんでん返しの結末はやっぱりミステリ的な手法でもあるし、最後まで読み応えがあった。 タイトル&表紙買いだったけど、当たり本。

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    投稿日: 2010.04.22