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わたしを離さないで Never Let Me Go
わたしを離さないで Never Let Me Go
カズオ・イシグロ、土屋政雄/早川書房
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総合評価

1385件)
4.0
415
465
290
45
14
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    「介護人」キャシーが「提供者」の世話をする。不思議な世界観からはじまる物語にどんどん引き込まれる。イギリス小説の歴史に刻まれた作家の、間違いのない名作。あまりにも精巧に作られた作品で、読み返すたびに見どころが変わる。気分は大変重くなるが、読後感は極めて良い作品。

    1
    投稿日: 2025.06.01
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    リアルにあるはずないのにすごくリアルで3人のやり取りも感じることも普通の人間と全く変わらない。それはそういうふうに育てられたからかもしれないがこんな運命なら最初からこんな気持ちにさせないでほしかったと思ってしまいそう。 人間の勝手なエゴ(不治の病から救うためのクローン)とエゴ(倫理観の為に感情を持たされるクローン)に振り回されてるかんじ

    0
    投稿日: 2025.05.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    3年前に一度読んだが、原書を読み始めたのでこちらも再読。 読んでいる間一瞬も気の抜けない小説(既に内容を知っているからかもしれないが)。キャシーが回顧するヘールシャムの日々は、管理が行き届き、大人に守られた、温かくかけがえのないものとして語られる。その一方で読者は「展示会」や「提供」の描写から作品世界の核心に近づくにつれ、胸騒ぎを感じるようになるだろう。キャシーとルース、トミーの関係性の揺れ動きもまた本作のコアであり、些細な(些細でないこともある)出来事で仲違いと仲直りを繰り返す様子が切実に描かれている。根底に深い悲しみが流れる作品だが、キャシーが自分の境遇を嘆いて自棄になる人間ではないことが個人的に救いだった。しかしながら、トミーがキャシーに放った「提供者でないから君にはわからない」という趣旨の言葉の効力はラストシーンのキャシーにとってもまだ作用しうる。キャシーが最初の提供を終えたとき、彼女はヘールシャムの輝かしい思い出を抱いて何を想うのだろうか。

    2
    投稿日: 2025.05.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    この本との出会いは、米津玄師のYouTubeのLOST CORNERのアルバムについて語った動画であった。その動画にて、同名の楽曲がこの本の内容を一部含んでいるとの話があったので読んでみることにした。  読み終わった感想としては、質量が大きいというか読み進めるのに時間がかかる作品という印象であった。語り手があれこれと思い出したことをあまり関連性なく綴っているような感じがしていろんなストーリーがわたしの頭の中でこんがらがっていた。しかしその物語全体でなんだか不穏な空気というか何か大きな裏がありそうな雰囲気がずっとあった。物語が後半に差し掛かるにつれてこの前半で生まれたモヤモヤは次第に晴れてくとともに新しくもやもやが浮かぶような展開で常に先が気になりながら読み進めていた。ものを直接的に述べない感じというか所々に粋な表現だなーと感じる部分が多くいくつかのフレーズをメモした。  内容に関しての感想は、思い出話にひたる感じというかとても懐かしい気持ちになった。最終盤では語り手と同じく、失う悲しみを感じた。ノーフォークになくしたものがあるだろう、なくしたものはいつか見つかるだろうという根拠ない希望のようなものが自分の中に芽生えた(?)。以前よりもあまり今に執着しすぎずに生きていけるような気がしている。(現時点)  こんな文章の末尾に書いても特に意味はないが、下調べなどせず、前半の不穏な空気を感じモヤモヤを頭の中に浮かべながら読んで欲しい作品であった。

    1
    投稿日: 2025.05.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み切ったぞ!!!!!!!!!!ガキだった頃に、ドラマ実写化の際に原作を買ったは良いものの、登場人物の名前が外国名のカタカナ表記だとどうにも頭に入ってこないせいで、途中で読むの挫折した「わたしを離さないで」を!!!!!約10年越しに読了できた!!!!!嬉しい!!!!! 正直、あの頃に「わたしを離さないで」が読み切れなかったことで、小説を読むことへの苦手意識を持つきっかけになっちゃってたから、大人になって面白さが分かった上で楽しめたの本当に嬉しい!!!!!私の脳はもう小説が読めるんだ!!!!!もっとこの世にある面白い小説読みたい!!!!!!!! 本編の感想としては、最初から最後まで主人公目線でしか描かれない点は読みやすいけど、話題があっちこっちに飛びながら語り口調で話が進むから「今の話してんの?ヘールシャム時代の話してんの?」ってちょっとゴチャゴチャには感じる。でも一貫して面白かった❗️ただ、個人的には、もっとクローン人間の構造(子供ができない体の作りということは、女性の体の場合は、子宮や卵巣自体が無いのか、それとも排卵をしないだけなのか?とか気になった)や、臓器提供についてもっと詳しく描写あったらな〜って感じだった❗️ あと読んでて1番ショック受けたのが、エミリ先生たち保護官までもがクローン人間であるヘールシャムの子供達に恐怖心や嫌悪感を抱いていたことを明かすシーン。マダムがヘールシャムの子供達を怖がっているのは、「倫理観的にクローン人間が普通の人間のように、心があるかのように動いて生きていることがどうにも受け入れられないのは、外部の人間だからかな?」と思ってたけど、クローン人間として生み出される子供の教育環境の為に奔走してたエミリ先生をもが、やはり心の奥底ではクローン人間に対する無意識な差別心があるというのは、人間味があるとも捉えられるけど、でもやっぱりヘールシャムで育ったキャシー目線でずっと読んでた分、結構ショックだったな。 この小説に惹かれたのが「クローン人間による臓器提供」の部分だったから、深掘りして描かれてるのがそこではなく、あくまでも人間関係なのがちょっと期待外れなだけで、普通に面白かった❗️ 何故、どんなに医療や科学が発達してもクローン技術だけはストップがかかるのか、この小説に全部詰まってる気がした‼️そりゃクローン人間の臓器で不治の病だったものが治ると分かったら、普通の人間達は、クローン人間の臓器が提供できる臓器になるまでの成長過程はスルーするよな〜って納得‼️ ポケモンのミュウツーみたいに培養液?みたいな中で成長するならまだしも、施設を出たら介護人か提供人にしかなれない、最終的には臓器提供だけが使命として生み出したくせに、普通の人間と同じように子供時代があるのは逆に残酷だよ…

    1
    投稿日: 2025.05.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    臓器提供者としての役割を持って生まれてきた人達。 常に提供の順番待ち状態というのはある意味死刑宣告と同じなのではないか。 そして将来提供者になるクローンに介護人をさせることで、身体的・精神的ケアや看取りまでクローン間だけで完結するというのも皮肉であり残酷。 虚構の世界だけど、読み進めていくうちに、こういったディストピアが実際に過去にあったのではないか? もしかしたら現在でもこの世のどこかに、、と疑いなくなるようなリアリティーだった。 物語の大部分は介護人キャシーが生まれ育ったヘールシャムや過去について回想している。 その語り口は静かで感情を伴わない淡々としたもの。提供者として生まれた運命の悟りやこの世の諦めが感じ取れる。 “癌は治るものだと知ってしまった人に、どうやって忘れろと言えます?不治の病だった時代に戻ってくださいと言えます?そう、逆戻りはありえないのです” この言葉はすごく考えさせられた。 科学技術が人間の社会を歪ませてしまう可能性いるし、倫理観まで損なわせかねない。 読み終えた後に静かな痛みを残す作品。

    4
    投稿日: 2025.05.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    “提供者”となった者の“介護人”の役割をするキャシーの目線で、幼少期から大人になるまでを過ごしたヘールシャムという謎めいた施設での出来事を思い出とともに振り返っていく。 臓器提供のために生み出されたクローン人間が共同生活をおくる学校のような施設“ヘールシャム”では、地理や音楽、美術、保健などの授業があり、食堂、寮が用意されており、授業以外の時間帯にはそれぞれ自由に遊ぶ時間もあるようです。ここで暮らすキャシーをはじめとする同様の子どもたちは大きな不自由なく、この環境に概ね満足しているようです。 そこでの教師の役割をする“保護官”は、ときおり何かを仄めかすような発言をします。 子どもたちの優秀な絵や詩などを選別して持っていく“マダム”は、そこにいる子どもたちをなにか恐れているようです。いったいなぜ? ここで暮らす子どもたちは、将来臓器提供をする運命であることをなんとなく潜在意識のもとで知っており、その運命自体には抗うことなく受け入れています。 彼らにとっての謎は、マダムはなぜ絵を持っていくのか?ときおり保護官が見せる不思議な態度はいったい何?といったことです。 もしかして優秀な人には提供前の“猶予”が与えられるのでは?という、それくらいは…という程度の希望も、最終的には打ち砕かれてしまいます。 キャシーら“提供者”として生まれ、育てられたものたちが、その状況下での他者との交流を通して心を揺らしながらも大人になっていく様を丁寧に描いています。これを非常に丁寧に書くことで、最後まで報われない彼ら、不条理で利己的な人間社会をリアルに描いているように感じました。 ヘールシャムはたしかに他の施設に比べて、彼らにとっては幸せな環境だったようです。ただ、どう育ったところで結末は提供です。それを知った後でも、彼らの受けてきた教育の賜物なのか、誰1人その状況に反旗を翻そうとしたり、逃げようとしたりはしません。移動手段として車が用意され、移動は割と自由に許されているようなのに…。 彼らが望むのは、数年の猶予くらいのものというのが、理解し難いけどもリアルなのかも…と思わされました。 こんなこと実際には起きないだろうと思いつつも、クローン人間が安定して作り出されるようになってしまった時、それに心があるのか?どう扱うべきか?については、目的と利用する集団よっては考えなしに利用される状況もあり得るだろう…と考えさせられました。

    1
    投稿日: 2025.05.02
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    読んでいるうちに、この物語が自分の心の奥にある何かと静かに響き合っているように感じました。 キャシー、トミー、ルース、この3人の間にある友情や愛情、嫉妬や虚栄、そして赦し。 どれもが穏やかな語りの中で、驚くほどリアルに、濃密に描かれていました。 私自身、人との距離をうまくつかめずに戸惑うことがあります。 だから、キャシーのように静かに周囲を観察しながら、自分のペースで関わっていく姿勢に共感しました。 彼女のやり方には派手さはないけれど、芯のある優しさと、静かな強さがありました。 運命が決まっている世界で、「生きること」や「誰かを想うこと」にどんな意味があるのか。 彼らの姿は、その問いに対して、ごく静かに、でも確かな形で答えてくれているように感じました。 噂にすがったのも、どうしようもない状況の中で、せめて希望を信じたかったから。 それは自然なことだったと思います。 そしてラストの別れ。 大げさな言葉や演出がなく、日常の延長のように淡々と描かれていたのが、逆に印象的でした。 言葉にしなくても通じ合う関係性と、積み重ねてきた時間、そして叶えられなかった未来が、静かに滲んでいました。 読み終えた今、この3人に出会えたことは、私にとって特別な経験でした。 人を想うことの重み、命の限られた時間の中でどう生きるか―― そのすべてが、心に静かに残っています。

    1
    投稿日: 2025.04.16
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    米津玄師のアルバムのタイトルに「ロストコーナー」というのがある。 米津さんが、カズオイシグロの「わたしを離さないで」が好きで、そこからアルバムのタイトルを付けたと言う話をインタビュー記事で読んでから、ずっと気になっていて、やっと手に取り読む事ができた。 本書は終始、奇妙で不穏な空気が漂い胸の中をもやもや、ぐるぐるかき混ぜられているような、個人的にどこかスッキリしない作品ではあった。 しかし米津さんファンである私は、インタビューで話していた一節はここの事だな、とかここを読んでこう感じたんだなと思いを馳せる事により、皆さんとは違った楽しみ方があり、そういう点においては読めて良かったなと思う。 特に本書の最後2ページを読んでいる時、米津玄師のアルバムの表題曲「ロストコーナー」の歌詞とライブで軽やかにその曲を歌う米津さんが頭に浮かんできて、胸が暖かくなった。

    2
    投稿日: 2025.04.15
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    人を人たらしめるものは何なのだろう。 生命倫理が問われる今だからこそ、読むべき一冊。 解説にもあるとおりよく抑制の効いた小説。少しずつ形を帯びて、少しずつ迫ってくる。なんというかひとつの交響曲のような、そんな話。 自分たちがいかに問題それ自体には声が大きいのに、その実害を被る個人の救済からは目を逸らしているのか気付かされる。押し付けられた絶望に抗う唯一の手段が思い出であるというのはあまりに残酷。 悲惨な出来事を淡々と語り継ぐも被害者。 その運命を受け入れているようで、また絶望。 誰にも奪わせない。

    0
    投稿日: 2025.04.11
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    物語は、キーワードが先にあって後からその意味が判明していくという構造になっていて、読み進めるほどに意味が分かる、意味が分かるほどにおもしろくなる、といった感じ。 ただよくある伏線回収系の物語とも違って、ごく自然な語りの流れでキーワードの意味が明かされていくため、あたかも読者がはじめからその意味を知っていたかのような気持ちになる、そんな物語だった。 内容はリアリズムとSFが混じったような感じ。作者がイギリス人というのも念頭に置くと、なんとなく納得するような感じもある。 タイトルの『私を離さないで』はすごく微妙というか絶妙というか、、なぜこのタイトルにしたのか、分かりそうで分からない。主人公にとって特別な思いのある曲のタイトルだが、このタイトルが曲名として機能しているのか、小説のタイトルとしてもっと大きな意味を包括しているのか、言葉自体に込められた意味があるのか、額面通りの意味なのか、いろいろ考えてみたもののあまりしっくりこない。いつか分かればいいなと思う。

    8
    投稿日: 2025.04.08
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    いまいち面白味を感じれない。そもそも小説の文体がですます調なのが個人的に苦手 タイトルが良すぎてその期待を超えてこなかった

    0
    投稿日: 2025.04.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    今年度読んだ小説の中で一番自分に合っていたと思う。 語り部の目線から一貫して語られていて、時系列も複雑に行き来する上に本作独自の造語が多いのに自然と理解出来るようになっているのがすごい。造語の説明についてもその言葉を知らない我々に対して語り部の目線から見たものを話しかけるように教えてくれるのでスっと入ってくる。 使命に向かって粛々と歩みを進めていった人たち、これから迎える結末を知っているのになんて強いんだと思う。最後の最後に明かされた施設の真実には語り部と一緒に呆然とした感覚すらあった。 日の名残りがカズオ・イシグロの代表作かつ同じ訳者ということで、こちらも絶対に読みたい。

    0
    投稿日: 2025.03.30
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    ほぼ予備知識無くノーベル賞を取った日系イギリス人(6歳までは日本で暮らし29歳まで国籍は日本)作家の代表作品…ということで読んでみる。 保護官、提供者、介護人、、?? 老年まで生きられないどころか、中年も無理?? …あぁ、そう言う物語(SF)だったのか!? 状況の詳しい説明は無く読者に想像させていくが、各シーンの描写、心理状態などの表現が非常に細かく描かれており、まるで実話・作者の実体験を書いているのか(?) と錯覚するほどだった。 不思議で儚く悲しい物語。

    0
    投稿日: 2025.03.26
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    どういう話かはなんとなく知っていたので提供者が何なのかはすぐ理解できた。 こういうタイトル好きなんだよな、と思っていたらこれは歌詞の一部分だったのね。 ディストピア系SFを読みたいと思って積読していたのをすっかり忘れていて、読み終わってそういえばこれは近未来の話だったんだな…と気がついた。ふわふわしてないのにそう感じる不思議な終わり方だった。 キャシーはどういう経緯で介護人になって仕事を辞めるつもりなのか不思議だったけど、手紙のように誰かへ伝えるような口調は、今彼女が提供するのをベッドの上で待っているかのような姿を想像させた。 提供することを先延ばしにすることも中止することもできないのにどうして彼らが逃げないのか、絶望して自ら死を選んでもおかしくないのにずっと不思議だった。 作者が自分の作品の中で一番日本的だと言ったのもわかる気がする。アメリカ的だったらきっと逃げ出して自立するために奮闘するだろうな。悲しい結末が待っているのに行動せずに使命を受け入れるのは確かに日本的という感じがする。作者の言う「日本的」はこういう意味じゃないかもしれないけど… なぜ逃げないのかは教育という名の洗脳をされているから、なぜヘールシャムが存在しているのか・臓器提供のためのクローンを作るのかは人間が人間に洗脳されているから、と考えるのが一番しっくりくるかも。なんとなく「モモ」を思い出した。 トミーの言っていた「何か新しいことを教える時は本当に理解できる少し前に教えるんだよ」って、これこそ洗脳の極意じゃないのか… 後半のメアリ先生の暴露は彼女が悪に見えてしまったのだが、もう人間がクローン人間の臓器提供なしには生きられない未来なら、むしろルーシー先生の言ってることの方が残酷なのかもしれない…けどやっぱりそうは思えず…うーん… この本に登場するクローン人間たちは人間が生み出した家畜同然で、そのことに罪悪感を持つ人もいるけど自分たち人間のためになるならとそこは見ないふりをする。そんなのは虚しいから楽しい時間を与えようというヘールシャムの理念は一見美しいけど傲慢だな。それでも間違ってはいないと思う。 クローン人間に対してではなく、牛や豚などの家畜に自分たちはすでに同じようなことをしているわけで…と読み終わった後にそこに考え至ると、この話の凄さや恐ろしさがじわじわとやってきた。 読んでいてずっとルースが好きになれず…なぜかというとこういう女はクラスもしくは学年に絶対一人いたんだよな…という理由。 なんでトミーといきなり付き合った?という衝撃がキャシーから伝わってこなかったけど、彼女は彼女で何か思ったこともあったんじゃないだろうか。トミーも絶対昔からキャシーのことが好きだっただろうになんでこんな女と付き合ってんだろ…と不思議でならなかった。 こういう恋愛模様も性行為への執着も、クローン人間も人間と変わらないから読んでるこっちにもズシ…っとくる。作り出されただけで人間と同じなのに人権がない(に等しい)けど、過ごした時間は確かに人間そのものだった。 ふと思ったけど、提供者に墓はあるんだろうか。なんとなくない気がしている。あったとしても共同墓地みたいな感じかな。 この世界ではターミネーターのように叛逆でもされない限り決してクローンによる臓器提供はなくならないだろうし、キャシーが助かる未来もないけど、鬱々としたものはなく穏やかな終わり方がとても印象的だった。 映画はまだ救いのある終わり方みたいなので観てみたいな。

    2
    投稿日: 2025.03.23
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    主人公は介護人のキャシー 提供者といわれる人の世話をしているということだが 提供者って?と思いながら読みはじめました キャシーの回想によりキャシーの過去の出来事が わかっていくにしたがい提供者がどういう人たちかも 理解しました ページ数以上に読むのみ時間がかかってしまい なかなか大変でしたが著者のこの作品を堪能できたと 思います

    20
    投稿日: 2025.03.22
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     美しくはかなく素敵で切ない物語でした。閉鎖的であり、幻想的であり、ミステリアスな女性の回想。そして、少しずつ明かされていく真実。読んでいて、いろいろな気持ちを抱き、読後もどこか物悲しくも、1人の人生の途中を見送れたと満足感を得ることができる物語でした。おすすめしてくれた方に感謝。

    0
    投稿日: 2025.03.11
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    とりあえず読み切ったけど、すべての説明をしない感じなのでスッキリとはいかない。冒頭で「これは説明ないパターンだな」と早々に諦めてとりあえず読み進めると、要所要所で独特の世界を説明する種明かしがある。大きな事件があるとかではなく、人間関係の描写を楽しむようだ。 ヘールシャムという閉鎖された場所である目的のために育てられた子供たちが成長する様子を描いている。第一部(1〜9章)、第二部(10〜17章)、第三部(18〜23章)と分かれているが、ただただ主人公の「こういうことがあった」という語りを文字起こししている状態。

    1
    投稿日: 2025.03.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ベールシャムが地名だと思って、検索してしまった自分を呪いたい。今後は読書中に検索することは控えることとする。

    0
    投稿日: 2025.03.03
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    著者、カズオ・イシグロさんは、ウィキペディアによると、次のような方です。 ---引用開始 サー・カズオ・イシグロ(Sir Kazuo Ishiguro OBE FRSA FRSL, 日本名:石黒 一雄、1954年11月8日 - )は、イギリスの小説家、脚本家。 長崎県で生まれ、1960年に両親とともにイギリスに移住した。長編小説『日の名残り』で、1989年にイギリス最高の文学賞とされるブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した。 ---引用終了 で、本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。 ---引用開始 優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていくー全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。 ---引用終了 本作の書き出しが、英語初心者でも?、非常に分かりやすい。 では、ちょっと見てみましょう。 原書の書き出しは、 My name is Kathy H. I’m thirty-one years old, and I’ve been a carer now for over eleven years. That sounds long enough, I know, but actually they want me to go on for another eight months, until the end of this year. That’ll make it almost exactly twelve years. 和訳は、 わたしの名前はキャシー・H。いま三十一歳で、介護人をもう十一年以上やっています。ずいぶん長く、と思われるでしょう。確かに。でも、あと八カ月、今年の終わりまではつづけてほしいと言われていて、そうすると、ほぼ十二年きっかり働くことになります。

    47
    投稿日: 2025.03.01
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    偶発的な死があり得ず,「提供」という決まった運命に従うことしかできないのなら,それは極めて残酷な世界というほかないだろう。ほとんどの人間であれば耐えられない苦痛に挑んだ本作は貴重である。

    0
    投稿日: 2025.02.25
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    あとがきの「細部まで抑制が効いている」とあるように、 情報量が抑えられており淡々とした語り口で、読み進める中で徐々に明らかになっていく感じ。 登場人物の言動からその人の性格や感情を想像することが出来る描写がすごいと思った。 再読したい。

    0
    投稿日: 2025.02.23
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    無垢なまま特殊な施設で育ったキャシー。 大人になり、提供者の世話をする仕事をしている。 キャシーの回想を通して、施設の特異的な部分が浮き彫りになり、また提供という言葉、そして隠されていた事実が明らかになっていく。 回想は幼い時期から少しずつ思春期に入り、そして施設を出てからと続いていく。 いつまで経っても一向に明らかにならない、施設や提供の謎。 これが楽しめれば良いのだけど、常に曇天の空の下で滔々と語られるような文体。光差すかと思いきや差さないのかい…。 ギブしないでよく読んだ。

    1
    投稿日: 2025.02.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    海外文学は読みづらい印象があったが、これは文体が自然で読みやすかった。回想録のような形をとっていて、どんどん読み進められた。 キャシーとトミーの運命はカセットテープみたいに巻き戻らない。「わたしを離さないで」という歌詞は、キャシーがトミーの介護人をやめることを予期していたのだろうか。 生徒たちは急速に変化した時代の落とし物。持ち主を待つ落とし物の期待は次第に諦めへと変わる。彼らを探す人はいなかった。ノーフォークへ行っても親は見つからなかった。 最後が決まっているのに必死に生きるキャシーたちに胸が締め付けられる

    0
    投稿日: 2025.02.07
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    序盤は臓器移植がチラつくたびに自分の内臓に意識が向いてこそばゆい感じだった 時系列が前後する割に文章と内容はとても読みやすかった

    0
    投稿日: 2025.02.04
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    こんな設定の小説だと思わなかった。自分が生徒だったらどうだろ。。。自分の身体が自分のためにはないことを幼い頃からなんとなく知っている。。。でも愛する人がいて、、 若者の思考と設定が入り込んでで、主人公も少し冷めてるのがリアルだった。 訳文は訳文です!って感じだったかな、、

    0
    投稿日: 2025.02.03
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    テーマが重めで、考えさせられる場面もあった。何も知らない無垢な子供たちのそばで支え、育て続ける保護官達の葛藤と、成長するにつれ自分が置かれている立場を理解し始める生徒達の絶妙な関係が細かく描かれていた。

    0
    投稿日: 2025.02.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    これと同じかこれ以上の感動を味わうことは、大人になった今非常に難しい。読んで良かった、と心から言うことの出来る作品。 全てを理解したとき、物語冒頭が思い出される。あの時、キャスはどんな気持ちで描いていただろう。消えないものはひとつもない。ノーフォークのロストコーナーにあるものも、あちらには持っていくことは出来ない。私たちが持っていくことができるのはたった一つ、記憶だけだ。あちらには思考も持って行けないかもしれない。持って行けるかわからない。あちらでも、私たちは提供し続けるかもしれない。 私と彼ら、生徒の違いはなんでしょう? 彼ら以上の作品を私は残せるでしょうか? 彼らの愛や悲しみは実在するのか? 私の愛や悲しみは本当に実在しているのか? いのちの選択ができるようになった今の時代、人工授精、体外受精、代理母、出生前診断、中絶、死刑、尊厳死。いのちの価値を何で測るのか? 羊のクローンが誕生した今、人間のクローンが生まれる日は近い。なんなら、倫理の先では可能かもしれない。 では、なぜしないのか? 何を根拠に我々はクローンをタブーとするのか。 心では理解しているものを頭では理解できない。 この作品はそういうことを考えさせる。 私たちは、なぜ人間なのか。人間である根拠はどこにあるのか。 また、こんな作品に出逢いたい。

    2
    投稿日: 2025.01.25
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    終始、牧歌的な雰囲気を醸す文体で物語は進み、中盤で出てくる「提供」というキーワード。内容がなかなか明かされないのでモヤモヤしながら読み進めました。 自分の中で、文体とキーワードの内容との世界観の乖離がうまく消化しきれない感じがこの本の魅力なのだと感じた。 「ロストコーナー」。この言葉好きです。

    8
    投稿日: 2025.01.24
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    初めてのカズオ・イシグロ。 描写がすごく細やか。 大事件のように扱われている出来事に、そんなちっちゃい事気にせんでええやろ~という気持ちになってしまって、だんだん集中力が...笑 でもラストの方で、これはヘールシャムの先生達が守ってきた子供たちの「子供時代」を描いているんだと思うと納得した。 子供の頃って確かに、『○○にこんな事言われた』みたいな日常で起こる小さいこと全部がこの世の全てだったよなぁ。 根底に特殊な事情がありながらもヘールシャムでの子供時代を土台に人生を築いている主人公達に、良かったねと言うのも違うし、犠牲になってくれてありがとうっていうのも残酷すぎる。 現実の世界でも、知ってるけど見て見ぬフリしている事、知らないフリをしているから心穏やかに生活できている事、自分達は得してる側だから他人事だって気にも止めていない事がたくさんある。 そういう事に少しだけ思いを馳せるきっかけになった。 映画も見てみたい。

    8
    投稿日: 2025.01.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    怒涛の最後…めくるページを止めれなかった… 失くしたもの達が集まる所に、トミーが来るんじゃないかと泣く、その情景に胸を打たれました…とても良い… そしてクローン達をただの肉袋じゃないと先生達は守ってくれたんだね…あのコテージのおっちゃんもむっすりしながら世話をしてくれてありがとう… ルース…だけで言うと本当周りご気を遣って合わせるから傍若無人に振る舞えるんだよな…こういう振り回す人いるよな…と思いつつ最後トミーが言ってたみたいに信じたい側というか、ただただ純粋だったんだね… マダムのあの踊りの記憶も…なんか悲しいはずなんだけどほんわかな情景だわ… 革命とか運命からの脱却ではなく、運命を受け入れるという強さ、これは先生達のおかげではないのだろうか… 素晴らしい!!!!!!

    0
    投稿日: 2025.01.17
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    映像化もされてて有名な作品だから、ぼんやりとした前情報があった上で読んだけどとても面白かった。 「提供」とか「介護人」、「回復センター」という単語に物語の世界にぐっと引き込ませる力がある。表面的には倫理観を提起するような内容なのかなと思うんだけど、彼らの出自が完全には明らかにならない分、心のありかはどこにという問いが自らを照らし合わせつつぐるぐると頭を巡る。 冷静な分析と感情の発露のバランスが、キャシーというキャラクターを魅力的にしていると思った。

    2
    投稿日: 2025.01.15
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    丁寧に読んでいるはずなのに、「保護官」とか「回復センター」といった「翻訳者が明らかにこう訳している」ことがわかる新単語に特に説明もなく先に進んでいく。もし「teacher」と書いてあれば訳者も「先生」と書くだろうし、「hospital」と書いてあれば「病院」と訳してくれる筈だから、これらの単語は明らかに著者オリジナルの馴染みのない単語のような直感があった。 このフィクションは「後から全貌が見えてくるタイプの作品だ」というのがなんとなくわかった。 物語を120pくらい読み終わった頃、私は自分の直感に従い、検索ブラウザに「カズオ・イシグロ わたしを離さないで 『約束のネバーランド』」と検索してみた。同じ感情を持った読者が他にもいたようだ。 子供たちが何者かによってコントロールされているかもしれないというディストピア感は、本来なら「SF作品」と非常に相性が良い。『華氏451度』『 アンドロイドは電気羊の夢を見るか』『1984』あたりがパッと浮かぶ。 しかし、本作からはこれらのようなSF要素は全然感じ取れず、どちらかと言えばヒューマンドラマ感がある。 最後に謎が明らかになるサスペンスのようなものなのかと言われれば、それとも違う。ジャンルを言い当てられないだけでなく、類似の作品もわからないという気持ち悪さがある。『日の名残り』を読んでカズオ・イシグロへ絶対的な信頼を持って読み始めた私は、色んな意味で裏切られたと言うわけだ。

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    投稿日: 2025.01.07
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    【2024年222冊目】 キャシーは10年以上、介護人を務めてきた。優秀な介護人とされる彼女は、介護者を選べるまでになっている。そして時には、幼少期を共に過ごした知り合いの介護人となることもある。キャシーによって語られ始める過去。どこか奇妙さのあった施設での日々。世界の真実が語られた瞬間、物語は様相を一変させていく。 読み終わるのになかなかに時間がかかりました。読書慣れしてない人は結構大変かもしれません。途中までは「回顧録かな」と思いながら読んでいましたが、ある時さらっと真実が明かされます。えっ、と思うものの、物語自体は何事もなかったように続いていくので、変わったのは読み手である私の方であったのかもしれません。真実が明かされなければただの、一人の人間が人生を振り返っているに過ぎない物語と言ってしまうこともできますが、少しずつ明らかにされる真実に、生きる意味、その過程について考えさせられることとなりました。

    1
    投稿日: 2024.12.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ひと息に読めばもっと面白かったような気がする。本は何度も読み途切れると集中が欠け記憶が薄れるのでどんどん味気ない読了感になってしまう。それが切ない。 話の内容は想像と全然違っていて、約束のネバーランドみたいだなと思った。もっとメロドラマみたいな話なのかと思っていた。うーん。クローンとして生まれた子たちを少しでも良い環境で過ごさせようと奮闘した人たちがいて、でもクローンたちは結局臓器を渡して死ぬしかなくて。良い環境で育てようなんてエゴじゃんか、とも思うけど、人扱いされない環境で生きるよりは環境的には良かったであろうことには違いがなく……というか根本的には臓器移植のためにクローンを作ろうってなること自体がとんでもないエゴなんだけど。とはいえ、最初から諦めた暮らしを与えていたら余計な希望を持たずに済んだろうとは思うけど、でもそれでは脱走や自殺も増えそうだしね。世話する側も耐えられないと思う、エゴだけど。実際問題、クローンではなくて何かもっと別の方法はないんだろうか。 すごく残酷な話なのに話の雰囲気はそんなに荒涼としているわけでもなく、キャシーは静かに自分の人生を終えようとしていて、なんだか不思議な読後感だった。諦念と言うんだろうか。やたらルースたちと喧嘩するじゃんとは思ったけど。あと話の引っ張り方が「CMのあとで!」的だなとは思った。良い話だったと思うけどいまいち乗り切れなかったのが無念。

    1
    投稿日: 2024.12.23
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    分からない語彙がありすぎてメモが捗った。 ノンフィクションじゃないのに、知らないことが幸せなこともあるよねと思ったと同時に、甘ったれんな!目かっぴらいてよく焼き付けておけ的な作品という見方をもした。 けど、それって行きつくところは一緒で、結局のところ、生きてるって幸せなことだよねってなる。 何かを知った時、その情報をどう扱うか。すべての選択は自分次第である。 あとは、“人間とはーー”と考えさせられる作品だったこと。 ゆえに重いのでクールダウンもかねて、次はかの笑えるエッセイでも読もうかな。

    1
    投稿日: 2024.12.22
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    本作が問いかけるのは、科学技術が倫理を凌駕する世界において、どのようにして人間の尊厳やアイデンティティを守るのかという問いである。この問いに関する作者の答えは、「記憶」を保持することだ。「記憶」というキーワードは、カズオ・イシグロの多くの作品に共通して重要な役割を果たすが、本作も例外ではない。臓器提供をするために生まれてきたクローンであるキャシーらにとって、過去の記憶を振り返るという行為は単なる回想ではなく、自分が存在した証=アイデンティティを確かめるための大切なプロセスだった訳である。かつてカズオ・イシグロは、インタビューにおいて「記憶は死に対する部分的な勝利だ」、と述べたという。この思想はとても日本的なように私には思える。「失ったもの・今はないもの」を、「見立て」や「面影」によって蘇らせるという日本の優れた文化的価値観が、長崎で生まれた作者に影響を与えているのかもしれない。

    14
    投稿日: 2024.12.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    主人公キャシーと親友のトミーとルース。三人はヘールシャムという施設で生まれ育った。不思議な施設だったが物語がすすむにつれて、ヘールシャムという施設は、臓器提供者の人間を育成するための施設だとわかっていく。施設の人間は「提供者」の介護人を経て、いつかは提供者として臓器提供をして使命を終える…。 感情が抑えられているような文体で、救いはないのに不思議と胸を打つ物語。 施設の中で子どもたちは美術作品を作成させられ、完成度の高いものは施設の人間が外に持ち出し、臓器提供者にも人の心がある、と訴えようとしているところはちょっと印象に残った。

    0
    投稿日: 2024.12.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    淡々とした語り口、あるあると絶対ないの繰り返し、たまに出てくる読者置いてけぼりの瞬間、そこまで面白くはない主人公の幼少期回顧録がメインだが、冒頭にあげた不思議な感じがページを捲る手を止めさせない。 大学時代生命倫理を少し齧っていたのでテーマに驚くことはなかったが絶対あり得ないと言い切ることはできない現代世界に改めて恐ろしくなった。 豚の心臓。あれをやり続けたらいつかは必ずヘールシャムの子どもたちが生まれることになる。どこで止めるか、どこで止められるか。 絶対安全圏内の読者でしかない私たちが私なら耐えられない運命だとかいうことは簡単だ。絶対安全なのだから。 食用と何が違うんだと言われると言語化するのが難しいが、個人的には人間の心臓のために豚を作ることはやってはいけないことだと思う。臓器を製造するために生命を作り出すと言う行為に私は嫌悪感がある。 結局エミリ先生やマダムのやったことは残酷な運命をより残酷にしただけなのではないか。一生懸命に絵を描くトミーが切なくてあの噂話が真実であれと願ってしまった。

    0
    投稿日: 2024.12.15
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    「記憶は死に対する部分的な勝利だ」 カズオ・イシグロ ・168・ 「親」なんて、わたしたちをこの世に産み出すための技術的要件の一つにすぎず、それ以上でも、それ以下でもない。わたしたちはそんなこととは無関係に、自分の人生を精一杯生きればよい…。ルースは常々この考え方が正しいと公言していました。

    0
    投稿日: 2024.12.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    死を迎えるのに、なぜ生きるのか。 そのような問いをなげかけられた小説だった。 提供者は、他者によって殺められる運命であり、 その運命を受け入れられるのか。 人は100%死を迎える。それでも私達は未来を描こうとする。それは、来るべき死が先のことであり、老いや病というある程度の予期ができ、死因が内的なものであるという前提があってこそだ。 それに対し、クローン人間である提供者たちは、生まれた時から未来がない。将来の夢を描くことができないのだ。なぜなら、死期が外的な要素により確定されるからだ。そのために、自分で自分の人生をコントロールしている感覚がないのだ。 では、死を迎える提供者たちに希望はないのか。 死期を自分で決められない、他者に自己の運命を握られている。その不条理と、いつそのときがくるのかわからない不安。それでもヘールシャムで育った生徒たちは自己の悲劇的な運命を悲観することはない。自暴自棄にならず、退廃的にならず、ごく普通の子供達と同じように、友達とつるみながら日常を送っている。それは、教育者たちの志に支えられた日々なのであった。 教育は人に希望を与える。 未来を描くことはできないとわかっていても、その時その場で起こる出来事を味わい、葛藤し、ときには感動することはできる。ただし、それは、精神が不安から解放されている状態での話だ。大人たちの配慮により、現実を見たようで見ないような育ち方をした子どもたち。それが正しいかどうかはわからないが、ヘールシャムは子供達に子ども時代を与えた。その時代の記憶が、その後の悲劇的な運命を辿る提供者たちの心の縁になった。 人を人たらしめるのは何なのか。 人間らしいとはどういうことなのか。 記憶は死に対する部分的な勝利である、とカズオイシグロは言った。 未来の希望は抱けなくとも、提供者たちは友人との繋がりの中で生き、その使命を終えてゆくのであった。 フランクルの夜と霧、映画のアイランド、がん患者の告知などが頭をよぎった。 どのような状況であっても、希望を見出せる力を備えるようにすることも、教育の役割の一つだと思った。 ごくありふれた子どもたちの日常が緻密にえがかれており、そのことが提供者たちの悲しさを際立たせた。提供者はもっと生きたかった。 切ない小説だったが、生きて未来に希望を抱くという当たり前のことが、当たり前ではないことを、あらためて考えさせられる小説だった。

    4
    投稿日: 2024.11.28
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    日本で放映されたドラマを見ていたので、ちょっとキワモノ作品なのではと、ずっと手に取らずにいた本。 思っていたのとは全然違っていた。心情描写の細やかさ、友人関係のもろさと強さ。残酷でいびつな背景をわかったうえで読んでいたけれど、それらをなしにしても思春期、青年期のつつけばこわれてしまいそうな彼らの心の内が細かに描かれていて(というか具体的に描かれなくてもやり取りから透けて見えて)、逆に何故この背景なのかということも考えてしまう。

    0
    投稿日: 2024.11.24
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    臓器提供という使命だけのために作られた子供たちの生活は、結末こそ残酷であるがとても穏やかに描かれていた。主人公を含めた3人の関係や行動が事細かに書かれていて、自分もその一員であるかのように入り込むことが出来た。 一度発展した世界はもう後戻りはしない。臓器を提供するために作られた人間が存在してもいいのかということに疑問を持ちながらも、見ないふりをし続ける人々の姿にとてもリアルさを感じた。

    0
    投稿日: 2024.11.14
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    ある描写をこだわって書く事に少し鬱陶しさまで感じていたが、それら全ての引っかかりはヘールシャムが作られた理由に寄与していた。その瞬間今までの描写が流れるように頭を駆け巡り、腑に落ち、漸くこの本の全貌が見えた気がした。

    0
    投稿日: 2024.11.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    始終不穏な雰囲気。でも面白い。 初めは淡々と昔の記憶を話す形で、面白くなくはないがサクサク読み進められるものではなかった。ただ、だんだんと彼らのことやその施設のこと、世界のことがわかるにつれ止まらなくなった。最後の章で畳み掛ける様にわかった瞬間、そういうことかとなるのと同時にキャシーたちよりも私は絶望したように思う。彼女たちの感覚がいまいち掴めるようで掴めない。普通の人となんら変わりはないとキャシーの記憶を一緒に辿ることでわかってはいるのに、やはりどこか不気味さを感じずにはいられなかった。 介護人として残されたキャシーはどんな気持ちだったのだろう。私だったら寂しくて仕方がないと思った。故意的な終わりが見えている人生の最後を見届けてくれる人もいない。 でも彼女たちからは恐怖を感じられない。そこがこの作品を不気味たらしめているように感じる。 この話自体私とはかけ離れた世界の話なのは明確なのに、最後は自分と重ねて話を読んでいた。なんだか不思議。切ない。きっと友人におすすめされるまで読むことはなかっただろうなぁ。でも面白かった。

    0
    投稿日: 2024.11.06
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    なんでこれほど残酷な運命から逃れようとしないのか、受け入れてしまえるのか。自分はこんな精神力は持てないと思う。幼い頃の違和感がだんだんと輪郭を持って明らかになっていく構成には惹き込まれた。 使命を終えるという表現が、もう提供できる身体ではないという意味しか含んでいないならやるせないな、、

    0
    投稿日: 2024.11.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    どうしてこんな残酷な運命から逃げず、受け入れてしまうのかわからない。受け入れざるを得ないような価値観が形成されている世界にゾッとする。普通だったら逃げようと思う。 臓器を提供するために育てられている、という設定は割と早い段階で登場人物のひとりから明かされる。 そのことがわかっていながら無邪気に生きる、自分を取り繕って生きる、そうすることしかできない世界は想像するに耐え難い。ルースのような反応が一番わかりやすい。不安を表に出さないまま生き、あるとき不安を隠しきれず、自分達に起こるであろう未来や考えられる出自の全てを吐き出してしまう。 トミーが癇癪持ちだったのは、全てをわかっていたからかもしれない、という推測もまた面白い。 情報を得ることもままならないまま噂を信じ、確かめ、そして突き放される残酷さを表現し、そのまま物語を終える。こんな小説は初めて読んだ。 今日の医療の発展はこういった歴史があったかもしれないと思うとゾッとする。みんな見て見ぬふりをする、とあった。それは読者に語りかけているのかもしれないと思ったら、まだ正直に受け入れることができていない自分に気づく。

    2
    投稿日: 2024.10.29
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    淡々と、想い出を懐かしむような口語形式で書かれているためかすっと心に入ってくる。なんとなく英国の児童文学全般に通ずるノスタルジックがあるように思う。青春時代を過ごした青々とした想い出と、卒業後のうらぶれた雰囲気。 まったく説教くささはなかったが、じんわりと、ちゃんと生きましょうと諭されたような気がした。

    0
    投稿日: 2024.10.28
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     話の幅が広いというか、あちこちに飛ぶというか、なんだろう、谷崎潤一郎の細雪を読み始めた時と似た感覚だった。  あとがきのとおり、「抑制的な表現」で想像を促してくれるのかもしれないが、少しもどかしいというか…。  1日か2日で読み終えるぐらいの気持ちで一気に読むと、少し読みやすいかなぁ。寝る前に少しずつ、という読み方では時間がかかり過ぎて、前の内容を忘れてしまうので。

    0
    投稿日: 2024.10.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    美しい風景や幼い日の郷愁…それらの描写がとても美しすぎて、残酷な世界観とのコントラストの差に呆気に取られてしまいました。 自分の運命を静かに受け入れる子供達がとても痛ましく思えて、読了後も悲しみの余韻が残ります。

    0
    投稿日: 2024.10.26
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    淡々とした回想が描かれていて、回想の中で生き生きとした描写なのに、靄のような濃霧がずーっと漂っているような感じ。 イシグロさんの作品は、なんとなくとっつきにくい印象があってあまり読んでないけど、もう少し読んでみようと思った。

    0
    投稿日: 2024.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    全部追想。徐々にいろいろわかっていく。何、を4回提供するのか、(トミーの言い方的に腎臓は残ってそう?取られて回復するのって肝臓くらい?)とか読んでもわからないところはまだあるけれど本としては全然必要ない。やっと会えたマダムや先生が話してくれる内容、読者はそっち側ではないのでキャシー達の扱いが腑に落ちるけれど、ヘールシャムの子たちがわかるわけはないし。 倫理が許せば実現できる世界ではある。

    1
    投稿日: 2024.10.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ずっと気になっていてようやく読みました。奇妙な世界観と綿密な表現で、引き込まれました。本当に体験した人が言ってるかのようにリアルでした。ラストはもう少し何かあっても良かったと思うけど、それでも充分考えさせられるし興味深い内容なので読んで良かったです。

    1
    投稿日: 2024.10.15
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    初めて読んだイシグロ作品。 終始仄暗いシーンが浮かぶ。 普段は救いがない作品を好んで読まないが、この作品はなんだか考えさせられるものがあった。

    2
    投稿日: 2024.10.05
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    介護人のキャシーが過去を回想する話。 一体物語がどこに向かっているのか検討もつかないまま、子供の頃の出来事をひたすら詳細に読み進め、焦らされているような気持ちになったが、最後まで読んですべて合点がいった。私も子供の頃の些細なことをこの緻密さで思い出せたらなと思う。子供の頃なぜか流行っていたこと、友人とのすれ違いや違和感を覚えたこと、心が通じた瞬間がよく伝わった。ノーフォークで失くし物が見つかる、って言い伝えが気に入った。

    2
    投稿日: 2024.10.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読んでいる途中で表紙デザインがなぜカセットテープなのかに合点がいき、そこからどんどん物語に入り込んでいった。作品の本文であるキャシーの回想そのものがカセットテープ的、いわば記録、記憶されたものの再生であるということに気づいた。こういった仕掛けを考えるのが好きなので気づけたときは嬉しかったし、存分にこの物語を味わえた要因の一つだった。 人間関係においてキャシーのようにひとりになる事を恐れていた経験があるのでヘールシャムでの生活を読んでいるときはこわかった。 クローンであることや臓器提供の運命があることを語られたとき、さほど驚かなかった自分に感想を書きながら驚いている。キャシー達のように漠然と運命を感じていたからなのだろうか。 もう一度読み返すのなら、猶予が与えられる噂が嘘であるとわかった帰り道の、野原で叫ぶトミーのシーンだろう。自らの運命と叶わなかった希望に打ちのめされる悲しいシーンだけど、1人の人間としていちばん生の輝きを放っているシーンだと思った。そしてこれはキャシーが寮で「わたしを離さないで」のテープを流しながら赤子を抱えて踊っていたシーンと被ってみえた。泥に塗れ た体に輝く月明かりと、部屋の窓から刺す太陽の明かり。なによりも祈りを体現しているんじゃないだろうか。 キャシーはこの先、ロストコーナーの有刺鉄線の場所を何度も訪れていたんじゃないのかな。そして、友人たちとなんでもない会話をしているような情景が浮かんだ。

    0
    投稿日: 2024.09.27
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    中古で180円で売られていたので購入し、連休の旅行中、帰りの高速バスで貪るように読んだ。 この小説の根幹を成している重大な設定の一部を既に知っていた状態で読んだものの、思ったより序盤でその部分のネタバラシがされることに驚いた。 主要な登場人物の少なさや、主人公が回想する形で物語が進むので簡潔な文体でとても読みやすかった。 でも、少しずつ違和感や苦しさ、切なさが澱のように溜まっていく感じ。 終盤の、登場人物の一人が主人公に願いを託すシーンや、生まれ育った場所で行われていたことの目的が明かされるシーン、4度めの「提供」を前に介護人を変えることを伝えられるシーンなどは感情をメチャクチャにされること間違いなし。 柴田元幸氏による解説も素晴らしく、訳者のあとがきの問いかけも考えさせるものがあった。

    2
    投稿日: 2024.09.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ハトマメ(鳩に豆鉄砲)なフレーズ 「無から作り出した自分だけの隠れ家、恐れや望みをいくらでも持ち込める場所―それが秘密です。でも、そんな秘密を必要としていること自体が、当時のわたしたちには、周囲の期待を裏切ることで、いけないことのように感じられていました」 「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているのかを知っておいてください」 「孤独も、慣れるとさほど悪いものではありません」

    0
    投稿日: 2024.09.25
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    TVドラマにもなった本作品です。当時はほぼ見てなかったけどある場面はなんとなく知っていて、あらすじは少し頭に入った状態での拝読。あとがきにもあるけれど、きっと前情報なしのほうが主人公たちと体験を共有できそう。 そんな状態で読みはじめたけれどやはりはじめから気持ちがどんよりしました。 序盤からの、はっきりしないが確かにある不穏さがずっと続く感じがつらかった。 第1部は、空が地べたと交わるほど低くて、そのわずかな合間をスレスレに飛んでいるような感覚。自由がなくいつ落ちても不思議ではない、そんな落ち着かないイメージで読みすすめるも状況が進んだ第2部に入ると少し慣れたのか、気持ちが落ち着いた。そしてラストの第3部でまた辛かった。 キャシーとトミーとルースがそれぞれの境遇や考えの違いでなかなか相容れず、すれ違うのがもどかしくて、でも三人の考え方にはどれも理解できる部分もあるしで一様にはいかない。 小説は『読者』という安全圏からの、身には危害の及ばない、悪くいえば高みの見物だが、これはその境界線を越えてくる訴えの強さがあった。 辛い部分があったので休み休みで読みましたが、色々と考えることのできた読書体験でした。

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    投稿日: 2024.09.21
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    残ったのは、印象だけ。 涼しく、寂しい、風が吹いている草原にひとり。 感情は凪いでいる。 私には難しかったから、きっとメッセージを受け取ることはできなかった。 でも、清潔で、快適で、寂しい諦めと、無垢の、良い匂いがしている。 ずっと残っている。 ページをめくり終わった指先にひんやりと、あとから思い出して初めてそれを認識できるような、穏やかな哀しみだけが残った。

    1
    投稿日: 2024.09.21
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    こんな残酷な荒涼とした物語を、作者はどうやって思いついたんだろう?謎解きと言ってもいいような、底に流れる世界観が、苦しくて苦しくて、読み続ければ何か、解答があって、希望のようなものが見えるのか?と期待して最後まで読んだ。 が、つらいまんま、何も私の期待する救いはなかった。 これを読んでる最中、あるトーク番組で、米津玄師がこの作品が好きだと言い、この中に登場する「ロストコーナー」について触れていた。忘れられた土地、遺失物置き場、という意味を持つ言葉。 寂しい言葉だ。 この小説の中での設定は全て 物語の半ばまで、ずっと曖昧な言葉で語られていた。 提供者、介護人、保護官、展示館、提供調整官、使命、云々。。。 結局、、、 人間の不治の病を臓器移植で完治させられる。そのために作られたクローン人間。その子達を養育する施設が各地にある。ヘールシャムはその一つ。そこで成長する主人公とその友人(?)たちの、成長、日常の出来事を、細やかに綴った物語。 親が誰かもわからない、将来起こることはすでに決まっていて、そこから逃れることはできない。 子どもたちもはっきりとではないが、自分の使命を漠然とではあるけど徐々に理解していく。 本当に残酷なお話で、長ーい物語は、古典文学に通じるような、ちょっと格調高い美しい文章で綴られていて、読者は逃れたくても、その文章から離れられない。まるで、臓器提供者の運命のように。

    1
    投稿日: 2024.09.14
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    静かに淡々と過ぎていった。 読む手が止まらなかった。 なんだか不思議な小説で読む前と後で何かが変わった気がする。

    0
    投稿日: 2024.09.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恥ずかしながら、何の事前情報もなく読み始めたため、当初は「ヘールシャム」が何で、「提供者」とは何なのかわからずに、物語に入り込めず…。ネットで少しあらすじを読んでから読み始めました。 調べずに読んでいたら、途中まで何の事かわからなかったなと思う…のは私の読解力不足だな、と痛感。 ヘールシャムで育った子供たちの運命を思うと苦しいが、翻訳ものの言いまわしなどに慣れていなくて、「味わう」までには到達できませんでした。

    3
    投稿日: 2024.09.08
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    かれこれ10年以上前から、読みたいと思っていてずっと読めていなかった。とあるきっかけからついに読む決意(?)をして、読了。 まあ、読みたいのに読めなかったことの理由のひとつに、どうしても翻訳ものの小説が苦手、というのもあったのだが、本書はそれほど苦手感なく読めた。よかった。 本作が、どういう人物たちの話なのかは、すでに知られていることでもあるから頭にはあった。 柴田元幸の解説にもあるように、抑制のきいた筆致で、とか、考え抜かれた構成、とか、その辺はまさにその通り。なんの予備知識もなく手にしたら、それはそれで違和感の正体に気づいたときの衝撃に、ドギマギするかもしれない。ミステリとして読めなくもない。いや、読めないかな。どうだろう。 予備知識があったことを差し引いても、なんとも切ない読後感は、ストーリーテラーとしての巧みさによるものなのだろうし、示唆に富み、いろいろな思いにもかられるのだけれど。 なんだろうか、やっぱり翻訳ものが苦手だからなのか、はたまた、単に著者の作品が自分の好みとは違うということなのか。 それなりに引き込まれて、翻訳もの苦手の私にしては3日くらいで読み終えられて早かったし、悪い印象ではないのだけど、それほど刺さらなかったんだよなああああ。 もっと若いときに読んでいたらよかったのかな、ひょっとして。

    2
    投稿日: 2024.09.08
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    グロテスクだがあり得る世界。 提供者の人生が、医学目的だけのものでないことを、読み終わる頃には知っている。丁寧に編まれた生涯。

    1
    投稿日: 2024.09.04
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    村上春樹のような美しい文章× 平野啓一郎のような緻密で繊細なストーリー。 そこに臓器提供を通してクローン技術の倫理的な問題を投げかけた唯一無二の物語. Never let me go. 終わりが見えても、まるで人間らしく 感情を持って複雑な人間関係を生きた姿に、 胸がいたたまれない。

    2
    投稿日: 2024.09.04
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    読み始めは介護人、提供者、ヘールシャムと主人公のキャシーの語りの中で当たり前のように出てくる言葉の意味が分からず、この長編を読み進められるか不安になった。ヘールシャムをネットで調べた時に、臓器提供という言葉がスッと目に入ってきて全てを悟り、次へ次へと読み進められた。 散りばめられた違和感を一つ一つ拾い集めて行った先でようやく答えに辿り着く第二十二章、本当に長かった。ヘールシャムの存在意義には疑問も感じたが、確かに最後まで臓器提供のために生まれてきた自分を否定することなく生きているのはヘールシャムでの教育があってのことだろうとも感じた。クローン技術と倫理的問題を掲げる長編大作を通してカズオ・イシグロの魅力に触れた。

    2
    投稿日: 2024.08.24
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    同じように泣いたり笑ったり生きる人間に対して、自分のためならばわたしたちは作中にあるような扱いをできてしまうのか、あるいは目を背けたまま受けとるのか。人間の歴史のなかにはそういう出来事がたくさんあって、すべての同じものが潤沢にあるわけではない以上「仕方がない」ことだって世の中にはあるけれど、けれど、のその先の言葉が出てこない。せめて考えることに価値があると思いたいよ

    1
    投稿日: 2024.08.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    キャシーの語る思い出のあれこれが、すっと心に入ってくるから、最後の方のマダムとエミリ先生とのやりとりがきつかった。 人間なのに、そう扱ってもらえない違和を感じたマダムとヘールシャム時代の思い出の描写がすごく印象に残ってる。

    1
    投稿日: 2024.08.17
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    『日の名残り』の次に読んだ作品。 運命を受け入れることや耐えることが、苦しくて苦しくてただただ辛い。 登場人物の生活が肌触りとして感じられるくらいリアルで、人と人との複雑でも温かい関係があって、その眼差しの柔らかさが心に染みて悲しさを感じてしまう。

    0
    投稿日: 2024.08.13
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    文章が端正だからか、より残酷さや、ディストピアな感じが伝わるような小説だった。最初は何のことやらさっぱりだったが、徐々に秘密が明かされてくると、何とも言えない気分になる。 ヘールシャムという特別さは、人の偽善からきているものだろうかと考えてしまった。小説の描写の殆どが、なんてことない人間関係のいざこざだったが、読み終わってみると、主人公はそれを大事にすることができたという事でもある。 何というか、うまく言えない。ただ、読み終わった後、すごい話だったなと思った。

    2
    投稿日: 2024.08.12
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    怖い怖い。なんだこの味わったことのない焦りと恐怖感は!!という本でした。最後へ行くにつれて虚無感と廃れた状況・場面にただただ日が当たる感じがしてた。

    0
    投稿日: 2024.08.06
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    臓器提供のお話。技術の発展がもたらす、負の側面、奪われる側のものがたり。されど、その提供の物語、流通の過程での搾取は、公害や今の社会や自然と人権の世界でも確実にある話。そうした構図を物語の力で明確にする書なのかも。 その意味で、約束のネバーランドも同じか

    8
    投稿日: 2024.07.20
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    とても残酷で、およそ非人権的な設定の話だけれども、登場人物、特に提供者や介護人の方たちは私たちとそう大きく変わらない生活をしているという奇妙なギャップが、なんともいえず胸を打ちました。この物語の設定は、よくよく考えると家畜の延長のような気がして、なんだかいつか有り得てしまうのではないかと静かに恐怖を感じました。

    1
    投稿日: 2024.07.15
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    Never led me go、わたしを離さないで。 高校生のときに読めてよかった1冊。 後半のタネ明かしで衝撃を受けたけれど、今を生きることの大切さに気づけた作品。

    0
    投稿日: 2024.07.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    臓器提供をする為に育てられ、使命を果たすまでの物語。 ゆっくり話が進んで行くので、読むのに日数が掛かってしまったけど、終盤からは怒涛の展開で、一気に読んでしまった。 最後まで救われない感じが、本当に切なかった。

    1
    投稿日: 2024.07.09
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    物語の核心部分のネタバレなしにあらすじを書くには力不足なので自重するが、3人の少年少女たちのいのちの模様の物語、とまでなら言っても許されるだろうか。 ロッキングチェアに乗った老婆がおさなごに読み聞かせているような、静謐で穏やかな語り口で、ある少年少女たちの淡くも煌びやかな人間模様が丁寧に描かれる。 これは何の話なのだろうと思いつつも、読み心地のよい文章に包まれるままに進めていると、彼ら彼女らのまぶしい青春の風景の中に、ふ、と影がさす瞬間がある。 この影のような違和感が、読めば読むほど輪郭をともなって大きくなってゆき、あるとき登場人物たちも読者も影にどうしようもなく覆われていることに気づいた時、わたしたちは愕然とし、動揺し、あるいは振り払えないその影に憤る。しかしそのときにはもう何もかも手遅れで、決して取り戻せない不可逆な過去そして未来への諦念が、静かに、残酷なほど静かに、胸を締めつける。 そうは言いながらも読後感は決して不快なものではなく、むしろ生の肯定にあたたかな気持ちになるのが、カズオ・イシグロの筆力のすさまじいところであり、この小説が稀有な傑作として世界中で翻訳され読まれている所以だろう。 余談ですが、各章が20ページ程度にまとまっていてやんわり読み進めやすいので、毎日寝る前に1章ずつ読み進めるととてもよく眠れると思います。 ----- 「いや、嬉しい。君のために嬉しいよ。ただ、おれが見つけたかった」そして、ちょっと笑って、こうつづけました。「昔さ、君がそれをなくした頃な、いろんなことをよく想像した。おれが飛び出して、君のところへ持っていくんだ。そのとき君が何て言うだろうとか、どんな顔をするだろうとか、いろいろとな」 トミーの声はいつもより柔らかで、目はわたしの手の中のプラスチックケースを見つめていました。店の中の客はわたしたち二人だけです。突然、そのことを強く意識しました。正面カウンターには店番の老人が一人いますが、いませっせと書類をめくっています。わたしたちは店の奥にいて、そこはほかより床が一段高く、ほかより暗く、店の中の切り離された空間になっています。老人が不要物だけをここに集め、心のカーテンでこの空間を覆い隠している……そんな感じがしました。 p.267 「君がLPを見てる間に、おれがテープの箱にたどり着いてればな。おれが見つけてやれたのに。トミー君はいつもついてない」 「わたしの感謝は同じよ。あなたが探そうって言ってくれたから見つかったんだもの」 p.278 あの思いが、いくら抑えようとしても湧いてきたのはそのせいでしょう。何をやろうと、もう手遅れではないのか。それが可能な瞬間もあったのに、わたしたちはそれを捕まえそこねたのではないのか。わたしたちがいま考え、計画していることは、どこか滑稽で、あえて言えば不謹慎ではないのか……。 p.369 君やおれは知りたがり屋だ。最初からーほんのがきの頃からそうだった。何かを見つけ、知ろうとした。おれたちの内緒話なんて、その典型だな。覚えてるだろ、キャス?けど、ルースは違うぞ。あいつは信じたがり屋だ。知るより、信じるのがルースだ。だから、そうさな、ああいう形で終わってよかったんじゃないか」そして、こう付け加えました。「それに、エミリ先生のこととか、おれたちはいろいろ知ったわけだが、だからって、ルースがしてくれようとしたことが変わるわけじゃない。おれたちに最善を望んでくれたんだ。最高の贈り物をくれようとした」 p.434

    14
    投稿日: 2024.07.03
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    マダムのお話からトミーが車から降りて叫ぶところは、胸にくるものがあった。語り口調が淡々としているけれど、口調とは裏腹に救いようのない絶望的かつ残酷なお話でした。

    21
    投稿日: 2024.07.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ネタバレあり 臓器提供のために生まれた人間の話。こういう話ってなんとなく人間味のない物語になりそうだけど、むしろ人間味に溢れた作品だった。 繊細な心理描写や複雑な人間関係など限りなくリアルに近い気がする。こんな環境に置かれたことはないけどこの世界のどこかで本当にあった話なのかと疑うほど。 そもそも臓器提供の部分は本質ではないだろうから作者がネタバレをしてもいいと言ったのは納得。

    2
    投稿日: 2024.06.23
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    アニメ約束のネバーランドを観た後に読んだら、ものすごく内容が似ている気がした。ネットでも色んな人が同じようなことを言っていたので、ある程度そうなんだと思う。どっちが先かとか、どっちが影響を受けたかとかは置いておいて、先入観無しに読めなくてただただ残念だし悔しい。浅はかながらノーベル文学賞なのできっと面白い本だったんだろうと思う。

    2
    投稿日: 2024.06.22
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    すごく面白かった…! 読み終わった後に残る静かな静寂、余韻が心地よい。 展開はもちろんあるんだけど、どこか穏やかで。 サクサク読みすすめるよりか、じっくり読みたい作品だったなぁ 2005年✏️

    1
    投稿日: 2024.06.19
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    あまり文学作品は読まないのだが、提供者についての内容が気になり手に取ってみた。 最初の2/3は最後の1/3を楽しむための長いつまらない前戯のよう。私にはこういう文学は、合わないとわかった。 もっと心揺さぶる内容を期待したが、さらっとしていた。

    1
    投稿日: 2024.06.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    じわじわと明らかになっていく展開と、そこにしかない世界観はとても新鮮でその世界観に引き込まれた。個人的には何とも言えない終わり方で、問題の解決を求めている人にとっては結局何が言いたかったんだろうと、足踏みする。これからの世の中に関しても関係が深いところだし、人間本来の在り方を見つめなおす、題材のような作品だった。

    1
    投稿日: 2024.05.29
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    何の事前情報も持たずに読んで良かったと思う。 優秀な介護人キャシー・Hが過去を回想する形で話が進行する。 舞台の中心は、彼女たちが育った施設ヘールシャム。 ヘールシャムでの子供時代はほのぼのとしていながらも、保護官の態度や謎の多いマダムの存在、展示館の噂など、「この裏には何かがある」と思わせる、気味の悪さや違和感が積み重なっていく。少しずつヘールシャムの全貌と彼女たちの立場が明らかになってきて…。 主人公キャシーと、どこのコミュニティにもいそうなカースト上位の高飛車な女の子ルース、癇癪持ちで心の広いトミー。 長くて短い3人の関係が、エピソードを交えて緻密に描かれる。近づいたり、離れたり、突き放したり、支え合ったり。 あえて言うとすれば、「アルジャーノンに花束を」を読んだ後と少し似た感覚が残っている。 静かで、穏やかで、残酷で、気味が悪くて、それでも暖かい。 イギリスと日本にルーツを持つ作者が、世界で高く評価されていることに納得した作品でした。

    0
    投稿日: 2024.05.27
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    得体の知れない恐ろしいものが、じわじわ迫ってくる雰囲気があった。 後半で、彼らの生活が何かはっきり明かされた時、 彼らをそれまでと違う目で見てしまい、切なくなった。 目的のために必要なら自分も見て見ぬふりしてしまうだろうが、向き合い、尽力した先生たちやマダムは凄い

    1
    投稿日: 2024.05.06
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    カズオ・イシグロ氏の作品を全て読んだ訳じゃないけれど、多分これが最高傑作なのでは?と思いました。 逃れられない運命、人ではない、人以下の人生しか送れない悲哀…でもそんなに違うものかな?現実の人間がもっと悲惨で苦しい人生の人の方が多いのでは?彼らの方がずっと「良い」人生を送れているのでは?と考えることにゾッとした。 どこか、「誰しも逃れられない運命に従って人生を歩んでいる」というメッセージが籠められている気がした。

    1
    投稿日: 2024.05.04
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    核心に触れそうで触れない⬅️納得 エミリー先生とマダムの言ってることが正しいのか、それともルーシー先生が正しいのか、自分で考える必要がある。 曖昧な感じで終わるのも、物語の中に取り残されたようで良い また会話中のちょっとした心情や雰囲気がとても鮮明に言語化されていて、ここまで細かな描写で文章にすることができるのかと感動した。

    3
    投稿日: 2024.04.25
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    母がドラマを見ていて知った小説。その数年後、電子書籍で読んでいたがデータが消えてしまい途中で止まっていた。久しぶりに図書館で見かけたので手に取る。 なんとなく、ドラマで描かれていた森の中の学校というイメージがあったが良く覚えていなかった。でもなんとなく、何の目的かという1番大事な部分は分かってしまっていたと思う。 あとはメイン3人がなんとなくドラマのイメージになってしまっていた。 いろいろなことが明かされたようで、明らかになっていないところもある気がして、自分の中ではモヤモヤとした読後感。 でも皆さんの感想などを読みながら、なるほどこのモヤモヤした感じを楽しむ小説であったのだなと納得。 長い小説だし、過去を振り返って語られる形式なので、わからないことがわからないまま話が進みモヤモヤするけれど、世界観に引き込まれ自然と読み進むことができた。

    4
    投稿日: 2024.04.23
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    物語の全容を知らないということがこの作品を楽しむ上でとても重要で、私はできる限り多くの人にこの物語を楽しんで欲しいと思っているので、内容にはなるべく触れずにレビューをする。 「介護人」キャシーの幼少時代から現在までをカズオ・イシグロお得意の回顧録形式で綴る。 幼少期にはヘールシャムと呼ばれる学校で育ち、学校を出た後はコテージと呼ばれる施設で生活を送る。 その幼少期から青年期にいたるまで、先生や先輩、そして学校の仲間と多くの人々との関わりがあるが、とりわけルースとトミーとの3人の関係が想起の中心となる。 学校生活だったり、友人関係だったり。本人達にも理解のできない行動規範のようなものが少しあるものの、ごくごく普通の少年少女の成長が、背景が語られないままに綴られていく。 この、背景が語られない、十分な情報が与えられないというのがこの作品の大きな特徴となる。 とくにほとんどの情報がない序盤では、語られているいかにもジュブナイルな人間関係に注目するしかなく、自然ルースやトミーがどのような人間なのかということを深く理解するに至る。 皆普通の子供だよなあなんて思いながら中盤にさしかかろうとするところで、新たな情報が投入される。 すると読者の、彼らを見る目がガラッと変わる。変わった目でさらに物語を読み進める。彼らが青年期にさしかかる頃の話を読む。 語られるのは引き続き仲間関係のこと、性に関すること、そして恋に関わることが中心になるが、同時に自分たちに与えられた役割の中でどのような人生を歩むべきかというアイデンティティの問題にも焦点が当てられる。 読者も、この新たに与えられた情報を知識として彼らのアイデンティティについて深く考えさせられる。 そして後半から終盤、彼らがそれぞれの人生を歩むようになる頃、読者もほとんどすべての情報が与えられる。 引き続き、語られるのは彼らの普通の生活。普通って言ったらおかしいけど、彼らから見れば与えられた役割の上での当たり前の生活。 語り手のキャシーが体験する感情だって、青年期の女性が経験するようなあたりまえのもの。 それでも我々読者が、与えられた新しい情報のフィルターを持って解釈をすると、とても重大で切ないものとなる。 すべての情報が与えられるのは最終盤。私はこれから読む皆さんに、ここに到達したときの気持ちを味わって欲しい。 最終盤、情報がすべて所与になったとき、キャシーが語った、彼らからすると(そして私たちも序盤はそう思っていた)ごくごく普通の思い出がびっくりするくらいに色づき、まるで読者自身の記憶であるかのように大切で愛おしいものに感じられることになる。すごい切ない。本当に切ないんだけど、これはなかなかない体験。すごい。 重要な情報が与えられないっていうプロット自体は昔から数多くある。特にSFでは多く、ぱっと思い浮かんだところだと、古くは星新一なんかがお得意とした語り口である。 カズオ・イシグロがすごいのは、自らが得意とする「記憶」というテーマに対してこの手法を使うことで、ものの見事に私たちの記憶自体もコントロールしたところにある。 新たな情報を時宜にかなったタイミングで投入し、私たちの過去の情報を書き換え、今後の読み方の印象を変える。 この技術はすごい。ノーベル文学賞ってやっぱり伊達じゃないんだなと改めて感じた。 もうほんと、私もすごい頑張って核心に一切触れずにレビューしたので、皆さん是非読んで欲しい。体験してほしい。

    15
    投稿日: 2024.04.20
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    文章はシャーロットブロンテのジェーンエアのように イギリスの風景を想像できる荒々しく、綺麗だか 内容はスティーブキングが書いてもいいような ホラーテイストの小説 綺麗な文章だからこそ、後半になるにつれ 怖さが増してくる カズオイシグロの文才に脱帽する

    0
    投稿日: 2024.04.11
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    徐々に暗い運命を感じさせつつ、ヘールシャムの仲間との友情、愛、それぞれの感情が緻密に描かれている。提供者でない視点から読むと、運命の決まっている子どもたちの、儚い人生の物語のようにも読み取れるが、提供者の視点から読むと、その人生の彩りや生い立ちに意味や幸せはあったようにも思え、その中で運命の謎が明らかにされたことは残酷だったのか、本当によかったのか、様々な感情が残る読後感

    0
    投稿日: 2024.03.14
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    前半は読みにくさ,見通しの悪さ,違和感があるけど, それが少しずつ晴れていく感じで読めた。 読了しても霧は晴れきらないが… 読了後にいろいろ考えさせられたお話だった。

    1
    投稿日: 2024.03.13
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    正直最後まで読むのたいへんやった…。 おもしろいのはおもしろいけど、事前に聞いてたネタバレ無しで読んでほしいとかむせび泣きながら読んだとかの口コミと逸脱してる感じ、、、。 時速20キロでずーっと物語がつづいていく感じ。 少しつかれた。カタルシスは得られない。

    1
    投稿日: 2024.03.12
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    同作の映画は見たことがありましたが、今回原作を読んで、より深く本質的なところに触れられたような気がします。 着実に、緻密に積み重ねられる心の描写を追ううちに、スルスルと本の世界に吸い込まれる心地がしました。 イギリスには本当にそんな仕組みが根差しているのでは無いかと錯覚するくらいでした。 素晴らしい技術を知ってしまったとき、人はその結果にばかり目がいってしまって、どうしてもその背景や過程が見えなくなってしまいます。 自分の生の礎に何が埋まっているのか、立ち止まって考える時間を持ちたいものです。

    0
    投稿日: 2024.03.01
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    『日の名残り』が素晴らしかったため、同著者の有名な作品である『わたしを離さないで』を読むことを決意。 長らく積読していたが、休日を使ってじっくりとカズオ・イシグロの描く緻密な世界を堪能することができた。 ”提供者”や”介護人”、”施設”といった何かを暗示するかのようなキーワードが飛び交い、読者は主人公であるキャシーの回想を追っていくことでその哀しい真実に触れることになる。 土屋政雄氏の名訳も相まって、爽やかな情景のなかに徐々におぞましい社会の構図が浮き彫りになっていく展開は、残酷だがそれゆえに儚さと美しさを感じることができた。 どんでん返しや安直なハッピーエンドは望むべからず。だからこそどうしようもなく切なく、心にずしりと残る名作だった。

    22
    投稿日: 2024.02.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    前半は、丁寧かつ繊細な描写、子どもたちの純粋で移ろいやすい心の動きを、少しずつ追いかけるような時間。後半は、徐々に世界の謎が解き明かされ頁をめくる手が止まらなくなる。ヘールシャムでの生活が少しくどくも感じたけど、読み終わってみればあっという間だった。

    0
    投稿日: 2024.02.23
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    淡々と一定の速度を保ちながら進んでいく この作者の作品は一頁内に文字が多いのにすらすら読めてしまう言葉が詰まっている感じがする 何のために生まれたのか&生きていくのか 提供者でない私たちにも生きる意味を問いかけられてる気がする 途中読んでいて苦しくなる場面も多々あり

    2
    投稿日: 2024.02.15
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    静かで淡々とした語り口。 ゆっくりと徐々に徐々に明かされていく。 静かなところで読みたくなる本でした。 できるだけ何も知らない状態で、この本を読み始めることをおすすめします。 知っていてもとっても面白かったです。

    0
    投稿日: 2024.02.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    著者がノーベル文学賞を受賞しているため、純文学寄りなのだろうと思って読み始めたので、かなり思いっきり大衆文学だったことに驚いた。 元々ベールシャムの施設の概要は聞いてしまっていた為ミステリー的な楽しみ方は半減してしまったが、それでも十分楽しめた。 特に後半が面白かった。エミリ先生の告白シーンではヘールシャムの真相が明かされていく感じがミステリー的に面白く、一番最後のトミーの癇癪の場面なんかは心にくるものがあった。 少し淡々とした文体も切なさを増幅させていた。 だが、日本語的に違和感のある表現や順番もあり、そこの読みにくさがノイズになって物語に入り込みにくく感じはした。 ルースはくそ。

    1
    投稿日: 2024.01.19
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    登場人物達の会話、考えてることの描写から対人関係の難しさや素敵さを考えさせられました。 青春劇が好きな方は良いと思います。

    0
    投稿日: 2024.01.12