
総合評価
(1350件)| 402 | ||
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
子どもたちの暮らすヘールシャムはどこか暗い雰囲気を感じる施設だと感じ、それがずっと心に引っかかっていましたが、読み進めるとその原因が次第に明らかになっていき、その度に衝撃を受けました。 臓器提供を目的に作り出されたクローンに教育を受けさせる。それは本当に必要なのだろうか。人間らしく育てた先にあるのが、臓器提供でいいのだろうか。私には安易に答えが出せませんでした。切ない気持ちが残りました。
3投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログ綾瀬はるか主演のドラマが大好きだったので、だいぶ前から原作の存在は知っていた(舞台が日本ではないというのも知っていた)が、なかなか読む機会がなかった本作。三浦香帆さんのYouTubeでもカズオイシグロ初心者にはこれがオススメ、ということで、ようやっと手を出しました。面白かった〜! 信頼できない語り手として名を馳せている作者だということも存じてあげてはいたけれど、やっぱりドラマで内容をだいぶ補完された頭ではその醍醐味を楽しみきれず、綾瀬はるかと水川あさみと三浦春馬を思い浮かべながら、ドラマをおさらいしているような感覚で一気読み。それはそれで楽しかったし ドラマ版でお気に入りだったマナミというキャラクターはドラマオリジナルだったと知れて、アレンジが良い方向に活きた脚本だったんだと今更思うなど。 語り口が完全に一人称なのとですます調なので最初は新鮮だったけど、意外とこういうのも好みだと気付けたのもよかった。テーマは非常に倫理的で、ここまでではないにしても脳死の人間の臓器移植をどうするか、というようなテーマはずっと議論され続けてきただろうし、全く考えられない世界観ではないと思った。こういう人間を、世界をつくってはいけない、という、ディストピア小説のような側面も持った小説。
0投稿日: 2025.11.03
powered by ブクログ10年程前になるだろうか。当時のドラマは衝撃的だった。私が介護人だったらどう思うだろうか。私が提供者だったらどう生きたか。知っているようで知らない生まれた意味、生きる目的。 それにしても、読み終わるのに時間がかかってしまった。
0投稿日: 2025.10.28
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静かで悲しい話だった。 主人公が半生を振り返る口調がたいへん抑制がきいてきて冷静で、あとルースが嫌なやつすぎて、そして長くて、ページをめくる手が鈍った...けど、ラストスパートのヒリヒリとした切実さは胸に迫るものがあった。運命が悲しいし、やるせないし、おそろしい。 マダムとエミリ先生の、無自覚な残酷さ(むしろ人格者だくらいの自負すらある)、こわい。 ふたりの運動によって主人公たちに豊かな感情が生まれ、そして絶望する。もし大きな変化の波の中にあっても「私たちの人生はこれがすべて」...。変えられない運命なら期待を持たせるような教育自体が悪なのでは?いやそれでも彼らに大切な人とあたたかい記憶ができるなら無意味とは言えないか...いろいろ考えてしまうな。 沼地の難破船を3人で眺めるシーン、静かで絵的で美しかったな。
0投稿日: 2025.10.24
powered by ブクログおもしろかった 作者の人への深い洞察が垣間見える作品だった。 最後の方はつい読み込んでしまった。 旅先で読みたいような作品だった。
9投稿日: 2025.10.21
powered by ブクログタイトルが良い。 「ヘールシャム」という施設でたくさんの子どもたちが育てられいる。 はじめは孤児院的なところかと思っていたが、徐々にそうではないことが明らかになっていく。 独特の切り口で描くから不思議なことが、そうじゃないように思えてくる。「ヘールシャム」と子どもたちの謎自体は描きたいものの中では大した問題ではなく、キャシーという主人公の内面をずっと丁寧に描いている。 普通の人だったらわざわざ言語化しないようなことまで言葉にするから人間だなあと突きつけられる。なるほど、それが狙いかと読み終わって気がついた。ずっと人間のことを書いている。 キャシー、ルース、トニーの三人。変な関係。ルースは自分が手放せるとわかるまで、トニーをキャシーに託せてないんだよな… キャシーもぐるぐる考えすぎてしまう人。
0投稿日: 2025.10.21
powered by ブクログちょっと不思議な青春小説といった雰囲気で淡々と進むけれどゾッとする話。オカルトっぽくないから余計に怖い。 ノーベル賞作家の作品って余り読んだことが無く期待もしていなかったけれど凄く面白かった。
0投稿日: 2025.10.21
powered by ブクログカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」読了。石黒正数のマンガ、天国大魔境が好きだ。それに登場する孤児院高原学園がへーシャムと似ているなと思った。臓器提供を目的に産み出されたクローン人間の自我と苦悩が切なく描かれ静かな余韻が印象に残った。書いて気づいたがそういえば著者名似ているな。
0投稿日: 2025.10.19
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主人公キャシーの回顧録という形で小説が進んでいく。 最初の3分の1ぐらいから奇妙な設定が散りばめられて 最後にすべて明かされる。 なぜクローン人間作成に犯罪者の遺伝子を使うのかは明かされなかったが 特に主人公の人生が向上したわけでも革命が起きたわけでもなく日常として臓器提供者の人生が描かれる。
0投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログ霧の中でなーんも見えなくて手探りで進んでいくうちに何かをつかむ。後で明るいとこでそれを見たら、とんでもなくおぞましいものだった。って感覚。 「介護人」「提供者」「保護官」などの耳慣れない単語が、主人公キャシーの追憶を通してだんだん形を成していく。キャシーの淡々とした語り口も相まって、その過程がとてもグロテスクだった。彼女にとっては「それ」が「使命」として当たり前のこととされているのが、不気味で… でも、私の感じた不気味さと裏腹に、キャシーは友達と過ごし、好きな人と愛し合い…彼女の人生を送っていく。 全て読み終わった後に、「私と彼らの違いってなんだろう」とぼんやりした。
9投稿日: 2025.10.17
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なんて悲しい話なのか、と思いながら読んだ。主人公であるキャシーらは、臓器提供のために育てられたクローン人間である、という設定はそれ自体大変ショッキングな内容だが、読者としては、物語が進むにつれ、直接な言及はなくともなんとなく察せられるようになっていて、いつの間にかそれを知っている、ということになっている。それはまるで、主人公たちが、知るともなしにその事実を知って、いつのまにかその事実を受け入れているというストーリーをなぞっているようだ。そういう体験を、実に周到に用意しているように思う。そして、そのこと、つまり、自分たちがいつのまにかその事実を受け入れてしまうということが、とても残酷なことだと気づく。主人公のパートナー(といっていいのだろう)トミーが、些細な理由で癇癪を爆発させているのは、その事実を感づいていたからではないか、というくだりが最後の方に出てくる。本当はそれだけ抗わなくてはいけない、そういう運命のはずだが、彼らは何もわからないままに癇癪を爆発させることしかできない。すごく悲しい話だなと思った。でも、直接描かれているのはとてもリアルな人間関係のぎくしゃくだったりその中で通じ合う気持ちだったりする。そうして気持ちが通じ合う瞬間の尊さも、悲しさを増す要素のような気がする。
0投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログディストピア的世界。 大きくネタバレになるけど、臓器ドナーのためにクローン人間として生まれ、育てられた人達の話。 やがて臓器は提供され、使命を終えていく。 正直、SFとしては、突っ込みどころが色々あったり、胸糞悪い展開で、決して好きな物語ではなかった。 カズオ・イシグロの作品を初めて読みましたが、しかし、なんと人の心情を読み、描くのが上手なんだろうと思いました。 作中での人間社会は、クローンの人間性に目を向けようとしませんが、紛う事なき人間描写です。 おじさんであるはずの作者が、よく女の子の心情をここまで描けるなと思いました。リアルすぎて、辟易するぐらいに。 終盤に向かうに連れて、作中のクローンも、人間も、人生の全うの仕方に大きな違いはないなと強く感じました。 当然、自由や人権だったり、臓器の提供という強引な終焉、倫理的にあり得ない差はあるものの、人間もクローンも心は同じで、つまりそれは、人間は、作中のクローンよりも猶予はあるものの、いつか来る死を前に、どう実存していくか、どう心を育んでいくかに他ならない事と思います。
0投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログ優秀な介護人キャシーは提供者と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの友人たちも提供者だった。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。 人間であるということはどういうことか。人生の有限性を受け入れながら、尊厳を保って生きるとはどういうことか。 核心的な感情は描かず、その余白を読者の心の中にじわりと浮かび上がらせるタッチなだけに、余韻が凄まじく、ただただやりきれない読後感…
3投稿日: 2025.10.08
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物語を通して漂う不穏な空気、終盤にかけて「臓器提供」、「クローン」、「手術台」といった直接的な言葉で分からせられる地獄の中で「わたしを離さないで」というフレーズが刺さって、頭の中をぐるぐる巡っていた。 クローンが作り出した絵画や詩に映る魂、友情、愛の在り方、それを人間達はどう見るのか等、単なる悲しみや切なさだけでなく、ヘールシャムの風景をはじめとした光のようなものも見えて、余韻が美しかった。
0投稿日: 2025.10.06
powered by ブクログわかった上でもう一度読みたいと思う小説 表情や雰囲気、言葉の語尾や些細な動きで揺れ動く人間関係や感情がぼんやりと伝わってくる感じで、 第三者目線で俯瞰して見ている不思議な感覚を味わった
1投稿日: 2025.10.06
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あまりに良かった。最後の終わり方が美しすぎて余韻に浸っており、感想も書けなかったし、別の方を読む気にもならなかった。 「記憶」を一つのテーマにしているとのことだが、知らずに読み進めた場合、そのような印象を受けなかった。のちに見てしっくりきた。 友達に勧めて貸している。感想を聞くのが楽しみである。
1投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログ全てを書き切らないこと、教えないことがヘールシャムの保護官の方針だったそうだが、この本にもその要素があった。そのためだろうか。終始どことなく漂う不安と不気味さが、この本を先に先にと掻き立てた。 ただ、それ以上に人物描写が圧巻。傑作に大袈裟な「転」と「結」は必ずしも必要ではない。
5投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログ終始女性の一人称で進む物語。土の中でじっ、とし続けているように読み進め、最後の一章で急に飛び立つような展開でした。 境遇がわからないまま、大きくなっても子どものままのような主人公達。一方で、大きなものに流されている様子は今の私たちと特段変わらないのではとも思えてくる。悲しさや怖さ、爽やかさ、いろんな感情を重ねたら丸になったような、独特な感覚を覚える面白い本でした。
0投稿日: 2025.09.24
powered by ブクログ不思議な読書感でした。 ひとりの女性の回想で展開されます、日常の違和感のなか、心理や感情はありがちで、その先は? その先は?と何故か引き込まれいきます。 結末もなんとも言えない感じ、読後もモヤっとします。
0投稿日: 2025.09.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終えた正直な感想は、「しんどい」だった。 物語は主人公の一人であるキャシーの語りで進む。 キャシーの主観での語りという不安定さもあるし、端々に小さい違和感があったり、「ご存知ですよね?」という感じでサラッと語られる怖い事実があり、読んでいて「これ、この中の世界はどうなってるの?」と思わされて、まるで見通しの悪い霧の中にいるようだった。 人間関係の描き方が細かくて、人間の嫌で面倒なところがすごく表されている。 最後に「しんどい」と思ったのは、救いが無いからだ。 運命は決まっていて、希望が見えて抗ってみようとするけど、やっぱり運命に逆らえない。 無力感、脱力感に襲われる読後感だった。 私はこの本のテーマを一つ決めるなら、「運命を知って、一生懸命に生きられるか」ということだ。 もし、自分の将来が分かるとする。 だとしたら、私は知りたくない。 知ってしまえば楽しみが無くなるし、怖いからだ。 もしかしたら、自分が思う以上に短い命なのかもしれないし、とんでもない目に遭うかもしれない。 そう思うと、直視したくない。 それに、今できることを精一杯味わって生きていたい。 奥さんとの会話、息子の成長、燃えるような仕事。 今できることを、今やりたい。 そうやって生きていった先で迎えた運命のゴールだったら、後悔は少なく済むかもしれないな、と考えている。 怖さ、不気味さの漂う小説だけど、『日の名残り』を読んだ時に感じた、じんわり染みるような優しい言葉が溢れている。 「世界の手触りが優しくなった」という言葉が印象的だ。 大切な人と過ごす温かい時間。 それがあるだけで、少しだけ世界の感触が変わる。 私も家族といてそれは分かる。 「家族のため」ではなく、「家族のおかげ」で、今の私はある。 運命というものはあるのかもしれない。 でも、だからといって今を疎かにして良いわけじゃない。 今を精一杯に味わって、良い人生だったと笑って言えるように生きていきたい。
4投稿日: 2025.09.19
powered by ブクログ語られるのは日常。悲劇でも、糾弾でも、告発でもない、ただの思い出話。世界観の説明はない。彼女は彼女の記憶を語っているが、その聞き手は私ではなく、彼女と同じ世界に生きる誰かだ。しかし、彼女の話に没頭していくうちに、私もまたその世界の住民になる。提供とはなんなのか。クローンとは、ポシブルとは。説明はされずとも、わかってしまう。わからなければ、少年少女の微笑ましい日常に浸っていられるのに。どうにも堪らず、胸をかきむしるような気持ちになる。 しかし、この物語は悲劇ではない。少なくとも、彼女たちはそう考えていない。その可笑しさがどうにも歪で、私は物語の世界に引き込まれてしまう。
0投稿日: 2025.09.17
powered by ブクログこの小説を読み終わった後で、何か大きなものに突き放され、しかしすがるような気持ちで思ったことは、「キャシーの人生を意味づけたものは何か」ということである。 小説を読み終わると、このキャシーの回想は、トミーとルースの提供が完了した後に、一人おそらくどこかのセンターの病床でなされたものであることが分かる。 そこでキャシーは過去への未練が全くない。キャシーを意味づけるものは、例え臓器が提供され肉体が完了しても、普遍に残る3人の記憶。そして、例え2人が既に失われたとしても、記憶の残る限り、それを否定する必要はないという矜持である。 小説の最後で、キャシーは「甘え」と称して一度だけその記憶を変容させ、空想をしたと告白をする。有刺鉄線と木の前に畑の広がる場所。その有刺鉄線の柵が失われたものが打ち上げられる海岸線であると想像される中で、もう一度だけトミーと会う空想である。 今まで読者に対する回想という形式で語られていたこの小説が、確かで誠実なものであることが伝えられると同時に、もう会えないけどまた会いたいと思える人との記憶がキャシーの人生を意味づけたことを確認し安心した。 3人の記憶を象徴的に表す海にまつわる情景達(ノーフォークの砂浜に打ち上げられた廃船、先述の失われたものが打ち上げられる海岸としての柵、海岸沿いに立つエミリ先生の家)が美しいものとして想像された。
0投稿日: 2025.09.17
powered by ブクログ日本語を理解するのに読みづらく時間がかかった、、 約束のネバーランドがめっちゃ好きで、原作なのか?!とおもわせた。
1投稿日: 2025.09.17
powered by ブクログ続きが気になって読む手を止めるのが難しいくらいだった。 だが、少し現実味がないというか時代が進みすぎてて、追いつけないところがあった。(私の想像力が足りないのかも)
0投稿日: 2025.09.14
powered by ブクログ大好き 言葉で輪郭をなぞるのでなく、光によって実態を掘り出している感じもする ドラマ見てないけど映画は見た、ルースはルースで魅力的なキャラクターで憎めないひとなんだけど、そこの描写が浅くて、ただ嫌な女になってたからそこは少しショックだった そう考えると一人一人のキャラクターの造形も際立っていた
0投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログなんというか、一言でいうと「辛かった」んだけど、そんな言葉で片付けて良いわけがない…とにかく読んでよかった。Never Let Me Go、聞くようになった。聞くたびにこの本のことを思い出す。
0投稿日: 2025.09.05
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ドラマを見てからいつかは絶対に読みたいと思っていた作品。 ドラマで受けた印象とは全然違う物語だった。 当たり前のことのように提供や介護人の運命を受け入れる主人公達、そんな健気な彼らに保護する側からすら向けられる嫌悪感。 どうにもならなさ、歯痒さを感じながら最後まで読みきった。 ルースは本当に嫌な女だな、でもキャシーもそれなりに嫌なところあるな、トミーは空気が読めないなこういう人いるよね、二人ともルースに操られるなよ、なんて普通の人間関係と背景にある大きな舞台設定。 提供についてもっと議論され物語の中心がそちらに行くと思い込んで読んでたので、ほぼルースとの関係に焦点があって驚いた。 キャシーの大切な思い出も人生もルースとトミー、ヘールシャムにあり、提供というのはまあ最終的にあるのはそうなんだけど的な感じで… 核心に触れないようみんなその話題を避けてもいる。提供に抵抗しないよう「教育」もされている。 そんな運命にありながらも私たち一般人のように遊び学び喧嘩し恋して…最後には、と。 ドラマでは未来では提供は減っていくのでは…的な終わり方をしたように記憶しているけど、原作は提供システムは続いていきそうな様子で終わったので少し悲しかった。 面白くて一気に最後まで読んだけど終わりまで怖さと不安感の残る考えさせられる作品だった。 宝物を持ち続けたキャシー、捨ててしまったルース。知りたがり屋のキャシーとトミー、信じたがり屋のルース。 何度か出てきた対比はそれぞれの生き方をとても表現していて好きなフレーズになった。 作者の他作品もぜひ読みたいと思った。
0投稿日: 2025.09.04
powered by ブクログSF小説は、サイエンス=科学を利用して何に重点を置いて物語を描くかで分類できると思う。 ①科学の技術そのもの(我はロボットなり、三体) ②科学と社会(アンドロイドは電気羊の夢をみるか) ③科学と個人(アルジャーノンに花束を) この本は間違いなく「③科学と個人」を描いた傑作。 科学的な、しかも実現が可能な技術が普及した世界に生きる個人を個人の視点から静かに内省的に描いている。 特に何が起きる訳でもない、また技術や社会の説明は最初の100頁くらいは出てこない。普通の日常にあるような場面を、主人公の記憶を辿るかたちで描いていく。 ものすごい技術が普及し、社会が大きく変わったら?という世界を用意しながらも、あくまで焦点を当てるのは個人の心情であり、狭い人間関係の変化。 「クローン人間が臓器移植のために育てられている」という技術的現実性は高いが、ゾッとするような舞台を用意しているのに、この小説は純文学のように個人の心境と人間関係の変化を徹底的に静かに描ききっている。 その他大勢中・多くの人・社会情勢など大きく括られた視点ではなく、どんな世界であっても個人を尊重すること。そこに例外があるべきではないことを教えてもらった気がする。
4投稿日: 2025.09.04
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ドラマは途中で挫折したけど、なんとか読了。 難しかったし、話の筋は理解出来たけど、イシグロさんの伝えたいことは未熟な私には全てはわかっていないと思う。 私なりに思うのは、この本の設定はSFだけどそれは目的じゃなくて、イシグロさんが描きたかったものを書くための手段だったのかなと。 ヘールシャムという特異な環境で育った子供というフィルターを通して私達はキャシーたちを見てるけど、私たちとキャシーたちは実質何も変わらなくて、この作品は私たち人間のことを書いているということ。 また読み直したいな。
4投稿日: 2025.08.29
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たった今読み終えたところで、キャシーを思い涙が止まらない。 キャシーやトミー同様、いっとき期待してしまったから、もう会えないさみしさが募る。ひとりぼっちで生きていかなければならない、苦痛に耐えながら。 この本の世界の人間にとって、臓器提供のために産み出されたクローン人間は人間ではあり得ないのだ。人道的な施設で提供者は育てられるべきだと運動したエミリ先生やマダムも、キャシーたちとは一線を引いている。エミリ先生やマダムの善意は、アニマルウェルフェアを尊重する養鶏場養豚場を!という現代の運動の精神同様なのだろう。 キャシーたちの生きている世界が現実に訪れることがないように願う。 キャシーたちも、また人間だと思う。 ヘールシャムでの生活は奇妙だけれど、穏やかな不思議、それで時々不穏。回想だからなのだろうけれど、ところどころもやがかかったようなはっきりとしない描写で好きだった。
3投稿日: 2025.08.21
powered by ブクログなんとなく想像できる展開ではありましたが、細部や物語の読みどころは想像を超えてきました。とても悲しい気持ちになるお話でした。
5投稿日: 2025.08.21
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ヘールシャムという施設の中で、教育を受け、友達と他愛無い話をして、恋をして、、 そんな彼女たちを待ち受ける「提供者」や「介護人」という残酷な宿命。 とてつもなく切ない物語でした。
0投稿日: 2025.08.21
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原作小説のドラマが印象に残っていたところに、米津玄師のLOST CORNERがカズオイシグロ影響を受けたとの情報を知り読む。 運命を決められた施設の子どもたちが、それにどう向き合うかを追っていくのが面白かった。子どもを産めない体やクローン人間の生き方について、洗脳するように教育として描かれていたのが印象的。 どのキャラクターにも共感できる羨望や優越感などの人間の弱さの部分がありありと見えた。人間関係がグロテスクなくらいリアルに描写されていて、主人公に親近感を持てて良かった。 劇的に変化するような場面はなく、少しずつ切迫した状況に近づいていく感じも、他の小説にはあまりみられない展開だと思う。読めてよかった。
1投稿日: 2025.08.18
powered by ブクログ米津玄師の楽曲「LOST CONER」の雰囲気がかなり好きで、本書はそのモチーフとなったと知ったのがきっかけで読み始めたが、全くネタバレ要素は知らない状態で読めたのが逆に良かった。 本書には、独特な世界観、倫理観、そして生徒たちの人生観があり、ページを捲るごとに、ヘールシャムやその生徒たち、保護官たち、物語の世界の秘密がだんだんと明かされていく。 この本の世界にある倫理の問題は、決して現実のパラレルワールドとして完全に分離しきれないようなところがあり、自分とは何者であるか、この世界で自分だったらどう生きるか、思い出、友人、恋人、人間とは何なのか、どのくらい大事なものなのか、考えさせられる。 そして米津の楽曲、アルバムのタイトルにも採用された「LOST CONER」。 イギリスの「失われた土地」、そして「遺失物保管所」というダブルミーニングで、「LOST CONER」と呼ばれたノーフォークは、ヘールシャムの生徒から、みんなの大切な失くしものが流れ着く場所として信じられていた。そして、キャシーとトミーが、「どうせここにいるんだからさ、探してみようぜ」と言って、ずっと昔の失くしものをノーフォークで探しにいく情景は本当に美しかった。全部は再読する機会がなかなかなくとも、この15章は何度も読み返すんじゃないかなと思った。 米津の「LOST CONER」を聞いて、かなりノスタルジックな印象を受けていたが、この本を読んでやっぱりそういう音楽であったし、もっと好きになった。サビの歌詞は特に好きなところだ。 探しに行こうぜ マイフレンド 海が見えるカーブの向こうへ 焦らないで なるべくスロウで 風の凪いだスピードで なあ きっと消えないぜ 目に映るもの全て 煌めく愛も嘘も傷も全て まあそれはそれで 最終章で、トミーは言った。 「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?残念だよ、キャス。」 この部分は、おそらく複数意味するところがある本のタイトルの「わたしを離さないで」を連想させる、象徴的なセリフだと思う。 ルース、トミーは先立って提供者としての使命を終え、先立ってしまった。だが、ルース、トミー、そしてキャシーも合わせて三人はいつか、イギリスの「LOST CONER」、ノーフォークで再会するだろう。バラバラに流されてしまっても、みんなの「大切な失くしものたち」が流れ着くところはいつだってノーフォーク、イギリスのロストコーナーだから。
4投稿日: 2025.08.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大人になったキャシーが過去を回想する形で話が進んでいきます。これは内容を知らずに読みたかった… 私は何かであらすじを知ってから読んだので ヘールシャムがただの寄宿学校ではない事を 違和感を感じながらじわじわ知りたかったなぁ。 でも、知った上でも、この状況の異様さというか ままならなさを感じながら読めたので それはそれでよかったのかも。 カズオイシグロは続けて読んでみようと思います。
5投稿日: 2025.08.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
確かに上手い…。物語の衝撃とか以前に感嘆で締めくくった話だった。理性的に語られる思い出話、思考の流れそのままにたどる様はリアルで、けど読む物語としてとっ散らかることなく紡がれていく。そしてその中で少しづつ明らかにされる真実。 そりゃあ賞もとるってものね…。 正直なんとなく概要を耳にしていて、『約束のネバーランド』的なものだと知っていたから、明かされていく情報にも「ああ~こういうことかな?」みたいなの、結構読めてはいた。くっ、クローン人間かぁ~~~…(戸惑い)(驚き)(絶望)(悟り)とはなったけど。 いやもう、上手いなぁ。なんか物語として面白い!ハマった!感情移入した!のベクトルではなく、濃密な文学としての要素が…すごい…。 幼少に少なからず思い当たる人間関係のやり取り、孤児のような立場として過ぎらずにはいられない『親』という存在への関心。鮮明な風景描写、世界観の構成、現実とリンクする科学の発展が故の倫理の審議。遺伝子操作ってのはもう既にあって、クローン技術ってのも多少あって、そうなってくると医学のために生まれさせられる無辜な存在って「フィクションだろw」で済ませられない話じゃない?そのうえ、身近な人を救うために罪のない存在を殺すために生まれさすことへの葛藤と罪悪とって、想像に容易くて、、。 そのうえ、少しづつ語られる情報へのミステリー性、明かされる絶望、主人公たちの慟哭、終わりへと向かう人としての心理。ぐえ〜なんて濃厚最後までチョコたっぷり…。すごいなぁ、の話でしたね…。
2投稿日: 2025.08.16
powered by ブクログ臓器「提供者」として「ヘールシャム」という寄宿舎で育てられた子どもたちの人生の話。 クローンとして生まれ、育ち方は特殊でも「人間」であることに変わりはない。友達や好きな人もできるし、性格も人それぞれ。ほぼ「人間」。 親も知らない、外の情報も自由に得ることのできなかった彼女たちが使命から「逃げる」という手段をとらなかった、とろうとさえ思わなかったのがヘールシャムの罪深さだと思います。 誰かの犠牲になることが決められている人生の救いのなさがとにかく辛すぎる…自分は戦争とかテロとか何かのために命を投げ出せというような教義を想定しながら読んでました。 激重で残酷さと悲しさにズーンときますが、本当に読んでよかった一冊でした。 初カズオ・イシグロ作品! この映画もとても素晴らしかったです。
18投稿日: 2025.08.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
淡々とした語り口調で始まる物語。 子供の頃の人間関係の思い出の話が、だんだんと作品の世界の不気味さを帯びていく。 数年前に読んだものを再読した。 1度目に読んだ時の方が衝撃は大きかったが、 最後に語られる、この世界の社会情勢については今回より想像を深めることができた。 多くの人が罹る可能性があるにも関わらず治療法が見つかっていない病気に治療法が見つかった時、その発展の速度は凄まじいだろう。 倫理的検討を私たちは十分にすることができるのか考えなければと思う一方で、iPS細胞の発見は素晴らしいものだと改めて感じた。
0投稿日: 2025.08.14
powered by ブクログ昔、綾瀬はるかさんがドラマでやっててちょろっと見た記憶があるやつだ〜と朧げな記憶で読み進めていたのですが、読みやすい翻訳でした。ですが物語が何となくは理解出来るものの、すこんと腹落ちしないというかイマイチ入り込めませんでした。年月が経ったらまた再読したいです。
1投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログ登場人物の心情の機微を繊細・丁寧に描きながら、物語の展開は極めて抑制的に、最終的には遺伝子工学が今後発展していく中での倫理観を読者に刺しこむ文体で、読後感が心地よかった。 後半1割はかぶり付く様に読めるが、それに至るまでのスピード感はやや人によって好みが分かれるのでは。
0投稿日: 2025.08.07
powered by ブクログ20250615~0804 トミーの川の中にいる2人を想像し、流れに抗えず結局2人は離れてしまうという妄想、ショックであり印象的。 マダムとエミリ先生とキャスとトミーが対峙して過去を話すシーンの緊迫感すごい。聴いたこともないのに幼少期のシーンにあったnever let me goが頭に流れてきた。
0投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ介護人として働くキャシーが、自身の幼い頃からの思い出を語る。彼女や、トミー、ルースらは生まれたときからヘールシャムの施設で寄宿生活を送ってきた。様々な出来事を通じて、皆は自分たちについて知っていく。 映画は以前鑑賞していたので、主人公たちがどのような存在なのかは知っていました。読んでみると、それが早めに明かされているのが意外でした。そして彼らの他愛のない学園生活の描写がかなり長く、やや退屈に感じました。終盤に彼らの存在意義の悲しさを描いていても、劇的と言うほどでもなく抑制がきいて淡々としています。
0投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログクローン人間として生み出された人間の悲哀が描かれていた。 幸福って一体なんなんだ いっぱい言葉で感想をかくのはふさわしくないので書きません
0投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログハリー•ポッター•シリーズや『トーマの心臓』(萩尾望都)のような少年•少女の寄宿舎•学校物を好む人に最適な物語。 どこにでもありそうな学校•寄宿舎における少年•少女たちの日常が、丁寧に繊細に描かれる。 だから、読者は容易に、登場する少年•少女たちに自分の学校時代を重ね合わせて、感情移入することが出来る。 だが、時折、挿入される違和感のある単語が、当たり前に見える日常に深い亀裂を入れ、読者は、この寄宿制学校が「普通の」学校ではないことに気がつく。 (勿論、ホグワーツも「普通の」学校ではないが。。) 「介護人」と言う単語は、まだ良い。 だが、「提供」となると、日常に対する亀裂は深い。 著者はとりわけ隠すことなく、この寄宿学校が、実はクローン人間を集めた「普通ではない」学校であるということを明かす。 彼らは、いずれ臓器「提供者」となり、自分と同じ遺伝子を持った誰かのために死んでゆく運命にある。 そんな過酷な運命にある彼らにも学校という制度は、普通の学生に対するのと同じ機能を果たす。 そう、この物語は、「普通の」寄宿舎•学校ものを装った(著者は「装っていないと言うだろうが)、ディストピアSF小説なのだ。 だが、本書は、SFとジャンル分けするのも憚られるほど、SF臭は無い。 構造はディストピアSFでありながら、物語はあくまでも「普通の」寄宿舎•学校ものとして進展してゆく。 クローン人間として生まれた彼らの生には期限がある。 彼らは、臓器を提供するために生を受けたのだ。 一度、二度、三度、中には四度臓器を取り出されて、役目を終える。 それは痛ましいが、見方を変えると、いや、もっと長い視座を取ってみると、彼らの生は、生命に期限のあると言う意味では、「普通の」我々と本質的には変わりはない、と言える。 我々もいつ死ぬか分からない。 期限付きの生命を与えられているという意味では、彼らも我々も変わりがない。 唯一の違いが、彼らの期限がすべからく早いということだけだ。 ハイデガーに言わせれば、彼らの生も我々の生も、「頽落の生」ということでは同一だ、と言うことになるだろう。 「頽落の生」を「本来的な生」に変える方法として、ハイデガーの示すのが、「死への先駆」。 それは、死の側から生を見つめ直す「他界からのまなざし」(古東哲明)を手にすることに他ならない。 その意味では、ここに登場する少年少女たちの生は、「死への先駆」を行った「他界からのまなざし」を持った生だと言えるのかもしれない。 彼らの生は、普通の我々よりも、「本来の生」に近い。 彼らは、我々と同様、特権的な黄金時代(少年少女時代)の記憶を大切にする。 それを作ろうとしたのは、「ヘールシャム」という学校を作った「エミリ先生」だ。 ヘールシャム以外では、少年少女たちはもっと酷い扱いを受けていたことがわかる。 エミリ先生の誇りは、挫折したとはいえ、対象は少数だったとはいえ、ヘールシャムの生徒に記憶に残る黄金時代を与えたということだ。 だが、それは、少年少女たちにとって残酷なことだ。 どれだけ大人が子供のことを考えたつもりでも、学校とは、子供の身体と心をある方向に矯正する機関だ。 だから、ヘールシャムは、現代の小学校と変わらない。 イギリスの小説だけあって、ヘールシャムの日常は『ハリー•ポッター』を彷彿とさせるものがある。 そして、共に、外の世界からは隔絶され、外の世界からは嫌悪されるのも同じだ。 ハヤカワ文庫の表紙は、(今や懐かしい)「カセットテープ」。 これは、物語に登場する主人公のキャシーが愛聴していたジャズのアルバム、そこには、作品のタイトルである「Never let me go」が含まれている。 村上春樹が小澤征爾にインタビューした『小澤征爾さんと音楽について話をする』の一節に、村上春樹がカズオ•イシグロとのエピソードがあることを思い出した。 カズオ•イシグロが長編小説を書き終えて、トーキョーに来た時、村上春樹と食事をした時のエピソードだ。 村上春樹は作家としての慎ましさで、カズオ•イシグロの書き終えたばかりの小説については触れない。 二人は音楽の話ばかりしたと言う。 カズオ•イシグロが村上春樹に、日本のジャズ•ミュージシャンのオススメを聞いたので、村上春樹は大西順子を薦めた。 そして、村上春樹は大西順子をCDをカズオ•イシグロのホテルに届けた。 それから暫くして、カズオ•イシグロの新作が発表される。 それが、本書『Never Let Me Go』だった。 村上春樹はタイトルに驚く。 何故なら、彼がイシグロに贈った大西順子のCDに「Never Let Me Go」が含まれていたからだ。 世界を代表する作家たちの、無意識の交感を感じさせるエピソードだ。
1投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログ舞台は1990年代末イギリス。閉鎖された施設である目的を以て育てられる子供たちの一生を描く人間ドラマ。 この物語の主軸の設定自体は特段珍しいものでもない。この小説の価値はそこではないと思う。この小説の素晴らしさはまず、主人公の語りの形で成される繊細で滑らかな筆致である。まるで我々の目が文章の上を軽やかに滑っているような感覚に陥る程の平滑な筆致である。そしてそれが人間の感情の流動性をありのままに描き出そうとしている。人間に絶対的人格の存在しないことを確かに表している。次に、徐々に全体像が象られていく逞しい構成力である。最初はどこで何が起こっているのか全く分からなかったのが、知らずの内に段々と全体が、ここはどういった所で、この子達は何をしているのか、分かってくる。それは逆を言えば特段の驚嘆も無いという事に他ならないが、しかしそこにこそ高い価値がある。というのも、何か後から衝撃的な情報を出して全体をひっくり返し読者を驚かせるのは言ってしまえば簡単だ。しかし、段々と全体像を描き出す形で読者に面白さを享受させるのは容易くない。そういう意味で、この構成力の齎す面白味は、他の大衆作品のそれとは性質の違う、高尚とも言うべきそれである。これこそこの小説の有する特有の価値に違いないだろう。 この息を飲むほど美しい文章体を、ぜひ多くの人に体感してもらいたい。
5投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公の自分語りで進む作品。 序盤を読む段階で、不穏な空気が漂う。あれ、この舞台ってあの名作漫画「***の***」に近いなと勘づく。主要人物が3人・マダムの存在っていうのがまた類似を想起させる。 感想として、キャスが重要な分岐点で判断を遅れせたり、間違ったりしがちだなと。それが原因で、核心に迫れないからトミーとルースとの関係がぎくしゃくする。 これは大人になった私も共感がすぎる。後になって判断を誤ったなというもう取り返せない人との関係ってあるよね。この三人は時間をかけて何とか和解に向かうのが救い。 救いといえば、この3人を含めた「提供者」が置かれた立場は救いがない。臓器提供するためだけに生み出されたクローン。(ネタバレ。でもこれに気づいても問題なく楽しめる) エミリ先生・マダムとの対面する場面は胸が引き裂かれる。エミリ先生は間違ったことを言っていると一蹴することもできない。せめて人間らしい子ども時代を過ごさせてあげたいという慈愛を感じる。 しかし、あくまで「提供者」を商品としての扱いを前提している。同じ立場であることはありえない。そこに残忍さも垣間見える。 過酷な運命のなか、それでも儚い希望を持って進もうとする主人公たちに何を思えばいいのか。一抹の同情や共感はあるが、歯がゆさと不条理に虚しさもある。 著者の代名詞であろう静謐な文体によって、激情的には語られない。だからこそ、心にじわっと染み入る読書であった。
1投稿日: 2025.07.26
powered by ブクログレールが敷かれている人生って羨ましいなと思ってしまった。それに抗うにしたって、ただ敷かれたレールを逆方向に進むだけで良いから、楽に意思表示している体裁を保てる。 自分の意思なんて、直感的な欲求以外、不純物だらけじゃないかな。
0投稿日: 2025.07.25
powered by ブクログ海外文学の翻訳の文体への苦手意識等々から、読み終えるのに、かなりの時間を要しました。でも読み終えると、一度は読んでおくべき本だなとも思いました。 ひととは何か。 人生とは何か。 エゴとは何か。 この物語で考えるべきことはたくさんあるけど、そんな言葉だけじゃ、まだ足りない気がします。 これが現実の世界だったら、「残酷」とSNSで呟けば、裏で見知らぬひとから「それじゃあ、あなたの家族は大切じゃないんですか!死んでもいいんですね!」と噛みつかれるんだろうな。それか偽善者として嘲笑われる。 それで多くのひとがクローンの現実から目を背け、利益のみを享受する。 現実に置き換えても、きっと物語となんも変わらない。誰もが提供者の「人生」から目を背けるのだろうな。
1投稿日: 2025.07.23
powered by ブクログクララとお日さま微妙だった(ボックスとかよくわかんなくてページ進まなかった)ので文学的要素読解するのに苦手意識あったけど有名だから読んでみたくて。読みやすかった。そして意外にも関心分野だった。もう生命倫理とかそんな興味ないけど 結局提供で人生を終えるなら、「生徒」以外の人間と同じような感性を育むことで、より一層最後の結末の悲壮感を増すことになってしまうのに。 医学的存在として利用するなら、一貫してそのように扱った方がまだマシでは。 作品創作など、魂や心といったものに注目させる機会を通じて、人間としてしかるべき感情のあり方や感性(何かを慈しむ気持ち、自分はこれが大切だというアイデンティティの追求、愛する人とのセックスを通じたつながり)を学習させる。(学習させられなくても情動は自然発生すると思うが、提供者同士の閉鎖的な空間での生活がデフォルトだったら、感じ方もそれに合った、その中で都合が良いものに調節されるはず) ヘールシャム出身者を羨みながら、あったかもしれない希望に想いを馳せて人生を終える提供者、提供の猶予を求めて必死で噂に縋り恋を証明しようとする提供者。結局破滅が外部から定められている短い期間に、提供という物理的役割だけでなく、人間的な感情の変動も強いられる。こっちの方がよほど残酷だと思ったけど。でも全ては作り出す側のエゴだからな。臓器提供のための便利な存在としてだけじゃなく、同じ姿形をしている同じ生物種なら、同じ心を持っていた方が安心するというエゴで作り出されたヘールシャム出身者たち。 優秀とされる遺伝子で世界が支配されていくのではないかという恐怖に怯えて、クローン人間を違う生物種として排他的に扱うのもエゴ。人間であるはずなのに自分たちと同じだという感覚を得られず生理的に湧く嫌悪感と折り合いをつけるために人権を主張するのもエゴ。 p400「こういう絵が描ける子どもたちを、どうして人間以下などと言えるでしょう…。」以上とか以下とかいう表現がしっくりこない。情動含めて存在を操作しているのは自分たちで、医学的役割に加えて精神的にも自分たちをなぞるような機能を備えようという試みをしているだけなのに、つまり舵を握っているのは自分たちなのに、その存在の新たな一面に初めて気づいたかのような演出は薄気味悪い。 p416「かわいそうな子たち」も違和感ある。マダム1人でこの世界を生み出したわけではないから、彼女を一概には責められないけど、人間が都合よく作り出したものに犠牲が生じるのは当たり前だし織り込み済みだと思うのに、悲しいとか可哀想とかいう感情すらちゃんと享受するのかというね。 エミリ先生による活動の前は、クローン人間たちの精神はどう発達したのか気になる。 人は運命という外力で人生の終末を操作されていると考えたら、クローン人間もその他の人間もそんな変わりはない気がしてくるのだけど、その外力が同じ生物種によって決められているというのが気味悪さや嫌悪感が生じる要因だろうな エミリ先生派閥も対立派閥もどちらも正しいとかはなくて、どちらの考えの方が都合がよく、納得がいくかという、各人の嗜好の違いに感じる。 p407キャシーの発言「追い風か、逆風か。先生にはそれだけなことかもしれません。でも、そこに生まれたわたしたちには人生の全部です。」に胸が痛む私はエミリ先生の試みには反射的に反感を持ってしまう。ルーシー先生みたいに、全て現実を知らせた上で役割を全うさせようとする態度も、告知された側はそれを受け入れるしかなくて、先生が絶望とともに一緒に生きてくれるわけでもないのに、とんでもない暴力だと感じるが。 時代が変わればまたもっともらしい理由が生まれてそれが倫理的だの何だのと大層な判を押される。知的遊戯でしかないな、だがその過渡期に生まれた、古い世界にnever let me goと懇願する姿がもの悲しさを誘うのも事実で。 クローン人間としての自分達が何から生まれたのか、親やポシブルに敏感に反応する様子が途中描かれていた。 親が実際にどうであるかという真実より、真実のようなものに触れたときにそれによる印象や生じた感情で自分というものの説明が書き変わるから、 自分の存在を生んだ大元のdnaや現実というより、その情報を自分の中でどう解釈するか、の方が自己の形成に大きく関与している気がする。 何かに決定的に気づく前の潜在意識下での違和を掬い上げる感覚を表すのが上手い 対話も個人的な思考も言葉になる以前のものが大半を占めているんじゃないかと思わされた。ベールを剥いで目に見える形で明らかにする前にも確実に存在していたもの、それが水面下で自分も含めて人をコントロールしている。トミーの癇癪もそうだったよね、という考え方はおもしろい。
9投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ20250711の中日新聞に掲載 「他者の視点」は人に気持ちを理解するための脳の需要な機能 ノーベル文学賞作家 キャシーはクローンとして生まれた臓器提供者が任務を終えたあとの介助人 清水玲子の漫画「輝夜姫」もそんな話だった 読んでみたい
1投稿日: 2025.07.13
powered by ブクログ臓器提供のため、クローンとして生まれて成長をしていく様。複雑な人間関係に悩んだり、限りない時間の中で恋をしたり、様々な感情で生きているということに、悲しい気持ちになった。
3投稿日: 2025.07.02
powered by ブクログネタバレ無しで読んで頂きたい。 私は、タイトルから恋愛小説だと思って読み始めたので最初から違和感がひどく感じられた。読み進めるうちに、この物語りが壮絶なSF作品である事に気付いた。そこからの引き込まれ様は、半端では無かった。この小説は、ノーベル賞にふさわしい傑作である。子供達が自分の運命を抗う事なく、肅々と受け入れてゆく。ある意味絶望感に溢れるディストピアを、冷静に淡々と描き続ける著者の技量にも感心した。
14投稿日: 2025.06.30
powered by ブクログ物語はキャシーの回想 何者として生まれたのか 保護官 提供者といった聞きなれないワードが並ぶ中…人と同じように成長する人生が端正な語りで描かれてゆく まず第一印象は静かな長編だった。思い出の美しさ昔の宝物の箱を覗いたようなイメージが、そして物語の世界観の異様さ、これは読中も読後ももどう受け入れるべきか…倫理的問題があったと思う 物語序盤で少なからず読者は気づくのでネタバレではないと思うがクローン人間の世界ということ。しかし普通に教養をうけ青春も、何者なのかを明かされた時 息が止まってしまった。生徒たちは抗うことなく静かに飲み込んでゆく、自分だったら狂ってしまうのに静かに受け入れた彼らをどう思うのか。つまり解説にあった"作品世界を成り立たせる要素一つひとつを読者が自分で発見すべき" がそういうメッセージなんだと 仲良しのルースとのテープを渡す受け取ることの丁寧な描写に尊さを感じずにはいられない 勿論、ジュディさんの音楽が聴きたく検索し映画化されてるのを知り10年も前のコメント欄にて"寮で枕を抱きながら聴きたい"を見つけ胸がいっぱいになるそんな流れだった(この本を読んだ多くの人がそこに辿り着いてほしく思う) 青春の一瞬の煌めき、友達トミーとテープを探すシーン。ついに見つけたが、この探す時間が終わってしまう 見なかったことにしようかとか、本当は僕が見つけたかったんだとか、もう2人とも抱きしめたくなる ラストにこの物語を引っ張ってくれてた?謎が明かされ、そしてこれも静かに受け入れてく…哀しくもどうすることもできないリアリティが一貫してあった。どのような教養をすべきだったか。静かに受け入れてくと書いたが実際は恨んでたりするともとれるかなと。ラストまでルースやトミーのことを思いうキャシーの優しさ思いの数々に視界が揺れた 最後に自分はこの世界を全く望んでない、今の技術がどれほど進んでいようが死を受け入れる時がくれば受け入れるべきだと揺るがなく思う 好きなフレーズ引用 これからテープ探しを始めようとしたあの瞬間 突然 世界の手触りが優しくなりました
20投稿日: 2025.06.30
powered by ブクログ孤児院ヘールシャムで過ごす少年少女が繰り広げる甘く悲しい青春活劇。 キャシー、トミー、ルースの3人はそれぞれに友人として、恋人として交わりながら社会に出ていく中で、生きる意味を見出していく。 なんて話では、まるでない。 ヘールシャムでの楽しい生活も描かれてはいるが、物語を通して圧倒的に漂っている絶望感。 計算され尽くしたストーリー展開。登場人物と読者とに同時に、少しずつ謎が明かされていく。 オーベイビー、ネバーレットミーゴー この絶望感、ストーリーをここでネタバレするのはあまりにもったいない。 ぜひ読んで感じて欲しいと思う。
0投稿日: 2025.06.26
powered by ブクログとある施設で育てられた少女と共に施設で過ごす子どもたちとの話。なぜ、この施設にいるのか、自分の親は誰なのか?などの謎があるが、終盤で謎が明かされるが残酷な話だった。
0投稿日: 2025.06.25
powered by ブクログhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD03AHY0T00C25A4000000/
0投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログ静かに柔らかい文体から読み始めらやや退屈そうな物語を彷彿とさせるものの、どこか違和感が織り込まれた語り口調から気づいた時には物語に引き込まれていました。提供者と介護人、後味の悪さと何とも言えない読了感でしたが、この本を手にとって本当に良かったと思います。
0投稿日: 2025.06.21
powered by ブクログ主人公キャシー・Hが淡々と思い出を語る形で物語が進んでいく。 ヘールシャムのことや友人達のこと。 そして、「提供」について。 とても静かでとても残酷な作品だった。
87投稿日: 2025.06.20
powered by ブクログ彼女は思い出す。施設での子供時代の思い出を。ともに育った親友たちとの儚く、懐かしく、切ない、そして残酷な日々…。抑制された筆致で静かに語られるのは、魂の在り方を問う慟哭。これほど心を揺さぶられる小説も稀有。 「わたしを離さないで」(2005)カズオ·イシグロ #読書好きな人と繋がりたい
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
キャシーもいずれ提供者になってしまうのか…? クローン人間として生まれ、提供する使命がある運命を先に知って育てられるのと後から知るのとどちらが良かったんだろう? 何も知らないで平和に過ごせたことは本人にとって幸せなことなのか、何が幸せなのか考えさせられる。
0投稿日: 2025.06.10
powered by ブクログ提供者と介護人って何だろという疑問が、もしかしてと徐々に確信に変わり、背筋がぞっとするような居心地の悪さを感じるまで、主人公の独白風に綴られ、物語は静かに進んでいく。元より登場人物の内面について細やかに表現され、その思いはさもありなんと説得力を持つ。初めて読む著者の作品。驚きと共に満足するものだった。2025.6.5
0投稿日: 2025.06.05
powered by ブクログ「介護人」キャシーが「提供者」の世話をする。不思議な世界観からはじまる物語にどんどん引き込まれる。イギリス小説の歴史に刻まれた作家の、間違いのない名作。あまりにも精巧に作られた作品で、読み返すたびに見どころが変わる。気分は大変重くなるが、読後感は極めて良い作品。
1投稿日: 2025.06.01
powered by ブクログリアルにあるはずないのにすごくリアルで3人のやり取りも感じることも普通の人間と全く変わらない。それはそういうふうに育てられたからかもしれないがこんな運命なら最初からこんな気持ちにさせないでほしかったと思ってしまいそう。 人間の勝手なエゴ(不治の病から救うためのクローン)とエゴ(倫理観の為に感情を持たされるクローン)に振り回されてるかんじ
0投稿日: 2025.05.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
3年前に一度読んだが、原書を読み始めたのでこちらも再読。 読んでいる間一瞬も気の抜けない小説(既に内容を知っているからかもしれないが)。キャシーが回顧するヘールシャムの日々は、管理が行き届き、大人に守られた、温かくかけがえのないものとして語られる。その一方で読者は「展示会」や「提供」の描写から作品世界の核心に近づくにつれ、胸騒ぎを感じるようになるだろう。キャシーとルース、トミーの関係性の揺れ動きもまた本作のコアであり、些細な(些細でないこともある)出来事で仲違いと仲直りを繰り返す様子が切実に描かれている。根底に深い悲しみが流れる作品だが、キャシーが自分の境遇を嘆いて自棄になる人間ではないことが個人的に救いだった。しかしながら、トミーがキャシーに放った「提供者でないから君にはわからない」という趣旨の言葉の効力はラストシーンのキャシーにとってもまだ作用しうる。キャシーが最初の提供を終えたとき、彼女はヘールシャムの輝かしい思い出を抱いて何を想うのだろうか。
1投稿日: 2025.05.23
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この本との出会いは、米津玄師のYouTubeのLOST CORNERのアルバムについて語った動画であった。その動画にて、同名の楽曲がこの本の内容を一部含んでいるとの話があったので読んでみることにした。 読み終わった感想としては、質量が大きいというか読み進めるのに時間がかかる作品という印象であった。語り手があれこれと思い出したことをあまり関連性なく綴っているような感じがしていろんなストーリーがわたしの頭の中でこんがらがっていた。しかしその物語全体でなんだか不穏な空気というか何か大きな裏がありそうな雰囲気がずっとあった。物語が後半に差し掛かるにつれてこの前半で生まれたモヤモヤは次第に晴れてくとともに新しくもやもやが浮かぶような展開で常に先が気になりながら読み進めていた。ものを直接的に述べない感じというか所々に粋な表現だなーと感じる部分が多くいくつかのフレーズをメモした。 内容に関しての感想は、思い出話にひたる感じというかとても懐かしい気持ちになった。最終盤では語り手と同じく、失う悲しみを感じた。ノーフォークになくしたものがあるだろう、なくしたものはいつか見つかるだろうという根拠ない希望のようなものが自分の中に芽生えた(?)。以前よりもあまり今に執着しすぎずに生きていけるような気がしている。(現時点) こんな文章の末尾に書いても特に意味はないが、下調べなどせず、前半の不穏な空気を感じモヤモヤを頭の中に浮かべながら読んで欲しい作品であった。
1投稿日: 2025.05.23
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読み切ったぞ!!!!!!!!!!ガキだった頃に、ドラマ実写化の際に原作を買ったは良いものの、登場人物の名前が外国名のカタカナ表記だとどうにも頭に入ってこないせいで、途中で読むの挫折した「わたしを離さないで」を!!!!!約10年越しに読了できた!!!!!嬉しい!!!!! 正直、あの頃に「わたしを離さないで」が読み切れなかったことで、小説を読むことへの苦手意識を持つきっかけになっちゃってたから、大人になって面白さが分かった上で楽しめたの本当に嬉しい!!!!!私の脳はもう小説が読めるんだ!!!!!もっとこの世にある面白い小説読みたい!!!!!!!! 本編の感想としては、最初から最後まで主人公目線でしか描かれない点は読みやすいけど、話題があっちこっちに飛びながら語り口調で話が進むから「今の話してんの?ヘールシャム時代の話してんの?」ってちょっとゴチャゴチャには感じる。でも一貫して面白かった❗️ただ、個人的には、もっとクローン人間の構造(子供ができない体の作りということは、女性の体の場合は、子宮や卵巣自体が無いのか、それとも排卵をしないだけなのか?とか気になった)や、臓器提供についてもっと詳しく描写あったらな〜って感じだった❗️ あと読んでて1番ショック受けたのが、エミリ先生たち保護官までもがクローン人間であるヘールシャムの子供達に恐怖心や嫌悪感を抱いていたことを明かすシーン。マダムがヘールシャムの子供達を怖がっているのは、「倫理観的にクローン人間が普通の人間のように、心があるかのように動いて生きていることがどうにも受け入れられないのは、外部の人間だからかな?」と思ってたけど、クローン人間として生み出される子供の教育環境の為に奔走してたエミリ先生をもが、やはり心の奥底ではクローン人間に対する無意識な差別心があるというのは、人間味があるとも捉えられるけど、でもやっぱりヘールシャムで育ったキャシー目線でずっと読んでた分、結構ショックだったな。 この小説に惹かれたのが「クローン人間による臓器提供」の部分だったから、深掘りして描かれてるのがそこではなく、あくまでも人間関係なのがちょっと期待外れなだけで、普通に面白かった❗️ 何故、どんなに医療や科学が発達してもクローン技術だけはストップがかかるのか、この小説に全部詰まってる気がした‼️そりゃクローン人間の臓器で不治の病だったものが治ると分かったら、普通の人間達は、クローン人間の臓器が提供できる臓器になるまでの成長過程はスルーするよな〜って納得‼️ ポケモンのミュウツーみたいに培養液?みたいな中で成長するならまだしも、施設を出たら介護人か提供人にしかなれない、最終的には臓器提供だけが使命として生み出したくせに、普通の人間と同じように子供時代があるのは逆に残酷だよ…
1投稿日: 2025.05.18
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臓器提供者としての役割を持って生まれてきた人達。 常に提供の順番待ち状態というのはある意味死刑宣告と同じなのではないか。 そして将来提供者になるクローンに介護人をさせることで、身体的・精神的ケアや看取りまでクローン間だけで完結するというのも皮肉であり残酷。 虚構の世界だけど、読み進めていくうちに、こういったディストピアが実際に過去にあったのではないか? もしかしたら現在でもこの世のどこかに、、と疑いなくなるようなリアリティーだった。 物語の大部分は介護人キャシーが生まれ育ったヘールシャムや過去について回想している。 その語り口は静かで感情を伴わない淡々としたもの。提供者として生まれた運命の悟りやこの世の諦めが感じ取れる。 “癌は治るものだと知ってしまった人に、どうやって忘れろと言えます?不治の病だった時代に戻ってくださいと言えます?そう、逆戻りはありえないのです” この言葉はすごく考えさせられた。 科学技術が人間の社会を歪ませてしまう可能性いるし、倫理観まで損なわせかねない。 読み終えた後に静かな痛みを残す作品。
4投稿日: 2025.05.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
“提供者”となった者の“介護人”の役割をするキャシーの目線で、幼少期から大人になるまでを過ごしたヘールシャムという謎めいた施設での出来事を思い出とともに振り返っていく。 臓器提供のために生み出されたクローン人間が共同生活をおくる学校のような施設“ヘールシャム”では、地理や音楽、美術、保健などの授業があり、食堂、寮が用意されており、授業以外の時間帯にはそれぞれ自由に遊ぶ時間もあるようです。ここで暮らすキャシーをはじめとする同様の子どもたちは大きな不自由なく、この環境に概ね満足しているようです。 そこでの教師の役割をする“保護官”は、ときおり何かを仄めかすような発言をします。 子どもたちの優秀な絵や詩などを選別して持っていく“マダム”は、そこにいる子どもたちをなにか恐れているようです。いったいなぜ? ここで暮らす子どもたちは、将来臓器提供をする運命であることをなんとなく潜在意識のもとで知っており、その運命自体には抗うことなく受け入れています。 彼らにとっての謎は、マダムはなぜ絵を持っていくのか?ときおり保護官が見せる不思議な態度はいったい何?といったことです。 もしかして優秀な人には提供前の“猶予”が与えられるのでは?という、それくらいは…という程度の希望も、最終的には打ち砕かれてしまいます。 キャシーら“提供者”として生まれ、育てられたものたちが、その状況下での他者との交流を通して心を揺らしながらも大人になっていく様を丁寧に描いています。これを非常に丁寧に書くことで、最後まで報われない彼ら、不条理で利己的な人間社会をリアルに描いているように感じました。 ヘールシャムはたしかに他の施設に比べて、彼らにとっては幸せな環境だったようです。ただ、どう育ったところで結末は提供です。それを知った後でも、彼らの受けてきた教育の賜物なのか、誰1人その状況に反旗を翻そうとしたり、逃げようとしたりはしません。移動手段として車が用意され、移動は割と自由に許されているようなのに…。 彼らが望むのは、数年の猶予くらいのものというのが、理解し難いけどもリアルなのかも…と思わされました。 こんなこと実際には起きないだろうと思いつつも、クローン人間が安定して作り出されるようになってしまった時、それに心があるのか?どう扱うべきか?については、目的と利用する集団よっては考えなしに利用される状況もあり得るだろう…と考えさせられました。
1投稿日: 2025.05.02
powered by ブクログ読んでいるうちに、この物語が自分の心の奥にある何かと静かに響き合っているように感じました。 キャシー、トミー、ルース、この3人の間にある友情や愛情、嫉妬や虚栄、そして赦し。 どれもが穏やかな語りの中で、驚くほどリアルに、濃密に描かれていました。 私自身、人との距離をうまくつかめずに戸惑うことがあります。 だから、キャシーのように静かに周囲を観察しながら、自分のペースで関わっていく姿勢に共感しました。 彼女のやり方には派手さはないけれど、芯のある優しさと、静かな強さがありました。 運命が決まっている世界で、「生きること」や「誰かを想うこと」にどんな意味があるのか。 彼らの姿は、その問いに対して、ごく静かに、でも確かな形で答えてくれているように感じました。 噂にすがったのも、どうしようもない状況の中で、せめて希望を信じたかったから。 それは自然なことだったと思います。 そしてラストの別れ。 大げさな言葉や演出がなく、日常の延長のように淡々と描かれていたのが、逆に印象的でした。 言葉にしなくても通じ合う関係性と、積み重ねてきた時間、そして叶えられなかった未来が、静かに滲んでいました。 読み終えた今、この3人に出会えたことは、私にとって特別な経験でした。 人を想うことの重み、命の限られた時間の中でどう生きるか―― そのすべてが、心に静かに残っています。
1投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログ米津玄師のアルバムのタイトルに「ロストコーナー」というのがある。 米津さんが、カズオイシグロの「わたしを離さないで」が好きで、そこからアルバムのタイトルを付けたと言う話をインタビュー記事で読んでから、ずっと気になっていて、やっと手に取り読む事ができた。 本書は終始、奇妙で不穏な空気が漂い胸の中をもやもや、ぐるぐるかき混ぜられているような、個人的にどこかスッキリしない作品ではあった。 しかし米津さんファンである私は、インタビューで話していた一節はここの事だな、とかここを読んでこう感じたんだなと思いを馳せる事により、皆さんとは違った楽しみ方があり、そういう点においては読めて良かったなと思う。 特に本書の最後2ページを読んでいる時、米津玄師のアルバムの表題曲「ロストコーナー」の歌詞とライブで軽やかにその曲を歌う米津さんが頭に浮かんできて、胸が暖かくなった。
2投稿日: 2025.04.15
powered by ブクログ人を人たらしめるものは何なのだろう。 生命倫理が問われる今だからこそ、読むべき一冊。 解説にもあるとおりよく抑制の効いた小説。少しずつ形を帯びて、少しずつ迫ってくる。なんというかひとつの交響曲のような、そんな話。 自分たちがいかに問題それ自体には声が大きいのに、その実害を被る個人の救済からは目を逸らしているのか気付かされる。押し付けられた絶望に抗う唯一の手段が思い出であるというのはあまりに残酷。 悲惨な出来事を淡々と語り継ぐも被害者。 その運命を受け入れているようで、また絶望。 誰にも奪わせない。
0投稿日: 2025.04.11
powered by ブクログ物語は、キーワードが先にあって後からその意味が判明していくという構造になっていて、読み進めるほどに意味が分かる、意味が分かるほどにおもしろくなる、といった感じ。 ただよくある伏線回収系の物語とも違って、ごく自然な語りの流れでキーワードの意味が明かされていくため、あたかも読者がはじめからその意味を知っていたかのような気持ちになる、そんな物語だった。 内容はリアリズムとSFが混じったような感じ。作者がイギリス人というのも念頭に置くと、なんとなく納得するような感じもある。 タイトルの『私を離さないで』はすごく微妙というか絶妙というか、、なぜこのタイトルにしたのか、分かりそうで分からない。主人公にとって特別な思いのある曲のタイトルだが、このタイトルが曲名として機能しているのか、小説のタイトルとしてもっと大きな意味を包括しているのか、言葉自体に込められた意味があるのか、額面通りの意味なのか、いろいろ考えてみたもののあまりしっくりこない。いつか分かればいいなと思う。
8投稿日: 2025.04.08
powered by ブクログいまいち面白味を感じれない。そもそも小説の文体がですます調なのが個人的に苦手 タイトルが良すぎてその期待を超えてこなかった
0投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログ自らの置かれた境遇を残酷にも理解していく姿には胸が痛む。イシグロの作り上げた世界も現実になるのかもしれない。違うと言えるだろうか?
0投稿日: 2025.04.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今年度読んだ小説の中で一番自分に合っていたと思う。 語り部の目線から一貫して語られていて、時系列も複雑に行き来する上に本作独自の造語が多いのに自然と理解出来るようになっているのがすごい。造語の説明についてもその言葉を知らない我々に対して語り部の目線から見たものを話しかけるように教えてくれるのでスっと入ってくる。 使命に向かって粛々と歩みを進めていった人たち、これから迎える結末を知っているのになんて強いんだと思う。最後の最後に明かされた施設の真実には語り部と一緒に呆然とした感覚すらあった。 日の名残りがカズオ・イシグロの代表作かつ同じ訳者ということで、こちらも絶対に読みたい。
0投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログほぼ予備知識無くノーベル賞を取った日系イギリス人(6歳までは日本で暮らし29歳まで国籍は日本)作家の代表作品…ということで読んでみる。 保護官、提供者、介護人、、?? 老年まで生きられないどころか、中年も無理?? …あぁ、そう言う物語(SF)だったのか!? 状況の詳しい説明は無く読者に想像させていくが、各シーンの描写、心理状態などの表現が非常に細かく描かれており、まるで実話・作者の実体験を書いているのか(?) と錯覚するほどだった。 不思議で儚く悲しい物語。
0投稿日: 2025.03.26
powered by ブクログどういう話かはなんとなく知っていたので提供者が何なのかはすぐ理解できた。 こういうタイトル好きなんだよな、と思っていたらこれは歌詞の一部分だったのね。 ディストピア系SFを読みたいと思って積読していたのをすっかり忘れていて、読み終わってそういえばこれは近未来の話だったんだな…と気がついた。ふわふわしてないのにそう感じる不思議な終わり方だった。 キャシーはどういう経緯で介護人になって仕事を辞めるつもりなのか不思議だったけど、手紙のように誰かへ伝えるような口調は、今彼女が提供するのをベッドの上で待っているかのような姿を想像させた。 提供することを先延ばしにすることも中止することもできないのにどうして彼らが逃げないのか、絶望して自ら死を選んでもおかしくないのにずっと不思議だった。 作者が自分の作品の中で一番日本的だと言ったのもわかる気がする。アメリカ的だったらきっと逃げ出して自立するために奮闘するだろうな。悲しい結末が待っているのに行動せずに使命を受け入れるのは確かに日本的という感じがする。作者の言う「日本的」はこういう意味じゃないかもしれないけど… なぜ逃げないのかは教育という名の洗脳をされているから、なぜヘールシャムが存在しているのか・臓器提供のためのクローンを作るのかは人間が人間に洗脳されているから、と考えるのが一番しっくりくるかも。なんとなく「モモ」を思い出した。 トミーの言っていた「何か新しいことを教える時は本当に理解できる少し前に教えるんだよ」って、これこそ洗脳の極意じゃないのか… 後半のメアリ先生の暴露は彼女が悪に見えてしまったのだが、もう人間がクローン人間の臓器提供なしには生きられない未来なら、むしろルーシー先生の言ってることの方が残酷なのかもしれない…けどやっぱりそうは思えず…うーん… この本に登場するクローン人間たちは人間が生み出した家畜同然で、そのことに罪悪感を持つ人もいるけど自分たち人間のためになるならとそこは見ないふりをする。そんなのは虚しいから楽しい時間を与えようというヘールシャムの理念は一見美しいけど傲慢だな。それでも間違ってはいないと思う。 クローン人間に対してではなく、牛や豚などの家畜に自分たちはすでに同じようなことをしているわけで…と読み終わった後にそこに考え至ると、この話の凄さや恐ろしさがじわじわとやってきた。 読んでいてずっとルースが好きになれず…なぜかというとこういう女はクラスもしくは学年に絶対一人いたんだよな…という理由。 なんでトミーといきなり付き合った?という衝撃がキャシーから伝わってこなかったけど、彼女は彼女で何か思ったこともあったんじゃないだろうか。トミーも絶対昔からキャシーのことが好きだっただろうになんでこんな女と付き合ってんだろ…と不思議でならなかった。 こういう恋愛模様も性行為への執着も、クローン人間も人間と変わらないから読んでるこっちにもズシ…っとくる。作り出されただけで人間と同じなのに人権がない(に等しい)けど、過ごした時間は確かに人間そのものだった。 ふと思ったけど、提供者に墓はあるんだろうか。なんとなくない気がしている。あったとしても共同墓地みたいな感じかな。 この世界ではターミネーターのように叛逆でもされない限り決してクローンによる臓器提供はなくならないだろうし、キャシーが助かる未来もないけど、鬱々としたものはなく穏やかな終わり方がとても印象的だった。 映画はまだ救いのある終わり方みたいなので観てみたいな。
2投稿日: 2025.03.23
powered by ブクログ主人公は介護人のキャシー 提供者といわれる人の世話をしているということだが 提供者って?と思いながら読みはじめました キャシーの回想によりキャシーの過去の出来事が わかっていくにしたがい提供者がどういう人たちかも 理解しました ページ数以上に読むのみ時間がかかってしまい なかなか大変でしたが著者のこの作品を堪能できたと 思います
19投稿日: 2025.03.22
powered by ブクログ美しくはかなく素敵で切ない物語でした。閉鎖的であり、幻想的であり、ミステリアスな女性の回想。そして、少しずつ明かされていく真実。読んでいて、いろいろな気持ちを抱き、読後もどこか物悲しくも、1人の人生の途中を見送れたと満足感を得ることができる物語でした。おすすめしてくれた方に感謝。
0投稿日: 2025.03.11
powered by ブクログとりあえず読み切ったけど、すべての説明をしない感じなのでスッキリとはいかない。冒頭で「これは説明ないパターンだな」と早々に諦めてとりあえず読み進めると、要所要所で独特の世界を説明する種明かしがある。大きな事件があるとかではなく、人間関係の描写を楽しむようだ。 ヘールシャムという閉鎖された場所である目的のために育てられた子供たちが成長する様子を描いている。第一部(1〜9章)、第二部(10〜17章)、第三部(18〜23章)と分かれているが、ただただ主人公の「こういうことがあった」という語りを文字起こししている状態。
1投稿日: 2025.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ベールシャムが地名だと思って、検索してしまった自分を呪いたい。今後は読書中に検索することは控えることとする。
0投稿日: 2025.03.03
powered by ブクログ著者、カズオ・イシグロさんは、ウィキペディアによると、次のような方です。 ---引用開始 サー・カズオ・イシグロ(Sir Kazuo Ishiguro OBE FRSA FRSL, 日本名:石黒 一雄、1954年11月8日 - )は、イギリスの小説家、脚本家。 長崎県で生まれ、1960年に両親とともにイギリスに移住した。長編小説『日の名残り』で、1989年にイギリス最高の文学賞とされるブッカー賞を、2017年にノーベル文学賞を受賞した。 ---引用終了 で、本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。 ---引用開始 優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていくー全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。 ---引用終了 本作の書き出しが、英語初心者でも?、非常に分かりやすい。 では、ちょっと見てみましょう。 原書の書き出しは、 My name is Kathy H. I’m thirty-one years old, and I’ve been a carer now for over eleven years. That sounds long enough, I know, but actually they want me to go on for another eight months, until the end of this year. That’ll make it almost exactly twelve years. 和訳は、 わたしの名前はキャシー・H。いま三十一歳で、介護人をもう十一年以上やっています。ずいぶん長く、と思われるでしょう。確かに。でも、あと八カ月、今年の終わりまではつづけてほしいと言われていて、そうすると、ほぼ十二年きっかり働くことになります。
47投稿日: 2025.03.01
powered by ブクログ偶発的な死があり得ず,「提供」という決まった運命に従うことしかできないのなら,それは極めて残酷な世界というほかないだろう。ほとんどの人間であれば耐えられない苦痛に挑んだ本作は貴重である。
0投稿日: 2025.02.25
powered by ブクログあとがきの「細部まで抑制が効いている」とあるように、 情報量が抑えられており淡々とした語り口で、読み進める中で徐々に明らかになっていく感じ。 登場人物の言動からその人の性格や感情を想像することが出来る描写がすごいと思った。 再読したい。
0投稿日: 2025.02.23
powered by ブクログ無垢なまま特殊な施設で育ったキャシー。 大人になり、提供者の世話をする仕事をしている。 キャシーの回想を通して、施設の特異的な部分が浮き彫りになり、また提供という言葉、そして隠されていた事実が明らかになっていく。 回想は幼い時期から少しずつ思春期に入り、そして施設を出てからと続いていく。 いつまで経っても一向に明らかにならない、施設や提供の謎。 これが楽しめれば良いのだけど、常に曇天の空の下で滔々と語られるような文体。光差すかと思いきや差さないのかい…。 ギブしないでよく読んだ。
1投稿日: 2025.02.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
海外文学は読みづらい印象があったが、これは文体が自然で読みやすかった。回想録のような形をとっていて、どんどん読み進められた。 キャシーとトミーの運命はカセットテープみたいに巻き戻らない。「わたしを離さないで」という歌詞は、キャシーがトミーの介護人をやめることを予期していたのだろうか。 生徒たちは急速に変化した時代の落とし物。持ち主を待つ落とし物の期待は次第に諦めへと変わる。彼らを探す人はいなかった。ノーフォークへ行っても親は見つからなかった。 最後が決まっているのに必死に生きるキャシーたちに胸が締め付けられる
0投稿日: 2025.02.07
powered by ブクログ序盤は臓器移植がチラつくたびに自分の内臓に意識が向いてこそばゆい感じだった 時系列が前後する割に文章と内容はとても読みやすかった
0投稿日: 2025.02.04
powered by ブクログこんな設定の小説だと思わなかった。自分が生徒だったらどうだろ。。。自分の身体が自分のためにはないことを幼い頃からなんとなく知っている。。。でも愛する人がいて、、 若者の思考と設定が入り込んでで、主人公も少し冷めてるのがリアルだった。 訳文は訳文です!って感じだったかな、、
0投稿日: 2025.02.03
powered by ブクログテーマが重めで、考えさせられる場面もあった。何も知らない無垢な子供たちのそばで支え、育て続ける保護官達の葛藤と、成長するにつれ自分が置かれている立場を理解し始める生徒達の絶妙な関係が細かく描かれていた。
0投稿日: 2025.02.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
これと同じかこれ以上の感動を味わうことは、大人になった今非常に難しい。読んで良かった、と心から言うことの出来る作品。 全てを理解したとき、物語冒頭が思い出される。あの時、キャスはどんな気持ちで描いていただろう。消えないものはひとつもない。ノーフォークのロストコーナーにあるものも、あちらには持っていくことは出来ない。私たちが持っていくことができるのはたった一つ、記憶だけだ。あちらには思考も持って行けないかもしれない。持って行けるかわからない。あちらでも、私たちは提供し続けるかもしれない。 私と彼ら、生徒の違いはなんでしょう? 彼ら以上の作品を私は残せるでしょうか? 彼らの愛や悲しみは実在するのか? 私の愛や悲しみは本当に実在しているのか? いのちの選択ができるようになった今の時代、人工授精、体外受精、代理母、出生前診断、中絶、死刑、尊厳死。いのちの価値を何で測るのか? 羊のクローンが誕生した今、人間のクローンが生まれる日は近い。なんなら、倫理の先では可能かもしれない。 では、なぜしないのか? 何を根拠に我々はクローンをタブーとするのか。 心では理解しているものを頭では理解できない。 この作品はそういうことを考えさせる。 私たちは、なぜ人間なのか。人間である根拠はどこにあるのか。 また、こんな作品に出逢いたい。
2投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログ終始、牧歌的な雰囲気を醸す文体で物語は進み、中盤で出てくる「提供」というキーワード。内容がなかなか明かされないのでモヤモヤしながら読み進めました。 自分の中で、文体とキーワードの内容との世界観の乖離がうまく消化しきれない感じがこの本の魅力なのだと感じた。 「ロストコーナー」。この言葉好きです。
8投稿日: 2025.01.24
powered by ブクログ初めてのカズオ・イシグロ。 描写がすごく細やか。 大事件のように扱われている出来事に、そんなちっちゃい事気にせんでええやろ~という気持ちになってしまって、だんだん集中力が...笑 でもラストの方で、これはヘールシャムの先生達が守ってきた子供たちの「子供時代」を描いているんだと思うと納得した。 子供の頃って確かに、『○○にこんな事言われた』みたいな日常で起こる小さいこと全部がこの世の全てだったよなぁ。 根底に特殊な事情がありながらもヘールシャムでの子供時代を土台に人生を築いている主人公達に、良かったねと言うのも違うし、犠牲になってくれてありがとうっていうのも残酷すぎる。 現実の世界でも、知ってるけど見て見ぬフリしている事、知らないフリをしているから心穏やかに生活できている事、自分達は得してる側だから他人事だって気にも止めていない事がたくさんある。 そういう事に少しだけ思いを馳せるきっかけになった。 映画も見てみたい。
8投稿日: 2025.01.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
怒涛の最後…めくるページを止めれなかった… 失くしたもの達が集まる所に、トミーが来るんじゃないかと泣く、その情景に胸を打たれました…とても良い… そしてクローン達をただの肉袋じゃないと先生達は守ってくれたんだね…あのコテージのおっちゃんもむっすりしながら世話をしてくれてありがとう… ルース…だけで言うと本当周りご気を遣って合わせるから傍若無人に振る舞えるんだよな…こういう振り回す人いるよな…と思いつつ最後トミーが言ってたみたいに信じたい側というか、ただただ純粋だったんだね… マダムのあの踊りの記憶も…なんか悲しいはずなんだけどほんわかな情景だわ… 革命とか運命からの脱却ではなく、運命を受け入れるという強さ、これは先生達のおかげではないのだろうか… 素晴らしい!!!!!!
0投稿日: 2025.01.17
powered by ブクログ映像化もされてて有名な作品だから、ぼんやりとした前情報があった上で読んだけどとても面白かった。 「提供」とか「介護人」、「回復センター」という単語に物語の世界にぐっと引き込ませる力がある。表面的には倫理観を提起するような内容なのかなと思うんだけど、彼らの出自が完全には明らかにならない分、心のありかはどこにという問いが自らを照らし合わせつつぐるぐると頭を巡る。 冷静な分析と感情の発露のバランスが、キャシーというキャラクターを魅力的にしていると思った。
2投稿日: 2025.01.15
powered by ブクログ丁寧に読んでいるはずなのに、「保護官」とか「回復センター」といった「翻訳者が明らかにこう訳している」ことがわかる新単語に特に説明もなく先に進んでいく。もし「teacher」と書いてあれば訳者も「先生」と書くだろうし、「hospital」と書いてあれば「病院」と訳してくれる筈だから、これらの単語は明らかに著者オリジナルの馴染みのない単語のような直感があった。 このフィクションは「後から全貌が見えてくるタイプの作品だ」というのがなんとなくわかった。 物語を120pくらい読み終わった頃、私は自分の直感に従い、検索ブラウザに「カズオ・イシグロ わたしを離さないで 『約束のネバーランド』」と検索してみた。同じ感情を持った読者が他にもいたようだ。 子供たちが何者かによってコントロールされているかもしれないというディストピア感は、本来なら「SF作品」と非常に相性が良い。『華氏451度』『 アンドロイドは電気羊の夢を見るか』『1984』あたりがパッと浮かぶ。 しかし、本作からはこれらのようなSF要素は全然感じ取れず、どちらかと言えばヒューマンドラマ感がある。 最後に謎が明らかになるサスペンスのようなものなのかと言われれば、それとも違う。ジャンルを言い当てられないだけでなく、類似の作品もわからないという気持ち悪さがある。『日の名残り』を読んでカズオ・イシグロへ絶対的な信頼を持って読み始めた私は、色んな意味で裏切られたと言うわけだ。
0投稿日: 2025.01.07
powered by ブクログ【2024年222冊目】 キャシーは10年以上、介護人を務めてきた。優秀な介護人とされる彼女は、介護者を選べるまでになっている。そして時には、幼少期を共に過ごした知り合いの介護人となることもある。キャシーによって語られ始める過去。どこか奇妙さのあった施設での日々。世界の真実が語られた瞬間、物語は様相を一変させていく。 読み終わるのになかなかに時間がかかりました。読書慣れしてない人は結構大変かもしれません。途中までは「回顧録かな」と思いながら読んでいましたが、ある時さらっと真実が明かされます。えっ、と思うものの、物語自体は何事もなかったように続いていくので、変わったのは読み手である私の方であったのかもしれません。真実が明かされなければただの、一人の人間が人生を振り返っているに過ぎない物語と言ってしまうこともできますが、少しずつ明らかにされる真実に、生きる意味、その過程について考えさせられることとなりました。
1投稿日: 2024.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ひと息に読めばもっと面白かったような気がする。本は何度も読み途切れると集中が欠け記憶が薄れるのでどんどん味気ない読了感になってしまう。それが切ない。 話の内容は想像と全然違っていて、約束のネバーランドみたいだなと思った。もっとメロドラマみたいな話なのかと思っていた。うーん。クローンとして生まれた子たちを少しでも良い環境で過ごさせようと奮闘した人たちがいて、でもクローンたちは結局臓器を渡して死ぬしかなくて。良い環境で育てようなんてエゴじゃんか、とも思うけど、人扱いされない環境で生きるよりは環境的には良かったであろうことには違いがなく……というか根本的には臓器移植のためにクローンを作ろうってなること自体がとんでもないエゴなんだけど。とはいえ、最初から諦めた暮らしを与えていたら余計な希望を持たずに済んだろうとは思うけど、でもそれでは脱走や自殺も増えそうだしね。世話する側も耐えられないと思う、エゴだけど。実際問題、クローンではなくて何かもっと別の方法はないんだろうか。 すごく残酷な話なのに話の雰囲気はそんなに荒涼としているわけでもなく、キャシーは静かに自分の人生を終えようとしていて、なんだか不思議な読後感だった。諦念と言うんだろうか。やたらルースたちと喧嘩するじゃんとは思ったけど。あと話の引っ張り方が「CMのあとで!」的だなとは思った。良い話だったと思うけどいまいち乗り切れなかったのが無念。
1投稿日: 2024.12.23
powered by ブクログ分からない語彙がありすぎてメモが捗った。 ノンフィクションじゃないのに、知らないことが幸せなこともあるよねと思ったと同時に、甘ったれんな!目かっぴらいてよく焼き付けておけ的な作品という見方をもした。 けど、それって行きつくところは一緒で、結局のところ、生きてるって幸せなことだよねってなる。 何かを知った時、その情報をどう扱うか。すべての選択は自分次第である。 あとは、“人間とはーー”と考えさせられる作品だったこと。 ゆえに重いのでクールダウンもかねて、次はかの笑えるエッセイでも読もうかな。
1投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログ本作が問いかけるのは、科学技術が倫理を凌駕する世界において、どのようにして人間の尊厳やアイデンティティを守るのかという問いである。この問いに関する作者の答えは、「記憶」を保持することだ。「記憶」というキーワードは、カズオ・イシグロの多くの作品に共通して重要な役割を果たすが、本作も例外ではない。臓器提供をするために生まれてきたクローンであるキャシーらにとって、過去の記憶を振り返るという行為は単なる回想ではなく、自分が存在した証=アイデンティティを確かめるための大切なプロセスだった訳である。かつてカズオ・イシグロは、インタビューにおいて「記憶は死に対する部分的な勝利だ」、と述べたという。この思想はとても日本的なように私には思える。「失ったもの・今はないもの」を、「見立て」や「面影」によって蘇らせるという日本の優れた文化的価値観が、長崎で生まれた作者に影響を与えているのかもしれない。
14投稿日: 2024.12.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公キャシーと親友のトミーとルース。三人はヘールシャムという施設で生まれ育った。不思議な施設だったが物語がすすむにつれて、ヘールシャムという施設は、臓器提供者の人間を育成するための施設だとわかっていく。施設の人間は「提供者」の介護人を経て、いつかは提供者として臓器提供をして使命を終える…。 感情が抑えられているような文体で、救いはないのに不思議と胸を打つ物語。 施設の中で子どもたちは美術作品を作成させられ、完成度の高いものは施設の人間が外に持ち出し、臓器提供者にも人の心がある、と訴えようとしているところはちょっと印象に残った。
0投稿日: 2024.12.15
