【感想】目の見えない人は世界をどう見ているのか

伊藤亜紗 / 光文社新書
(274件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
73
112
40
3
4
  • 変な気を遣って固くなるよりユーモアを

    視覚障害者との突っ込んだ対話を元にして、美学を修めた方らしく「情報と意味」「客観と主観」を切り口に、視覚抜きで成立している世界のあり方を晴眼者へ提示する試み。
    そもそも「障害」概念がなぜ生じたかを考えても、変な気を遣って固くなるよりユーモアをもって柔らかく受け止めればいいんだな、と楽になった気がします。高齢化社会は多様な身体の時代になるので、当事者と社会の関係がいっそう重要になると心します。続きを読む

    投稿日:2021.11.16

  • 視覚障害者対応マニュアルではありません

     目から鱗が、ボロボロ落ちる本でありました。まず章立てが独特で、空間、感覚、運動、言葉、ユーモアとなっています。
     正直申し上げて私自身、単純な興味本位で読み始めたのでありますが、読み進めていく内に、全く新しい未知なる世界が広がってきました。
     障害者とは、「健常者が使ってる物を使わず、健常者が使っていないものを使っている人」という定義が、まずなされます。ここまでは、まだ障害者のお話という雰囲気でありましたが、その内、「見えない人にとっての富士山と、見える人にとっての富士山」の違いの話あたりから、全く新しい世界観が眼前に広がってきます。そして、ボルダリングが視覚障害者にとって大変人気があるとか、ソーシャルビューの話題、また印象派絵画への言及になってくると、私は何を見てきたのか、いや見ているのか、と自問自答したくなりました。
     そして最後にもう一度、障害者の定義がなされます。それは、大量生産、大量消費の画一的な労働が求められる時代、「それができない人」というレッテルを貼られた人ということであります。つまり逆に言えば、画一的な労働が出来る人は、誰しも交換可能な労働力の一員と言うことであり、十把一絡げということです。
     排除の論理から、悲惨な事件もありました。しかし一方、東京パラリンピックの開催により、また脚光を浴びることにもなるでしょう。
     誰もがオンリーワンなのだという事を、再度肝に銘じるきっかけとなる一冊でありました。
    続きを読む

    投稿日:2018.01.31

  • 衝撃を受けました

    目の見えない人が見ている「世界」に衝撃を受けました。
    特に、目の見えない人が見ている三次元の世界には驚愕を覚えました。

    投稿日:2018.01.14

  • 彼らに「見える」もの、私たちに「見えない」もの。

    本書は、美学とリベラルアーツを専門とする著者が、4人の視覚障害者との対話や行動を通じてその身体論を解釈し、まとめたものです。

     健常者が身体障害者について語るとき、ある種の遠慮が生じたり、言葉ひとつひとつのニュアンスにナイーブになりすぎたりして、真に伝えたいものが見えてこないことがままあります。その点で、著者は非常にフラットで、冒頭から身体障害者に「好奇の目を向けること」が大切だと言い切っています。視覚障害者がどのように世界と対峙しているのかを好奇心でもって理解しようと努めている様子や、健常者にはない感覚や物事の捉え方をする視覚障害者への驚きと感動を素直に表していることに、とても好感を覚えます。

    さらには、視覚障害者による特殊な感覚器官の使い方から「目=見る」というあたりまえの構図にもメスを入れてくる著者。私たちの信じているものは、いかに一面的で狭義的なものであるかということを考えさせられます。
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    投稿日:2016.10.13

ブクログレビュー

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  • kaname15

    kaname15

    「目の見えない白鳥さんと…」の白鳥健二さんも登場します。あっちは感性鋭いノンフィクション作家、こっちは美学(芸術や感性的な認識について哲学的に探究する学問)の専門家による本。きっと違った視点で語られているのだろうなと手に取りました。

    不勉強で美学という学問分野そのものを全く知らなかったけれど、なかなか興味深い学問のようです。ただし本書は専門書ではないので表面的な面しか触れていません。それでも、点字を読む能力と文章を読む能力の比較とか、点字を読める人の触覚が特に優れている訳ではない事とか、なかなか面白い内容でした。

    個人的には昨今のSDGsやバリアフリーでの支援疲れを感じていたので、最終章の「善意のバリア」や「つかえ」の話が腑に落ちました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.29

  • Anne

    Anne

    私は目が見える人のはずだけど(まぁ、かなりの近視ですが)、今まで見えてなかったものが、見えてきそうな気がした。

    「牛乳は噛んで飲め(それくらい感覚を研ぎ澄ませよ、ということ)」と教えてくれた大学の恩師を思い出したな。

    ヨシタケシンスケの『みえるとかみえないとか』も、優しさがあっていろんなことに気づかせてくれる絵本だったけど、この本の優しさも好きだった。

    この著者の経歴も、なんか面白そうで気になる。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • 1/35少年

    1/35少年

    盲目の人と接することがあり、何か得られないかなと読んでみたが、易し過ぎて特に新しい発見はなかったかな。これが初見ならばいい入門書なるのかもしれない。
    読むのならば、目の見えない白鳥さんと~でいいと思う。追加でコテンラジオの障害の歴史やヘラルボニーの活動を知ると、より理解が深まると思う。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.09

  • La place

    La place

    間違いなく良書。視覚に障がいのある方のイメージがひっくり返ると思いますし、いかに薄っぺらいイメージで理解した気になっていたかと、読了後猛省しました。

    投稿日:2024.01.31

  • miserybeatle

    miserybeatle

    社会モデル(「障害が問題なのではなく、障害があることで抱える不自由を解決できない社会が問題なのだ」という考え方)がとてもよく理解できる名著だった

    僕たちの社会は多様性とか言いながら、マジョリティの視点を捨て切れていないんだ続きを読む

    投稿日:2024.01.25

  • 1682271番目の読書家

    1682271番目の読書家

    本川達雄「ゾウの時間ネズミの時間」
    時間感覚は生き物ののサイズによって違う。ゾウにとっての一秒はあ、にも満たないかもしれないが、アリにとっての一秒はあーっというふうに長い。時計のような絶対的な時間は本当はないものであって、個々の生きもののサイズに対応した主観的な時間があるのみである。
    足りない部分を想像力で補って、さまざまな生き物の時間軸を頭に描きながら、他の生き物と付き合っていくのが、地球を支配し始めたヒトの責任ではないか。この想像力を啓発するのが動物学者の大切な仕事だろうと私は思っている。(138項)
    フランス語ジュヌセクワ(je ne sais quoi)いわく言い難いもの。例えばモテる人の魅力のように、感じ取る事はできるけど、言葉にしにくいもの。分からなぃのではなく、分かってはいるんだけど、言葉にできないもの。
    美学は、要はこのジュヌセクワに言葉でもって立ち向かっていく学問。痒いところに手を届かせようとする学問。
    同じ空間でも視点によって見え方が全く異なります。同じ部屋でも上座からと下座から。ノミの視点で床から見たり、ハエの視点で天井から見下ろしたら、全く違う視点が広がっているはず。私たちが体を持っている限り、一度に複数の視点を持つことはできません。
    耳で見て目で生生端で物空手口で書かねば上をわからず。出口鬼三郎
    ダイアログインザダーク
    自立とは依存先を増やすことである。自立と言うと、依存を少なくしていき0にすることだと思いがちです。しかし、周りの人から切り離されることではなく、様々な依存可能性をうまく使いこなすことこそが障害者の自立であると。健常者=自立している人と思いがちですが、その実態は自立しているふりをしているだけなのです。そう考えると、周囲のスポーツサポートをうまく生かしながら生きている障害者とは、むしろ依存のスペシャリストであると言えます。
    ソーシャル・ビュー
    作品を見て、新しい発見があったりだとか、気づきがあったりだとか、感動した時が行って良かったと思う時だ。美術館に行って良いと思う時。
    鑑賞するとは、自分で作品を作りなおすことなのです。見えない人がナビゲーターと呼ばれます。見える人から言葉を引き出し、その場を作り出しているのは見えない人の存在です。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.22

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