【感想】盤上の夜

宮内悠介 / 東京創元社
(84件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
18
29
26
4
0
  • 非常に上手い。だが、この手しかもうないのだろうか…。

    作者が非常に上手く料理した戦略ゲーム類の手のことではありません。このライトノベルや、漫画的な世界観から読者を引き込み真剣で現在触れづらい話題に入り込むような、この手法しかないのだろうか、という意味です
    現在の文学を見ますと、大江健三郎が文学の死を表現したのちマジックリアリズムが席巻し、表現の方向性が非常に限られてしまっているのが見えます。そして今残っているのはかつての中流幻想を利用した、私小説もどきの繰り返しです。あるいはこれは当然のことなのかもしれません。それでも、この作者の表現を残しながら読者を取り込んだ心ある挑戦には感じ入らずにはいられません。
    ただ、根本的な問題として、史実主義と日本的価値観とSFとがどうしても混ざっていないのが多少のめり込めない原因でしょう。
    批評するだけの側が偉そうに書いて申し訳ないです。
    内容としては、ヒカルの碁を読んで、月下の棋士を読んでいれば楽しめます。あと、ファウンデーションも読んでいればにやにやできます。
    星5つ。
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    投稿日:2016.09.17

  • 表題作にめげずに続きを読んで。

    実は一度読むことをやめてしまった作品。特に女性は最初の表題作で挫折してしまうかもしれない。
    特に順番でなくともいいので、気になった題材からチャレンジしてみましょう。
    ニコニコの電王戦にドラマを感じた人は「人間の王」を、
    麻雀が好きな人は「清められた卓」を、
    寓話のような物語が好きな人は「象を飛ばした王子」を。
    どの作品も奥深く、著者の引き出しの多さに驚かされます。
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    投稿日:2013.09.28

  • ゲームの行く末にあるものは?

    登場するのは囲碁、将棋、麻雀などおなじみのゲーム。しかし、よくあるゲーム/ギャンブルの勝負モノのように”対決の緊迫感とか大逆転の爽快感”を求めるものではありません。 しっかり内容を”読まない”と本に敗けてしまうかもしれません。ゲームは何故できて、どこで終わるのか・・・。 冲方様の解説が頼りになります・・・。続きを読む

    投稿日:2014.06.10

  • 盤上で渦巻く力

    卓上ゲームにはまりこんだことがある人なら、人智を超えた「力」が働いているように感じたことはありませんか?
    ふつう、それは気のせいです。でも、『盤上の夜』で展開される勝負には、確かに人智を超えた「力」が働いています。しかし、それはすべて、人間の情念、執念により引き起こされている。
    盤上に全てを懸けた時、何が見えるのか。本書は、我々のような凡人にも垣間見せてくれます。
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    投稿日:2013.09.24

  • 勝負の世界に身を置く「人」が描かれた作品でした

    勝負の世界に滲み出る人間性のその先にある
    狂気、執念を描き出している作品でした
    ファンタジックな話もあれば、ひいてしまう話もあったかな

    投稿日:2014.04.24

  • ボードゲームの持つ宇宙

    囲碁、将棋、麻雀、チェッカー…
    ひとりのジャーナリストの視点を借りた、古今東西のボードゲームが題材のSF短篇。

    表題作「盤上の夜」は、囲碁棋士の女性が主人公。
    海外での卒業旅行中に誘拐され、四肢を切り落とされてしまった彼女。
    自分自身の自由のため彼女は囲碁を覚え、見事賭碁で自由を奪い返します。
    その後、プロ棋士として囲碁の世界に身を置き、碁盤を自身の感覚器、肉体として感知するまでになっていく。

    五感で対局を捉え、時には打たれた手に文字通り”痛み”を覚える。
    受け入れがたい不思議な設定であるのに、ジャーナリズム視点で描かれる宮内の精緻な文章を読んでいると、思わず由宇の感覚に自分も同調しているような気さえしてきます。

    ゲームのルールは知らずとも、十分に異世界を堪能できるお話となっているのでご安心ください。
    (とはいえ、知ればもっと楽しいのもたしか)
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    投稿日:2015.02.27

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ブクログレビュー

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  • akuma908

    akuma908

    このレビューはネタバレを含みます

    ボードゲームを題材とした話の構成に、おっ!と思わされました。個々のエピソードそれぞれについては、ちょっとトンデモ?な感じも含めて、しっかり読ませてくれてよかったのだけれど、最後のエピソードが若干蛇足 or 物足りない感じ。ここが、これまでのエピソードを集大成して、振り切った最高潮の盛り上がりを見せてくれたなら、忘れられない本になったのかもしれないのだけれど…。

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    投稿日:2024.02.12

  • 窓日和

    窓日和

    面白かったです。おそらく今年読んだ本の中で1番面白い一冊になると思います。
    SFは初めて読みましたが、とても楽しめました。6編からなる短編集で、一気に読みたいところです。
    特に2本目は実在する人物が主題の話になっており、虚構と現実の境を曖昧にする仕掛けが秀逸です。5年後にもう一度読み返したい本です。続きを読む

    投稿日:2023.10.24

  • ミイ

    ミイ

    このレビューはネタバレを含みます

    碁、将棋、麻雀、チェス、ボードゲームを題材にした短編集。ゲームを巡る人間の執念や狂気がおもしろい。


    ■盤上の夜
    囲碁の話。四肢を失った女流棋士が研ぎ澄まされた感覚と純粋な勝負心から連勝を重ねるが、より感覚を研ぎ澄ますために取り組んだのが外国語という点が面白い。一つの事象や感情も言語によって表現の仕方は多様で、宇宙にも例えられる囲碁の魅力とのつながりがオカルトちっくでありSFっぽくもある。

    ■人間の王
    チェッカーの話。半世紀負け知らずの人間と機械の闘い、そして数学による完全解が証明されてしまったゲームにおいて、人間の王者は何を見たのか。
    計算上は完全解明されたゲームであっても、人間がプレイするときには考える楽しさや負けたくないという思いは変わらないのだな。

    ■清められた卓
    麻雀の話。麻雀は運の要素が非常に強く、プロであっても交通事故のような負けに遭ってしまう。何かを賭ければ必然と狂気じみたものになる。
    オカルトと数理と度胸がぶつかり合う勝負が面白い。

    ■象を飛ばした王子
    チェスや将棋のルーツとも言われる古代インドのチャトランガの話。教えは易しく、時とともに変遷し、底知れなさがあることで伝承されるという一説に納得。

    ■千年の虚空
    将棋の話。実務派の兄のAIと天才派の弟の頭脳の対決、その間にいるのは魔性の女。データ処理で歴史を正しい一本の道にする量子歴史学というエセ学問に魅力を感じた。

    ■原爆の局
    囲碁の話。他の話のスピンオフのようにもなっている。
    碁とは何か、五割の抽象と五割の具体か、九割の意志と一割の天命か。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.09.18

  • きあもと

    きあもと

    2012年の第33回SF大賞受賞作品ではあるが、内容は一般的なSFとは少し異質な印象。このような作品でもジャンルの作品として受け入れ、評価できるのがSFの強み。

    投稿日:2023.05.07

  • kzmhara

    kzmhara

    囲碁、将棋、チェス、麻雀などのボードゲームを題材にしたSF短編集なのですが、史実に基づいた描写も多く、いわゆる「SF要素」が薄めな作品も多いです。

    ただこの「史実」と「フィクション」の織り交ぜ方や、独自の解釈が非常に読ませる作者さんで、ゲームのルーツや歴史についても飽きずに読めます。

    人間プレイヤーVSコンピューターの視点はやはり、現代の観点からボードゲームを見るに当たっては、避けられない話題なのでしょうか。

    麻雀を題材にした「清められた卓」なんかは麻雀のルールを知らずとも引き込まれてしまったし、「三角関係」という表現では生ぬるい、倒錯した性関係・愛情関係がもつれる「千年の虚空」も良かったです。
    続きを読む

    投稿日:2023.01.15

  • がらがら

    がらがら

    囲碁、麻雀、将棋などのボードーゲームを題材にした短編集。

    特殊な過去や設定を持つ登場人物達のストーリーにワクワクしたし、共通のテーマである「なぜそのゲームをプレイするのか」という部分もそれぞれ違っていて面白かった。

    架空の話に現実の事件や歴史を混ぜてあるのも上手い。
    続きを読む

    投稿日:2022.12.28

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