【感想】マリアビートル

伊坂幸太郎 / 角川文庫
(1181件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
479
463
133
18
3
  • 新幹線の揺れ

    この作者らしい、時系列をあえて入り乱れさせた技巧的な構成と軽妙な会話がとても目立つ作品である。使いつくされた舞台であるが新幹線車内という舞台は緊張感を盛り上げるのに適している。同じ作者の「魔王」でも描かれていたが、面白半分に人の心理や行動を自在に操る人物の造形が大変に際立っている。特にこの作品では「中学生」という形を取っているので悪魔的で更に目立つ。あまりにも真に迫ってうまく描かれすぎているので、嫌悪感を催してしまうほどである。
    ところで新幹線の揺れが大きな役割を果たしている。東北新幹線ってそんなに揺れたっけ?
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    投稿日:2022.09.24

  • 主人公はマリアビートルでした

     東北新幹線の中が死体で一杯になってしまう物語です。ぞっとしますねぇ。
     沢山の殺し屋が登場し、物語は同時進行で展開していきます。これだけの登場人物がいる物語を映像で同時進行させたら無茶苦茶になりそうですが、その点小説は凄いですよね。そして、読み手である我々の頭も凄いよね。ちゃんと同期させることができますものね。
     あまりにも登場人物が多くて、しかも、次々と殺されていきますから、誰が主人公か最初はわかりませんでした。読んでいる最中は、この本のタイトルを意識していなかったからで、主人公は、ちゃんとタイトルに示されていました。
     てんとう虫は、マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく、これはどっかで使えそうなフレーズですな。
     物語は東北新幹線の中で、殺し屋達の緊張感あふれるやりとりが読みどころとなっていますが、私は、というか、おそらく多分、誰もが思ったかもしれませんが、あの「王子」という中学生がず~と鼻持ちならない存在でした。だから彼の最後がどんな風だったか、もっと詳しく知りたかったなぁ。なんて、ちょっと残虐になっている自分がいます。
     それにしても、結局最後に残ったのは、ついていないとぼやいていた主人公でありました。人生とは結構そんなものかもしれませんね。自分は不運の星の元にいるのだと信じていれば、どんな状況になっても冷静に対処できるのかもしれません。おまけのように掲載されている短編が、また面白かったですよ。
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    投稿日:2020.09.03

  • 殺し屋なのに憎めない。

    殺し屋なのに、読んでるうちに誰も死んでほしくないと、思ってしまう。なぜ人を殺してはいけないのか。それを殺し屋の立場から答えさせるのは、なんだかとても皮肉ってて、面白いなあと。鈴木先生の、”殺人を許したら国家が困るんだよ”という考え方、あー、なるほど、と。テンポもよくサクサク読めます。ただ、最後の結末が、もっとクリアーにしてくれ〜!と、私は思うのです。もちろん、この後はAXにいきたいと思います!続きを読む

    投稿日:2017.11.30

  • エンターテイメント?

    久しぶりに伊坂幸太郎の作品を読みました。

    小さな子供がいるので(いや、いなくても)木村の息子のエピソードは、可哀想で可哀想で、他人事じゃない気持ちで切なく悲しく、胸がムカムカと気持ち悪くなりました。だからこそ、いつもの伊坂作品のように最後にスカッと勧善懲悪で終わらせて欲しかったけど…
    スッキリしないよ!一番の悪が中学生だからハイ、殺しましたって訳にもいかないのかもしれませんが。

    初期の頃は、散りばめられた(伏線と気付きにくい)伏線が最後に回収されていくのが非常に気持ち良かったのですが、読みすぎたのでしょうか、だいたいの伏線がぷんぷん匂うようになり、やっぱりそうくるよね、という予定調和な感じ。こんな性格の悪い読み手がいるから、いかにもな「鍵」のダイイングメッセージは肩透かしにしたのかな。
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    投稿日:2016.07.13

  • エンターテイメント!

    『グラスホッパー』の方が物語としてはよくできていたと思うけど、とにかく理屈抜きに楽しめる。
    ぶっそうな殺し屋の対決の話なのに、キャラの立った登場人物が皆生き生きとしていて魅力的!
    個人的は、王子と七尾が好きだったな。
    くすっと笑えるところもあるし、とにかく飽きさせない。
    『グラスホッパー』の登場人物も登場して、にやっとしてしまうし。
    『グラスホッパー』を読んでなくても十分楽しめると思うけど、読んでればなお楽しめるかなぁ。
    最高のエンターテイメント!
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    投稿日:2016.01.24

  • 新幹線での静かな激闘

    東北新幹線『はやて』の中で、愉快な殺し屋たちのブラックユーモアが交差する、色々な面白さが詰まった作品のように感じました。独特の伊坂ワールドは健在です。もちろんマリアビートル単品でも面白いとは思いますが、グラスホッパーを読まれてない方は、そちらを読まれたあとにマリアビートルを読むと、より広く深い彼らの世界が覗けるのでは、と思います。続きを読む

    投稿日:2015.09.04

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ブクログレビュー

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  • ツキミ

    ツキミ

    グラスホッパーを読んでからのマリアビートル。
    続きがあると思っていなかったので素直に前作に出てきた人物の登場は嬉しかった!!
    前半はとにかく王子にイラついたけど、他の殺し屋たちが出てきてからは一気読み。全キャラ魅力的すぎるしさすがの伏線回収。
    スカッとしたし私はとても好きだった!
    続きを読む

    投稿日:2025.06.16

  • かめた

    かめた

    伊坂幸太郎さん、初めてでした!本の師匠に勧められて読みました。
    天道虫のunluckyさ、次も期待してます。殺し屋って仕事も大変やなぁ…
    前作、グラスホッパーも読もうかな!

    投稿日:2025.06.15

  • ポンコツサンタ

    ポンコツサンタ

    前作『グラスホッパー』に連なる殺し屋シリーズ2作目。舞台は東京発盛岡行きの東北新幹線「はやて」。そこに偶然乗り合わせた複数の殺し屋たちの思惑が交錯し、やがて避けようもなく混線していく。
    本作の最大の特徴は、限定された空間と時間という制約を逆手に取った巧みな構成にある。ノンストップの密室状況下において、数多の伏線が緊張感を孕みつつ張り巡らされながら物語は進行する。
    伊坂の筆致は相変わらず軽妙で、文体には知的な遊び心が宿る。言うまでもなく殺し屋が躍動するシリーズであるため、多くの血が流れる。けれども、殺し屋特有の冷徹なそれではなく、むしろ不器用でだらしなく実に人間的である。本作は、伊坂が得意とする軽やかで複層的な語りの技法を遺憾なく発揮した名作である。
    続きを読む

    投稿日:2025.06.13

  • 1986107番目の読書家

    1986107番目の読書家

    このレビューはネタバレを含みます

    最高におもしろいです、伊坂幸太郎の作品のなかでも特にこの作品はおもしろい。
    狭い空間でいろんな登場人物たちの思惑が交錯していく様は見ていて気持ちがいい。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2025.06.02

  • Mickey

    Mickey

    このレビューはネタバレを含みます

    まず一言。とても面白かった。
    シーンが頭に浮かぶほどの臨場感のある描写。
    新幹線の疾走感に伴うストーリー展開。
    哲学的な問い。
    個性的な殺し屋達のラストの展開。
    全てが非常に面白かった。
    これだよこれ!と思わせてくれる長編小説だった。
    1人の殺し屋が「たまたま」あるいは「必然的に」起こした事柄が、別の殺し屋に思いもかけぬ形で降りかかってくる展開は非常に巧妙でした。

    作中に何度も出てくる、どうして人を殺してはいけないのか。
    きっとその答えを的確に言える人は多くない。
    自分なら何と答えるか。
    何と答えてもきっと王子を落胆させるだろう。
    そんなことを鼻から考えてしまう自分は情けないし、鈴木の「国家」という答えが果たして正しいのかもよくわからない無知な自分に嫌にもなる。
    けれどそれでも、ページを捲る手は止められない。
    読みながら自分なりの答えを探していたようにも思う。結局まだ王子を唸らせるほどの答えは見つかってないし、この先も見つからないかもしれないけれど。
    これはただの殺し屋小説ではない。
    きっとこの先何度も読み返したくなるのではないか。
    長すぎてなかなか読み返す気になるかは別として。

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    投稿日:2025.05.31

  • ぴよっぴりんりん

    ぴよっぴりんりん

    王子が憎たらしくて一気読みできなかったけど、展開が色々あって面白い物語。

    蜜柑と檸檬が好き。
    掛け合いのテンポの良さ、互いに信頼がある描写。
    トーマスのキャラ名覚えてるとこ、オススメの本読んでたとこ
    蜜柑が怒ると小説文章を引用するって紹介があったから、王子との対話シーンはブチギレてるって読み手が理解できるのも良い構成。
    もっとこの2人で話作ってほし〜!

    木村祖父母、まりあと七尾とか良いコンビたくさん出てきた。

    あさがおのターン、道に交通整理の旗が〜 とかの説明で通学路ぽいのを想像できて楽しい。懐かしい気持ちになった。
    続きを読む

    投稿日:2025.05.30

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