【感想】ローマは一日にして成らず──ローマ人の物語[電子版]I

塩野七生 / 新潮社
(71件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
34
16
7
1
0
  • 歴史書ではなく小説だが

    本シリーズのタイトルは"Res gestae populi Romani"で直酌すれば「ローマの人々の諸々の行動」である。本シリーズはまさにローマ人が建国に当たって、危機にあって、滅亡に当たってどう行動したかを淡々と綴った記録のような小説である。

    作者の塩野七生ははっきり言えば「文章を書くのがあまり上手では無い小説家」だと思う。本作を含め、文章は極めて説明調であり、一般的な小説、それも歴史小説と比べても、例えば司馬遼太郎のような生き生きとした人物描写では無い。これは本作だけの話ではなく例えば著者のデビュー作である「ルネサンスの女たち」でもその後に書かれた「チェーザレ・ボルジア、あるいは優雅なる冷酷:や「ロードス島攻防記」でも同じである。

    逆にこの淡々と感情をほとんど交えず史実の流れを追っている部分が、本書をいかにもローマ正史であるかのように感じさせ、また人物描写が淡々としているが故に「リアルな歴史上の人物」として感じさせているところが本シリーズの極めて優れたところであり、小説として成功している部分であると思う。
    実のところ、正史としてとらえれば「あれ?」と首をかしげる部分も存在している。だが、あくまで本書は歴史小説であり、その意味では極めて成功している作品だと思う。
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    投稿日:2015.05.29

  • まずは助走

    塩野さんの書く本は、自分の惚れ込んだ人やものを伝えたいという熱意が、はちきれんばかりにこもっているのが特徴だと思います。このシリーズの場合はローマという国とそこに生きる人が対象になっています。

    歴史書と呼ばれるものは、はっきりしない根拠からの推論を排した上に論を重ねていくので無味乾燥になりがちですが、塩野さんの場合は小説家らしい想像力の豊かさを広げさせていて、学術的には正確性を欠くかもしれませんが、一緒になって想像を広げる楽しさとリズムがあるのがすばらしいです。

    もっとも、この第1巻は本当に書きたいことの土台となる部分、ローマが都市国家として安定していくまで、を描いているので、すこし退屈な部分もあるのは仕方のないところでしょうか。ともあれ、次巻以降はさらに躍動するので、それを期待して手にとってみる価値は十分あると思います。

    これは完全にどうでもいいことなのですが、表紙は文庫版の方が好きです。単行本の表紙は、なんだか学生時代に歴史の授業で使った資料集を思いおこしてしまうんですよね(笑)。
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    投稿日:2015.06.11

  • ローマの歴史の始まり

    昔から,ずっと読みたいと思っていた本。
    「覚える」というのが苦手なので,いわゆる歴史のお勉強はあまり得意じゃなかった。でも,歴史というのは非常に面白い。
    「ローマ」,もちろん,中学校・高校と歴史(世界史)を一応はやってきたので,知っているつもりだった。でも,それはローマの歴史の中のほんの一部の固有名詞を局所的に知っただけのことだった。
    もちろん,学校の勉強の中で,ここまでローマに特化することはないし,その必要もないと思う。ただ,やはり,狭く深く知るというのは面白い。
    イタリア・ローマに行ってみたい。
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    投稿日:2015.11.28

  • 面白い歴史の「教科書」

    ローマの建国から紀元前3世紀くらいまでを描いた本。

    もちろん興味があったから読んだわけだが、やはり扱った歴史が長く、たくさんの人名が出てくるがなかなか覚えていられない。

    そしてあまり物語性がなく、少し退屈してしまった。

    それでも度重なる戦争やその時々による政体の変化は目を見張るものがある。

    歴史を学ぶには最適な本ではないかと思う。
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    投稿日:2015.09.11

  • 「人」を考えられる

    このシリーズ最高!読んだ人のレベルで色々考えさせられます。小説家が書いた文章なのでサクサク読み進められますし、目のつけどころも専門家と違って読者に近い。何より学術論文と違ってワケわからん単語が1つもない!
    私は、長編小説としてとても楽しく読みました。何千年も前の人も私達も同じ様な感受性を持ち、一生懸命生きてたんだなぁ、としみじみしました。
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    投稿日:2016.07.13

ブクログレビュー

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  • ちょうこくどう

    ちょうこくどう

    単行本全15巻の第1巻。ローマ建国からイタリア半島統一までの約500年。何故ローマは栄えたか。如何に栄えたかと共に描かれる。この先長い物語が続く。

    投稿日:2023.12.26

  • メガネ

    メガネ

    面白かった。
    ローマの歴史は、断片的に知っていたが、紀元前の時代に、こんなに素晴らしい国があったとは思わなかった。
    宗教への寛容さ、執政官、元老院制度と市民集会を活用した独自の政治システム、敗者さえもローマと同化させる生き方など隆盛する要因がよくわかりました。続きを読む

    投稿日:2023.08.11

  • みー

    みー

    全く興味のなかったローマですが、今では大好きになりました。また歴史に興味を持つきっかけになりました。いつかローマの遺跡や芸術を見に旅に行きたいです。

    投稿日:2023.06.19

  • あきこ

    あきこ

    めちゃくちゃ面白かった!
    高校の世界史ではただ長く存在していた国という程度の認識しかできなかったのが、急に『ローマ人』が鮮やかになった。
    作中で時間が前後しやや分かりづらいこともあるが、それは著者がローマに変革を迫った複数の事象やそれによる影響を一つ一つ細やかに解説しているためである。共通の出来事が出てくれば、「ああ、ちょっと前に触れたことと同時並行で起こってたのか」と合点がいく。
    次巻も読む。
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    投稿日:2023.04.02

  • いりちゃん

    いりちゃん

    紀元前753年の建国から500年、イタリア半島をローマ人が統一するまでの物語。この歴史物語を読み刮目したのは次の2点だ。
    1.ローマ人が敗者を隷属したのではなく、「共同経営者」にするという、当時では他に例を見ない政略を取ったこと。
    2.紀元前4世紀には「12表法」という成文法をもっていた、つまり紀元前においてローマが法治国家であったこと。
    我々の先祖が草深い山野で弥生式土器を作っていた時代なのだ。恐るべしローマ、今後どのように共和国から帝国に脱皮して行くのか、次巻以降が愉しみだ。
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    投稿日:2023.02.11

  • ゆきくま

    ゆきくま

    このレビューはネタバレを含みます

    ローマの事を全く知らない人間が読んでも、グイグイ引き込まれる文章で、漫画を読むような感覚で歴史理解を深める事ができた。長丁場になるが全巻読んでみたいと思う。ローマ建国からカルタゴ(現 北アフリカ)との戦争であるポエニ戦役勃発前までが描かれる。ローマに最初に拠点を築いたのは所謂「ならず者集団」で、サビニ人の女性たちを拉致して結婚して子孫を残したというのは驚きであった。共和制移行後のパトリキ(貴族)中心の政治から平民を取り入れた政治体制の確立(リキニウス法)や同盟国出身の者に違和感なく最高権力であるコンスル(執政官)の地位を与えるなど、外部リソースの活用の上手さがローマが今後ライジングしていくことのバックボーンになっているのだと感じた。

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    投稿日:2023.02.08

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