【感想】ボトルネック

米澤穂信 / 新潮文庫
(901件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
110
275
301
111
30
  • ただ思うのは、それは諦めに慣れない若さ故の絶望なのだと。

    亡くなった恋人を偲びに東尋坊を訪れた「ぼく」は、断崖から墜落した・・・はずが、気づくと見慣れた街にいる。しかし自宅には見知らぬ「姉」。その姉と共に過ごすうちぼくが見せつけられた残酷な「IF」の世界とは。あり得たかもしれない「可能性」と実際あった「現実」が逆転する、どこまでも苦い青春パラレルミステリー。

    著者が「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」をテーマに書いた作品には短編連作の「儚い羊たちの祝宴」がありますが、こっちは長編な分ズドンと衝撃と余韻の残る一撃。

    選んだ未来が必ずしも正しい訳はないはずで、それでもなんとか進めるのは、やり直せない「たられば」が実際にどうなったのか分かるはずがないからこそ。にもかかわらず、「最適解ばかり選んできた姉」視点で、選べなかった/選ばなかった選択肢の行方を見せつけられる主人公。畳み掛ける伏線と回収劇、それが収束してラストに現れる主人公の絶望と決意が、予測はつくのに救いを求めて頁を繰る手が止まれない。
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    投稿日:2014.12.13

  • 面白いが救われない話

    テイストとしてはパラレルワールド+日常系推理もの。軽いノリで始まった物語が、終盤主人公の存在意義自体に向かって収束していく展開はあいかわらずうまい。普通パラレル物は、可能性を広げる展開になるものが多いのだが、本作は逆に現状とのギャップ(比較)に落とし込んで主人公の絶望に結びつけているあたりがすごい。しかし救われない話だ。続きを読む

    投稿日:2014.11.27

  • 高校生ぐらいのときに読めば、もっと印象に残ったと思います

    一般的なミステリでは中核となる謎が設定されてそれを巡る物語が語られるという構成をとると思いますが、本作では中核となる謎の設定が淡く描かれており、その意味では謎解きを楽しみにして読む人はちょっと期待はずれかもしれません。
    一方で、同作者の「氷菓」でタイトルの意味が分かった後に残るやるせなさや、寂寥感に魅力を感じた人には、強くアピールするのではないでしょうか。
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    投稿日:2015.07.16

  • 米澤穂信さんの作品の中で一番好きです

    兄の命日に迷い込んでしまったパラレルワールドには、生まれなかったはずの姉がいて、死んだはずの人が生きていて、何もかもがうまくいっている世界だった。
    バタフライエフェクトのバットエンドの主人公がグッドエンド見せられたような話です。

    先日久しぶりに読み返しましたが、若い頃に読んだ方が感度が高い気がします。
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    投稿日:2015.10.29

  • ミステリーではありませんが、ページをくる手が止まらない…。

    米澤さんというと、ミステリー色の強い小説をイメージするかもしれませんが、
    この小説については、ミステリー色薄めです。

    並行世界に迷い込むファンタジックな要素がありつつ、
    展開される物語は、至ってリアリスティックでほろ苦い。

    主人公がどうなってしまうのか、どんどん読み進めていくと、
    いつの間にか終章。その終章は衝撃的でした。

    ボトルネックというタイトルが余計にのしかかってくるというか。

    楽しい話ではありません。
    でも、引き込まれるくらい面白かったです。
    続きを読む

    投稿日:2017.07.16

  • ゾクゾクします

    当たり前の日常に殺されそうになる日々です。主人公にとってはこれも救いなのかもしれません。

    投稿日:2020.06.03

ブクログレビュー

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  • ゆいちぃ

    ゆいちぃ

    救いようがなく、悲しい気持ちに…。
    米澤穂信作品には、必ず1人ナチュラルにサイコなやつがいるよな。笑
    金沢に縁があり4回ほど訪れているので、小説の中に出てくる金沢の街や情景が目に浮かび、また金沢を訪れたくなりました。
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    投稿日:2024.04.14

  • かか

    かか

    ちょっと私には難しかった。というか、最後まで読んで、読者に考えを任せるって感じが、学校の"国語"ぽくて、あんまりすっきりした感じがなかった。

    けど、リョウ(主人公)とサキ(リョウが生まれなかった世界の嵯峨野家の2人目)がそれぞれの世界の"答え合わせ"をしていく場面は、おもしろかった。スピード感も好きです。続きを読む

    投稿日:2024.04.13

  • ねこまた

    ねこまた

    このレビューはネタバレを含みます

    面白かった。気持ちよくスラスラと読めたし、
    先が気になるストーリー。
    登場人物のやりとりがラノベっぽくて読みやすいけど、ちょっと非現実的かな。
    でもその軽さがないと、ものすごくしんどい話になってしまった気がする。
    ラストがあんな形で終わると思わなかったので、突然落とされたかんじ。
    リョウの辛さ絶望がキツい。
    最後のメールの解釈、そんな考えもあるのだなーと感心したけれど、私にはどうしても良い方向に考えられない。そんな簡単に人は変われない。

    その後最後の数ページだけ読み返した。
    ノゾミの望みがわからなかったのが、なんとなくわかった。
    それによって、リョウの選択がどちらになるのかわからなくなった。決められないのよくわかる。
    リョウにとってのハッピーエンドがあり、最後のメールで彼がどちらに背中を押されたのか、解釈によって、本当にさまざまになる。
    ここまでのストーリーも秀逸ながら、最後まで考える余地のある物語、読み手ひとりひとりに結末がある物語、すごいなと感心した。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.06

  • isutabi

    isutabi

    [1]痛切やけど、読み方によっては別のとらえ方も?
    [2]リョウはノゾミを悼むため行った東尋坊で自分も落下、気がついたら金沢に戻っていたが自宅には存在しないはずの「姉」サキがおりどうやらパラレルワールドのようなのだが二人はディスカッションしながら二つの世界と自分たちとの因果関係を探り少しずつ理解してゆきそれぞれの世界でなにが起きたか、なにが起きるか推理していく(主にサキが)。そして…リョウはサキを知った。それは彼にどんな道を示す? 痛みだけなのか、希望なのか。
    [3]リョウの物語は未完だろう、というかようやく始まるところかもしれないのでリョウとサキを再会させたい気もするが、それはまあ、物語的には余計なことなのでしょう。あと、先に解説読むと興醒めになりそうです。

    ■簡単なメモ

    /恋した人、ノゾミを悼むため彼女が転落死した東尋坊に来ていたリョウもまた転落し目覚めると東尋坊に出発した2005年12月3日の金沢にいたが自宅に戻ると知らない女子高生サキがいた。どうやらリョウの世界では生まれなかった姉であり、逆にこの世界ではリョウが生まれなかったようだ。
    /リョウとサキは互いの世界の違いと自分たちがいることいないこととの因果関係を推理しつつ確認していく。
    /「正確には、弟らしきもんです」(p.93)
    /日の光を浴びたくないときもある。(p.115)
    /そしてこちらの世界では諏訪ノゾミは生きていた。そしてサキと親しく、天真爛漫で傍若無人で、そして幸せそうだった。
    /リョウとサキは東尋坊に行く列車の中で二つの世界のノゾミの差異を語り合う。ノゾミははたしてどういう人物であったのか。
    /東尋坊で、サキはリョウの世界で何があったのか推理する。そして自分の世界で何が起きるかを。

    ■簡単な単語集

    【兄】→嵯峨野ハジメ
    【大雨の日】両親が互いに愛人を作っていたことが発覚した日。この日を境にリョウの世界とサキの世界ではズレが生じたようだ。サキとリョウの行動の差がその違いを生んだようだ。
    【金沢】個人的な話。大阪在住なんやけど、金沢は案外近いんでいっときは月イチくらいで行ってて常連ぽくなった喫茶店もあったりしたけど、だんだん魅力を感じなくなったのはキレイらしくなりすぎたからかもしれません。故郷に近かった倉敷も中学生の頃は週イチくらいで行ってたけど「美観地区」になってからはキレイすぎて気分が削がれ二回しかいってない。シブさが欲しい…
    【金沢駅】例の鼓門はすでに存在するようだ。物語は2005年のようだが、もう存在してたのか。
    【グリーンアイド・モンスター】妬みの怪物。生者を死の世界に誘う。芦原温泉の駅で子供が教えてくれた。
    【嵯峨野アキオ】リョウの父。愛人を作っていた。
    【嵯峨野サキ】→サキ
    【嵯峨野ハジメ】リョウの兄。バイクで転倒して意識不明となり長い時間を経て死んだ。サキの世界ではもっとあっさり死んだらしい。
    【嵯峨野ハナエ】リョウの母。愛人を作っていた。
    【嵯峨野リョウ】→リョウ
    【サキ】嵯峨野サキ。アキオとハナエの娘だと自分では言うがリョウはこんな姉など知らない。なかなかさばけた性格のようで理解しがたい存在であるはずのリョウのことも頭ごなしに否定したりはしなかった。《想像してみてよ!》
    【小京都】金沢駅前広場に「ようこそ、北陸の小京都へ」というポスター。金沢の人はこの呼ばれ方を嫌っていると思っていた。ウチは城下町であって、京都とは成り立ちからして違う、と。もっとも御所を城の一種だと考えれば京都も城下町なのかもね。
    【諏訪ノゾミ】「ぼく」が恋した女性。東尋坊で転落死した。厭世的なところがあったので自殺説も根強いが「ぼく」は事故死だと信じている。ぼくから見ればノゾミはかわいそうな子だったがノゾミから見れば「ぼく」がかわいそうな子だったらしい。《ノゾミ自身はそもそも解釈されていないのだから》p.147
    【辰川食堂】リョウ御用達の食堂。最安なら一食百四十円。
    【ぼく】→リョウ
    【結城フミカ】諏訪ノゾミの従妹。ニンゲンの写真わ撮影するのが趣味? リョウのなにかに惹かれて撮りたがる。
    【リョウ】嵯峨野リョウ。主人公の「ぼく」。高校一年生。転落死した諏訪ノゾミを悼みに東尋坊に行って自分も転落しなぜか自分の住んでいたことは別の金沢にいた。感情の起伏は激しくなく、なかなか他者に懐かず、情報の開示をしたがらないタイプのようだ。《だけどこのとき、不幸なのは自分だけだと思わなかったことは、ぼくのささやかな誇りになっている。》p.119。《何でもなくなれば、いいんじゃないかな》p.119
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    投稿日:2024.04.05

  • レックス

    レックス

    このレビューはネタバレを含みます

    少し根暗な男子高校生がパラレルワールドに飛ばされ、そこで色々なことに気づいてしまう話。本来知るはずのなかった別次元の同じ世界と、自分がいた世界との違いを徐々に、いやでもわからせられた時の主人公の虚無感。結局どちらの世界でも居場所のない主人公には報われてほしかった、、、

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.26

  • Limei

    Limei

    男子高校生が主人公のパラレルワールドミステリー。
    登場人物のキャラクターになかなか感情移入も共感もできず‥だったのですが。
    ネガティブな感情が渦巻くストーリーと結末に少し心が暗くなりました。
    最後のセリフに本当に嫌な気持ちになり、私もなんだか傷つく。
    その後、彼はどんな行動をとったのだろう。
    そんな余韻の残るミステリーでした。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.18

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